PART 43(ba)

 ーーー水着をなくしたことに腹を立てたミサトとユウカは、梨沙を引っ張って店の裏の駐車場に停めてあったボックスワゴンに乗るように強要した。そして、走る車の中で梨沙は後ろ手に手錠をかけられ、目隠しをされてしまった。
 十数分ほど走った車はどこか広いところに入り、梨沙を車から降ろし、少し歩かせ、階段を登らせた。ミサトとユウカは梨沙をその場に座らせると、後ろ手の手錠の真ん中にもう一つの手錠をかけ、もう片方をどこかに掛けて固定した。さらに梨沙は首輪を掛けられ、そこから延びた鎖の先にも手錠を付け、どこか上方に向けて固定された。その結果、梨沙は何か棒状のものに背中を付けたまま、横座りになった姿で身動きができなくなってしまった。
 さらに二人は、仕上げとばかりに梨沙にある「細工」をして去っていった。じゃあ頑張ってね、梨沙ちゃん、と笑って言いながらーーー

 二人が去ってから数分が経った。梨沙は自分がどこにいるのかも分からず、ひたすらもがいていた。目隠しで放置されている恐怖に、誰か助けて、と叫びたかったが、梨沙はぐっとその言葉を呑み込んだ。(だ、だめ、何も言っちゃ・・・)
 それもその筈だった。今の梨沙は、ブラウスとブラジャーを奪われ、上半身は緑のリボン以外は完全な裸にされてしまっていた。誰かが来たら、梨沙は丸出しの乳房を見られることになってしまう・・・
 しかし、だからと言って誰かに助けてもらわなければ、梨沙はずっとこの姿のままでいなけらばならないのだ。ここがどこか分からないが、肌に当たる陽の光の暖かさ、肌に触れる空気の流れからも、ここが屋外であることは明らかだった。(い、いや、ひ、ひどい、こんなの・・・)上半身裸の姿で屋外に放置される・・・梨沙はミサトとユウカが仕組んだ「ゲーム」の非情さを恨んだ。

 そのゲームのルールは簡単で、この状況から自力で抜け出せば梨沙の勝ち、それだけだった。そしてゲームに梨沙が勝ったら、水着の件は不問に付すとのことだった。但し、アイリス関係のことはほんの一言でも言ったらそこでゲームオーバー、梨沙の恥ずかしい画像や動画はばら撒かれ、梨沙は身体で奉仕して弁償しなければならない、という罰則も付いていた。もちろん、警察に通報されてもゲームオーバーだ。梨沙の近くにはマイクが仕掛けられ、さらに監視カメラで見ているから、おかしな気を起こさないことね、と二人は念を押していた。


 (う、うう・・・何とかして、外れないかしら・・・)ほとんど望みは無いと思っても、梨沙は手を動かし、首を振っては、手錠や首輪が何かの拍子で外れないかと必死にもがいていた。ゲームに勝つ方法は簡単だったが、それは絶対に避けたいことでもあった。
 (お、お願い・・・外れて・・・早くしなきゃ・・・)そろそろ時間は7時に近付いている筈だ。誰かがここに来たら、私のこの姿を見つけたら・・・それが徹夜で遊んでいた不良学生の集団だったら、私、何も抵抗できない・・・梨沙は恐怖に身震いした。

 そして梨沙が苦悶の表情を浮かべながらもがいて数分が経った頃、ついに恐れていた事態が起こった。一人の足音が、遠くからこちらに近付いて来るのが聞こえたのだ。最初は気のせいかと思ったが、その音は徐々に大きく、しっかりしたものになっていった。そしてそれは一人ではなく、複数の足音であることも分かった。

 (い、い、いやっ、来ないで、私に気付かないでっ)後ろ手に縛られていては、丸出しの双乳を隠すことができない。また、首輪を上から引っ張られていては、顔を俯けることもできなかった。(あ、も、もう、駄目ぇっ)もはや至近距離に感じる足音に、梨沙は心臓が止まりそうな気がして、目隠しの下の瞳を固くつぶった。

 しかし、梨沙の必死の願いは叶わなかった。その足音は更に近付き、ついに梨沙の至近距離まで来たところでようやく止まった。そしてしばらく声を出さず、じっとそばに立っているのが分かった。

 意外な展開に梨沙は戸惑った。上半身裸裸の女子高生が縛られているのを発見したら、悲鳴をあげるか、心配で声をかけるか、あるいは、襲われてしまうか・・・み、みんなで私の胸を見てるの?

 すると、しばらくしてようやく、小さな声が聞こえた。
「・・・すっげえ、おっぱい丸出しじゃん・・・美人なのに・・・」
「生で見るの初めてだ・・・エロいおっぱい(笑)」
「まさか、本当にな・・・でも、ピンクの乳首、立ってない? 目隠し露出プレイで興奮してる?(笑)」

 少なくとも3人、若い男の子、私の胸をじっと見てる、い、いやあ・・・梨沙は恥ずかしさでどうかなりそうだったが、手錠と首輪のせいで胸を隠すことも、顔を俯けることもできなかった。

 ど、どうしよう、何か説明して、助けてもらった方がいいのか、じっと堪えてやり過ごした方がいいのか、梨沙は迷った。

 しかし、そんな梨沙の逡巡を吹き飛ばすような事態が続いた。カシャ、カシャ、とシャッター音が連続して聞こえてきたのだ。胸を露出した写真を撮られている!
「・・・や、やめてください・・・撮らないでください・・・」
ついに梨沙は口を開け、見えない男達に懇願した。せめて顔は映されないように、必死に横に向けた。

 「何言ってるの、いいじゃない、写真くらい。」
「そうそう、こんなに綺麗なおっぱい、見て欲しいからこんなことしてるんでしょ? K附の癖にスケベですね、お姉さん?」
「何なら顔入りで撮ってもいいんですよ?」
最後の男はそう言うと、目隠しをぴんと引っ張った。

 「や、やめて、取らないで!」
目隠しを外されそうになった梨沙は慌てて声をあげた。首のリボンで学校までばれているのに、顔まで見られてしまったら・・・せっかくアイリスから逃れたのに・・・

 その時、遠くから声が聞こえた。
「おーい、本当にやってるのお?」
「あ、あれ、すっげえ!」
「うそ、マジ? おっぱい丸出し?」
「すげえ、綺麗な身体!」
今度はもっと大勢の声が聞こえ、どたどたと音を立てながら近寄ってきた。そしてまた、半裸の美少女を取り囲むようにして立ち止まると、息を呑んで乳房を凝視しているのが梨沙にも分かった。

 「ひ、ひいっ、い、いやあ・・・だ、だめ、見ないでください・・・」
どこかも分からない屋外で上半身裸にされて縛られ、大勢の男に囲まれて鑑賞されている・・・梨沙は信じられない事態にか細い悲鳴をあげた。しかし、梨沙の哀願はあっさり無視され、今度はバシャバシャバシャと間断なくシャッター音が聞こえた。

 「・・・それでお姉さん、いったいここで何してるんですか?」
男の一人が声をかけた。
「これはプレイなんですか? それとも、誰かに襲われたんですか?」

 「・・・え、そ、それは・・・」
目隠しをしていても分かる美しい顔立ちが苦渋に小さく歪んだ。
「お、襲われた訳では、ありません・・・」
警察に通報されたらゲームオーバー・・・梨沙はとりあえず、そう言うしかなかった。でも、これからどうしたら・・・

 「へえ、それじゃあお姉さんは、自分からこんなことをしてるってことですよね? こんなところでおっぱい丸出しにして、嬉しいんですか?」
男は面白そうに言った。
「それに、こんな風に手錠をかけるって、誰かにしてもらわなくちゃ無理ですよね。どこにいるんですか、その人は?」

 「そ、その、手違いがあって、どこかに行ってしまったんです。」
梨沙は苦し紛れに出任せを言った。これじゃあ本当に露出狂みたい・・・

 「へえ、手違いねえ・・・あの、これっていわゆる『露出放置プレイ』って奴ですよね?」
男は全く梨沙の言葉を信じていなかった。
「それならすごくいい場所を選んだと思いますよ。あと一時間もすれば、何百人もここを通りますからね。」

 「え、そ、そんなっ・・・」
梨沙は思わず悲鳴をあげた。K附のリボンとスカートを身に付けた姿で丸出しの双乳を何百人にも見られる・・・あまりの羞恥に梨沙は身震いした。当然名前もばれ、警察にも通報され、公然猥褻で逮捕、ゲームオーバーとなり、恥辱の画像と動画が知り合いの皆に送られる・・・
「お、お願いです、助けてください・・・お願いです・・・」
梨沙は目隠しをされた顔を男の声の方に向け、必死に懇願した。この人達に助けてもらうしかないと梨沙は内心で悲痛な決断をした。完全な破滅を迎えるより、十数人だろう男達に媚びる方がまだ救いがあった。

 「え、助けてって言われてもなあ・・・」
男は困ったような口調で言った。
「具体的に、どうすればいいの? 鍵を外すくらいならしてあげてもいいけど・・・」

 (・・・)一瞬、梨沙は躊躇った。鍵を外してもらうためには・・・しかし、他には選択肢が無いことも分かっていた。
「・・・は、はい、ありがとうございます・・・そ、それでは鍵を外して、くだ、・・・さい」
梨沙は小さな掠れ声でやっとその言葉を口にした。(いやあ、そんなの・・・助けて、誰か・・・)

 「分かったよ、お姉さん。鍵を外してあげるよ。それで、鍵はどこにあるの?」

 「・・・」
しかしやはり、梨沙はそこで口ごもってしまった。見知らぬ男達が大勢見ている前で、そんなこと、言えない・・・でも・・・
「あ、あの・・・身体の、中に・・・」

 「え、身体の中って、呑み込んじゃったってこと? それじゃあ、出るまで待つしかないんじゃない?」
男が驚いた声で言うと、周囲の男達も笑った。
「お姉さん、やっぱり俺達をからかってたんだ? 悪いけど、そんなに待てないんで、俺達もう行ってもいいかな?」
そう言うと、男達はその場を離れようとした。

 「ま、待って、行かないで!」
梨沙は慌てて男達を呼び止めた。また、他の人達にこんな姿を晒すのは嫌だった。
「からかってるわけじゃないの・・・か、鍵は、その・・・私の、あ、あそこの中に、入れられているの・・・」
目隠しされた顔を真っ赤に染めながら、ついに梨沙は恥辱の告白をした。

 すると、一瞬周囲の人間が息を呑むのが分かった。
「・・・え? あそこって、まさか・・・」
さっきまでのからかうような口調が変わり、男の声は明らかに動揺していた。
「う、嘘ですよね、まさか、そこまで・・・」
周囲の男達も浮き足立っている雰囲気がした。

 「・・・そ、その、まさかなの・・・お、お願い、取り出してください、手錠の鍵を・・・」
早くしないと、他の人にまで見られてしまう・・・哀しい決断をした梨沙は思い切って言った。

 するとしばらく、男達はひそひそ話をしているようだった。そしてようやく、さっきの男の声が聞こえた。
「あの、やっぱりちょっと信じられないから、もう少しはっきり言ってもらえませんか? どこにある何をどうして欲しいのか、具体的な名称で。」

 「そ、そんなっ・・・お願い、分かるでしょ?」
梨沙はそう言いながら、男達の悪意をはっきりと感じていた。そして、遊園地での恥辱ショーの時のギャラリーの意地悪な笑みと嫌らしい視線が、梨沙の脳裏にはっきりと浮かんだ。そんなに楽しいの、女の子に死にたいほど恥ずかしい思いをしているのを見るのが・・・?


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