PART 59

 「・・・え? 何ですか?」
知佳は心臓が停まりそうなほどの緊張を堪えながら、何とか言葉を絞り出した。う、嘘よね、聞き間違いだわ・・・

 「あれ、おとぼけですか、麻倉さん、あんまりゴルフが上手すぎるから、ラウンドの時にはいろいろなハンディを付けてあげるそうじゃないですか。」
森谷はもはやすっかりいやらしいニヤケ顔になり、知佳の下半身に視線を向けた。
「どうですか、今度、FRでヌードグラビアなんて? 『あのM商事の社長賞美人OLが脱いだ』何てリード付けたら、飛ぶように売れますよ?」

 「な、何を言っているんですか、やめてください、失礼ですっ!」
知佳は毅然とした表情でそう言おうとしたが、その声は上擦り、完全に失敗していた。しかしもはや、森谷があの時のことを知っているのは確実だった。一体どこまで? それじゃあ、広報部や総務部も知っているの・・・ど、どうしよう、私・・・

 「まあまあ、それは勘弁してくださいよ、森谷さん。・・・あなたの言っていたことが正しかったこと、認めますから。」
それまでじっと様子を見守っていた総務部の関口課長がようやく口を開いた。
「麻倉君、もういいよ、取り繕わなくても。君が社長賞の旅行で一体何をしたか、全て分かっているんだからね・・・まったく、大変なことをしてくれたねえ・・・」

 そしてそれからしばらくは、関口からの状況説明が行われた。要約すると、その内容は以下のとおりだった。
・事の発端は、森谷からのメールが関口に届いたこと。中身は、『お宅の女子社員の破廉恥行為の証拠を握っている。ついては、その取り扱いについて話し合いをしたい。』
・関口は最初は相手にしていなかったが、次のメールで知佳らしき女性がゴルフ場で全裸となりスイングをしている動画が添付されているのを見て、森谷と面会した。
・面会での森谷の要求は、写真及び動画データの億円単位での買い取り。関口はその場では明確な回答をせず、まずはその写真と動画が知佳本人のものであるか、確実な証拠がないと交渉には応じられないと回答
・その結果、三原からの再度の取材という形を取り、知佳に皆の前でスイングをさせて動画と比較し、更にサインをさせて筆跡がその日のゴルフ場と同じものか確認することになった
・なお、本件については、まずは課長レベルで対応することとし、総務部長、広報部長、営業部長、商品企画部長には極力知らせずに納める考え
・情報の拡散防止のため、社長旅行の参加メンバーには伏せたままで本件は解決したい

 「大丈夫だよ、麻倉くん、このことは絶対に世間に公表されることがないようにするから。ゴルフ場の使用記録だって、日常の業務監査の一環として回収して調べたものだからね。ちなみにその時、筆跡だけじゃなくて、指紋まで採取させてもらっているから、あの時の女性が自分じゃないなんて言い訳は通用しないからね。」
顔面蒼白になってカタカタと震える知佳を見ながら、関口は淡々と言った。
「・・・しかしまあ、僕もいろいろな社員の不祥事を処理したけど、こんなに驚いたのは初めてだよ。まさかあの、麻倉くんにそんな趣味があったなんてね。宴会場で裸踊りをして他の客に迷惑をかけた男性社員は何人もいたけど、まさか、羽目を外して全裸でゴルフをする女子社員なんてねえ・・・」

 「ちょ、ちょっと待ってください・・・わ、私、そんな趣味なんて、ありません・・・」
知佳は口の中がカラカラに乾くのを感じながら、掠れ声でそれだけを口にした。つまり、ここにいる8人は、少なくとも私がゴルフ場で全裸でラウンドさせられた動画を見ているのだ・・・どこまで知っているの、池でのことや、風呂場でのことや、バスの中でのあのこと、宴会の時のあのことも・・・・
「ち、違うんです、・・・信じてください、お願いします・・・」
もはや知佳は、自分でも何を言っているのかよく分からなくなっていた。

 「違うっていうのは、自分の会社が開発したゴルフ場で全裸になってゴルフをしたのは事実だけど、自分には露出趣味は無い、つまり、誰かに強制されてそんなことをしたっていうことでいいのかな、麻倉さん?」
森谷が知佳の全身を舐めるように見ながら言った。頭の中で知佳の全裸画像と重ねているのは明らかだった。
「ってことは、あの時の社長賞旅行参加者、居合わせた3人の部長、キャディーの女子大生の全員が共犯で君を裸にしたってこと? 一体どうなると、そんな状況になるのかな? 第一、君は何でそんな破廉恥な命令を受け入れたの?」

 「・・・そ、それは・・・」
畳みかけるように問いかけられて、知佳は返答に詰まった。その問いに答えるためには、美月旅館でのことを全て話し、さらにスーパーピンクコンパニオンとして女将の命令に逆らえない立場になっていたことを説明しなければならない。しかしそれは。女将との約束を破ることになり、その場合、どんな報復をされるか・・・あの時のデータを全て公開される・・・
「こ、ここで理由を言うことはできません。でも、違うんです、信じてください・・・」
知佳は森谷から視線を逸らし、隣の三原の方を見て懇願した。三原さんとは、深い取材を通じて信頼関係ができていたのだから、きっと信じてくれる筈・・・

 「いや、確かに僕は、君がいかに優秀で、仕事に対して真摯な姿勢を持っていて、気遣いもできる素晴らしいビジネスパーソンだということはよく分かっているつもりだけどね・・・ただ、こういう性癖の問題は、分からないんだよねえ。まさか、麻倉さんがそんなことをできる人だったなんてねえ・・・」
三原は相変わらず人懐こい表情のまま、知佳の身体を眺めた。
「・・・ただ、取材の第二弾は本当にしたいと思ってたんだよね。・・・悪いけど、ヌードグラビアの発表はその後にしてもらってもいいかな?」

 ・・・そしてそれからしばらくは、知佳の懇願は無視され、M商とBJグループ(BJ・FR)側の交渉が行われた。もちろん、億円単位の支払いなどに応じられる筈もないM商事側は、何か他の条件はないか尋ねることになった。そしてその際に関口は、あまり我が儘を言うなら、今後BJグループへのスクープネタの提供は行わないこと、更には懇意の有力政治家を使った圧力を婉曲に示唆した。それに対し森谷と三原は、今後ともM商事との懇意の関係は継続したいから無理を言うつもりはないが、スクープネタを手に入れた努力への適正な対価は欲しいと主張した。そして、森谷はフリーであり、BJグループの社員ではないことから、他の、もっと下品な雑誌にネタを売ることになるかもしれないとやんわり言った。時折、知佳の恥辱の全裸ゴルフ動画を再生してお互いに確認しながら、しばらく攻防が続いた。

 三十分ほどの議論の結果、両者はようやく一応の結論に達した。
・M商事はBJグループの正規の取材には極力柔軟に対応する。即ち、知佳の取材のBJ誌への掲載、テレビジャパンの報道番組への出演等。
・次に、FR誌への掲載。ただしこれは、FR誌の勝手な盗撮、または知佳本人が会社に無断で登場した形とし、M商事は一切関知しないこととする。なお、その時の姿は、下着または水着まで
・最後に、M商事が約束を守らなかった場合の担保として、BJグループ側は本日これから2時間、このフロアの任意の場所で、知佳に好きなポーズをさせ、撮影することができる。そのデータの保持期間は半年間とし、その間M商事が約束を履行した場合には削除することとする。BJグループがそのデータを正当な理由無く公開・漏洩した場合は、M商事は断固たる措置を取る。

 「・・・ま、そういうことだ。分かったな、麻倉くん。これから2時間、今度はFRさんの取材に応じてやってくれ。幸い、今は幹部の殆どが外出中だから、まあ大丈夫だろう。」
関口はほっとした表情で知佳に言った。
「もし君が命令に従わないなら、会社側は君を解雇した上で、会社の名誉を毀損した件で告訴させてもらうからな。・・・その時には、社長賞の旅行で君が何をしたか、全て法廷で明らかにされるぞ。」

 「麻倉くん、関口課長に感謝するんだぞ。本当は部長、いや社長まで上げて大問題になってクビになるところを何とか救ってくれたんだぞ。このことを知っているのはここにいる8人だけだ。良かったじゃないか。」
広報課長の米山が恩着せがましく言った。

 「そ、そんな・・・」
知佳は絶句してその場に立ち尽くした。これから2時間、この嫌らしい目をした男の言うままになるなんて・・・ここは会社なのに・・・
「お、お願いです、せめて別の場所で・・・」

 「ふーん、なんなら一階のロビーで公開でやるかい、君のヌードのスペシャル撮影会?」
森谷がそう言って、知佳が屈辱に唇を噛むのを見ると、にやけた表情で言葉を続けた。
「それじゃあ、まずは挨拶代わりにストリップでもしてもららいましょうか?」
その言葉に、部屋の中の空気がふっと変わった。

 「え、そ、そんな・・・そんなこと・・・」
できるわけない、と言いたかったが、関口のわざとらしい咳払いが響き、知佳はそれ以上言えなかった。だけど、真っ昼間の会社の中でそんなこと・・・

 「まあ、自業自得だから諦めるんだな。こっちだって大迷惑なんだぞ。それから言っておくが、指示に従わない時間はカウントしないからな。ロスタイムはしっかり延長する約束だ。」
関口は知佳の全身を眺めながら威圧的に言った。

 そして否応無しに、知佳は再び恥辱ショーを演じなければならなくなった。今度の舞台は会社の最上階の幹部会議室、観客は、M物産の広報部と総務部の4名、BJグループから記者2名、カメラマン2名、の合計8名だった。

 そして服を脱ぐ前に、知佳はビデオカメラに向かって挨拶するよう指示された。もちろんそれは、強制ではない証拠とするため、知佳に自ら進んで痴態を晒すことを宣言させるものだった。
「・・・M商事の、麻倉、知佳、24歳です・・・スリーサイズは上から、82、59、84です・・・ミスK大にもなった私ですが、実は男の人に見られながら裸を見られるのが大好きなんです・・・い、今から、会社の、中で、ス、ストリップをします・・・」
知佳は震えた声でたとたどしくそう言うと、引きつった笑顔を作って正面の2台のカメラのレンズを見つめた。
 
 知佳がお洒落なダークブラウンのパンツスーツ姿で屈辱のセリフを口にするのを見ながら、森谷以外の7人の男達は驚愕していた。今は、カメラに向かってストリップの挨拶をしろ、と命令されただけなのに、そこまで屈辱的なセリフを自ら口にするなんて・・・普段の理知的で下ネタなど怖くて振れなかった美人社員が、羞恥に頬を真っ赤に染め、男に媚びるような嫌らしいセリフを自ら口にしているのだ。そしてこれから、高嶺の花だった知佳が目の前で全裸になるのを生で見ることができる・・・パソコンや携帯端末で見た全裸ゴルフ姿は見ていても、それは全く次元の異なる興奮だった。

 そんな7人の男達を、森谷は内心でせせら笑いながら見ていた。お前ら、知佳ちゃんが目の前で裸になるだけでそんなに興奮するなんて、可愛いもんだな・・・この前の社長賞旅行で、20人以上の男を相手にソーププレイして、アレをフェラとパイズリと素股でイかせたって知ったら、どんな顔するかな?(笑) それに、この女、澄ました顔して相当のドMだぞ・・・今だって、これからすることに興奮して、アソコがうずうずしている筈・・・


 ついに、知佳はスーツのボタンに手をかけた。(ああ、会社でまでこんなことをしなくちゃいけないなんて・・・)知佳は目の前がぼうっと霞むのを感じながら、スーツのボタンを一つずつ外して行き、片腕ずつ抜いて、脱ぎ去った。その時に、切なさそうな瞳で上目遣いにちらりと見て、男達を刺激するのも忘れなかった。薄地のベージュのセーターを盛り上げる双乳の優しい膨らみに顔見知りの男達の視線が集中するのを感じ、知佳は全身がかあっと熱くなるのを感じた。そして同時に、身体の奧がじゅんと熱くなるのを感じ、内心で少し動揺していた。う、嘘、嘘でしょ、そんなの。私、感じてなんか・・・

 「いいねえ、麻倉さん、とっても色っぽいですよ。さ、どんどん脱いじゃって。」
森谷が見透かしたようなにやにや笑いを浮かべながら言った。綺麗な顔で澄ましてても、やっぱりドMなんだね、知佳ちゃん。(笑)」


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