PART 14(ba)

しかし、痴態の数々とアドレスデータを握られた梨沙に選択肢は無かった。
(とりあえず二つの商品を貰うだけ。どうしても無理なことを要求されたら、断ればいいのよ・・・きっと、黒川さんだって、そう簡単に切り札は使えない筈・・・もし写真をばら撒かれて私がやけになって警察に訴えたら困るのはあっちだもんね。)
梨沙は店の扉を開けながら自分に言い聞かせた。しかし、ショウブ堂での記憶がフラッシュバックし、梨沙は思わずそこで動けなくなった。やっぱり、怖い・・・

「はい、いらっしゃい・・・あ、君は・・・」
半分開いた扉を不審に思って寄ってきた中の男が、半分見える女子高生の制服姿を見て笑った。
「君、さっき黒川さんから話があった、梨沙ちゃん、だよね? さ、中に入って。」

「は、はい・・・」
思いの他爽やかで若い男の姿に、梨沙は戸惑いながら頷いた。
「あ、あの、こちら、モリワカさんの、店長の方でしょうか?」

「え、モリワカ? あー、この店の名前ね。・・・これ、カキツバタって読むんだよ。しょうがないなあ、黒川さんも。」
男は相変わらずニコニコ笑いながら言った。
「そう、僕がこの店長の青木と言います。よろしくね。」

「はい、私、谷村梨沙と申します。どうぞよろしくお願いいたします。」
意外な対応に、梨沙は場違いなほどきちんとした挨拶を返してしまった。
「あの・・・黒川さんから、二つの商品を受け取るように言われたんですけど・・・」
青木の新任教師のような雰囲気に、話し易く感じた梨沙は徐々にくだけた口調になった。

「はい、聞いてますよ、TS-302VとTS-302A、だよね?」
青木は相変わらず爽やかな口調だったが、その眼が一瞬、スッと細くなった。

「・・・はい、その二つを貰って、後は指示に従うように言われてるんですけど・・・あの、私、申し訳ないんですけど、その、こっちの方面の仕事はするつもり、ありませんので・・・」
青木の雰囲気の微妙な変化に気付かなかった梨沙は、正直に言って救いを求めようとした。

「あーうんうん、大丈夫だよ。こっちだって、嫌がる女の子を無理に働かせても駄目なんだよね・・・お客様にもそういうの、伝わっちゃうし・・・」
青木はそう言いながら、商品棚を漁り、二つの箱を持ってきた。
「はい、こっちがTS-302V、こっちがTS-302Aね。・・・中から出した方がいいかな?」

「は、はい、お願いします・・・」
その箱の大きさと、そこに貼られた商品写真を見て、梨沙の表情は途端にぎこちなくなった。そのうちの一つ、TS-302Vの方は、ショウブ堂の地下で弄ばれた時に使われた淫具そのものだった。そして、TS-302Aの方は、もう少し細かったが、その形状から用途は殆ど同じだと思われた。黒川さん、同窓会に行く私にわざとこんな物を持たせて辱めようとしているのね・・・

「そうだよね、君みたいに可愛いコがこんな箱を抱えて歩けないよね。」
青木は相槌を打ちながら慣れた手つきで二つの箱を解体した。そして二つの器具を手に持つと、手早く電池をセットした。
「はい、動作確認してもらっていいかな?」
青木がそう言って手を少し動かすと、二つのローターはブーン、という音を発しながら振動を開始した。

「わ、分かりましたから! だ、大丈夫、です、動作確認しましたっ」
梨沙は思わず手を伸ばし、二つのローターをひったくるように奪い、スイッチを止めた。そのローターに責められて絶頂に達した記憶が嫌でも蘇り、梨沙は身体の奥が熱くなるのを感じた。(い、いやっ、どうして?・・・)

「え、もういいの、動作確認?」
青木はひったくられたことには全く腹を立てた様子は無く、驚いたように言った。
「まあ、いいか・・・それじゃあ、代金、3万円いただきます。」
にこやかな眼がまた少し細くなった。

「え、さ、3万円って?」
急いでそのローターを鞄にしまおうとしていた梨沙は、思わず動きを止めて顔を上げた。
「あの、ですけどこれは、貰うようにって言われているんですけど・・・」

「おい、ちょっと待ってくれよ。誰が、『タダで』貰えるって言った? 商品を貰うんだから、金を払うのが当たり前だろ?」
青木は突然、高圧的な口調になった。

「そんな・・・急に言われても、そんなお金、持っていません・・・」
梨沙は念のため財布の中を見たが、やはり8千円しか入っていなかった。遊園地の入場券はフリーパス券を入口でもらうことになっていたので、食事やお茶のためならそれで十分と思って用意していたのだ。
「あの、・・・ちょっと、黒川さんと話してもいいですか?・・・」

「黒川さんなら、今日はもう大事な会議に入っている筈だから、連絡は取れないよ。」
すっかり雰囲気の変わった青木は、梨沙の言葉に被せるように言った。
「それに、話してどうするつもり? こっちとしては、開封しちゃった商品を返品されても困るから、ここで現金払ってもらうしかないんだよな。」

「・・・で、でも、今は8千円しか持っていないんです、すみません・・・」
梨沙は理不尽に感じても謝るしかなかった。青木の黒川への報告次第によっては、取り返しのつかない事態になってしまうのだ。

「うーん、仕方ねえなあ・・・ったく・・・」
青木は梨沙の身体をジロジロ眺めながら呟いた。
「・・・じゃあ、君が今着てる下着、売ってくれるかな?」

「・・・あ、あの、今は、下に水着を来てるんです・・・遊園地のプールに行こうと思って・・・」
本性を表し始めた青木の姿を見て、梨沙は小さな声で言った。
「あの、替えの下着ならあるんですけど・・・」

「はあ? 生脱ぎの下着じゃなかったら3万も取れる筈ないだろ? ・・・お前、ふざけてんのか?」
ちっと舌打ちをしながら、青木は苛立った様子で言った。す、すみません、と小さな声で詫びる女子高生を冷たい眼で見下ろした。
「・・・もう、しょうがねえな。それじゃあ、ストリップでもしてもらおうか。録画して売り裁けば今日中には3万、何とか稼げるかな。うん、K附だしな。・・・よし、じゃあ、そこで、全部脱いで見せろ。録画したビデオはすぐDVDにしてやるから、お前、店の外を歩いてる男達に自分で売るんだぞ。」
青木はそう言いながら、カウンターの下のビデオカメラを取り出した。

全裸姿を撮影される! しかも、自分で売り捌くって・・・梨沙は思わず両腕で身体を庇った。
「そ、そんな! 無理です、できません、そんなこと!」
梨沙は思わずキッとなって言った。ショウブ堂でも下着姿までしか撮られてないのに、そんなこと、できるわけない・・・

「ふーん、できませんっ、ねえ・・・さすがK附のお嬢様はプライドが高いねえ。」
青木は意外にも余り怒らずに言った。
「ま、いいか。・・・撮影が無理って言うなら、生でショーをしてもらうしかないな・・・今から外行って客引きしてきな。2、3人、あんな感じで口で抜いてやればすぐ稼げるだろ。」
青木はそう言いながら軽く手を上げ、壁に貼ってあるポスターを指し示した。そこには、制服姿で男の前に跪き、肉棒をしゃぶっているAV女優の姿が大写しになっていた。

そ、そんなっ!、と言いかけた梨沙を、青木は手を上げて抑えた。
「・・・そんなのはできないっていうの、我儘だねえ・・・それじゃあ、撮影なしの生ストリップショーでどう? それでもまあ、5、6人で稼げると思うけど?」

「ちょっと、いい加減にしてください! 私、絶対にそんなことしまっ・・・!」
勢い込んで言おうとした梨沙の前に青木の携帯の画面が見せられ、梨沙は口をパクパクさせた。
「・・・な、何ですか、これは・・・?」
そこには、ショウブ堂のソファーの上で、リボンとソックス以外は全裸にされて横たわっている女性の姿が映し出されていた。その眼の部分にだけモザイクが掛けてあったが、それは紛れも無くあの時の写真に違い無かった。そしてそれは、合成というには余りにも自然な写真だった。う、嘘、嘘よっ・・・

「あれ、どうしたの、梨沙ちゃん、びっくりしちゃって? やっぱり潔癖なお嬢様には刺激が強過ぎたかな?」
青木は梨沙の顔を見ながらニヤリと笑った。
「あー、この写真はね、黒川さんが最近送ってくれたんだけど、偉そうに言い掛かりをつけてきた女子高生がいたから、イかせてやって失神させて、こっそり撮ったものらしいよ。・・・ほら、マン毛までぐっしょり濡らしちゃってるの、分かるだろ?(笑)」
青木はそう言いながら、その写真の股間の部分を拡大した。超高精細で撮られたその写真は、拡大されても鮮明なまま、梨沙の恥毛の一本一本までを写し出していた。そしてそれは、たっぷりの愛液に塗れ、ぐっしょりとしていた。
「可哀想だね、このコ。こんな鮮明なオマンコ写真ばら撒かれたら、もう外を歩けないだろうね。あ、それからもちろん、動画もあるらしいよ。他にもいろんなシーンがあるみたいだし・・・本当にK附の生徒のだったら、いくら稼げるかなあ。」


そして、再度究極の三択を迫られた梨沙は、
@ストリップ動画のDVDを自分で売り捌く、
A自分で客引きをしてフェラチオをする、
B自分で客引きをして生ストリップを見せる、
の中から、泣く泣くBを選んだ。他の選択肢を、と訴えても青木が頑として受け付けなかったのだった。

「よし、それじゃあ早速、客引きに行くぞ。言っておくけど、30分以内に6人以上、集めろよ。できなかったら、表通りでゲリラストリップでもして稼ぐんだな。」
青木は躊躇う梨沙を後ろから押し、扉の外に出しながら言った。
「俺はちょっと離れてお前を監視してるからな。逃げられると思うなよ。」

こうして、名門校の美少女優等生の客引きが始まった。
(ど、どうしよう・・・)
梨沙は怪しい裏通りに一人で立たされ、なす術も無く立ちすくんだ。周囲に見えるのは、水商売風の女達、ホストや客引きの男達、そして、何となく紛れ込んでしまった一般人くらいだけだった。
(で、できない・・・あの人達に、私の裸を見て、お金を払ってなんて・・・だけど・・・)

「ねえ、あなた、さっきから何してんの?」
気が付くと、水商売風の女2人が梨沙の近くに来ていた。
「何だか知らないけどさ、あんた、普通の高校生なんでしょ? あんたみたいのが真面目そうな顔して立ってると、お客の男達の気が散っちゃってすごく迷惑なんだけど?」
「ちょっと、何か言いなさいよ。」

「・・・え、あ、あの、すみません、私、あの・・・」
風俗の匂いをプンプンさせている女性に囲まれ、梨沙はかあっと顔を赤くしたまま俯いた。何をしているかなんて、とても自分の口から言えなかった。でも、何か言わなくちゃ、どうしよう・・・

「ああ、ごめんごめん、君達の邪魔するつもりは無いんだよ。このコ、フェラも本番もNGだからね。」
いつの間にか近寄ってきた青木が後ろから2人の女に声をかけた。
「・・・あ、ミサトちゃんとユウカちゃん、こんちは。」

「あれ、青木さん、こんにちは! 最近遊んでくれないじゃないですかあ。」
「へえ、このコ、青木さんとこのコなの? ひょっとして新人? うっそー、すごい可愛いじゃん! ねえ、この制服、本物?」
ミサトとユウカと呼ばれた2人は、青木の顔を見ると突然雰囲気が変わり、にっこり笑った。

「あー、このコね。梨沙ちゃんて言うんだけど、実はさっきさ、TS-302のAとVを買いたいんだけど、お金が無いって言うから、ここで客を捕まえて稼ぐことにしたわけ。本人の希望で、生ストリップを見せて稼ぐんだって。」
ち、違いますっ、と言いかけた梨沙の尻をつねりながら、青木はしゃあしゃあと言った。


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