PART 5

  「それじゃあ、先輩、ここに立って下さい。」
陽菜がマットの中央を指差した。
「それで、バスケ部の皆さんは、こっち、先輩の姿がよく見えるところに座って下さい。」

 不審に感じながらも、麻由香は、バスケ部全員とカメラの正面に立った。期待に満ちた視線に、思わず胸と股間を手で庇った。

 「はい、手は下に下ろして、先輩。往生際が悪いですよ。」
下級生にやんわり叱られ、麻由香は仕方なく手を下ろした。

 「はい、それじゃあまず、こう言って下さい。カメラを見ながらですよ。・・・」
陽菜が耳元に囁いた。

 「そ、そんな! 陽菜ちゃん、どうして断ってくれないの?」
麻由香の顔色が変わった。

 「ほらほら、先輩、もう撮られてますよ。下手にあがいて男子に期待させるより、さらっとすませた方がいいと思いますよ。」
陽菜は取り合わずに言った。
「はい、麻由香先輩から一言あるそうです・・・」

 「・・・え、そ、そんな・・・」
麻由香は思わず呻いた。(ひ、ひどい、ひどいわ・・・)
「・・・S高校2年1組の、本条麻由香、です。い、いつも、少し可愛くて頭が良くて、新体操が上手だからと言って、皆様を馬鹿に、していました。・・・そして今日、N高校バスケットボール部の貴重なコートを借りながらも、気の抜けた演技を行ない、ぶ、無様なミスを犯してしまいました。全て、今までのこ、高慢な、私の責任であり、深く反省しています。」
麻由香は言葉を切り、許しを請うように陽菜を見た。陽菜が静かに首を振る。
「・・・お詫びとして、これから恥ずかしい罰を受けさせていただきます。男子に見られながら、バスケットゴールの板一枚だけを間に置いて、す、素っ裸になり、サポーター無しで無地の白いレオタードに着替えて、お、おっぱいの形も、お尻の割れ目も晒しながら、模範演技をさせていただきます・・・どうぞ、私の恥ずかしい姿を皆様で楽しんでください・・・そして、もし万一、またミスをしたら、遠慮無く、もっと恥ずかしい罰を命令、して、ください・・・」
震える声で命令された口上を言い終わると、麻由香は唇を噛んで立ち尽くした。
(ひどい、ひどすぎる・・・早く終わってえ)

 「はい、いいねえ、最高だよ、麻由香ちゃん! 優等生のお嬢様が、私のおっぱいとお尻を見て下さい、って言うところも、ばっちり録画したからね。」
田之倉が言うと、男子達が笑い、麻由香の頬が羞恥に染まった。
「それじゃあ、美加ちゃん、次お願い。」

 「・・・え、次って・・・」
やっと屈辱の時間が終わったと思った麻由香がたじろいだ。

 「ふふ、ごめんなさい、命令だから、仕方ないですよね。・・・」
美加は麻由香の耳元に囁き、背中の後ろに回した手にそっとそれを手渡した。

 「・・・! そ、そんな・・・」
麻由香は耳を疑った。

 「でも、言わないと、レオタード貸してくれないみたいですよ。サポーターだけで踊るのに比べれば、我慢できるんじゃないですか?」

 (み、美加ちゃん、ひどい! 人のことだと思って・・・)しかし、美加の言うことが正しいことも分かっていた。

 「・・・えー、それから、お詫びの印としまして、先ほどまで私が制服の下に着ていた、ぶ、ブラジャーと、ぱ、パンティーは、こ、こちらですが・・・」
麻由香はそこで言葉を切って、おずおずと手に握らされたブラジャーとパンティーを顔の横に掲げた。履いていた本人、しかも超美少女が自らの顔の横に下着を掲げる・・・恥らいながら行うその様子に、男子達の視線は更に熱くなった。
「ば、バスケ部の皆様に差し上げたいと、お、思います。ま、麻由香、きょ、今日は、制服の下は、す、素っ裸、で帰ります・・・」
吐くような思いで麻由香が言い終わると、やんやの喝采に包まれた。

 「・・・く、くぅ・・・」
今まで男に負けたことなど無い麻由香は、始めて味わう屈辱に呻いた。
(・・・こ、こんなの、もう、いやあ・・・)

 「先輩、どうしたんですか、暗い顔しちゃって!」
陽菜がにっこりと笑いかける。
「大丈夫ですって、次は絶対完璧な演技ができますよ。・・・さ、早く着替えましょ。」

 そして麻由香は、先ほどの宣言どおり、男子達と板一枚を挟んで全裸にならなければならなかった。レオタードを貸す条件として、屈むことは禁じられ、麻由香は、板越しに、鎖骨から上と膝から下を男子達の視線に晒すことになった。

 もちろん、その様子も、田之倉達に録画されている。
「はい、麻由香ちゃん、今の格好の説明と、感想をどうぞ。にっこり笑ってちゃんと言えたら、着替えのレオタードを渡してあげるよ。」
そう言って、マジックでセリフを書いた画用紙を掲げる。
 あはは、麻由香ちゃん、すっかりAV女優扱いされてねーか? というひそひそ声が聞こえ、麻由香の全裸の身体が恥辱に震えた。

  (田之倉くんっ!・・・どこまで私を辱めれば気が済むの・・・く、悔しい)
「・・・はい、ほ、本条麻由香、い、今、す、すっぽんぽんで男の子の前に立っています。こ、この板が無かったら、麻由香の恥ずかしいところ、みんな丸出しです。」
(な、何てこと言わせるの! いや、録画しないで・・・)
 しかし容赦無く、次の画用紙が示される。それを読まなければ、いつまでも全裸のままなのだ・・・
「・・・男の子に熱心に見つめられて、麻由香、興奮しちゃって、身体が熱くなってます・・・麻由香の裸、そんなに見たいのかしら・・・」

 「え、麻由香ちゃん、ひょっとして喜んでる?(笑)」
「もちろん見たいよ、麻由香ちゃんの裸!」
「そうそう、どんなおっぱいしてるのかなあ。」
男子達は麻由香の誘うような言葉に盛り上がった。
「じゃあ聞いてみようよ。ねえ、麻由香ちゃんのスリーサイズは?」

 麻由香はその男子を思わずきっと睨んだが、田之倉が咳払いをしたため、言葉を呑み込んだ。
「85、56、87、です・・・」
おー、やっぱりでかい、さすが麻由香ちゃん、と男子達が盛り上がる。

「それじゃあさ、麻由香ちゃんの乳首って何色?」
調子に乗った男子がとんでもない質問をした。

 「え、そ、そんな・・・」
麻由香は田之倉を見た。(もういいでしょう。早くレオタードを頂戴!)

 しかし田之倉は、手に持っていたレオタードを持ったまま、後輩に何か言った。その後輩は、画用紙にマジックを走らせ、麻由香に向けた。
『正直に答えて!』

 「・・・そ、それは・・・」
(い、いやよっ、どうしてそんなことまで、スケベな男達に言わなくちゃいけないの・・・)

 「どうしたの、麻由香ちゃん。今すっぽんぽんなんでしょ。ちょっと下を見れば分かるじゃん。」
「何なら俺が見てやろっか?」

 「い、言いますっ! 言いますら・・・」
一人の男子が近寄ろうとしたので、麻由香は慌てて叫んだ。目をつぶり、羞恥を堪える。
「・・・あ、あの、・・・ピンク、です・・・」
やったー、ピンクだあっ、と盛り上がる男子達を前に、麻由香の膝はがくがく震え、崩れ落ちそうになった。年頃の女の子には、あまりに辛い体験だった。

 「それじゃあ、乳輪の大きさと色は?」
いつもは話しかけるのも憚られる雰囲気だった麻由香が見せるうぶな一面に、男子達は悪のりした。
 すかさず、『正直に答えて!』と画用紙が示される。

 しばらくの躊躇いの後、麻由香は少し下を見て、顔を上げた。スケベな想像をしていると露骨に分かる男子達の顔が目に入る。
「・・・・・・ぴ、ピンクで、大きさは、2、3センチ、です・・・」
うわ、小さめのピンク、麻由香ちゃんのおっぱい、最高! もう見せちゃいなよ! と男子達が湧いた。

 早く着替えを、と麻由香が言いかけた時、更に悪のりの質問が続いた。
「ねえねえ、麻由香ちゃんのアソコって何色? やっぱりサーモンピンク?」
あはは、お前、エロ小説の読み過ぎっ、と笑いが起こった。

 「え、・・・・・・」
今度こそ、麻由香は言葉を失った。・・・ま、まさか、女性として最も秘すべき、見られたくない部分の色を答えろって言うの
・・・絶対にできない

 しかし、板一枚を隔てて全裸の美少女がからかわれて立ち尽くす様子は、男子達にとって余りにも刺激的なショーだった。
「え、麻由香ちゃん、自分の見たこと無いの?」
「じゃあ見てみなよ、今、ここで。」
「そこに座って、M字に脚を開いて覗き込めば?」
「そりゃいいや。麻由香ちゃん、こっち向いてやってね、M字開脚!」
非日常と集団心理で、普段は絶対に言えない言葉を麻由香に浴びせかけた。その一言ずつに、いつも澄まし顔だった麻由香が怯えたように震えるのが面白かった。

 その時、また画用紙が麻由香に示された。恐る恐るそれを見た麻由香は安堵した。
「わ、私のアソコの色は・・・そ、それは、後のお楽しみ、です・・・」
(え・・・? あ、わ、私、なんてことを・・・)麻由香は我に帰り、羞恥に身体を震わせた。

 「えー、今知りたいなー」
「いいじゃん、けち! じゃあその代わり、おっぱい見せてっ。」
「俺も見たいな、85のバストにピンクの乳首!」
「ていうか、そのままヌード、見せてくれてもいいよ(笑)」
「でも、後のお楽しみ、ってすごいな。麻由香ちゃん、本当に後で教えてくれるんだよね?」
『何かその台詞、ストリッパーみたいだね、麻由香ちゃん。追加料金払うから見せてよ!(笑)」

 「ちょっとみんな、いい加減にしなさいよっ!」
陽菜が叱咤の声を上げたことで、ようやくその騒ぎは収まった。
「田之倉くんも! にやにや見てないで、早くレオタードを渡して!」

 「ごめんごめん、天下の麻由香ちゃんのすっぽんぽん、想像して興奮してた。」
田之倉が頭を掻くと、笑いと共に空気がようやく和らいだ。


 しかし、麻由香の恥辱はそれで終わった訳では無かった。ようやく渡してもらったレオタードを見て、麻由香の顔が引きつった。
「え、ま、まさか、これ・・・」

 「あ、そうだよ、あの時の、あれ。」
佐々岡があっさり言った。
「やっと麻由香ちゃんに着てもらえる日が来たね。」

 「そ、そんなっ! あんまりよ、佐々岡くんっ!」
佐々岡の意地の悪さをはっきり感じ、麻由香は怒りを抑えきれなかった。


 それは、去年のクリスマスに、N高バスケ部一同と称して、S高新体操部に届けられたものだった。そしてその中には、一着のレオタードと、一枚の手紙が入っていた。
『本条麻由香さまへ
  いつも美しい麻由香さんに、バスケ部一同は皆、憧れています。今度来た時は、ぜひ、このレオタードを着て練習してください。』
 そして、部員達に冷やかされ、照れながらそのレオタードを広げた麻由香は、唖然としたのだった。
 それは、白く無地の生地で、麻由香の身体には明らかに一回り小さかった。そして、その生地は薄く、肌の色が透けそうだった。
 怒った麻由香は、その足でS高とN高の職員室に行ってその悪行を訴え、練習中のバスケ部の体育館に一人で乗り込み、そのレオタードを叩き返したのだった。
 それはすぐに学校間での大問題となり、N高での新体操部の練習はそれから一ヶ月間中止となり、N高バスケ部の全員が頭を丸めたことで、何とか収まったのだった。その毅然とした行動により、麻由香は女子達からも圧倒的な人気を得るようになった。
そしてそれから今日まで、N高校でレオタード姿で練習する部員はいなかった・・・


 (さ、佐々岡くん、最低よっ! )
麻由香はがっくりした。一体自分は何のために恥ずかしい言葉を口にしていたのか・・・これを着る位なら、サポーターだけの方がまだましだったかもしれない・・・

 しかし、もはや後の祭りだった。麻由香は、その恥ずかしいレオタードを着て、大勢の男子が見つめる前で、新体操の演技を披露するしかないのだ。
 薄いレオタードだけで、これから披露しなければならない数々のポーズを考えて、麻由香は気が遠くなるのを感じた。しかも、一回でもミスすれば、今度は全裸での演技なのだ・・・


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