PART 16(bb)

 「な、何言ってるの、岩本くんっ!」
梨沙は顔を真っ赤にして叫んだ。必死に恥ずかしさを堪えてシュートの実演をしたのに、今度は服を賭けてもう一回やれだなんて、酷い・・・
「そ、そんなインタビュー、絶対におかしいわ!」

 しかし梨沙は、そのゲームの本当の狙いにまだ気付いていなかった。
「うん、確かにおかしいけどちょっと面白いかもね。」
さっきは梨沙を庇ってくれたゆきなが、今度は岩本の味方になってしまった。
「今までのインタビューじゃ、何か優等生過ぎて面白くなかったもんね。」

 「だろ? やっぱりちょっと工夫がないとさ。」
何か言おうとした梨沙を制して、岩本が嬉しそうに言った。
「大丈夫、梨沙ちゃんなら失敗しないよ。さっきの調子でかるーくやればいいんだから。」

 「そ、そんな・・・い、嫌です、そんな罰ゲーム!」
梨沙はきっとなって2人の女子を睨んだ。この状況で一枚脱ぐということは、ブラだけの上半身を披露するということだ。4人の男子が見ている前で・・・
「ゆきなちゃん、みどりちゃん、お願い、分かるでしょ?」

 「うーん、困ったなあ・・・」
ゆきなは腕組みをして岩本と梨沙を交互に眺めた。しかしその次の瞬間、ぽんと手を叩いて顔を輝かせた。
「そうだ、それじゃあ、どっちか失敗したら、じゃなくって、どっちとも失敗したら罰ゲームってことにしない? 成功率80パーセントとして、2回連続でミスする確率は4パーセントだけでしょ? それで、両方とも成功したら終わり、片っぽだけ成功したらやり直しってことで。」

 「だ、だけど、そんなの・・・」
梨沙はそう言い掛けたところで、ゆきながウインクをしてきたのが視界に入り、言葉を止めた。

 「そんなのじゃまだ、プレッシャーが足りないかな。それじゃあ、もっとギャラリー増やそうか?」
ゆきなは梨沙の言葉をわざと誤解して言った。
「やっぱり新井くんとか呼んであげると喜ぶだろうね。」
ゆきなはさり気なく新井の名前を出したが、それは明らかに梨沙に対する脅しだった。
(ふふ、新井くんにまで弱味を握られちゃったって話、本当みたいね。下着姿まではなれるわよね?)


 梨沙は結局、それが新井の言葉を信じるかどうかのテストであることを改めて思い知らされ、そのゲームを受け入れざるを得なかった。しかも、岩本と女子2人のやり方はあまりにも意地悪で、梨沙が自らゲームを了解し、わざと失敗して下着姿になれ、というものだった。そして、事情を知らない写真部の一年の3人と村岡が、梨沙がゴールを決めるかどうか、固唾を呑んで見守っていた。

 「それじゃあ梨沙ちゃん、始めてください。・・・両方外したら一枚脱ぐというプレッシャーがあっても成功するでしょうか?」
岩本がそう言って、ゲームの開始を宣言した。

 「はい、それでは、いきます・・・」
(い、いや、こんなの・・・)梨沙は内心の屈辱を堪えながらボールをついてドリブルを始めた。ポンポンポン、とリズミカルな音が静かな体育館の中で反響した。そしてリングをちらりと見て位置を確認すると、ドリブルしたまま足を前に踏み出した。

 静かな体育館にボールとシューズの音が小気味良く響いた。しなやかな身体の動きと凛々しく引き締まった表情に皆が見とれ、写真部員達は連続してシャッターを切った。
 梨沙はそのまま、流れるように自然にジャンプをして、ボールを持った手を上に掲げた。しかし最後の瞬間、ほんの少し手が開き、ボールがその上を滑ってしまった。

「・・・あっ!」
梨沙は小さく悲鳴をあげ、慌てて手を閉じようとしたが、ボールの軌道は戻らず、リングに横からぶつかって弾かれてしまった。

 「あれ、惜しかったねえ、梨沙ちゃん。途中までは完璧だったのに、最後だけタイミングがずれぢゃったのかな?」
岩本がわざとらしく驚いた様子で言った。(梨沙ちゃん、わざとらしくなく失敗するのもうまいんだね(笑))
「やっぱり、罰ゲームが気になったのかな?」

 「それに、今でも下着が透けちゃってるから、恥ずかしかったんじゃない?」
梨沙の姿をにやにや眺めながら村岡が追随した。
「特に胸なんて、スポーツブラじゃないから震えまくりだしね?」
 
 「む、村岡くんっ!・・・」
思い切りスケベな目で胸を見つめられ、梨沙は思わずキッとなった。しかしすぐに、自分の立場を思い出して言葉が続かなくなった。こんな男に下着姿を見せなきゃいけないなんて・・・梨沙は村岡を小さく睨んでから、黙って歩き、フリースローラインに立った。

 「はい、それじゃあ梨沙ちゃん、頑張ってねえ。もし外したら、ブラ姿の公開だよー。」
村岡が囃し立て、わざと梨沙にプレッシャーをかけた。ちょっとやめなよ、村岡くん、と女子2人が言ったが、その顔はにやにや笑っていた。

 「そ、それじゃあ、いくわよ・・・」
梨沙はそう言いながらボールを持ち、正面のリングを見据えた。いつもならどう動けばいいか身体が覚えていて、心を落ち着けて流れに任せるだけだった。しかし今は、わざとその流れを乱し、少しだけ軌道を変えなければならない・・・(仕方無いわ、下着姿までは諦めたんだから・・・)梨沙は芳佳との話を思い出しながら、ゆっくりとボールを構え、リングの少し左側を狙った。そしてその場の全員が注目する中、ボールはきれいな軌跡を描いてリングに向かっていった。しかし最後の瞬間、ボールはリングの左側に当たり、外へと大きく弾んだ。それは、完璧に梨沙が狙ったとおりのコースだった。
「あ、ああ・・・」
狙ったとおりとは言え、梨沙は思わず声を上げた。や、やっぱりいやよ、こんなところでなんて・・・

 梨沙のその呻き声は、男子達の歓声と女子2人のはしゃぎ声にかき消された。特に、事情を知らない4人の男子は、まさかの展開に大喜びだった。下着が透けているだけでもこんなに刺激的なのに、まさかそれ以上が見られるなんて・・・

 「あれ、残念だったね。梨沙ちゃん、やっぱりプレッシャーに弱いんだね。」
わざと失敗することを命令していた癖に、岩本はしゃあしゃあと言った。
「それじゃ約束どおり、一枚脱いでもらおうか?」

 「・・・だ、たけど・・・」
体育館の真ん中で7人の男女に注視された梨沙は表情を強ばらせた。
「こ、ここでなんて無理よ。せめて、どこか、別の所じゃないと・・・」

 「ふーん、じゃあ、ホテルにでも行く?」
村岡がにやけて言って、梨沙の肢体を舐めるように見つめた。
「それとも、渋谷の交差点で公開露出とか?(笑)」

 な、何を馬鹿なことを、と言いかけた梨沙を制して岩本が口を挟んだ。
「まあまあ村岡、あんまり苛めるなって。梨沙ちゃんのブラ姿が生で見れるんだからいいだろ?」
そして今度は振り返って梨沙を見た。
「大丈夫だよ、ちゃんと鍵はかけてあるから、俺達以外に見られる心配はないから。」

 すっかり逃げ道を塞がれた梨沙は、ついに観念した。
「わ、分かったわ・・・だけどお願い、せめてそのゴールの裏で脱がせて。」
ギャラリーに好奇の視線を浴びせられながら脱ぐのは避けたい、それが梨沙のささやかな希望だった。

 「駄目だよ、梨沙ちゃん、脱ぐとこもちゃんと見せてもらうよ。」
岩本があっさり否定すると、梨沙以外の全員が頷いた。
「これは罰ゲームなんだから、うんと恥ずかしい思いをせてもらわないとね(笑)」

 「あ、それならさ、ちよっと希望があるんだけど・・・」
村岡がそう言って皆の顔を見回した。
「上じゃなくって、下を脱いでもらうってのはどう?」

 「そ、そんなっ!」
梨沙は村岡のあまりな提案に顔を引きつらせた。バスケウエアのズボンを脱いだ格好で、ショーツだけの下半身を晒してプレーしろと言うのか・・・

 「うん、まあいいんじゃない?」
梨沙が絶句している間に、ゆきなが勝手に決めてしまった。
「だって罰ゲームの約束は、一枚脱ぐこと、だったよね? それなら、どれを脱ぐかは私達が決めてもいいでしょ?」


 そして、巧妙な脅しの前には梨沙の抵抗も空しく、ついに皆の前でバスケウェアの下を脱ぐことを了承せざるを得なかった。はいどうぞ、という村岡の軽薄な掛け声に指示され、屈辱のストリップを演じることになった梨沙は、唇を噛み締めながら手をズボンの裾に差し入れた。

「はい、梨沙ちゃん、顔を上げて。」
同じく正面でカメラを構えていた岩本が、やはり明るい声で「指導」した。
「そうそう、それから視線はカメラに向けてね。もちろん笑顔で、ニッコリ笑いながら脱いでくれる? できなかったらやり直しね。」
岩本が非情な指示を連発する様子を、1年生の3人は驚愕の表情で見つめていた。

「い、岩本くん・・・こ、こ、こう、かしら・・・」
これ以上抵抗しても無駄なことを悟らされていた梨沙は、内心で恥辱に塗れながら、岩本と村岡がカメラをを構えている方を向いて、引きつった笑顔を作った。(もう少し、もう少しだけ、我慢しなくっちゃ・・・そうじゃないと、今まで頑張ったのが無駄になっちゃう・・・)梨沙は脚が小さく震えながらも、ズボンの裾にかけた両手に力を込めて押し下げていった。

そして、静まり返った体育館の中で、ついに美少女の屈辱のストリップが始まった。5人の男子がカメラを構える中で、バスケウェアのズボンをゆっくり下ろすと、まずは美しい肌がちらりと見え、その後すぐに、水色のパンティが上から姿を現した。男子達の刺すような視線が梨沙の下着に集中するのを感じ、梨沙の手が思わず止まった。
(そ、そんなに見ないで・・・)
梨沙は顔から火が出そうになるのを感じながらも、その手を一気に下ろした。躊躇ってゆっくり脱ぐ方が、却って男子達を刺激することが分かったからだ。そしてズボンが足元まで引き下ろされ、パンティだけの下半身が顕になると、ギャラリー達は皆、その美しくも卑猥な姿に沈黙した。

 「こ、これで、いいんでしょ?」
梨沙は内心を悟られまいと平静を装ったが、その声はいつもより力に欠け、脚は小さく震えていた。その両手は、水色のパンティに包まれた股間を必死に庇っていた。


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