PART 40(a)

 「だ、だめっ、見ないでっ!」
少しだけとは言え、女性器まで晒していることはとても耐えられるものではなかった。麻衣子は思わず悲鳴をあげ、ぎゅっと太ももを締めようと力を込めた。

 「ヒヒィ!」
麻衣子の悲鳴と足での刺激に反応して、馬がブルッと身体を震わせ、いなないた。同時に、いきなり動き出し、次の障害に向けて駆け始めた。

 「あ、い、いやぁ! ち、違うのっ!」
麻衣子は悲鳴をあげながらも、両手で手綱をしっかり握るしかなかった。全裸で大股開きの姿を晒していると思うと、羞恥は先ほどの比ではなかった。

 ”あーあ、さっきと同じ展開だね、馬を刺激しちゃって゛
「声」が脳裏に聞こえた。
”あ、ジャンプする時は、お尻の穴、閉じた方がいいよ。さっきはぱっくり開いてるのが皆に丸見えだったから(笑)

 その後の30秒間、麻衣子にとっては死ぬほど恥ずかしく、ギャラリーにとってはこの上なく愉しいショーが披露されることになった。

 麻衣子は今度は、ヘルメットとブーツ以外は全裸であることを知りながら、千人もの大観衆が見守る中で演技を行い、何度も飛越しなければならなかった。飛越の際に腰を鞍から離して上げなければならないのがあまりに恥ずかしかった。また、飛越の度に、「声」が聞こえ、お尻の穴が開いたこと、そこに大勢の観客の視線が集中していることを意地悪に教えられた。麻衣子はいくら聞きたくなくても、脳裏に直接閃く声を防ぐことはできず、恥辱にまみれながら演技を続けるしかなかった

 また、馬の動きは麻衣子の制御が完全には効かず、たびたびバランスを崩した。ある時は、ジャンプの際に馬体が傾き、麻衣子は片足が鐙から外れ、足を大きく上げて、股を開いてしまうことになった。

 観客席の雰囲気は当初と異なり、麻衣子に同情する者はほとんどいなくなっていた。大学時代には馬術会のアイドル的存在で、今は公共放送で清楚な美人アナウンサーとして人気の本澤麻衣子・・・皆にとって、高嶺の花だっただけに、今の痴態とのギャップがたまらなかった。素っ裸になったのは事故かもしれないけど、それでも演技を続けるなんて普通はありえない・・・きっと、自分の身体に自信があるんだろう、ひょっとして、露出狂だったのか・・・

 ギャラリー達の視線は、もはや遠慮なく、麻衣子が見てほしくない部分に注がれていた。白いおっぱい、綺麗だよなあ・・・乳首可愛い!・・・柔らかそう・・・弾力あるよなあ・・・うわ、あんなにケツ上げちゃって、お尻丸見え(笑)・・・穴まで見えてないか?・・・大股開きで四つん這いポーズ!・・・馬術会のアイドルだったのに、エロ過ぎ(笑)・・・これ、何の模範演技なんだ?(笑)・・・すっげぇ、大画面にドアップ! 完全にAV!・・・もう、いい加減にして欲しいわよね!・・・皆、口々に感想を言ったため、競技場は演技中とは思えない喧騒に包まれた。

 「本澤さん、すぐに演技を中断してください!」
さすがにまずいと思ったのか、大会スタッフが制する声が会場に何度も響いた。しかしそれも、千人の観客の野次とからかいの声に紛れ、麻衣子の耳に届くことはなかった。馬は荒っぽくコースを駆けまわり、全裸の麻衣子は、手綱を握り、必死に馬にしがみつきながら、次々に現れる障害をクリアすることで手一杯だった。

 約30秒間に渡った全裸乗馬ショーは、意外な形で終わることになった。最後の障害である、垂直障害・オクサー・オクサーの3連続障害を超える際に、麻衣子が宙でバランスを崩してしまったのだ。その結果、最後のオクサーのバーを2つ落とした形で、2度めの「模範演技」は終わることとなった。

 ゆっくりと止まった馬の上で、全裸の麻衣子は茫然としていた。そ、そんな・・・せっかく最後まで、恥ずかしさを必死に堪えて、頑張ったのに・・・麻衣子はそこではっとして、両手を手綱から離し、左腕で双乳を、右手で股間を庇った。さっきまでは馬に振り落とされないよう、障害で失敗しないよう必死だったが、ここにいるみんなが、私の裸を見ていた・・・改めて恥ずかしさが蘇り、麻衣子の身体全体がピンクに染まっていった。

 パチ、パチ、パチ・・・会場の一部から起きた拍手があっという間に広がり、競技場全体が拍手喝采に包まれた。素っ裸で馬に跨がり、裸で演技をしてしまったことを恥じる顔が大スクリーンにアップで映され、一気に観客達の心を掴んだのだ。あれだけ裸で走り回り、大股開きでジャンプしていたくせに、と嘲る声もあったが、ごく一部だった。麻衣子の顔を見ると、本気で恥ずかしがっているのは明らかだった。何か、人に言えない事情があるのではないか・・・そうに違いない・・・そんな同情の雰囲気が醸成されつつあった。

 「困りますよ、本澤さん・・・」
すかさず、大会スタッフの男が馬の近くに駆け寄ってきた。
「裸でこんな・・・なぜか、スクリーンに映るのも止められないし・・・」

 (!)
麻衣子はその言葉ではっとした。スタジオでのハプニングの時も、カメラマンが同じようなことを言っていた・・・もしかして、それも「声」のせいなのでは?・・・

 ”もちろんそうだよ。麻衣子ちゃんの綺麗な身体、みんながもっとはっきり見たがってたから、ご期待に応えてね”
すかさず脳裏に「声」が聞こえた。
”身体っていうか、おっぱいとお尻とアソコだけどね(笑)”

 (ふ、ふざけないで!)
麻衣子は内心で怒りに震えた。
(人前でこんなことさせるなんて、ひどい!)

 「あの、本澤さん?」
大会スタッフの男が再び声をかけた。
「申し訳ありませんが、馬と一緒に、すぐに退場していただけますか? 大会運営事務局としては、これ以上の演技は認められません」
公共放送の人気の女子アナに裸で演技をさせたことが問題となったら、彼らにとってかなりまずいことになる・・・男の顔にはそう書いてあった。また男は、わざと競技場に響くように、マイクに乗せて話していた。

 「す、すみません・・・」
もはや麻衣子は頭の中が真っ白になっていた。朝の晴天の下、千人もの人に見られながら、素っ裸で馬に乗っている・・・しかも、それを叱られて・・・これでは私が、変態の露出狂みたい・・・

 ”いや、『露出狂みたい』じゃなくって、客観的に見たら、完全に露出狂じゃないでしょ、これは”
意地悪な「声」が脳裏に聞こえた。
”それに、結構気持ちいいんじゃない、みんなにすっぽんぽんを見られて・・・ほら、後輩の男子達なんか、全員ガン見してるよ、憧れの先輩のおっぱいとお尻とアソコ(笑)”

 あまりの羞恥の連続にどこか麻痺して、ぼうっとしていた麻衣子の顔がさっと強張った。昨日の飲み会で楽しく語りあっていた後輩・・・みんなが、私の今の姿を見ている!
(いやあっ! お願い、もう許して! 気持よくなんか、なっていません!)
麻衣子は両腕で乳房と股間を隠したまま、両脚を締め付け、片足で軽く馬の尻を蹴り、重心を前に動かした。とにかく、この場から逃げたかった。こうしている間にも、360度あらゆる方向から突き刺さる視線が痛いほど感じられた。股間をこじ開けるように食い込むような力を感じ、麻衣子は下半身を小刻みに震わせた。

 しかし、馬はぴくりとも反応しなかった。さっきからおかしいことばかりだった。馬は基本的に臆病であり、自ら高い障害やオクサーに向かって行ったりしないはずなのに、さっきは勝手に走っていったし、今度は命令を完全に無視するなんて・・・

 ”だから、この馬とは気が合うって言ったじゃん。麻衣子ちゃんって頭いいのに、パニックになるとぼけちゃうんだね。・・・どうでもいいけど、可愛いお尻はさっきから丸出しだね、スクリーンに映ってるよ”
「声」は麻衣子の窮状を明らかに楽しんでいた。
"だけど、約束は守ってもらうよ。全部の障害をクリアしたら終わりだったよね?"

 (そんな! これ以上、演技なんてできない・・・)
麻衣子は全裸で馬に跨がりながら、もうどうしていいか分からなかった。どんなに指示を出しても馬は動こうとしない、千人の大観衆の前で素っ裸で演技してさんざん恥ずかしいところを見られてしまった、大会事務局には退出を命令されている・・・それなのに、もう一回この格好で演技なんて・・・麻衣子は発作的に右足の先を振り、鐙から外そうとした。馬が動かないなら、降りるしかないと決心したのだ。その場合、全裸に乗馬用のヘルメットとブーツだけの姿で衆人環視の中走らなければならなくなる・・・麻衣子は唇を噛み締め、羞恥をこらえた。仕方ないのよ、もう一回演技をするよりましなんだから・・・

 しかし、麻衣子の思惑はいきなり挫かれた。右足が思ったように動かず、鐙から外れないのだ。
(あれ、あれ、どうして?)
麻衣子は何度も足を振ろうとしたが、うまくいかなかった。

 あのー、と困惑した大会スタッフの男の声、奇妙な動作にざわめく観客のひそひそ声、露わな肌を撫でる風の感触、穏やかな日の光の暖かさ・・・全てが麻衣子の羞恥を煽っていた。

 まさか・・・麻衣子ははっと思い出した。「声」は主に心を読むのが得意だけど、他にも少しは力がある・・・「何かをさせないことはできる」と確か言っていた・・・

 "やっと気づいた? 絶対に逃げられないんだから諦めるんだね、麻衣子ちゃん?"
すかさず「声」が聞こえた。
"もう一回、すっぽんぽんの大股開きでジャンプする姿をみんなに見てもらうんだよ。お尻の穴も、アソコも、大スクリーンにどアップで映してあげようか? あ、スローモーションで映してあげようか?(笑)"


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