PART 15

 顔を上げた理絵は、真奈美を見た。その手に抱えているブラウスを返してくれるよう目で懇願する。しかし、真奈美は笑顔で頷くだけだ。その目は早く質疑応答に行け、と言っていた。

 「で、では、ご質問などございましたら、よろしくお願いいたします。」
質問が来ないことを祈りながら、理絵はにこやかに言った。本当は恥ずかしいくせに、無理矢理笑顔を浮かべさせられている・・・そんな理絵の被虐の雰囲気が男達の興奮を増大させていた。

 せめてもの願いとは逆に、理絵は質問責めにさらされることになってしまった。内容はほとんどがどうでも良いことばかりだ。理絵のプレゼンにはほとんど隙が無いが、その羞恥の姿を少しでも長く見ていたい、というのが真の動機なのだから、そうなるのは当然だった。しかし、理絵はいじらしくも、一人一人ににっこりと笑い掛けながら、丁寧な回答を返して質問をこなしていくしかない。


 10分ほどして、ようやく質問のネタも出尽くしかけた頃、ほっとしていた理絵の前に、一人の手が上がった。佐藤だ。そのスケベ丸出しの目を見て、理絵はうんざりした。(何よ、このドスケベおやじ。いい加減にしなさいよ)しかし、そんなことを口に出来る筈はない。部長の三村が同席しているとは言え、相手はこのコンペの実質的決定権を握っているのだ。
「はい、何でしょうか?」
こんな男にまで愛想笑いをしなければならないのが悔しかった。

 「いやいや、素晴らしいご提案をありがとうございました。内容については、何も言うことはありません。」佐藤は意外なことを言った。じゃあ、何なのよ、と理絵はさらに内心でむっとする。佐藤は一拍置いてから続けた。
「ただ一つ、確認したいんですが。パンティも我が社のものを着用して頂いているのかな?」

 ぷっ、という失笑がナコール社の女性陣から漏れた。いい気味だわ、といった悪意が露骨に感じられるその笑いに、理絵は痛い程の屈辱を感じ、かっとなった。

 しかし、理絵は今、佐藤に反抗するなど許されない立場だった。FJEを代表するプレゼンターという立場と洋子の脅迫が理絵をがんじがらめにしていた。
「ええ、もちろん。」
自分の羞恥心に対抗するように、理絵はさらに精一杯の笑顔を作りながらいった。どうかこれで許して下さい、と目で佐藤に訴える。

 もちろん、佐藤がそれで満足する筈が無かった。
「じゃあ、それも拝見させて頂いてよろしいでしょうか? もし、メシールだったらその場でNOCさんの勝ちですな。」
冗談めかして佐藤はそう言って、はっはっとオヤジ笑いをした。佐藤の部下達、FJEの男達も追従笑いをする。

 「はい、分かりました。それでは、ご覧になって下さい。」
理絵は仕方なくそう言うと、スカートのボタンに手をかけた。さすがの理絵もやや表情が強張ってしまう。

 「理絵ちゃん、笑顔、笑顔」
すぐに洋子に小声で注意され、あわてて笑顔を作る理絵。しかし、今度はその手がとまってしまう。(まさか、パンティをここで見せろって言うの? 黒木課長、何とか言ってよ!)しかし、FJEの男達は一言も発しないで理絵の痴態を平然とした表情で眺めているだけだ。

 「ちょっと、早くしなさいよ!」
再び洋子が叱責する。今度は恐い顔だ。
「わ、分かりました!」
理絵も小声で返事を返し、スカートを脱ぎ下ろしていった。脱ぎ終わると、待ちかまえていたかのように真奈美がスカートをひったくる。

 ついに、理絵は、皆が見守る中、ブラとパンティだけの姿を晒すことになってしまった。パンティの生地は薄く、尻の割れ目や股間の黒い三角地帯がうっすらと透けて見える。佐藤の質問の趣旨から、下着を手で隠すことは許されない。理絵は、その下半身に集中する視線に、顔から火が出るような恥ずかしさを覚えながら言った。
 「こ、これでよろしいでしょうか。」

 「うーん、・・・」
佐藤はそう言って言葉を切った。しばらく沈黙する。そして、じっくりと皆の目を楽しませてから、再び口を開いた。
「ちょっと、良く分からないなあ。後ろを向いてくれる?」

 「・・・はい。」
仕方なく、理絵は後ろを向いた。皆、自分の尻を見ているに違いないと思うと、理絵は羞恥と屈辱に顔をゆがめた。今だけは笑顔を作らなくても良かった。

 しばらくしてから、佐藤が言った。
「ごめんね、理絵ちゃん、やっぱり良く分からないや、情けない。で、悪いんだけど、こっちに来て、ロゴを確認させてくれる?」

 「は、はい・・・」
(人でなし! どこまで私を辱めたら気が済むの!)理絵は思わず心の中で悪態をついてしまった。抵抗できない弱みにつけ込んで女性にこんなことをさせるなんて、最低の男だと心底軽蔑した。

 しかし、ここで断ってコンペに負ける訳には行かない。理絵は、佐藤の方に歩き出した。佐藤の席は真ん中やや後ろだったので、他のナコール社員や、FJEの面々の鼻先に下着姿を晒しながら歩くことになる。

 それは異様な光景だった。真っ昼間のオフィスで、スーツ姿の男女が見守る中、一人下着だけにされた美女が恥辱に顔を真っ赤にしながら歩かされているのだ。胸と尻の魅力的な膨らみだけでなく、その白くしっとりした肌がまた美しく、男達の心を虜にしていた。

 FJE陣営の席の横を通るとき、理絵は男達に救いを求めるような視線を投げかけた。しかし、黒木、松本、高木、原田は平然とした表情でその視線を無視する。そして、その視線はもっぱら理絵の胸と股間に向けられていた。平静を装ってはいるが、その目に隠しきれない欲望を感じ、理絵はさらに羞恥を覚える。2週間前までは一緒に仕事をしていたメンバーに晒す痴態に、恥ずかしさはひとしおだった。

 ようやく佐藤の席の脇までたどり着いた理絵は、
「どうですか、ナコール社様の物ですよね?」
至近距離で嫌いな男に下着姿を晒す屈辱に耐えながら、理絵は佐藤を促した。

 「うーん、確かに、ブラはそうだな。」
しげしげと理絵の胸を眺めながら佐藤は言った。今度は視線を下に落とす。
「だけど、パンティのロゴは中だよね。」
佐藤はもはや嫌らしいにやにや笑いを隠しもしない。薄いパンティだけの下半身を至近距離でまともに見られ、理絵は思わず腰を引いた。

 このスケベ、と内心で罵りながら、理絵はパンティの後ろを小さくめくった。ナコール社のロゴを佐藤に見せつける。
「これで、よろしいですよね?」

 「うーん・・・」
佐藤は黙り込んだ。(どうせこの時間を引き延ばすネタを考えているんでしょ。)と理絵はうんざりした。もう付き合いきれない。
「では、これで・・・」
そう言って、理絵はきびすを返そうとした。

 しかし、その時、
「あの・・・ちょっといいですか」
と佐藤の後ろの席に座っていた女子社員が言った。

 「ん、何だね、今岡君。」
佐藤は期待を込めてその女子社員、今岡京子を見た。

 「最近、この型番の偽物が出回っておりまして。ちょっと確認させて頂いてもよろしいでしょうか。」
そう言った京子の目に意地悪な光を感じ、理絵は怯えた。
「そんな、これは本物ですっ」
しかし、理絵の叫びは無視された。

 「うん、そうだな。もし偽物だったらFJEさんの信用もがた落ちだぞ。」
予想していなかった京子の言葉に、佐藤は喜びを露わにしながら言った。これで理絵はもっと苛めることができるのだ。
「よろしく頼むよ、京子君。念入りにな。」

 「はい。」
京子は席を立つと、理絵の胸に顔を寄せた。同性とは言え、十センチの至近距離で胸をまともに見つめられ、理絵の羞恥はさらに煽られる。
「あー、確かに、このレースは我が社のもののようですね。」
そう言いながら京子は右手を上げた。ニヤリと笑う。
「では、こちらの方はどうかしら?」
そう言って、理絵の乳首をブラ越しに親指と人差し指で軽くつまみ、細かく動かした。

 「んっ、ひぃっ」
理絵は予期せぬ快感に思わず声を上げてしまった。
「な、何をするんですかっ!」
一瞬立場を忘れ、京子に抗議してしまった。快感に反応してしまった自分が恥ずかしかった。

 「だけど、トップに高級素材を使って乳首への刺激を緩和しているところがこの商品の特徴で、偽造品にはまねできないところなんですよ。何でしたら、脱いで頂けます? そうすれば、もっときちんと確認出来るのですが。」
京子は勝ち誇ったように言った。

 「失礼なことを言ってしまい、申し訳ございませんでした。このまま、確認の続きをお願いいたします。」
理絵はそう言って頭を下げざるを得なかった。

 「よし、じゃあ次はパンティを確認してくれるかね?」
佐藤がスケベな好奇心を丸出しにして言った。今度は理絵がどんな表情をするのか、絶対に見逃すまいという表情だった。

 「はい、分かりました。」
京子は事務的に返事をするとしゃがんで、今度はその顔を理絵の股間の前に持ってきた。こんな至近距離では、理絵の陰毛は透けて見られてしまっているはずだ。目をつぶることも許されない理絵は、両方の拳を固く握って羞恥に耐えていた。

 「えーと、レースは確かに、・・・・ウチのものとよく似てますね。」
京子はそう言うと、ギャラリーの期待に応えるように、その手を股間に伸ばした。男達が息を呑んでその様子を見守る。
「ここの素材が違う筈なんですけど・・・」
京子の中指は意地悪く理絵のクリ○リスを狙った。指で軽く押さえてそれを捉えたことを確認してから、小さく振動させる。

 「あ、あぁ、や、やめて下さい。」
覚悟していた理絵だが、やはり恥ずかしい声を上げてしまった。先週のスナックと違い、同性の指の動きには無駄が無く、小さな振動でも、最大限に理絵の官能を引き出していたのだ。

 男達は、期待通りの理絵の反応に内心大喜びしていた。(かわいそうに。そんなに美人でなければ、女に虐められることもなかったろうに)そう思いながらも、同情はしていない。すぐにでも女優になれそうな美女の、さらなる痴態を期待する気持ちでいっぱいだった。


 

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