PART 38(a)

 え?・・・観客席、大会スタッフ、出場選手達が呆気にとられた。公共放送で週末の朝のニュースを担当している有名美人女子アナウンサーが、自らトップスを取り去って上半身裸になり、乗馬の演技を続けると言っているのだ。顔を真っ赤にして身震いしている姿は、とても露出癖があるように見えないのに・・・

 地面に落ちたトップスを拾うため、大会スタッフの男が馬の近くまで駆け寄った。
「あの、大丈夫、ですか?・・・模範演技ならもう十分ですから、無理なさらなくてもいいですよ」
男の声は、麻衣子の身につけたマイクに拾われ、競技場に響いた。

 しかしその思いやりの言葉は、今の麻衣子にとって逆効果だった。そんな風に言われてしまったら、胸を露出させてまで演技を続ける理由がなくなってしまうではないか・・・麻衣子は内心で恨めしく思った。麻衣子は全身がかあっと熱くなるのを感じながら、にっこりと笑顔を浮かべた。
「大丈夫です。最後まで、やらせていただいてもよろしいですか?」
これではまるで露出狂だ・・・麻衣子の笑顔は、どこかひくひくとして不自然だった。

 "麻衣子ちゃん、結構時間ロスしちゃったね。急いだ方がいいよ"
不意に「声」が囁いた。
"スタッフがビキニを取りに来た時間はノーカウントにしてあげるから、あと障害9個、頑張ってね。おっぱい丸出しで(笑)"
「声」の主は明らかにこの状況を楽しんでいた。

 (本当に、全部の障害をクリアしたら、なんとか、してくれるんですよね・・・)
麻衣子は「声」の主を恨みながらも、今はすがるしかなかった。


 しばらく間が空いた後、麻衣子はようやく馬に指示を出す体勢になった。しかしそれは、紐ビキニのボトムだけを身に付けた姿で大股開きになって馬に跨がり、両手で手綱を握って双乳を皆の視界に晒すことでもあった。

 「・・・失礼しました。それでは、続けさせていただきます・・・」
ギャラリーがからかうのも忘れて注視する中、麻衣子は演技の続きを開始した。

 第3障害は、高さ120cmx125cm・幅130cmのオクサーであり、今の位置からそちらに向かうには、少し進んでから鋭角に左ターンし、長方形の競技場のうち、入り口から遠い方の単辺に沿って走る必要があった。

 すなわち、麻衣子は上半身裸で馬に乗っている姿を、観客達の至近距離で晒すことになった。おお、すげー、きれい・・・、きゃあっ・・・大声で騒ぐ者はなく、抑えた声があちこちから起きた。ヘルメットとビキニのボトムと乗馬ブーツだけで馬を華麗に乗りこなす美女の姿は、どんなに見ても飽きるものではなかった。しかも、女性だったら絶対に見られたくないであろう乳房を、千人もの視線に晒しているのだ。可愛い顔を燃えそうなほどに真っ赤に染めちゃって、今、どんな気持ちなんだろう・・・

 ザッザッザッ・・・軽快に駆ける馬の上で、背筋を伸ばした麻衣子の乳房が上下に大きく揺れた。若干S字に胸を反らす姿勢のため、見てくれと言わんばかりに乳房を突き出さなければならないのが麻衣子には辛かった。右サイドの至近距離の観客の視線はもちろん、自分を360度取り囲む観客やスタッフ達の視線が、自分の乳房と股間と尻に注がれるのを感じ、麻衣子は一瞬、バランスを崩しそうになった。ああ、私、大勢の人に見られながら、こんな恥ずかしい姿で・・・麻衣子は何度も同じことを考え、その度に身体を小刻みに震わせ、身体の奥がじんと熱くなるのを感じた。

 麻衣子にとってはあまりにも長く感じられたが、第3障害の踏切地点まではわずか7〜8秒だった。第3障害は競技場の四つ角に当たる箇所にあり、麻衣子は進入角度に気を付けながら、慎重に馬に指示を出し、オクサーを軽々と越えていった。身体が震えるほどの羞恥を感じながらも、身体が勝手に動いていつもどおりに飛越できるのはさすがだった。

 おおっ・・・抑えたどよめきと、パチ、パチ、パチという散発的な拍手が起きた。観客達にとっては、障害ごとに自分から見える角度が変わり、麻衣子のトップレス乗馬姿を様々な角度で堪能できるのがたまらなかった。また、大スクリーンには麻衣子の姿がアップで映し出され続けていたが、それはなぜか意地悪なアングルが多く、麻衣子の上半身のアップやジャンプの時の後ろ姿のアップも多かった。そのため、競技場の生の麻衣子の半裸姿と、スクリーンにアップになった姿のどちらを見るか・・・ギャラリーの目は忙しく両者の間を行き交っていた。

 あと8つも障害がある・・・全部をクリアするまで、大観衆の前で乳房を晒し続けなければならない・・・麻衣子は目の前がぼおっとなるのを感じて、慌てて小さく首を振った。第4障害はすぐそこだ。今度は高さ125cmと130cmの二つの障害を一旦着地しつつ連続で越えなければならないのだから、最初の飛越は高さよりも加速をしっかりとる必要がある・・・乳房が激しく震える羞恥を堪え、麻衣子は馬に加速と飛越をタイミングよく指示した。

 最初の垂直障害は狙いどおり、速度を保ったままで着地し、すぐに次の飛越に移ることができた。フワッと人馬が宙に浮き、さっと二つ目の障害を越えていった。

 「麻衣子ちゃん、ケツに食い込んでるよ!」
着地の直後、下品な声が聞こえた。

 (・・・!)
鍋島の声に、麻衣子はびくっと反応し、馬を慌てて止めた。ブモッと馬が不満げに鼻を鳴らした。露出した乳房ばかりに気を取られ、お尻に水着が食い込むのを忘れていた・・・麻衣子は馬を止めて、左腕で双乳を庇いつつ、右手を後ろに回して下ろしていった。

 「きゃ、いやっ」
麻衣子は思わず悲鳴を漏らした。ボトムは深く尻の溝に食い込み、尻肉がほとんど剥き出しになっていた。麻衣子は右手を尻の溝に沈め、ボトムの端を掴もうとした・・・

 「ブヒヒィィ!」
その瞬間、馬の苛立ったような鳴き声が響いた。馬は強く後肢で地面を蹴り、後躯が大きく跳ね上がった。

 「あ! いやあ!」
麻衣子は慌てて両腕で手綱を掴み、馬から振り落とされないようにしなければならなかった。
「待って、落ち着いて!」
麻衣子が必死に馬に話しかけ、なだめた。乳房と尻肉が露出していることを気にする余裕はなかった。

 もちろんそれは、ギャラリーにとって愉しい眺めだった。期せずして、半裸の美女のロデオショーを見ることができたのだ。そして、一つのことに麻衣子が気づいてないことが一層ギャラリーを喜ばせていた。
 それは、馬が跳ねた瞬間、ボトムの端を掴もうとしていた麻衣子の手がずれて、ボトムの紐を掴み、引っ張ってしまったらしいことだった。麻衣子の体が跳ねる度に、ボトムが肌から離れていくのが刺激的だった。今の麻衣子は、上半身裸であるだけでなく、右の尻も丸出しになっていた。

 馬が落ち着きを取り戻すまでの十数秒、ギャラリーは麻衣子の白桃のようなお尻をたっぷりと堪能した。大スクリーンには、暴れ馬にしがみつく麻衣子の姿が、あちこちの角度から映し出されていた。

 麻衣子がそのことに気づいたのは、馬が落ち着いて数秒たってからだった。皆の視線がなぜか、右のお尻に集中している気がする・・・そうだ、お尻にボトムが食い込んでいたんだ・・・慌てて右手を後ろに下ろした麻衣子はそこで、ボトムの右サイドが大きく捲れていることに気づいた。どうして!? 紐がほどけてしまっている!・・・皆にお尻を見られている!!

 「きゃ、きゃあぁ!」
麻衣子は思わず悲鳴を上げ、大きく身震いした。乳房だけでなくお尻まで大観衆の中で露出している・・・さらに、このままでは女性が絶対に見られたくない部分まで見られてしまう・・・みんな、それを期待して、じっと黙って私のことを見つめていた・・・
「い、いやあっ!」
麻衣子は恥も外聞もなく悲鳴を上げ続け、いやいやをするように首を振った。左腕を胸から離すと、また乳房が露出したが、今は気にしていられない。早く、ボトムを直して、紐を結ばないと・・・麻衣子は両脚で馬の腹をギュッと締めて安定を図りつつ、鋭く身体をひねり、手を下に伸ばそうとした。

 「ヒヒーン!」
その瞬間、馬の鳴き声が響いた。前肢と後肢をそれぞれ交互に曲げ伸ばしして身体を振り、上に乗っている麻衣子を振り落とそうとした。

 「きゃあっ!」
麻衣子の悲鳴がまた競技場に響いた。手綱を離した途端に馬体の前後が交互に上下し始めたのだ。
「ごめんね、ごめんなさい!」
馬を苛立たせてしまったことを謝りながら、麻衣子は慌てて両手を手綱に戻した。揺れる乳房も、露わになった右のお尻も、今はどうすることもできなかった。身体が激しく上下に揺れて視界も定まらず、馬の荒い息づかいと地面を蹴る音しか聞こえなくなっていた。
 
 息を呑んで見つめていたギャラリーは、さらに楽しいショーを目にすることになった。柔らかそうな白い乳房が激しく揺れるのも魅力的だし、丸くて真っ白なお尻が徐々に露わになってくるのもたまらなかった。まだ、お尻の溝に食い込んだボトムがなかなか外れて来ないのが残念だった。馬よ、もっと暴れてくれ・・・ギャラリーの男達のほとんどが不謹慎な願望を抱いていた。

 馬はその場で十秒ほど暴れた後、不意に動きを止めた。一瞬、麻衣子がほっとして、馬に話しかけた。
「ごめんね、どうどう・・・」
(お願い、落ち着いて・・・)紐の外れたボトムが気になったが、まだ手綱から手を離すことはできなかった。

 ブッブッブッ・・・馬はしばらく鼻を鳴らしながら、徐々に落ち着きを取り戻していった。ギャラリーの男達の一部はあからさまに落胆の色を浮かべた。もっと頑張れ、もう一回・・・

 すると、馬が急にいきり立ち、ヒヒィ、と鳴き声をあげた。ブルッと身体を震わせた後、いきなりまっすぐに走り出した。

 「きゃ、きゃあぁ!」
麻衣子は予想外の事態に身体が仰け反りそうになり、必死に手綱を握った。上体を前に倒し、馬の加速に負けないようにした。
「どうしたの、お願い、止まって」

 しかし馬は止まることなく、真っ直ぐに走り続け、入り口付近まで来ると、ほとんど減速しないまま、左斜め後ろに向けて鋭角に曲がった。

 「きゃああ!」
麻衣子は遠心力で身体が右側に大きく倒れ、腰が鞍からフワッと浮いた。その勢いで左足が鐙から外れて、大きく開いた。

 「あ、いやああ!」
麻衣子は腰を浮かせて左足が地面と水平になるくらいまで開きながら、馬につられてその場で半回転することになった。右足を思い切り踏ん張り、両手で手綱をしっかり握ることで、なんとか馬から振り落とされずにすんだ。

 ・・・麻衣子はその時、意図せずストリップの続きを演じていた。紐がほどけて右側がめくれてしまったボトムは、左のお尻にしっかり貼りついてなんとか落ちないでいたのに、腰を浮かせて左足を伸ばす形で開脚して回転した結果、ボトムがウエストの辺りから剥がれてしまったのだ。支えを失ったボトムは、回転の遠心力と急激な空気の流れの影響で、バタバタとひらめきながら、肌からどんどん離れていたのだ。

 馬は130度ほど左に回転したところでいったん止まった。ブフブフッといきり立ったように鼻を鳴らし続け、馬体は小刻みに震え、呼吸は荒かった。

 ようやく脚を閉じて鞍に着座できた麻衣子だったが、すぐに異変に気づいた。ウエストを締め付ける感覚がまるでないのだ。そして、すっかり静まり返った大観衆の様子を変に思い、麻衣子は顔をひきつらせながら下を見た。まさか・・・

 「い、いやあぁぁっっ!」
ボトムがすっかりめくれて、股間と尻の溝をなんとか覆うだけになっていたことを知り、麻衣子が悲鳴を上げた。お尻はもうほとんど丸出しになっていた。


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