PART 35(a)

 第2障害は比較的容易なものだった。緩やかに斜め右に曲がった先の125cmの垂直障害だ。ただ、その次の障害に向かうためには、着地後すぐに、馬を切り返すように鋭角に向きを変えなければならない・・・麻衣子はスピードに気をつけながら馬を飛越させた。馬は狙い通りに障害を越えて着地し、麻衣子はすぐに重心移動や脚の締め付けで馬に方向転換を指示した。

 おお・・・観客達の感嘆の声が耳に入り、麻衣子は少し気持ちよくなっていた。曲がる時にちらっと見たが、トップスはしっかりと乳房を覆っていた。
(これなら大丈夫。昨日と同じようにすればいいんだから・・・この先は少し難しくなるから、集中、集中・・・)

 麻衣子は第3障害、高さ120cmx125cm、幅130cmのオクサーも綺麗にクリアした。またもや観客達からの感嘆の呻きを感じ、会場の雰囲気がすっかり好意的になっているのを感じた。

 第4障害はさらに少し難易度の上がるものだった。垂直障害が距離を置いて並んでいて、高さは近い方から125cmと130cmだった。今までと異なり一度では飛び越せず、一旦着地して即座に次の飛越をしなければならない。

 第3障害の後、すぐに加速をしなければ間に合わない。しかし、馬が障害に対して真正面に進むようにしないと、馬が障害を回避するなど不従順につながってしまう・・・麻衣子は焦らず、しかしスムースに手綱をさばき、重心移動をし、脚で馬の腹を適度に刺激した。

 ザッザッ・・・麻衣子とすっかり信頼関係のできている馬は、素早く加速した。ここだ、というタイミングで麻衣子の指示を受け、すっと腰を沈めてタメを作り、後肢で一気に地面を蹴った。
 フワッと馬体が宙に浮くと共に、麻衣子は尻を鞍から浮かせ、馬の首に自分の顔がつきそうに上体を前傾した。膝を少し伸ばして馬の上で小さく立ち上がる形になり、馬と一緒に障害を飛び越えた。
 着地の瞬間、胸がぶるっと震えた。しかし、もちろんそんなことは気にせず、麻衣子はすぐに上体を気持ち後ろにずらし、次のジャンプの指示を与えた。
 2度めの踏切りも見事に決まり、麻衣子と馬は一体となって、障害の上を軽々と越えていった。

 おおっ、という感嘆の声が心地よく聞こえた。ただ、少しだけ違う雰囲気も感じたが、今はそんなことを気にしている場合ではなかった。ここまでは順調だが、障害はまだ7箇所も残っているのだ。次は第5障害、高さ120cmx125cm 幅130cmのオクサー、加速が必要だわ・・・麻衣子は滑らかな動きで馬と一緒に進んでいった。

 ・・・一方、ギャラリーの雰囲気は先程までとは微妙に、しかしはっきりと変化していた。第4障害で連続ジャンプした時、当然揺れる乳房に視線が集中していたが、2度目の着地の際に、トップスの左側が大きく跳ね、左の乳房の乳首の上まできてしまったのだ。

 (えっ、まさか・・・)(おい、見えてるよな、乳首?)(あ、よく見えなかった・・・)(気付いてないよな、あれ?)(きゃあ、こんなところで・・・可哀想(笑))(ちょっと、誰か教えてやれよ(笑))(やだ、最低っ(笑))・・・左の乳房の下半分と乳首を丸出しにして騎乗している美人アナウンサーを眺めながら、あちこちでひそひそ話が始まった。

 第5障害のオクサーは、さっきよりも高くなっているので、麻衣子は十分に加速して、思い切って馬をジャンプさせた。今回もタイミングは完璧、着地後の動きもスムーズにできた。しかし、今回は観客席から感嘆の声が聞こえない・・・何か、少し変な雰囲気・・・麻衣子は不思議に感じながらも馬を進めた。第6障害は高さ130cmの垂直障害でさほど難易度は高くないが、そこに行くためには右に二回、大きく曲がる必要がある。タイムは大丈夫だから、馬に負担を与えないように少し慎重に・・・

 麻衣子が最初に右に曲がる直前、大スクリーンの映像が切り替わり、馬を操る麻衣子を斜め左前から映し出した。当然、左の乳房の下半分と可愛いピンクの乳首がプルプル揺れる様子も競技場のギャラリー皆に共有された。

 おおっ、きゃあっ・・・奇妙な声が耳に入った麻衣子は、曲がり終えたところでちらりと下を見た・・・え、ま、まさか? トップスが大きく捲れ上がっているのが見えた。特に、左・・・ひょっとして・・・見えてる? しかし、馬を走らせている状況ではじっくり確認することはできない。嘘、きっと大丈夫よ、集中、集中・・・麻衣子は必死に自分に言い聞かせた。

”やっと気づいたの、麻衣子ちゃん”
突然、「声」が聞こえた。騎乗の最中でも、脳内に直接届く言葉はクリアだった。
”残念だけど、ピンクの小さな乳首、見えちゃってるよ。さっきの連続ジャンプの時、おっぱい揺らし過ぎたから、ポロリしちゃったみたいだね(笑)”
それは音声で発せられる言葉ではないため、一瞬のうちに麻衣子の意識の中に届いた。
”さっき、大スクリーンにアップで映ってたよ。だから女の子達が悲鳴をあげたわけ”

 「う、嘘っ!」
麻衣子は思わず、悲鳴のような声をあげてしまった。その声はマイクを通じて競技場に響いた。

 切迫した表情とその声で、ギャラリーは皆、麻衣子が乳首を露出したことにようやく気付いたことを悟った。その慌て方と悲鳴が可愛らしく、男たちは皆、一気に嗜虐心を刺激された。朝のニュースの時のトラブルの動画もさんざん見たけど、やっぱり麻衣子ちゃんが恥ずかしがる顔って、最高だな・・・

 (そ、そんな!)
そう言えばさっきから、会場の雰囲気が変わった気がしていた。まさか本当に、衆人環視の中、乳首を見られながら馬に乗っているの!?・・・麻衣子はあまりのことに口をパクパクさせた。しかし、走っている馬を止めることはできない。二番目のカーブがすぐそこに迫っているのだ。
(違う、私に失敗させるために、「声」が嘘をついているのよ!)
麻衣子はそう言い聞かせ、第6障害に心を集中しようとした。

 ・・・が、それはほんのコンマ数秒、遅かった。麻衣子が飛越の指示を出したのは、本来の踏切タイミングの僅か後になってしまった。その結果、寸詰まりのようになった馬は障害の前で急ブレーキをかけて腰を沈め、後肢で地面を蹴った。

 何とかふわっと馬体が浮き、麻衣子も身体を前傾させた。
(お願い、越えて!)

 麻衣子の必死の祈りが届き、馬体は障害に引っかからずに越え、地面に着地した。しかし、近距離から見るに飛び上がったため、着地もバランスが悪く、衝撃の大きいものとなった。騎乗者である麻衣子の身体も、強い反動を受け、手綱と両脚で必死にバランスを取らなければならなかった。

 次の瞬間、おおおおっ、という歓声と、きゃああっ、という悲鳴がさっきよりも遥かに大きく響いた。麻衣子の身体が馬の上で弾んだ結果、トップスがさらに大きく跳ね上がり、二つの乳房が丸出しになってしまったのだ。

 「きゃ、きゃああっ!」
さらに次の瞬間、今度は競技場中に麻衣子の悲鳴が響き渡った。乳房が露出してしまった! みんなが見ているのに!!・・・麻衣子はパニック状態になり、馬のことも考えずに手綱を思い切り引っ張った。身体が勝手に動き、両脚でバランスをとっているため、落馬することはなかった。

 「ブヒヒィッ」
後ろから思い切り引っ張られた馬は、抗議の悲鳴を上げて止まった。信頼していた騎乗者に裏切られ、馬もパニック状態になった。一旦止まって首を振った後、馬は騎乗者を振り落とそうと、その場で前肢と後肢を交互に縮めては伸ばした。

 「い、いやあっ!」
興奮している馬に振り落とされたら重大事故になりかねない・・・麻衣子は悲鳴を上げ、下から突き上げる馬の動きに抗い、両脚で馬体を締め、両足で鐙にしっかりと踏ん張った。

 麻衣子がなかなか落ちないと悟ると、馬は今度は、その場でくるくると回転を始めた。
「きゃあ! お願い、止まって、ごめんなさい!」
振り回されながら必死に踏ん張る麻衣子の声が競技場に響いた。

 ・・・すっかりギャラリーと化している、大会スタッフ・出場選手・観客達は呆気に取られてその光景を見つめていた。それは危ない事態でもあったが、同時に、この上なく刺激的な見世物だった。暴れ馬の上で為す術もなく振り回される美女・・・しかも、トップスはその役目をもはや果たさず、露出した乳房がブルブルと上下左右に震えているのだ。麻衣子は両手を手綱から離すことができないので、その白い乳房、淡いピンクの乳輪、頂点にちょこんと乗っている可愛い乳首・・・その全てが、競技場にいる全員の視界に晒されていた。大スクリーンにも、麻衣子とその馬の姿がちょうど枠に収まるように映し出されていた。

 麻衣子が必死になだめた結果、馬はようやく落ち着きを取り戻した。それは時間にすれば、わずか十数秒のことであったが、その間に競技場の雰囲気は完全に変わっていた。若い女性が馬の上で双丸出しで裸踊りをさせられるのを見せつけられては、それも無理はなかった。しかも、馬がご丁寧に何回転もしたため、麻衣子の白く柔らかそうな乳房は皆の脳裏に焼き付いていた。また、跳ね上がった時に突き出される尻も魅惑的だった。激しく何回も下半身を跳ね上げられて、薄いボトムが尻の溝に食い込み、真っ白なお尻の肉が半分近くはみ出していた。もはや、ほとんど全員のギャラリーの視線が、麻衣子の見てほしくない部分に遠慮無く注がれていた。

 「・・・い、いやっ・・・」
麻衣子は自分の痴態に改めて悲鳴を上げた。慌てて手を手綱から離し、両手でトップスの前のカップの部分を掴み、ぐいっと引き下ろした。ようやく、乳房がカップの下に戻った。
「・・・う、嘘、嘘・・・」
今度は、掠れたような弱々しい声がマイクに乗って競技場に響いた。

 「可愛いおっぱい、見せてくれてありがとー!」
観客席から初めて野次が飛び、競技場がどっと湧いた。
「あのさー、お尻も結構食い込んでるよー」
「あーあ、黙ってればいいのに」
他の男達の声も続いてまた笑いを誘った。ギャラリーの意地悪な雰囲気がさらに露骨になった。

 「い、いやっ!」
麻衣子は頬を真っ赤に染め、両手を後ろに回した。確かに、ボトムの薄い布がお尻の溝に食い込み、尻肉が半分近く露出していた。麻衣子は全身がかあっと熱くなるのを感じながら、ボトムの端に指をかけ、くいくいっと引っ張り、やっとお尻を隠すことができた。

 ”どうしたの、麻衣子ちゃん、演技の続きをしなくちゃ”
脳裏に「声」が響いた。
”今のは不服従扱いにしなくていいから、頑張って。今から続きをすれば、ぎりぎり基準タイムに間に合うよ”

 それは、恥辱の馬術ショーの続きを促す、非情な命令だった。


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