PART 42

「まずは会場設営に協力して下さい。みなさん、白石さんの机だけ中央に残して、他の机は全て教室の端に寄せて、コの字型にしてください」

「あ、あの、ちょ、ちょっと……」
 聡美が力無い声で異議を申し立てようとしたが、皆が机を引きずる音にかき消されてしまった。
(あんまりよ、薫。自分の机の上でストリップさせる気? しかも、みんなで私を四方八方から囲むように配置させて……)

 聡美の恥辱ショーを少しでも長く見物しようと各自が努力した結果、わずか1分強で机が移動され、聡美の恥辱のステージが完成した。

「はい、それでは白石さん、自分の机の所に戻って下さい」
 薫に促されて、聡美は教壇から降り、言われた通りに机の横に立った。教壇に背を向けて立つと、コの字に自分を取り巻く生徒達の姿が否応無く視界に入ってくる。これからクラスメイトが注視する中、本当に自分から服を脱いで全裸にならなければいけないのか……聡美は、やっと忘れかけていた悪夢の感覚を、再び思い出すことになった。

「では、これから、白石さんの淫乱性のチェックを開始します」
 まるで、文化祭の出し物を話し合うように淡々とした口調で、薫は話を続けた。
「調査方法は、先ほどの、風紀委員の野中さんからの提案のとおりです。みなさん、よろしいですね?」
 異議なーし、という皆の答えを確認し、薫は小さくうなづく。

 薫が進行を続けようとして息を小さく吸ったところで、軽薄な男子の声が割り込んできた。
「てことはさあ、もし仮に、聡美ちゃんが淫乱と判定されたら、さっきの宣誓文を今度は正式に読み上げて、みんなの前ですっぽんぽんでオナニーとかしてさ、それを見てもらったお礼に男子全員にフェラしてくれるってことでいーんだな?」

(どうしてそれを今言うのよ! まったく、すぐに目先のことばかり考えるから、男子には任せられないのよね)
 美智代は内心、小さく溜め息をついた。

「そ、そんなこと、できません!」
 美智代が懸念したとおり、聡美が即座に反発した。
「万一そんな判定がされたとしても、どうして男子に、そ、そんなことをしなくちゃいけないんですか!」

(もう、仕方無いわねぇ……)
 美智代が口を開こうとすると、それよりも早く、涼しげな声が響いた。
「だけど白石さんは、絶対に、自分は淫乱じゃないって先ほどはっきり言いましたよね。それならどうして、淫乱と判定された場合の心配をする必要があるのですか?」
 薫の落ち着き払った声に、美智代は感心してうなづいた。
(そうそう、私が言おうとしたことと同じだわ)

 美智代の方をちらりと見やり、薫は続けた。
「ただその代わり、もし白石さんが淫乱では無かった場合、今までの破廉恥な行為は、白石さんの主張どおり、全て、誰かに強制されたものと見なすこととします。従って、風紀委員の野中さんが保管している、白石さんお行動の記録は全て、廃棄処分することとします。それでよろしいですね、皆さん?」
 薫は、まず聡美を、次にクラス全員を見回した。

 つまり、薫は今から、聡美にとって天国と地獄、両方の結果をもたらしうるゲームをしようと提案したのだ。
 聡美が勝てば、今までの恥ずかしい行為の記録は全て抹消されることになり、名誉も回復されるが、もし負ければ、クラス全員の前でオナニーを披露し、さらには男子全員にフェラ、校内であれば女子たちのどんな恥ずかしい命令にも従わなければならない、いわば2年1組の性的なペットにまで堕ちることになるのだ。

 そして、それを聡美が断れない所まで追い込んでから、引導を渡すかのように宣言するとは……美智代に勝るとも劣らない薫の苛烈さに、クラス中がしんと静まり返った。

 よく考えれば少しおかしなところがある理屈であったが、突然の魅力的な提案に幻惑され、聡美はうまく頭が回らなかった。
(じゃあ、これから少しだけ我慢すれば、もうこんな思いをしなくてもよくなるってこと?)
 どこかに罠があるような気もするが、それが何か分からない。

 沈黙を同意と見なして、美智代が立ち上がって言った。
「はい、じゃあ、早速、チェックを始めましょうね。ここからの進行は、風紀委員の私に任せてもらっていいかしら?」

(上出来よ、薫)
 美智代は薫にウインクをしながら立ち上がった。薫も小さくうなずく。
「……はい、それでは、チェックを開始します。学級会の時間はあと35分あるので、30分間、白石さんには恥ずかしい格好をしてもらって、あとの5分で性的反応の有無のチェック、必要であれば宣誓を白石さんにしてもらう、ということにします」
 生徒達が黙って頷き、次の言葉を促した。
「ではまず最初に、白石さんから、チェックを受けるにあたっての宣言をしてもらいます。えーと、録画の用意はいいですか?」
 美智代は教室の後方にいる男子に視線を送った。その男子はうなずくと、ビデオカメラを持って立ち上がる。
「はい、ではこちら、白石さんの正面で構えて下さい。……準備はよろしいですか?」

「え、一体、何を……宣誓文はチェックの後のはずじゃ……」
 戸惑う聡美はしかし、美智代にあっさりいなされた。

「せっかくチェックをしても、また後で、『あれは強制されて仕方なくやったものです』なんて言われたら困りますからね。動画を撮りますので、このチェックは白石さん自身の意志で受けることをはっきりと宣言して下さい」
 美智代の、聡美の主張を逆手に取った、狡猾かつ嫌みな言い回しに、教室中がやんやの喝采だ。
「こんな言い方でどうかしら……」
 美智代は聡美の耳にささやいた。

「……わ、分かったわ」
 覚悟を決めたように聡美は言った。
「チェックの結果、私が正常だと証明されたらその動画も廃棄処分になるのよね?」
 もちろん、と言うように美智代がうなずく。

(分かったわよ、言えばいいんでしょう? いいわ、30分後にはどうせ廃棄されるんですもの……その後は……覚えていなさいよ、美智代)
「えー、私、S高校2年1組の白石聡美は、性格に風紀上の問題が無いかを判定していただくため、これからここで、……全裸になりますが、これは飽くまでも、私からみなさんにお願いして行うものです。よろしくお願いいたします」
 いくら何度も見られているとは言え、同級生に囲まれた中で、自ら全裸になることを宣言することは、とてつもない屈辱だった。それに今までは、何らかの形で強要されたものだと、自分の中でせめもの慰めができたが、今回は、自ら全裸を見てもらうよう依頼しなければならないのだ。

(全く手を焼かせるわねえ。さ、いよいよ聡美ちゃんの大恥掻きショー、始めてもらいましょうか)美智代は唇の端に小さな笑みを浮かべたまま言った。
「はい、それではチェック、スタート。白石さんは、速やかに服を全て脱いで下さい」

 その時、ビデオカメラを構えた男子の手が上がった。
「ちょ、ちょっと待ったあ! 一つ、提案があるんだけどさあ」
 クラスで一、二の軽薄さを争う、高橋だった。
「あのさ、全部脱がせるのはやめない?」

「おいおい、何だよ今さら」
 男子たちが殺気立った眼で高橋を睨み付ける。
「もう結論が出たことを蒸し返すんじゃねぇよ。時間が無いんだから、余計なこと言うなよ」

「ごめんごめん、違うんだよ」
 何が違うんだよ、という声を両手で制しながら、高橋は続けた。
「時間は30分あるんだから、少しづつ行かねぇか? とりあえずは、超ミニ姿になってもらって、教壇の上でパンチラ−モロ、かな−してもらうとか」

 男子たちが高橋の真意を悟ると、途端に空気が和らいだ。
「なんだ、そういうことか。お前って、結構フェチだな」
「ち、違うよ。そうじゃなくて、今までの行動を再現してさ、それで濡れてた場合には完全にクロ、ってことになると思ってさ」
「けど、最後にやったあれ無理だよな。今回は見られるだけって条件だから、ローター責めは駄目だよな」
「聡美ちゃん、ローターが無くて寂しい? その代わり、すっぽんぽんになったらうーんと恥ずかしい格好させてあげるから、楽しみにしててね!」

 そりゃ楽しみだ、と爆笑する声を聞きながら、聡美は屈辱に拳を握り締めた。
(ひ、ひどい、今までのことをもう一度思い出させようって言うの!?)
「ちょっと、下品な気持で見る人は退出のはずよ。今笑った男子は、全員退場でしょ! それに、どうしてまだ録画する必要があるの? もう、宣言は記録したじゃない!」

 聡美の反撃に、男子たちは首をすくめたが、すかさず薫からのフォローが入った。
「白石さん、ちょっと誤解をしてるみたいね。からかいの言葉を投げかけたからって、下品な眼で見てるとは限らないわ。むしろ、クラスメイトとしての思いやりの気持から、聡美さんの羞恥心を敢えて刺激することで、チェックに貢献していると思います」

 男子の喝采を受けながら、薫は続けた。
「それから、動画については、宣言からチェック結果まで、一部始終を記録する必要があります。恥ずかしい姿を見られただけで、性的な反応があったことを証明するためです」

 そうだそうだ、という男子の声が響いたが、聡美は負けずによく通る声で反論した。
「そんなことを言ったら、下品な人は退場、とい決まりは有名無実化してしまいます。さっきの言葉に、思いやりのなんて全く……」

 聡美の言葉は、薫が軽く片手を上げることで制止された。
「白石さん。時間稼ぎをしたいのかもしれないけど、これ以上引き伸ばしを図るなら、今日の放課後を緊急学級会にして、引き続きチェックの時間にしますよ。他クラスの生徒が入って来ても、一緒にチェックをしてもらうことになりますが、それでもいいですか?」
 薫の議長役は初めてにもかかわらず、その仕切り方は全く堂に入っていた。

「わ、分かりました……」
 ここであと30分だけ我慢すれば、とりあえずは今までのことを少なくとも記録上だけは葬り去ることができる、というところまでやっときたのに、他クラスの生徒に裸を晒して恥の拡大だけは避けたかった。

「はいはい、納得できたら、時間も無いから急いでねぇ」
 すっかり仕切り顔の高橋が、ビデオカメラを構えながら言った。
「それじゃあまず、『S高校2年1組、白石聡美です。私のパンティ、見て下さい』って言いながら、スカートをめくって見せて」

「え……」
 戸惑う聡美に対し、あちこちからわざとらしい咳払いが起こった。聡美の脳裏に、嫌な記憶が甦る。
(お、同じようにしろっていうわけね……)

 聡美はしかたなく、ビデオカメラを見据えながら言った。
「S高校2年1組、白石聡美です……」
 そう言いながら、唇をかみしめ、スカートの裾をじりじりと持ち上げた。
「わ、私の……パンティ、……見て、下さい……」

次章へ 目次へ 前章へ

MonkeyBanana2.Com Free Counter