PART 11(bb)

 梨沙が少しずつ事情を説明すると、新井の顔には微妙に落胆の色が現れていた。つまり、梨沙はショウブ堂にいろいろな嫌がらせを受けていて、どうも岩本とみどりとゆきなが彼等の協力者らしいので、近付いてその背後を探ってほしいーーーそれが梨沙の相談だった。自分に対する告白かもしれない、という新井の淡い期待はあっさり崩壊した。

 「・・・そっか、分かったよ、そういうことなら喜んで協力するよ。」
新井はがっかりした気持ちを悟られないよう、わざと明るい表情を作った。少なくとも、そんな大事な話を自分一人だけに相談してくれたってことは、頼りになるところ見せればチャンスがあるかもしれない・・・
「だけど、それでどうして俺にこんな相談をしてくれたの?」

 「え?・・・うん、それは、実は、いろいろ考えたんだけど・・・」
梨沙は、新井がどんな答えを期待しているのか、全く考えもせずに続けた。
「岩本くん達を通してショウブ堂に取り入るためには、私の弱味を握っているってことで誰かが近付くのがいいと思ったのね。ということは、内藤くんみたいに私と仲が良くって真面目なタイプじゃ警戒されて囮がばれちゃいそうだから・・・」

 「ああそっか、だから俺みたいに、ちょっと不真面目で、梨沙ちゃんのことを脅しちゃいそうな奴の方がいいって思ったんだ?」
さすがに言いにくそうな梨沙の機先を制して、新井が自嘲気味に言った。
「いいよ、全然気を悪くなんてしてないから。」
もちろんそれは事実の反対だった。

 「ううん、違うの!」
新井が少し気を悪くしたのを察して、梨沙は首を振って否定した。
「それだけじゃなくって、岩本くん達とはあまり仲が良くなさそうだから・・・」

 「裏切らないと思った、ってことだね?」
新井はまた、梨沙の言葉を先回りして言った。梨沙が気まずい顔で頷くのを見て苦笑するしかなかった。(そっか、俺なんかに興味は無いけど都合がいいから利用したいってことか・・・ある意味すごいよ、梨沙ちゃん。普通の子ならその辺はぼかして、媚びながら男を利用するもんだけどな。)

 新井はコーヒーを一口飲んで心を落ち着けてから、梨沙の顔を見た。
「・・・分かったよ。それじゃあ梨沙ちゃん、俺で良ければ喜んで協力するよ。だけど、ちょっと質問させてもらうから、今の状況を正確に教えてくれる?」
梨沙が小さく頷くのを見てから、新井は続けた。
「昨日のあの写真、本当はコラじゃなくて本物なんじゃないの?」

 「え、何言ってるの? 合成に決まってるじゃない、あんな写真っ!」
いちなり予想外の質問をされ、梨沙は顔を真っ赤にして否定した。
「それに新井くん、どうしてそんなこと聞くの、関係ないじゃない。」

 「そんなに怒らないでよ。だって俺、梨沙ちゃんの味方になって、岩本達のところに潜り込むんだろ? それならまず、こっち側の事情を正確に把握していないと。」
新井は少し機嫌を損ねた様子見せた。
「そんなに怒るんなら、いいよ、俺、もう帰るから。」
そう言うと、すっと席から立ち上がった。

 「ご、ごめんなさい! 違うの、怒ったわけじゃないの。」
梨沙は慌てて引き留めた。クラスの男子のうち、全ての条件を満たしているのは新井しかいなかった。それに、今の話を岩本達にされてしまったら、この計画自体が不可能になってしまう・・・
「待って、確かにそうね。ちゃんと、正直に話すから・・・」
新井がようやく機嫌を直して椅子に座るのを見て、梨沙は少しだけほっとした。

 「正確に言うと、水着の写真は本物で、スカートの中の写真はうまく作った合成よ。」
梨沙は新井の顔を見ながら言った。やはり、透けたパンティの写真が本物とは認められなかった。

 「ふーん、そうなんだ・・・分かった、信じるよ。さっきは帰ろうとしたりしてごめん。本気じゃなかったよ。俺、梨沙ちゃんの力になりたいんだ。」 
新井は今度はあっさり頷いた。ただ、もはや内心では違うことを考えていた。例え好意を持たれていないとしても、こんな可愛いクラスメイトと2人でお茶を飲んで話せるなんて、ほんの数時間前から考えれば夢のようだった。それに、今の話をうまく利用すれば、もっと面白いことになるかも・・・
「じゃあ、俺はどうすればいいのかな?」

 「う、うん、それなんだけど・・・」
梨沙はまた躊躇いがちな口調になった。
「何か、私の弱味を握っている、って岩本くんたちに仄めかしてくれないかな。そうしたら、その弱味をうまく使って、私のショウブ堂への抗議をやめさせようって考えると思うの。」
実は芳佳からはもっとはっきりとしたアドバイスをされていたのだが、梨沙はどうしても言い出す気になれなかった。

 「なるほどね。たださ、その弱味ってのを具体的に示さないと、岩本達も信用してくれないと思うんだよね。もともと俺、あいつらと仲良くないのに急にそんなこと言ったら変だろ?」
新井はそう言いながら、内心で確信していた。梨沙ちゃん、分かってるけど自分から言いたくないんだろ?(笑)
「それに、あいつらはあんなに沢山、エッチなアイコラ作ってるんだから、俺が相当の弱味を握ってるってことじゃないと仲間にする価値がないんじゃない?」

 「・・・う、うん、そうだよね・・・」
梨沙は困惑した表情で頷いた。
「その、すごい写真を持っているとか、言うのはどうかな・・・」

 (やっぱり!)新井は内心でカッツポーズをした。これはすごい展開になってきたぞ・・・
「すごい写真って、例えばどんな?」
新井はわざとそう言って、梨沙の顔が真っ赤になる様子を楽しんだ。
「・・・まさか、君の裸の写真を持っているって言うってこと?」

 「・・・う、ううん、そこまでは・・・あの、下着姿の、とか・・・」
クラスメイトの男子が自分を見つめながら裸を想像しているのを感じ、梨沙は耳たぶまで真っ赤にした。いつもの学校での理知的で溌剌とした表情はすっかり影を潜めていた。

 「え、下着って、ブラもパンティも付けてる写真を持ってるって言うの? それで脅しになるのかなあ。」
新井はすっかりこの状況を楽しんでいた。いつもの眩しいばかりの優等生の美少女が、今にも消え入りそうな様子で恥ずかしがっているのだ。どうせ不真面目でスケベと思われているんなら、うんとからかってみよう・・・
「だってさ、言っちゃあ悪いけど、裏サイトに載ってる君のコラ、どんなのか知ってる? おっぱいもアソコも丸出しなのは当たり前だし、男のアレをしゃぶってるのもあるんだぜ。・・・なんなら見てみる?」
新井はそう言って携帯端末を取り出した。

 「・・・や、やめてっ! お願い、見せないで、そんなの!」
梨沙は思わず声を上げ、近くを通りかかったウエイトレスに不審な顔で見られた。ごめんなさい、と慌てて小さく頭を下げ、ウエイトレスをやり過ごした。
「・・・だ、だけど、本物の下着姿の写真を持ってるって言えば、きっと、効果があるんじゃないかな・・・」

 「うーん、そうねえ・・・本物、ねえ・・・」
新井はそう言うと、腕を組んで体を反らし、天井を眺めるポーズになった。そして、梨沙を助けるためではなく、この状況をもっと楽しむための作戦を必死に考えた。
「・・・うん、まあ、そうだね。あいつらが本物を持ってなくって、俺が本物を持って脅してるって知ったら、食いついてくるかもね・・・」

 「そう? 新井くんもそう思う?」
新井が必死に自分を辱める罠を考えているとも知らず、梨沙は勢い込んで言った。
「それじゃあ、岩本くん達にそう言って・・・」

 しかし新井は、梨沙の言葉を遮るように片手を上げた。
「ちょっと待って。それで、その本物の写真、っていうのはどうするの? まさか、それもコラで騙すって言うんじゃないよね? それに、写真を持ってるって口だけで言って、その写真は見せないなんて、絶対無理だよ。」

 「え、そ、それは・・・だけど・・・」
言おうとしていたことを先に言われて否定されてしまい、梨沙は言葉に詰まった。そして、芳佳は最初からそこまで見越していたことを思い出した。『ある程度恥ずかしいのは諦めなくちゃいけないわ、本当に辛いと思うけど・・・』昨晩の電話での芳佳の言葉が脳裏に蘇った。そして目の前の新井がわざとらしく時計を気にするのを見て、梨沙は仕方なく言った。
「わ、分かったわ。私の本物の、下着姿の写真をあげるから・・・それで、岩本君達に取り込んでくれるかな・・・」

 「うん、ごめんね。俺もそんなことしたくないんだけど、あいつらにもっとひどいことされるのを防ぐためには仕方ないと思うんだ。」
(やった、あの谷村梨沙を目の前でブラとパンティだけにできる!)新井は内心で快哉をあげながらも、神妙な顔を作っていた。
「それじゃあまず、そこで足を開いてくれる?」

 「・・・え、どういうこと?」
部屋で一人で下着姿の写真を撮ろうと悲壮な決意を固めていた梨沙は、新井の真意が分からなかった。コラじゃない証明って一体どうすれば・・・

 「うん、まず最初にどんな写真を撮って脅迫したってことにするか考えたんだけど、何かの拍子に梨沙ちゃんが足を開いちゃって、そこをズームで撮影されたってのがいいかな、と思って。」
新井は必死に考えたストーリーをしゃべった。携帯端末を取り出してカメラを起動し、机の下に入れた。
「悪いけど次の予定があるから、すぐやってくれないんなら、俺、帰るからね。」
もちろん予定なんて何もなかった。それに、どんな予定があったって、こっちを優先するに決まっていた。

 「・・・そ、そんな・・・わ、分かったわ・・・」
すっかり新井のペースにはまってしまった梨沙は、羞恥に唇を噛みしめながら、その足をゆっくりと開いていった。い、いや、こんなところを新井くんに撮られるなんて・・・開いた脚の間に外気が流れ込むのを感じ、梨沙は身体を小さく震わせた。
(あ、わ、私、何てことを・・・)
梨沙は店内をそっと見回した。梨沙達のテーブルは一番奥で、しかも肩の高さまでの仕切りがあるため、他のテーブルからは梨沙の身体は視界に入らない。ウエイトレスがテーブルの真横まで来ない限り、見られる恐れはない・・・


 「梨沙ちゃん、駄目だよ、もっと大きく開いて。」
机の下の携帯のカメラの液晶を眺めながら、新井が淡々と言った。
「それじゃあちょっとしか見えないよ。もっと思い切り、がばっと開いちゃってよ。」

 ・・・昼下がりのファミレスの片隅では、奇妙な光景が繰り広げられていた。一見普通の高校生カップルが向かいあって座っているようだったが、女の子が顔を真っ赤にしてうつむき、男は机の下を見ながら何かぶつぶつ言っているのだ。

 そして梨沙は結局、股を120度ほどにまで開かされてしまった。どうぞ私のパンティを見てください、という格好をパシャパシャと撮影され、制服姿の美少女は顔中を真っ赤に火照らせていた。

 「・・・うん、まあこんなもんかな。」
憧れの美少女のクラスメイトに股を開かせ、何十枚もその写真を撮影した新井は、満足そうに携帯端末の画面を眺めた。
「ねえ梨沙ちゃん、どの写真を使うのがいいと思う?」


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