PART 49b

「え、そんな……」
 麻衣子は絶句した。さっきまでは、実は着衣で放送している、という建前があったから、全裸でも必死に羞恥をこらえ、普通に振舞っていたのだ。それなのに……しかし、有川を初めとするスタッフ達もそんなことは分かった上でやむないと判断したのだろう……でも、こんな……

「えー、犯人から、再び本澤アナへの命令が届いております。本澤さんから読んでいただきます」
 栗山のやや緊張した、しかしきっぱりとした声が響いた。それは視聴者へ説明する形を取っていたが、麻衣子への言葉に違いなかった。栗山は隣の麻衣子にちらりと視線を向けると、無言でメッセージを送った。

 大丈夫、きっと何とかするから……有川も栗山も、同じメッセージを伝えていた。とにかく今は、みんなを信じるしかない……麻衣子は恥辱に震えながら、裸身を庇っている両手を下ろしていった。
「えー、私、本澤麻衣子は今、全裸で放送を行っております。先ほどまでは、これが放送ジャックされた加工映像であると嘘の説明をしていました。大変失礼いたしました……」
 ネットモニター画面には、青い文字が次々に表示されていて、麻衣子はそれを読み上げるしかなかった。いや、こんなの、ひどい……
「全国の視聴者の皆様、お見苦しい姿をお見せしてしまい、大変申し訳ありません。ですが、犯人より脅迫されており、視聴率をいつもより上げるよう命令されていますので、どうぞテレビを切らないでしてください。また、友人知人の方に、ぜひ放送を見るように教えてあげてください」

 全裸の身体を隠すことなくテレビカメラの前に晒し、見てくれるようにお願いさせられる清純女子アナの姿は、あまりにも非日常的かつ魅力的だった。頬は真っ赤で、全身がほのかなピンクに染まり、絶頂の余韻で少しうつろな瞳、あちこちからのライトに照らし出される輝くように白い肌……美しい乳房も、無毛の股間も、全てが妖しい魅力を醸し出していた。

 全裸でテレビカメラに向けて微笑むことを強要されている麻衣子は、ふと時計に目を向けた。7時10分……永遠のように思えた恥辱の時間だったのに、あと20分もある……気が付くと、新しい青文字が表示されていた。麻衣子はそれを読んで目を見開いた後、強ばった表情をテレビカメラに向けた。
「本日の番組内容を変更させていただきます。この後の『週末ひとり旅』のコーナーは、『本澤麻衣子の全身散歩』とさせていただきます。麻衣子のどこが見たいか、どこでもお応えしますので、どうぞネットでご要望をお聞かせください……」
(お願い、変なことさせないで)
 麻衣子の本心が同時にピンク字で表示され、ネット視聴者たちの嗜虐心を最高潮にしてしまった。

 7時15分。全裸のままの麻衣子は、再びМ字開脚姿をテレビカメラの前に晒していた。さっきと違うのは、麻衣子がテレビカメラに向けて、にっこりと笑顔を浮かべていることだった。さらに、その両手は、秘裂の両側に当てられていた。

 にっこり笑顔で全身の各部を全て紹介すること――それがネット視聴者の意見を集約した「声」の命令だった。
 画面上のテロップには、「本澤麻衣子の全身散歩(脅迫されて強要されています。お見苦しい点はご容赦願います)」と表示されていた。

 つまり、脅迫されているとは言え、美人女子アナのストリップショーがN放送公認で、地上波で開催されているのだった。麻衣子にとって唯一の救いは、今が視聴者の少ない土曜日の早朝ということだったが、ほんの気休めにしかならなかった。ネットに拡散されてしまったら、永久に消すことはできないのだ……

 しかし、今の麻衣子にできるのは、「声」の要求に従い、自分の身体の全てを全国の視聴者に披露することだけだった。麻衣子は絶望的な気持ちになりながらも、しっかりとテレビカメラを見つめた。今の麻衣子を支えているのは、有川の大丈夫、という言葉への僅かな希望と、アナウンサーとして番組を終わりまで放送しなければならないという使命感だけだった。
(あと15分で全部、終わるんだから……)

 それからの15分間は、麻衣子にとっては羞恥地獄そのものであり、邪な気持ちの男性視聴者たちにとってはこれ以上ない至福の時間となった。

「全国の視聴者の皆様、いつも応援ありがとうございます。本日は、感謝の気持ちを込めまして、本澤麻衣子、ストリップショーを行っております。」
 顔全体を真っ赤にしながら、麻衣子はテレビカメラに向かって笑いかけた。M字開脚の全裸の身体は小刻みに震えていて、麻衣子の羞恥を雄弁に物語っていた。今話している言葉は、「声」の指示によるものであり、刻々とモニター画面に青い文字が表示されていた。
(ひどい、みんな……こんなことをさせるなんて……)
「……現在、正体不明の犯人からの指示に従わなければならない状況のため、このような放送を行っております。これから私の性器の中を無修正で放送しますが、犯人からの強要によりやむを得ず放送することを、あらかじめご了承ください……」
 <はーい!><了承したよ!><頑張って!><マイマン大公開!>というネット視聴者の声が響き、麻衣子は少し顔を歪めた。事前のお断りという体裁だが、私に、女性が絶対に見られたくない部分をこれから開陳することをわざと宣言させたのだ。モザイクもなしの無修正で……

 ついに、高学歴で清楚な美人女子アナウンサーのストリップショーが始まった。ストリップとは言ってもすでに全裸なので、いわゆる特出しショーからのスタートだった。先ほどまでの放送の中で、すでに似たようなポーズは晒していたが、視聴者にとっては全く別の刺激があった。さっきまでとは違い、これが本物の映像であると自ら認め、カメラに向けて自ら披露を強要されている姿をじっくりと堪能することができるのだ。

 脅迫されているのは可哀想と思いつつも、画面から一瞬も目を離すことができず、しっかりと録画もしている……それが、全国のほぼ全ての男性視聴者の行動だった。一部の者はネットに麻衣子へのからかいコメントを記入し、美人女子アナの頬が羞恥と屈辱に歪むのを愉しんでいた。

「それでは、本澤麻衣子の全身散歩、まずはオマ〇コの中から、ご紹介したいと思います……」
 常に冷静に報道するように鍛えられていた麻衣子だったが、さすがに声が上ずり、震えていた。

 秘裂の両側に手を当て、少し力を込めた。ふと前を見ると、スタッフ達が息を呑み、関連部の社員達が呆然としているのが視界に入り、麻衣子の目が一瞬泳いだ。
(お願い、見ないで! 恥ずかしくて死にそうなのに……)
 実は麻衣子は、何度かこの場から逃げ出そうとしていた。しかしその度に身体の動きを止められ、逃れようがないことを思い知らされていた。やっぱり、やるしかないのよ、麻衣子は引きつった笑顔をテレビカメラに向けたまま、両手に更に力を込めた。秘裂がゆっくりと開いていき、身体の中に空気が流れ込んでくるのが分かった。目の前のモニターを見ると、ネット視聴モニターも、地上波放送モニターも、麻衣子の股間をどアップで映し出していて、無修正の秘部が画面いっぱいに広がっていた。
(嘘、嘘よ、これが本当に生放送されているなんて、現実の訳がない……)
 しかし一方で、このスタジオの空気感、ライトからの熱、目の前のスタッフ達の表情……全てが、これが紛れもない現実であることを麻衣子に思い知らせていた。そして麻衣子は、さらに屈辱的なセリフを命令する青い文字がネットモニター画面に表示されるのを見て、微かに顔を歪めた。

「いかがでしょうか、これが、N放送アナウンサー、本澤麻衣子の、お、オマ〇コの中、です……」
(ひどい、こんなの、嘘でしょ……)
 麻衣子の内心を表すピンクの文字がネット視聴者をさらに興奮させた。ネット視聴者たちは、次に表示された青文字を見てさらに盛り上がった。
「……く、栗山さん、いかがですか、私のオマ〇コは?」

 羞恥地獄に堕ちた同僚女子アナから切なそうな表情で声をかけられ、さすがの栗山も動揺した。
「え、あの、そうですね……とっても綺麗なピンク、ですね……」

<あはは、いつも冷静な栗山ちゃんが!>
<いいな、麻衣子ちゃんのアソコを目の前で見るなんて>
<絶対興奮してるよな>
<あんまりガン見すると、女性ファンが離れちゃうよ(笑)>
<どうせだから、栗山っちに麻衣子ちゃんの身体をレポートしてもらおうよ>
 賛同の声が続き、「声」も同調した。

「それでは、栗山さん、よろしくお願いします」
(こんなのいやっ! ひどい……)
 麻衣子はそう思っても、「声」の指示に従うしかなかった。
「麻衣子のオマ〇コ、全部紹介しちゃいますね。これが、麻衣子の大陰唇です……いつも毛を剃っているのですが、いかがですか、栗山さん?」

「はい、毛がなくて、とてもすっきりしていますね」
 栗山の声が上ずり、コメントもどこかずれていた。
「それにしても、白くてとっても綺麗な肌ですね」

「ありがとうございます、次はクリトリスですが、カメラさん、大陰唇の上の方を、もっとアップにしてください……」
(ひいい、やめてええ!)
 いくら強要されているとはいえ、あまりなセリフに麻衣子は内心で悲鳴をあげた。しかし、テレビ画面には容赦なく、麻衣子の最も秘すべき部分が映し出されていた。
「いかがですか、栗山さん? 女性のここ、こんなにじっくり見たこと、ありますか?」
 破廉恥なセリフを強要され続け、麻衣子の脚がカタカタと震えていた。

「いや、ないですね……」
 内心で惚れていた女性が目の前であまりにも卑猥な格好を晒し、にっこりと笑いながら自分に話しかけている……しかしこれは、生放送のニュース番組中なのだ……栗山は必死に平静を保とうとしたが、頭が混乱しかかっていた。
「とても可愛いクリトリスですね……」

《なんだそれ? つまんないコメントだなあ》
 「声」の青文字がネット視聴モニターに表示された。
《おしおきだよ》
 その文字が表示されると同時に、モニター画面に「指」のカーソルが出現してスーッと動き、クリトリスの上で止まり、クリックされた。

「あ、あんっ!」
 M字開脚で自らの秘裂を開いた格好のまま、麻衣子は顔をのけ反らせて悶えた。剥き出しのクリトリスを「指」で何度も弾かれては、今の麻衣子は一たまりもなかった。
「あ、あっ、あああ……」
 いつの間にか増えていた「指」に両方の乳首も弄られ、さらには秘裂の周囲をスーッと撫でられ、麻衣子は脚をガクガクさせ、全身をビクビク震わせて、あられもない声をあげた。

《イクときはちゃんと事前に報告するんだよ》
 「声」が麻衣子の脳内に響いた。
《従わなかったら、今度は栗山の指でイってもらうからね》

「いや、そんなの! あ、あっ、ああん! い、い……」
 もはや生放送中であることも頭の中から消し飛び、麻衣子は快感に悶えた。全裸の身体にうっすらと汗が浮かび、乱れた髪が額に貼りつき、淫らに悶える女体があちこちからのライトを反射して艶めかしく光っていた。
「あっ、あっあっあっ、ああんっ! い、いぃぃ……」
 もう駄目、私……麻衣子は諦めたように、うっすらと開いた瞳をテレビカメラに向けて、妖艶な笑みを浮かべた。
「あ、あぁ、ああぁん……も、本澤、麻衣子、イッちゃいます……あ、あっ、い、いっ、イクうぅぅぅ……」

 ついに、公共放送きっての美人女子アナウンサーは、生放送中のニュース番組の中で全裸での絶頂姿を晒してしまった。さっきとは異なり、これが加工映像ではなく事実であることを認め、自ら絶頂することを報告する……衝撃的な姿を全国の視聴者に向けて晒した後、麻衣子はついに失神してしまった。大きく足を開き、乳房も秘部も晒したまま、口を半開きにしてうっとりした表情で目を閉じている美人女子アナの姿を、テレビカメラは冷徹に放送し続けていた。


前章へ 目次へ 次章へ


アクセスカウンター