PART 86(bbbbx)

 その10分後。梨沙は今度は、可憐なセーラー服を着て、モデル達の最後尾に並んでいた。白い長袖ブラウス、襟は濃紺で白い三本線入り、スカートも濃紺フリル付き、赤いスカーフ、濃紺のハイソックス・・・それらは、すずの少女らしい美貌に恐ろしいくらいにマッチしていた。

 しかし今の梨沙は、落ち着かなそうに顔を左右に向け、俯き、両手を胸の上に重ね、その片手を上げて口に当て・・・前回の透けた極小下着以上に恥ずかしそうな表情を見せていた。そして、スカーフとは別に、赤い紐が首に掛かっている点もさっきとは異なっていた。

 もう、自分の前で出番を待っているのは1人しかいない。その前の子は、ステージに出ていて、何回も拍手をもらっているのが聞こえてきた。でもきっと、可愛い水着なのよね・・・それなのに、私は・・・

 そして、大きな拍手をもらってそのモデルが退場すると、ステージの後ろで控えていた梨沙の前のモデルは、ステージの前に歩いて行き、大きな拍手を浴びた。

 次は、自分の番だ・・・すずさんのために、逃げ出すことはできない・・・梨沙は俯き加減になりながら、必死に羞恥と戦っていた。しかしふと、全身の力が抜けて膝が崩れ、梨沙はそのまましゃがみ込んでしまった。

 「大丈夫?」
すかさずくるみが近寄ってきて、優しく両肩に手をかけた。

 「くるみさん、やっぱり私・・・」
梨沙はやっと聞き取れる声で言うと、しゃがんだままで俯いた。

 「だーいじょうぶ、絶対できる、すずちゃんなら!」
くるみは梨沙にそれ以上言わせず、肩をぽんぽんと叩いた。
「すごく可愛いから、その衣装!・・・ね、思いっきり、見せつければいいのよ!」

 それでも躊躇う梨沙に対し、くるみはなだめすかして、やさしく緊張をほぐした。
「さ、頑張って・・・」
くるみは優しく言いながら、少女の背中を押す手に少し力を込めた。

 ・・・ついにステージの後ろに姿を現した少女は、次の出番を待っているだけなのにも関わらず、視界に入った観客達の注目を集めた。すずをどっきりにはめているのは知っていたが、最後がどんな衣装かまでは知らされていなかった。

 梨沙の前のモデルが制服を脱いでいくと、下からは黄色をベースにした可愛いビキニの水着が姿を現した。そして、弾けるような笑顔を見せ、テンポよく次々にポーズをとっていき、何度も拍手をもらっていた。

 一方、後ろで控えている少女の表情も見物だった。少女は、俯きながら左右に顔を曲げ、時おり顔を上げてちらっと会場の方を見ては、大きな目を潤ませ、唇を噛み、両手を胸の上で重ね、次に顔を上げると、唇を半開きにして、今度はぼうっと前を見つめ、突然何かに怯えたかのように口に手を当てて泣きそうな顔になったり・・・それはある意味、全く男達を飽きさせることがない芸だった。

 気が付くと、前のモデルが演技を終わり、こちらに戻ってくるところだった。薄々観客の意識が自分に向いてなかったことを悟っていたそのモデルは、刺すような視線を梨沙に浴びせてから観客の方を向き、上品にお辞儀をしてから去っていった。

 一秒、二秒、三秒・・・次のモデルがステージに出てこない時間が続いた。流麗なピアノの調べだけが会場に流れた。

 「は・や・く!」
掠れ声でくるみにせかされ、梨沙はついにステージの前へと歩き出した。

 左手を丸めて、首にかかっている赤い紐を掴み、左手はスカートの上から股間を押さえ、内股で太股をすり合わせるように歩く少女・・・その顔は、今にも火を噴き出しそうなほどに火照っている・・・観客達は、淫靡な期待に胸を膨らませた。

 少女は、二、三歩歩いて止まり、恥ずかしさに耐えられないといった感じで、両脇を締めたままで肘を曲げ、両手を丸めて口に当てた。そして、大きな目を潤ませながら、怯えたような表情で観客達を見回した。
 すぐに俯くと目を軽くつぶり、少し悶えたような仕草の後、膝ががくっと落ち掛けた。少女は今度は両手を下ろし、股間を庇うようにして歩き始めた。顔を俯けながら、時々左右の観客の様子をちらっと見るのがまた、ギャラリーの嗜虐心を刺激した。何も脱いでないのに、こんなに興奮させるなんて・・・皆、大石すずの才能に改めて感嘆していた。

 特に指示がない限り、さっきと同じポーズをするように、と指示されていた少女は、さらに数歩進んだところで止まり、身体を右側の観客に向けた。そして、そのまま目をつぶり、小さく身体を震わせた。パシャ、パシャっと、脱いでもいないのに沢山のシャッター音が響いていた。

 そして、さんざん躊躇って男達を煽ってから、ついに少女はスカートの裾に手をあて、ゆっくりと持ち上げ始めた。じわじわとスカートの裾が上がり、ついに下着が露わになるかに見えた・・・しかし、少女の股間には、赤い縄が縦に食い込んている様子しか見えなかった。少女はすぐにスカートを下ろし、再び両手でスカートの上から股間を押さえた。
 パチパチパチ・・・ほんのコンマ数秒だったが、少女の制服の下が緊縛姿であることを悟った観客達から拍手が起きた。

 少女はその場所のままで身体の向きを180度変え、今度は左側の観客達の方を向いた。そして、やはり躊躇いがちにスカートを持ち上げ、縄一本でしか隠されていない股間をほんのわずかだけ晒すと、慌てたようにスカートを戻してしまった。

 少女の無駄な抵抗が、観客達を一層刺激した。この後は制服を脱いで、縄だけの姿を晒さなきゃいけないのに、チラ見せで恥ずかしがってみせるなんて、ほんとに役者だなあ、すずちゃん・・・(笑)

 男達の意地悪な視線を一身に浴びた少女は、さらに前に歩くのを忘れたかのように、今度はその場で正面を向いた。そして、羞恥に悶えるように身体をくねらせ、ちらりと視線を観客達に向けてから、観念したようにスカートの裾に手を当てた。

 少女は大きな瞳を開いて不安げに左右を見て、次に目を閉じて唇を噛み、ホックを外した。目をつぶったままで一瞬天を仰ぎ、ジッパーを下ろした。そして、観念したかのように、両手でスカートをゆっくりと下ろしていった。

 すると、まずウエストに巻かれている何本もの赤い縄の束が見え、さらに、へそを囲むように上からの縦縄に結びつけられているのが見えた。次に、縄だけのお尻が後方に向けて丸出しになった。最後に、少女はスカートを手から離し、はらりと床に落とした。

 ついに、赤い縄で緊縛されただけの少女の下半身が衆人環視のもとで晒された。少女は思わず両手を口に当てて羞恥に耐えたが、それは無防備な下半身をギャラリーに晒すことでもあった。それから少女は両手を下げたが、もうどうしていいか分からないといった風情で、臍の下辺りで両手を組み、肝心の股間は隠していなかった。
 少女の下半身を覆う恥毛は淡く、遠目にはパイパンのようにも見えた。

 会場の皆が、少女の迫真の演技に呑まれていた。決めのポーズの時には毎回送られていた拍手も、今は全くなくて、パシャっというカメラの音だけが散発的に聞こえていた。めまぐるしく変わる少女の羞恥の表情と、美しく、卑猥な肢体を一瞬でも見逃したくない・・・それが、観客達の気持ちだった。

 少女が身体を少し回転させて、裸の股間と尻を周囲の観客に見せ、次いで手を持ち上げると、ようやく拍手が湧き起こった。

 しかしその拍手も、縄だけの下半身を露わにした少女がステージの前方に向けて歩き出すと、すぐに止んだ。今度はどんな表情をして、どんな格好を見せてくれるのか・・・

 すると今度は、少女は両手を精一杯伸ばして、両手で股間を必死に庇いながら歩くようになった。今までさんざん見られちゃったのに、今さらそんなに恥ずかしそうな顔をするなんて、ほんとに可愛いなあ・・・観客達はあらためてすずに魅了されていた。

 それからしばらく観客の間の通路を歩いた少女は、ステージの先端にたどり着いた。そこには、さっきと同じように、学校の教室にあるような椅子が、正面に対して横向き、左側に背を向けるように置いてあった。

 (どうしよう、手を外さなくちゃ・・・)そう思っても、梨沙は両手を股間から離すことができなかった。至近距離に大勢の男の人がいて、プロ用のカメラで写真や動画を撮られているのだ・・・それはある意味、渋谷の交差点での放尿よりもずっと恥ずかしかった。あっちは、ほんの数十秒のことで、夢中で暴れているうちに終わってしまったが、こっちは、ショーとして、じっくりと見せなければならないのだ・・・この写真、本当に雑誌やネットで公開されてしまうの・・・?
 しかし梨沙には、まだしなければならないことがあった・・・

 ・・・少女は、周囲を見回し、時に目を瞑り、しばらく躊躇った。しかしついに、股間から両手を離すと、今度は白いブラウスを持ち上げていき、緊縛された上半身が徐々に露わになっていった。

 ブラウスの前を握った両手が胸の近くまで持ち上げられると、それが亀甲縛りであることが明らかになった。赤い縄が少女の身体に何重にも絡み付き、きれいな肌に食い込んでいた。
 少女はそのまま、身体を左、右と向きを変えて見せた。パチパチパチ、と会場が大きな拍手に包まれた。

 次に少女は、口に両手を当ててしばらく見悶えた後、赤いスカーフをゆっくりと解いていった。またもや会場に響く音は、上品なピアノの調べと、散発的なシャッター音だけになった。

 スカーフを解き終わった少女は、今度は間を置かず、ブラウスの裾を掴む。セーラー服のブラウスにはボタンがないため、一気に首から抜き取るしかないのだ。そんな格好をしたらどうなるか・・・観客達はごくりと生唾を飲み込んだ。

 そして、少女は観客の期待どおり、ブラウスを一気に持ち上げていった。ついに、縄に囲まれた乳房が露わになった。ブラウスを脱ごうとしている少女は、手で隠すことができず、非情なシャッター音が連続して響いた。

 少女は、股間は秘裂に食い込む縄だけ、乳房は縄に囲まれてくびり出された姿を晒したまま、両腕を上げてブラウスを脱がなければならなかった。きれいな脇の下まで完璧に晒し、少女は羞恥に俯いて目をつぶっていた。

 ついに、ブラウスを脱いだ少女は、少しだけためらってから、それを床に落とした。これで、少女が身に付けているものは、靴と、ハイソックスと、赤い縄だけになってしまった。

 ほとんど全裸、いや、全裸以上に卑猥な格好で大勢の観客達の前に立つことになった少女は、目の前が真っ白になるのを感じながらも、必死にショーを続けようとした。少女は、恥ずかしい部分を手で隠したいのを必死に堪え、まずは右の観客に向けて緊縛された裸身を見せた。パチパチパチ・・・と拍手が起き、少女の勇気が讃えられた。

 さらに左の観客にも見せて拍手をもらった少女は、一歩前に出て、椅子の横に立った。すると、急に羞恥が込み上げてきたかのように、少女は両手を口に当て、左手の人差し指を曲げて、その第2関節辺りを半開きにした唇に咥えた。そうすると、乳房は両腕の下に隠れてしまったが、縄が食い込んだだけの下半身は、まともに正面の客達に向けて晒されることになった。



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