PART 36(bbbaa)

 「そ、そんな、やめてください・・・言われたとおりにしますから・・・」
梨沙は震えた声で言うと、左手に持っているカメラをトイレのタンクの上に置いた。そして右手を下ろし、スカートの裾を握ると、ゆっくりと持ち上げていった。

 『ほう、今日は水玉のパンティか。やっぱりウブな梨沙ちゃんにはお似合いだねえ』
耳元から少し笑ったような声が聞こえた。
『ほら、もっと大きくめくって!・・・よし。それじゃあ、カメラに向かって挨拶してみろ、こんな風に・・・』

 そ、そんなこと!、と悲鳴を上げかけた梨沙は、トイレ内にいることを思い出し、慌てて口をつぐんだ。そして小声で哀願したが、もちろん受け入れられることはなかった。

 梨沙は超小型カメラを見つめながら、再びスカートを大きく捲り上げ、作り笑いを浮かべた。
『谷村、梨沙、今日のパンティは、可愛い水玉の柄です。・・・今日は、靴の先にカメラを付けて、自分で自分を盗撮して、スリルを味わいたいと思います・・・』


 一番後ろの車両に乗るように指示された梨沙は、そわそわした気持ちで乗り込んだ。超小型カメラは、右の靴の甲の部分に取り付けられ、ほぼ垂直に真上を狙っていた。

 『よし、いいぞ、バッチリ見えるよ、梨沙ちゃんの足!・・・もうオマンコの奥まで見てるけど、こういうのもスリルがあっていいねえ。』
左耳に付けた超小型インカムから黒川の声が聞こえた。

 (い、いや、こんなの・・・)梨沙は顔を真っ赤に染めて恥辱に耐えていた。今、靴先に取り付けられたカメラからの映像は、梨沙の携帯に転送され、黒川の指示でインストールされたアプリ上に表示されていた。そのアプリでは、ただ映像を表示するだけでなく、ズームや露出を調整することもできた。それで、映り具合を確認して調整しろとも指示されていた。またその映像は、通信回線を介して黒川の端末にも転送されることになっていた。梨沙は自分の携帯端末で、スカートの真下から盗撮している映像を見なければならなかった。

 電車の中は比較的空いていて、梨沙は駅のホームと反対側の扉のところに立っていた。少し足を開き、右足の爪先を少し内側に向け、自分で映りを確認した。携帯端末には、薄暗い中にふくらはぎと太もも、水色のパンティの股間が映っていた。
(ああ、こんなのひどい・・・早く終わって・・・)

 『それじゃあ、もっと足を大きく開いてくれ。』
『少しく暗いな。扉の窓の正面に立ってくれ。』
『スカートを少し捲り上げるんだ・・・ウエストに折り込めばいいだろ・・・膝上20センチくらいまで。』
『もっとパンティがよく見えるようにズームしてくれ・・・』
インカムからの黒川の指示は徐々に過激さを増していき、梨沙は通学鞄で後ろを隠しながらも、太ももの大半を晒すミニスカートにされていた。両足は不自然でないぎりぎり、肩幅より少し広く開かされていた。すっかり露わになっている太ももとその間のパンティの股下の部分を携帯端末で見ながら、梨沙は恥辱に唇を噛んでいた。

 電車が次の駅に着く手前でようやく許されると、梨沙は慌てて脚を閉じ、スカートの裾を整えた。黒川が、他の客に発見されていないように配慮しているのだと思うと、梨沙は少しだけほっとした。ただ、スカートを二巻きウエストに折り込んでいるため、膝上20センチのミニスカートになっているのは直すことを許されなかった。

 電車がゆっくりと止まり、扉が開く音が聞こえた。反対側の扉に向かって立っている梨沙には、ガラス越しに反対側のホームの人達が見えた。この電車の扉は窓を思い切り大きく取っているため、梨沙のほとんど全身像が向かいには見えていると思うと、脚が小さく震えた。こんな非常識なミニスカート姿を、誰か知り合いに見られたら・・・

 「きゃっ!」
突然圧迫され、梨沙は小さく悲鳴をあげてよろめいた。思ったよりも多くの客がどっと乗ってきたため、ぼうっとしていた梨沙は急に押されて不意を突かれたのだ。

 「あー、びっくりした。」
「何か、今日はすごく混んでるね。」
「一番後ろだから混まないと思ったのにい。」
梨沙の背後から、女子高生らしき声が聞こえてきた。幸い、知り合いの声ではなかったので、梨沙は少しほっとした。

 扉が締まり、ゆっくりと電車が動き出した。ここからしばらくは揺れの大きなところなので、梨沙は気持ち力を込めて立っていた。

 『脚をもっと開けよ、梨沙ちゃん。さっきみたいに大きく!』
突然、耳元のインカムから黒川の声が聞こえた。
『それから、膝は開いて、右の足首は中に入れて上に向けるんだ。ちゃんと携帯の画面を見て映ってるか確認してないだろ?』

 (そ、そんなの、無理よ・・・)
耳から聞こえる黒川の声に、梨沙は苦渋の表情になった。そうだ、黒川には、この状況が分からないのだ。それに、黒川の声はインカムで聞こえても、梨沙から黒川に話しかける手段はないのだ。靴に付けたカメラのマイクに大声で話しかけることはできない・・・だけど、こんな満員電車で不自然に大きく脚を広げたら周囲から恐ろしく迷惑がられるに違いない・・・
(お願い、分かって、この状況・・・早く駅に着いて・・・)
すっかり梨沙を取り囲む形になっている女子高生の集団がきゃっきゃっと話して笑い合っている中、梨沙は一人、怯えた表情でうつむいていた。

 しかし、梨沙の願いはいずれも叶えられなかった。それから十秒もしないうちに、苛立った声が聞こえてきたのだ。
『おい、どうしたんだよ、無視する気か。・・・いいんだぞ、あの動画をばら蒔いても・・・遊園地の機関車の上で潮吹きオナニーしてるやつ、学校の全員に送ったら大騒ぎになるだろうな(笑)・・・』
黒川はそう言うと、梨沙の反応を待つように少し間を置いた。
『・・・よし。あと十数えるうちに脚を開いて中を見せなかったら、お前のエロ動画、全部公開するからな・・・できないと思うなよ。俺達は、舐められたら容赦しないってこと、分かってるだろ? 十、九、八・・・」

 (そ、そんな・・・)
カウントダウンの声が耳元に聞こえ、梨沙の顔が引きつった。思い出すだけでも消え入りたくなるような動画の数々がもし公開されてしまったら・・・自分には選択の余地がないことを改めて思い知らされた。多少の無理があっても、やるしかないのだ・・・周囲の女子高生たちの楽しそうな会話が、まるで遠くのようにぼんやりと聞こえた。

 満員電車の中、梨沙はゆっくりと脚を開き始めた。少しずつ、少しずつ、膝を開いていき、これ以上だと隣の女子高生の脚を押してしまいそうなところで止めた。

 『おい、何だよ、そんなとこで止めたら見えないだろ。ふざけてんのか、もっとがばっと開くんだよ!』
インカムから黒川の苛立った声が聞こえた。
『さっきと同じように、お前のパンティがはっきり映るようにするんだよ。今度は5秒しかやらないからな。・・・五、四、・・・』

 (い、いやぁ・・・)破滅まであと数秒の状況に追い込まれ、梨沙は内心で悲鳴をあげた。もっと開かなくちゃ・・・

 「え、何? ちょっと!」
隣の女子高生が、小さな声で抗議した。満員電車の中、突然隣で脚を開き出して自分の脚を押してきたのだから、それも当然だった。その声に、周囲の女子高生達も不審げな視線を梨沙に向けた。

 「ご、ごめんなさい・・・」
梨沙は小声で謝りながらも、不自然に開いた脚を閉じることはできなかった。

 『おい、脚、開いたのか? スカートの中が見えないぞ。ちゃんと足首を中に入れろよ。』

 スカートの中を右足の靴の甲の部分に付けられた小型カメラに映すためには、右足を少し斜め後ろに引き、さらに膝を曲げなければならない。しかし、横にも後ろにも女子高生がいるのだ・・・(ごめんなさい、少しだけ・・・)梨沙は非難されるのを覚悟で、広げたままの右足を後ろに移動した。
 え、ちょっとぉ、というひそひそ声が聞こえたが、ここでやめる訳にはいかない。梨沙は右足を曲げ、膝を曲げようとした。

 その時、走っていた電車がガタンと揺れ、少しブレーキがかかった。
「きゃ、きゃあっ」
一時的に左足だけ立っていた梨沙は、思い切りバランスを崩して小さく悲鳴を漏らした。

 ブレーキの反動で、浮きかけていた右足を前に持っていこうとした。しかし、大きく開いた足は、隣の女子高生の足に引っかって止まった。その結果、梨沙は思い切り大股開きになり、踏ん張って立っている状態になった。
「す、すみません、ごめんなさい・・・」
梨沙は右隣の女子高生に向かってささやくような声で謝った。

 「もう、ちょっとぉ・・・」
右隣の女子高生は、露骨に嫌悪の表情を浮かべた。周囲の女子高生も今の状況を察して、梨沙に非難の視線を向けていた。

 しかしその時、予想外の声がインカムから聞こえた。
『お、やっとパンティが見えたぞ・・・あれ、白? 色が違うな・・・太もももむっちりして・・・あはは、いいぞ、梨沙! 他の女のスカートの中に足を入れたんだな?』
それは、さっきとは打って変わって上機嫌になった黒川の声だった。
『人のを身代わりに見せるから、自分のはもう許してくれってか? それならいいぞ。・・・けど、こんなに真下から映すって、お前、可愛い顔して人が悪いな・・・』
インカムからの中継映像しか見えない黒川は、梨沙が自分の意思でやっていると勘違いしていた。

 (違う、そんなつもりじゃないのに!・・・ご、ごめんなさい!)
結果的に隣の女子高生のスカートの中を盗撮する形になり、梨沙は内心で必死に謝った。しかし、身動きのとれない満員電車の中では、大股開きのままで立ち続けるしかなかった。お願い、早く次の駅に着いて・・・周囲の女子高生の非難のささやき声が聞こえてくるのが辛かった。

 ようやく電車が次の駅に着くと、梨沙達と反対側の扉が開き、何人かが降りていった。そして乗車の客が少なかったため、車両の中はかなり余裕ができるようになった。

 「すみませんでした・・・」
梨沙は小さな声で謝り、右の女子高生に絡んだ右足を戻した。

 『お、今度は別のコのパンティ見せてくれるのかな? 女同士だとやりやすいだろ?』
勘違いした黒川の声がインカムから聞こえた。
『あと3人位盗撮したら、今日は終わりにしてやってもいいぞ。』

 (な、何言ってるのよ!、そんなこと、する訳ないじゃない・・・え?)
思わずかっとなった梨沙だったが、突然後ろから肩を掴まれ、思考はそこで中断した。

 「ちょっと、その靴の先に付いているのは何?」
それは、後ろの女子高生の声だった。

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