PART 41(bbbb)

 3時間目が始まった。結局、アイリスの命令に従わなかった梨沙は、びくびくしながらちらちらと携帯端末を確認し、全く授業に身が入らなかった。本当に、あの画像をばらまかれてしまうのか・・・それに「更に恥ずかしい画像」とはどんな画像なのか・・・まさか、遊園地から出るときに柵の上で、裸を見せてしまったときの!?・・・梨沙は生きた心地がせず、脚をカタカタと震わせていた。

 そして、梨沙の不安は、クラスメイト達の期待でもあった。いつも凛々しく、知的で清楚という言葉がぴったりだった美少女が、今は顔を真っ赤にして、羞恥に震えているのだ。それは、男子と女子に、もっと恥ずかしい思いをさせてみたい、という嗜虐心をこれ以上なく引き出していた。

 授業が始まって10分が経過した頃、梨沙は教師に指名され、解答を板書しなければならなくなった。できるだけ目立ちたくない梨沙にとって、それは最悪の事態だった。解答を書くには2,3分はかかる・・・その間、立っている後ろ姿をクラスの皆に見られてしまう・・・みんな、私が走りながら水着を下ろしてお尻を出している写真と見比べる・・・チョークを持ち、黒板に向かった梨沙は、尻の溝に皆の視線が食い込んでくるような気がして、思わずびくっと震えた。

 「おい、何をぐずぐず書いてるんだ! お前なら簡単だろ、こんなの!」
差し棒でぽんぽんと梨沙は頭を叩かれ、教室ははわっと笑いに包まれた。

 梨沙が解答を書き始めてしばらくすると、教室の中にブーン、という振動音があちこちから響いてきた。

 (い、いやあっ!)
梨沙は脚が崩れそうになったが、教師がじっと見つめている状況では、後ろを見ることはできなかった。解答を書き続けるしかない・・・
(お願い、メールを見ないで・・・まさか、本当にネットに公開されちゃったの・・・)
なかなか思考がまとまらず、チョークを持った手が止まってしまった。

 カチャ、カサッ・・・梨沙の願いも空しく、携帯端末を操作しているだろう音が、背後のあちこちから聞こえてきた。みんな、そんなに見たいの、私の恥ずかしい姿・・・見ないで削除してくれたっていいのに・・・ひどい、ひどいわ・・・

 それから十数秒後。おおお、うっわぁ、きゃっ、これはっ、すっげぇ・・・あちこちから押さえきれない声が聞こえ、再び教師の怒号が響いた。

 生徒達が歓喜するのも無理はなかった。再び黒木から送られてきたメールには、2枚の画像が追加されていた。1枚目は、全裸で走る少女の後ろ姿だった。そして2枚目は、全裸で走っている梨沙を正面から撮った写真だった。梨沙は左腕で乳房を、右手で秘部だけを、辛うじて隠していた・・・
 今度のメールの宛先は、クラスのメーリングリストではなく、全校生徒のメーリングリストだった。そして要求もグレードアップし、今日、緊急生徒総会を開いて、全校生徒の前でストリップとオナニーショーを行い、その模様を生中継すること、となっていた。さらに、もし従わない場合、「更に恥ずかしい画像」をネットにばらまくと・・・

 そのメールを見ることができないまま、後ろ姿を見せて板書し続ける梨沙の怯えた様子は、クラスメイト達にとってたまらなくおもしろいショーだった。男子のほとんどは、全裸後ろ姿で尻丸出しの画像を携帯端末に表示し、板書をする梨沙のスカートを見てにやにやしていた。

 梨沙は解答を書き終わっても、席に戻ることを許されなかった。解答について、その場でクラスメイトに説明するように指示されたのだ。
誰も、梨沙の説明など聞いていなかった。それよりも、かちっと制服を来た美少女と、携帯端末の全裸を両手で隠すだけの梨沙の画像を見比べて楽しんでいた。

 (あの下の胸、絶対結構でかいよな)
(手で隠せるってことは、毛は少な目なんだろうな(笑))
(でも、結構でかくていいケツしてるよな(笑))
(「更に恥ずかしい画像」楽しみだな・・・これより恥ずかしい画像って・・・(笑))
(いや、それよりも生ストリップの方がいいだろ? 生徒総会、最前列になりたいと初めて思った(笑))
(もう、男子がいやらしくなりすぎなんだけど・・・クラスの風紀乱さないでほしいわ)
(ほーんと。裸を見てもらいたいんだったら、放課後にしてよね)
(アイリスってさ、AVメーカーだよね・・・よくやるね、梨沙ちゃん(笑))
(・・・で、緊急生徒総会、あるのかな・・・じゃあ今日の塾はさぼるか(笑))
(うっそー、生徒総会なんて、するわけないでしょ!? だって、全校生徒の前で・・・なんて・・・信じられない(笑))
梨沙がたどたどしく説明している間、ひそひそ話とクスクス笑いは絶えることなく続いた。教師も呆れたように、途中から私語を叱らなくなってしまった。

 そして、ようやく席に戻ってメールを確認した時の梨沙の反応もまた見物だった。添付された画像を見た時、梨沙の瞳が大きく見開かれ、はっとしたように周囲を見回した。そして、意味ありげな視線とにやにや笑いが浴びせられているのを感じると、真っ赤になって俯いてしまった。その脚は、遠くからでもはっきり分かるくらい、カタカタと震えていた。

 授業中に、自分が素っ裸で野外露出して走た写真をクラスメイト全員に公開されるって、どんな気持ちだろう・・・男子も女子も、意地悪な気持ちで携帯端末の裸の写真と、真っ赤になって俯く梨沙の顔をちらちら見ていた。

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 3時間目が終わると、梨沙はさっと席を立って教室の外に出ようとした。また、女子達に囲まれ、同情するふりをしながらからかいの言葉で責められるのはあまりにも辛かった。しかし、素っ裸で走っている画像を全校生徒にメールされてしまった以上、どこに逃げればいいのか・・・

 しかし、行き先についての梨沙の悩みは一瞬で終わった。教室の扉を開けた瞬間、二人の女子に出会ったのだ。それは、隣の2組のゆきなとみどりだった。一番会いたくない相手に会ってしまった・・・梨沙の表情が強ばった。

 「あ、梨沙ちゃん、どうしたの、慌てた顔しちゃって?」
「ねえ、さっきの写真、嘘だよね! 2組のみんなもびっくりしてたよ。」
みどりとゆきなはそう言いながら、梨沙を教室の片隅に追い込んだ。他の女子も心配そうに周囲に集まった。もはや、梨沙は逃げることができなくなった。

 「それでね、2組には柏原くんがいるでしょ? もう、みんな大騒ぎよ、学校のアイドルの梨沙ちゃんを裸にしてバイクに乗せて走り回ったってね。男子が焼き餅焼いちゃって大変なんだから・・・保健室で梨沙ちゃんに何をしたのか、問い詰められてるわよ(笑)」
みどりが甲高い声で言うと、教室は軽く笑いに包まれた。それは、他の男子も同じ気持ちだったのだ。

 「・・・それからね、少し言いにくいんんだけど・・・梨沙ちゃん、結局どうするの?」
ゆきながわざとらしく間を空けて言った。
「あの・・・黒木って人の命令、まさか、従ったりしないよね?」
それは、今日の放課後、緊急生徒総会を開いて、全校生徒の前でストリップとオナニーショーをするのか、と聞いているのと同じだった。ゆきなの目には、隠しきれない期待の光が見えた。

 ちらちらと梨沙を見ていたクラスメイト達が、思わず顔をまともに向け、じっと梨沙の答えを待った。

 「・・・ば、馬鹿なこと言わないでっ!」
あまりに意地悪な言葉に、梨沙は思わずきっとなった。
「・・・ごめんなさい・・・もちろん、そんな命令に従うつもりはないわ・・・」
そう言った瞬間、教室がどこかがっかりとした雰囲気に包まれたように感じた。
 
 「ふーん、そうだよね、当たり前だよね・・・」
みどりはそう言いながら、顎に軽く手を当てた。
「でも、柏原くん、大丈夫かな・・・明日の始業前の教員会議に呼び出し受けてるみたいだよ。校則違反のバイクに乗って学校に入ったことと、裸の女の子を乗せて風紀を乱したこと、保健室での不純異性交遊の疑惑もあるし・・・場合によっては退学、なんてこともあるみたい・・・」

 「そ、そんな・・・」
梨沙は思わず顔をあげた。しかし、意味ありげな女子達の視線を感じ、慌てて付け加えた。
「・・・何があったか知らないけど、柏原くん、わけもなくそんなことするとは思えないし・・・不純異性交遊なんて、まさか・・・」
なかった、と言いたかったが、それでは自分が当事者と認めることになってしまう・・・いや、本当になかったと言えるのか?・・・不意に、全裸の自分の乳房を揉み、キスをしようとしている柏原の顔が目に浮かび、梨沙は全身がかあっと熱くなるのを感じた。

 「あれ、なんか梨沙ちゃん、顔赤くなってない・・・」
ゆきなが目をきらめかせながら梨沙の顔をのぞき込んだ。
「・・・まあ、あの写真って合成なんだから、梨沙ちゃんには関係ないよね? さっきのメールにあった、『もっと恥ずかしい写真』なんて、もちろんないんだよね?」

「でも、合成だってさ、裸の写真がネットにばらまかれたら恥ずかしいよね。すぐに広まって、昔の知り合いとか、親とか、近所の人とか、みんなに見られちゃうんでしょ? 私だったら恥ずかしくて死んじゃう!」
みどりも続いて言った。

「やだ、そんなのっ、絶対、無理!」
「私だったら死んじゃう!」
二人の唇の端には、隠しきれない笑みが浮かんでいた。


 始業のベルが鳴ると二人は慌てて教室に戻っていき、4時間目が始まった。一見、皆はいつもと同じように授業を受けていたが、携帯端末をちらちら見る頻度だけは、いつもと明らかに違っていた。

 素っ裸で乳房と秘部を手で隠している姿よりも恥ずかしい写真・・・皆、罪悪感を感じながら、梨沙の全てが写った画像の到着を期待していた。いくら否定しても、さっきまでの写真が梨沙本人のものであることはほぼ確実だった。お尻はすごく柔らかそうでエッチだったけど、胸とアソコはどうなのかな・・・

 授業開始から15分が経った頃、クラス全員の携帯端末が着信を告げた。その瞬間、教室の雰囲気がさっと変わり、ほとんどの者が携帯端末を操作した。

 (お、お願い、もうやめて・・・)
梨沙も祈る思いで携帯端末を操作した。やはり、そのメールの差出人は「黒木」だった。

『谷村梨沙へ(cc:全校生徒)
 まだ緊急生徒総会の召集をしていないようだが、早く決めた方がいいぞ。まあ、ネットへの公開は、6時間目が終わるまで待ってやるけどな。まだまだあるぞ、楽しいコレクションが。』
そのメールの下には、一つのURLのリンクが貼り付けられていた。梨沙は震える手で、リンクをクリックした。

 それは、動画へのリンクだった。おお、なんだ!というあちこちからの声が聞こえ、画面には遊園地の群衆が映し出された。そして、画面の中央には、黒い紐ビキニの女性がいて、撮影者に向かって走ってきていた。ショートカットの髪を振り乱し、小さな布切れがまとわりついたようなビキニの乳房を揺らし、股間にも小さな三角の布がようやく恥毛を隠している状態だった。その女性はあっという間に接近してくると、左腕で乳房を庇いながら、右手でビキニのトップの紐を解き、肩紐をそれぞれ下ろした。さらに右手を前に持ってきて左腕の下に入れ、黒いビキニを体から離した。そして、ほんの一瞬苦悶の表情を浮かべたあと、右手をあげ、トップを後方に投げてしまった。

 その瞬間、その女性はその撮影者に最も接近していた。そしてその顔は、間違いなく、谷村梨沙本人だった。

 画面の中の梨沙は一瞬で撮影者の前を走り抜け、今度は右手でボトムの紐を右、左、と解き、脱ぎ去ってしまった。ぷりんとした真っ白なお尻が丸出しになり、梨沙は全裸の後ろ姿を見せながら、遠くへと走っていった・・・



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