PART 27(ba)

 そのプールは中心にウオータースライダーの降り口となる島があり、その周囲が流れるプール、という特殊な構造になっていた。流れるプールは人の流れではなく、電気的に周囲の壁や床を微妙に振動させて流れを発生させる仕組みだった。そして今、その梨沙の前方では誰もプールに入っていなかった。但し、その両サイドには水着の男女が鈴なりになっていた。皆、自分が裸で泳いで来るのを期待しているのが分かったが、それでも梨沙は半裸姿を晒して泳ぐしかなかった。

 しかし、梨沙の試練はさらに続いた。クロールで足をバタバタさせようとした瞬間、股間に縄の結び目が食い込み、中のローターが膣と尻の穴の中を刺激したのだ。
「ん、んぷっ! あ、あっあっ、あんっ、んぷ・・・」
予想外の快感に梨沙の身体の動きが止まり、喘ぎ声をあげながら溺れかけてしまった。

 「どうしたの、梨沙ちゃん、急に悶えちゃって(笑)」
「ストリップスライダーの後は、エロエロスイミングなんて、サービスいいねえ、さすが10万人記念!」
「素人みたいな顔して、本当は仕込みのAV女優なんでしょ?」
「次はどんなショーを見せてくれるのかなあ?」
「早くしないと、タスキが流れていっちゃうけどいいの?」
最初に見たときには清楚で真面目そのものだった制服の美少女が、今では男達の眼前で肌のほとんどを晒して喘いでいる・・・もはや、ギャラリーは完全に梨沙を弄ぶことを楽しんでいた。

 「や、やめて下さいっ! わ、私、そんなんじゃありません!・・・あ、い、いや、ち、違うの・・・」
ようやく股間からの刺激が収まってきた梨沙は、両腕で、胸を庇いながらプールサイドのギャラリーを睨んだが、その後ろに設置されたモニター画面を見て表情を強ばらせた。そこには、さっきからのとおり、梨沙をりーちゃん呼ぶ、小学校時代のクラスメイトのコメントで溢れていた。
(い、いや、みんなにこんな姿を見られるなんて・・・あ、いやっ)梨沙は下を見て、水の上から自分の乳房がゆらゆらと透けて見えていることに気付くと、慌てて両腕で上半身を庇った。えー、今更隠さなくてもいいじゃん、とプールサイドのギャラリーから野次が飛び、失笑が起こった。

 しかしさらに梨沙にとって衝撃的な事態が発生した。モニター画面に映し出された梨沙の映像が突如切り替わり、水中の映像になったのだ。それは明るく透明度の高い水の中であり、日の光が差し込んできらきらと光っていた。そしてその画面の中央には、一人の女性の首から下の身体が映っていた。その女性はブラをしていない胸を両手で隠していたが、下半身を纏う布がふわふわと捲れ上がり、美しい腰回りのラインが半ば露わになっていた。

 「お、おい、あれ・・・ひょっとして梨沙ちゃんの水の中?」
「そうだよな。潜った奴が持ってたカメラ、システムと連動してるのかな。」
「てことは、あのお尻、梨沙ちゃんのってことだよな・・・もっと近付いてくれ・・・」
「はっきり見えないけど、やっぱりTバックだよな・・・」
「やっぱりな、さっきスライダーの下から見てた奴も言ってたしな、赤のTバックだって」

 「・・・え、う、嘘・・・」
呆然とモニター画面を見る梨沙の耳元にギャラリーの囁き声が聞こえ、梨沙は絶句した。しかしそれはまさに、水に潜って後ろから追ってくる男のカメラが捉えた映像に違いなかった。
「い、いやあっ」
自分のお尻が水の中でどんどんアップになっていくのを見て、梨沙は悲鳴をあげた。このままじゃ、本当はTバックですらないってことがばれちゃう・・・梨沙は男たちから逃げるように泳ぎ出した。しばらく立ち止まっていたため、先に流れていたタスキは20メートルほど前方に行ってしまっていた。

 そして、梨沙の半裸姿でのスイミングが再開された。クロールで腕を上げる度に片方の乳房が半ば以上露わになり、また、パレオがひらひらと捲れ、プールサイドのギャラリーに白い尻肉をちらちらと見せ付けた。梨沙ちゃん、がんばれー、と冷やかしの混じった声援を浴びながら、梨沙は全速力で泳ぐしかなかった。とにかく、あのタスキを胸に巻くのよ・・・

 運動神経のよい梨沙は水泳もうまく、前方のタスキとの距離をどんどん縮めていった。そして、後続の男たちも大分引き離すことができた。パレオを巻いているため、ばた足をし辛いのが難点だったが、膝から下の動きに注意して対応していた。あ、あと少しよ・・・梨沙はすぐ目の前のタスキに向けて腕を伸ばそうとした。ギャラリーの声が止んでいるのが少し引っかかったが、今はそんなことを気にしている余裕はなかった。

 しかしその時、梨沙は下半身に違和感を感じた。ばた足の時の窮屈感がいつの間にかなくなっていたのだ。それに、下半身が直接に水の流れに晒されているような感覚・・・(ま、まさか・・・)梨沙は右手でタスキを掴み、左手を下半身に回した。
「あ、あっ、そんな・・・」
パレオが無い! 梨沙はあまりの事態に絶句した。後ろを振り向くと、パレオは10数メートル後ろに浮かんでいて、後続の男たちがまさにそれを掴んで歓声をあげているところだった。うそ、それじゃあ私、裸の下半身に縄だけの姿で泳いでいたの・・・?

 「あはは、梨沙ちゃん、やっと気付いたみたい!(笑)」
「可愛いお尻をくりっくりっとして泳ぐところ、じっくり楽しませてもらったよ。」
「だけど梨沙ちゃん、その赤いのってTバックじゃないよね? ひょっとして縄?(笑)」
「早くしないと、水中カメラでアップになっちゃうよ!」

 (あ、い、いやっ・・・)両サイドのギャラリーに卑猥なからかいを浴びせられながら、梨沙はタスキを胸に巻こうとした。しかし慌てて強く引っ張った結果、タスキの端がびりっと破れ、たらんと垂れ下がってしまった。
「そ、そんな・・・」
あまりに異常な状況と想定外の事態に、梨沙の頭の中は真っ白になった。今、大勢の人たちに見つめられてプールにいる自分は、全裸の身体の下半身に縄を巻いただけになってしまった。そして、あと数秒で追いついてくる男達の水中カメラで映されれば、梨沙は秘密の全てを遊園地の全モニターに映され、さらにインターネット会員の端末にも中継され、小学校時代の同級生達にも知られてしまう・・・泳いで逃げようとしても、ここはぐるっと一周するだけのプールなのだ・・・
「い、いや、こないで、お願い・・・」
もはや梨沙にできるのは、右手で秘部を、左手でお尻を押さえて立ち尽くし、迫ってくる男達に向かって懇願することだけだった。

 そして程なく、背後から泳いできた男達がようやく梨沙に追いついた。近くのモニター画面を見ながら、意地悪く梨沙の下半身を捉えた水中中継画像を映し出した。至近距離から捉えられた女性の下半身に、何本かの縄状のものが巻き付いているのがはっきりと分かった。おおっというギャラリーからの歓声と、<ぶはっ、本当に股縄縛りw><りいちゃん、いつの間に変態になったのw><やだ、最低、信じられない!><手をどけてあそこに食い込んでるの見せろww>といったモニターの文字の大群が梨沙を更なる恥辱地獄に突き落とした。

 「お、お願いです、そのパレオ、返してください・・・」
梨沙は下半身をできる限り手を広げて庇いながら、前方の男達に向かって言った。これでは乳房を見せつける格好になってしまうが、縄の食い込んだ秘部を中継されることだけは避けたかった。

 「うーん、いいけど、まずその格好について説明してくれない?」
パレオを手に持ったその男は、ひらひらと振りながら言った。
「どうして梨沙ちゃん、水着の下を穿かないで縄だけなの? みんな、聞きたがってると思うんだけど?」
<うんうん>と白い文字が流れた。

 「そ、それは・・・」
改めて質問され、梨沙は言葉に詰まった。まさか、今日までの出来事を逐一話す訳にはいかない。このままでは、自分がプールに破廉恥な姿で来る変態だと思われてしまう・・・

 「ふーん、答えられないんだ・・・そういうことね。」
パレオを持った男はにやにや笑いながら、梨沙の乳房を見つめた。
「それじゃあさ、この場でその縄をほどいて、俺に渡してくれたら、交換にパレオをあげるよ。露出狂の梨沙ちゃんとしては、その方が嬉しいだろ?」

 「そ、そんな・・・」
例え恥ずかしい縄であっても、秘裂とお尻の穴を隠す役割を果たしているそれを解いてしまうことは躊躇われた。それはつまり、水中で完全な素っ裸になることでもあった。
「そんなこと、できません、お願い、許してください・・・」
その言葉がピンクの文字となって画面を流れ、<今更気取るな、変態女w>などと怒濤の白い文字が後に続いた。

 しかしその時、またもや意外な事態が発生した。
「おまえら、全員その場を動くな!」
いきなり鋭い声が飛び、サングラスをかけた3人の男がプールサイドに現れた。その男達は慣れた動作で黒い革手帳を掲げ、周囲に見せた。
「谷村梨沙、公然猥褻物陳列罪及び風営法違反の容疑で逮捕する」

 その瞬間、周囲のギャラリーがえっと疑問の表情をした。なぜ梨沙だけが捕まるのか、それに、風営法違反とは何なのか・・・

 そして好奇の視線を浴びた梨沙は、あまりの事態に訳が分からず、両腕で下半身を庇ったままで私服刑事達の方を見た。
「わ、私、自分からこんな格好している訳じゃありません・・・た、助けてください・・・」
そうだ、自分は男達に破廉恥に責め立てられ、助けられるべき立場なのだ・・・梨沙はさっきの刑事の言葉が何かの間違いだと思った。

 しかし刑事達は、梨沙の期待に反して首を横に振った。
「ほう、とぼけるつもりか・・・それじゃあ、これは何だ?」
刑事の一人がそう言うと、一枚のカード状の物を高く掲げた。ご丁寧にも誰かがそのカードを映し、モニター上にアップで表示させた。それは、梨沙の学生証のコピーだった。ギャラリーはその画像を見て拍子抜けした様子だったが、梨沙の表情だけが凍り付いた。

 「やっぱり心当たりがあるようだな・・・」
私服刑事はにやりと笑うと、その学生証のコピーを裏返した。すると裏面の上半分には、
『サイズ:B80、W58、H83、処女、得意なポーズ:M字開脚、四つん這い、Y字バランス、高手小手縛り、蟹縛り』と印字してあり、その下には谷村梨沙と書いたサインが記されていた。サインの上には唇型のピンクがあり、さらに、一本の毛が挟まれていた。え、なんだありゃ、とあちこちでひそひそ声とどよめきが聞こえた。
「これはお前の直筆サインで間違いないな。この唇マークは、お前のキスマークだな。それからこの毛は、お前の陰毛だな? つまりこれは、アダルトショップで変態的なショーの得意客へ配っているお前の名刺だ、違うか?」
刑事が淡々と言葉を発する度に、どよめきと驚愕の声が大きくなっていた。あまりに卑猥なその名刺が映し出され続け、徐々に嘲笑と歓喜の書き込みが増え、画面を白い文字が埋めていった。

 (ひ、ひいっ、い、いやあっっ!)
高々と掲げられたその「名刺」を見て、梨沙は内心で絶叫した。絶対に知られたくなかったことが、こんな場で露わにされるなんて・・・そして私、逮捕されてしまうの、死にたいほど恥ずかしい罪を着せられて・・・
「ち、違いますっ! な、何のことか、私には分かりません・・・」
梨沙は必死に平静を装おうとしたが、声が震えるのを抑えることができなかった。一体この刑事達はどこまで知っているの・・・お願い、見逃して・・・

 「おい、警察を甘く見るなよ、谷村! 証拠はいくらでもあるぞ、この名刺についた指紋、口紅、それから陰毛・・・じっくり照合させてもらってもいいんだぞ・・・」
プールの中で立ち尽くし、いやいやをするように首を振る美少女を見下ろしながら、刑事は少し口調を軟化させた。
「・・・まあ、お前も悪い奴に騙されたみたいだから、同情の余地もあるんだし、素直に罪を認めた方がいいぞ。・・・残念だが、こっちには証人もいるんだ。」
そう言って刑事は、後ろにいた男を前に引き立てた。それは、アダルトショップ「モリワカ」の店長の青木だった。


前章へ 目次へ 次章へ  

痛風 アクセスカウンター