PART 67(b)

 ほんのコンマ数秒間の落下の後、知佳は床に敷かれた分厚いクッションの上に落ちた。とっさに身体をひねり受け身の体勢を取った知佳は、ぼすっという鈍い音と共に着地した。幸い、知佳の落下の直前にロープを持っていた男が手を緩め、低い高さから落ちたことと柔らかいクッションのお陰でけがなどは全くなかった。

 「えー、また画面が途切れたようですね。度々失礼いたしました。」
目の前に全裸ソックス姿で横たわる知佳を視界に捉えながら、中谷アナは何とか平静な声を出すことができた。しかし、大勢のギャラリーに見つめられる中で全裸を晒してしまった知佳の心境を思うと、胸が締め付けられるような思いを感じていた。そして、若い女性の裸身を遠慮なく見つめてニヤニヤ笑い合っている男達に憤りを覚えていた。(みんな、ひどいわ、あんまりよ・・・早く映像繋がらないのかしら・・・)

 知佳はしばらく、クッションに俯せになったままぼうっとしていた。先に落ちたトップは取り去られていたため、何も身に付けることはできない。(あ、いやっ、私・・・)裸の尻を隠したかったが、しばらく腕が反応しなかった。

 その間も中谷アナが中心となった会話は進んでおり、一般の視聴者にはいつもの放送と変わりないように映っている筈だった。まさか、いつも清楚な笑顔を見せていた知佳が信じられないほど過激なショーをしているとは知らずに・・・

 ようやく身体に力が入ってきた知佳は、身体を起こして左手を後ろに持ってこようとしたが、その瞬間、インカムから鋭い声が聞こえた。
『知佳ちゃん、駄目だよ、身体を起こしちゃ、カメラに映っちゃうよ。それから、もうすぐそこにセットを置くから、悪いんだけど、1分以内にそこからどいてくれるかな。』

 それは淡々とした声だったが、知佳にとっては悪夢のような命令だった。さっきはカメラと中谷アナの上にいたが、今はその下にいるので身体を起こしてはいけないというのはその通りだった。しかし、その状況で1分以内にここからどけと言うのは・・・皆が見ている前で全裸のまま、四つん這いになって歩いて見せろと言っているのと同じだった。

 躊躇っている知佳を見透かすように、ローターの振動が急に強くなった。うつ伏せの知佳が熱い吐息を吐き、白い裸身がびくんと震えた。インカムから別の男の声が聞こえた。
『知佳ちゃん、さっさと言うとおりにするんだ。逆らうなら、このままイってもらうよ。』
それは、どこかから知佳を見ているカメラマンの声だった。そしてその言葉が終わると同時にローターの振動が弱くなった。

 (ひ、ひどい、こんなの・・・)
逃れる術がないことを悟らされた知佳は、うつ伏せのままで手のひらで床を押して上半身を持ち上げ、膝を曲げて腰を浮かせていった。周囲の男達がどんな顔をして、知佳のどこを見ているのか、さんざん旅館で弄ばれた知佳には嫌と言うほど分かっていた。しかし知佳は、想像するだけでも恥ずかしいポーズを、生放送中のスタジオの中で晒すしかなかった。

 そして衆人環視の中、全裸にソックスとシューズ姿の美女による、恥辱の四つん這いポーズが完成した。後ろから見ると、知佳の尻の穴や秘裂までもが固く閉じられた脚の間からちらちらと見えていた。そして、あちこちから光を浴び、知佳の太股に透明な液体が何筋も流れているのが分かった。夢のような光景に真後ろにいたギャラリーは食い入るような視線を突き刺した。そして前から見るギャラリーは、知佳の真っ赤に上気した表情と、双乳が重そうに揺れる様子をじっくり堪能していた。

 (は、はやくここから出るのよ・・・あ、あんっ)
知佳はスタジオの片隅、自分の控え室に行くための扉に向けて四つん這いで歩き始めた。しかし、せめてもの抵抗で固く脚を閉じて擦るように歩いたため、余計にローターの振動を敏感に感じてしまうのが辛かった。その結果、知佳は唇を半開きにして熱い吐息を吐き、腰を切なさそうくねらせ、お尻を片方ずつクリックリッと振りながら歩く姿を見せることになってしまった。知佳ちゃん、最高っ、というひそひそ声が聞こえた気がして、知佳は頭の中が真っ白になっていくのを感じていた。

 しかし知佳を責める男達はその手を緩めることはなかった。四つん這いでのろのろとようやく数メートル進んだところで、再びインカムから非情な声が知佳に聞こえた。
『知佳ちゃん、なかなか雰囲気出てていいよ(笑)・・・だけど、ここからはもう少しサービスしてもらおうか。もっと脚を大きく、膝同士が肩幅よりも離れるように開くんだ。それから、バランスを崩したフリをして、その格好で一回転するんだ。・・・みんなによーく見てもらうんだ、お前のオマンコとケツの穴をな(笑)」

 (そ、そんなの無理よ、お願い!)
知佳は誰にともなく首を横に振り、四つん這いで脚を閉じたまま歩こうとした。
「あ、ああんっ・・・はぁぁっっ」
いきなり二つのローターを最も強く振動され、知佳は首を仰け反らせて喘ぎ、その場にぺしゃりと倒れ込んだ。

 『分かったか、ここで派手にいかせてよがりまくらせてもいいんだぞ。テレビによがり声が乗るくらいにな。』
男の低い声が静かに聞こえた。
『分かったら今すぐケツを突き上げろ。罰として、さっきよりも大きく腰を振って歩け。男が喜ぶようにな。』

 ・・・そしてその数十秒後、生放送中のスタジオでは、番組と並行して恐ろしく卑猥なショーが行われていた。四つん這いでこれでもかと脚を開いた知佳が、尻の穴と秘裂をこれ見よがしに見せつけて腰を振り立てながら進んでいるのだ。そして秘裂から太股にかけては遠目にもはっきりと分かるほどに愛液が流れ出していた。また、2つのローターは意地悪く、知佳が絶頂寸前になるまで追い立てては止まる、ということを繰り返していて、知佳は顔中に汗を浮かべて喘いでいた。前髪やほつれ毛が額や頬に貼り付いているのがまた淫靡さを醸し出していた。こんなこことが現実の筈がない・・・知佳はぼうっとしながら手足を動かし続けるしかなかった。

 知佳がスタジオの片隅の扉に近付くと、そこには大勢のギャラリーがいた。そして一部の者は露骨に好奇の眼で知佳の裸身を見つめたまま、週刊SJの知佳のヌードのページを開いて見比べていた。本物の方がどスケベってのもすごいなあ、とその男が呟くと、周囲のギャラリーがクスクスと笑った。

 『・・・知佳ちゃん、知佳ちゃん、もう立ち上がっても大丈夫だよ。』
知佳がその声に気付いたのは、スタジオを出る直前のことだった。ローターの振動もいつしか止まっていた。はっと我に返った知佳が四つん這いのままで周囲を見ると、多くのギャラリーが自分を取り囲んでいるのが分かった。ニヤニヤした顔、無言で視線を突き刺す者、軽蔑したような女の顔、困惑して頬を染めている女の顔・・・

 「い、い、いやあっ!」
もはやテレビカメラに映ることはないとようやく悟った知佳は、慌てて立ち上がろうとしたがよろけ、お尻だけを上に突き上げるようにして倒れてしまった。おおっ、すっげえ、やだ、最低っ、もうやだぁ・・・押し殺した歓声と嘲笑が知佳の周囲で起こった。知佳はようやく立ち上がると、全裸のままでよろよろと歩き、スタジオの外に出た。

 全裸のままで廊下に出た知佳は、事情を知らない者達が驚愕に眼を見開いて見つめる中、両手で胸と股間を辛うじて隠して走った。それでも数十名に裸身を晒してしまった後、知佳はようやく控え室に辿り着くことができた。

 『はい、お疲れさまでした。それじゃあ、携帯で生中継しながら、今自分がしてきたことを説明して、どんな気持ちだったか感想を言ってね。』
インカムからの男の声が悪魔のもののように知佳には聞こえた。
『それから、あそこがどれだけ濡れたか、思い切りアップにして見せてね。そしたらその後は、自分の手で思いっきりオナニーしてすっきりするところも中継して見せること。そこまでしたら、今日は帰っていいよ。』

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 「おいおい、あの麻倉くんが、ついにオナニー始めちゃったぞ。放送中のテレビ局で。(笑)」
「全く、仕方ないですな。放送中にストリップした挙げ句に職場放棄してオナニーに耽るとは・・・あーあ、あんなに気持ちよさそうにオッパイ揉んだりして。」
「それにしても、生放送中のスタジオの中であそこまで見事に素っ裸になるなんて、大したサービス精神ですな。」
「うん、やっぱり見られるのが心底好きなんだろうな、あんな可愛い顔して。ほら、生中継でオナニーさせられてるのに、あんなにうっとりした顔するか、普通?」
「ちょっと、ローターを使うように命令してやってくれ・・・あはは、本当に始めやがった、そんなに激しくクリちゃん責めちゃうなんて、しょうがない奴だなあ。」
「お、イくのか、知佳ちゃん? お、お、おおっ!」
大スクリーンに映し出された全裸の美女が、股を大きく開いてローターを秘裂に埋め、イきますっと宣言しながら絶頂に達した瞬間、都内の高級ホテルの一室は拍手と歓声に包まれた。

 「さて、それじゃあ来週はいよいよお別れだな。盛大にお別れ会を開いてやらなくちゃな。」
モニターに映った美女の裸身がびくびく震え続けているのを満足そうに眺めた沖田社長は、勢ぞろいしている役員連中に顔を向けて言った。
「しかし、いつも可愛い声を出してイくんだなあ、麻倉くんは。今の声と色っぽい表情でプレゼンをしてくれた方がよっぽどいいんだがな。(笑)」

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 週開けの月曜日、知佳は重い足取りで出社した。生放送中のテレビ局で、一体何百人に全裸を見られたのか、尻の穴や秘裂まで見えてしまったのか、濡れていることも分かってしまったのか、生中継をさせられた先には何人の男達がいたのか・・・分からないことだらけだったし、また、それを知るのはあまりにも怖かった。それに一般視聴者に対しても、布地の少ないビキニ姿でクライミングをしての痴態は嫌と言うほど晒してしまったのだ。休日中に家族や友人達からの心配の電話、メールを山ほど受け、知佳は自分のしてしまったことの大きさに後悔する気持ちで一杯だった。

 プロデューサーからの電話があったが、知佳はとても出る気になれなかった。するとプロデューサーは、今回のことは不幸な事故で、知佳を責める気は全く無いこと、あの後はスタジオの中にいた者全員の名前を把握し、一切他言しないことを誓わせたこと、写真を撮っている者はいなかったこと、を手短に留守電に吹き込んでくれた。そして、今後も出演を続けて欲しいと付け加えていた。


 プロデューサーの言葉はせめてもの救いだったが、知佳が辛かったのはネット上に大量の動画や写真が出回っていることだった。
クライミングをしている時の知佳はビキニで脚を大きく開き、意地悪く股間の部分をトリミングして拡大した写真が人気を集めていた。また、緩めのトップからは乳房が嫌らしく揺れている動画、オーバーハングで懸垂のようにぶら下がっている時の尻の揺れ捉えた動画、(二つのローターに責められて)知佳が顔を真っ赤にして唇を半開きにしている表情・・・知佳はパソコンの画面を見ながら、恥辱に震え続けるしかなかった。
 もちろん、ネットでは大歓喜状態になり、巨大匿名掲示板では、今までの知佳の取材記事の写真やテレビ出演時の動画と、今回のビキニ画像、週刊SJに掲載されたヌード写真、が詳細に比較検証された。知佳にとって幸運なことに、議論の大勢は、週刊SHのヌード写真は知佳本人のものでないという結論になった。それはヌード写真の方に様々な加工が施されているからであったが、そこまで見抜かれることは無いようだった。

 通勤電車や社内では好奇の視線に晒され、おい、あれがあの麻倉知佳だ、やだ、よく堂々と会社に来れるわねえ、などと聞こえよがしのひそひそ声を浴び続けることになった。それでも知佳が出社しているのは、脅迫者の男達と、会社の総務部それぞれからの命令によるものだった。

 しかし、知佳にとって意外だったのは、その日の朝の緊急会議で、「ビキニクライミング事件」が全く幹部達から非難されないことだった。それどころか、知佳が着ていたスーツやビキニが、休日中に記録的な売り上げを達成したことが報告され、何なら毎週やってもいいぞ、と社長の沖田に冗談混じりに言われたのだった。
 一方、各部に指示されていた対抗策はいずれもほとんど成果がなく、継続して対応が続けられることになった。知佳に対しては、妙な噂に負けることなく通常通りの勤務を続けることが改めて命令された。

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 その週の木曜日、知佳は再び幹部会議室にいた。今日は、知佳が立ち上げた新ブランドの現在の販売状況を報告しつつ、今後の新たな販売拡大施策を説明して了承を得て予算を獲得する、という非常に重要なプレゼンをしなければならなかった。マスコミ向けの発表会の日程から考えると、今日の会議で承認を得なければ、今シーズンの展開はできなくなるので、失敗は許されなかった。
 営業部長と商品企画部長、財務部長には根回しが済んでいるので、まず他の幹部に反対されることは無いだろうが、社長の沖田の反応だけが心配だった。今までも、最後の最後に社長の反対にあって中止になったり、変更を余儀なくされたことが何度もあったのだった。

 「どうした、麻倉君。震えるなんて君らしくないじゃないか!」
営業課長の鈴原が大きな声で言って知佳の肩をばんと叩いた。
「いつもの君らしく、落ち着いて堂々としゃべれば、社長も絶対OKしてくれるよ。」

 意外なほどに強く叩かれ、思わず知佳の脚がよろめいた。同時に、ちりん、と綺麗だが場違いな音が小さく響いた。
「や、やめてください、課長。大丈夫ですから。」
ソーププレイで全身を使って奉仕をさせられた相手の男に、知佳は明るい声で愛想笑いをするしかなかった。


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