PART 51

「じゃあさ、仮にともみちゃんが何かで脅迫されたとして、こんな破廉恥な格好ができるの?」
 沈黙したままのともみに痺れを切らしたように泉が言った。
「どんなことで脅迫されたら、こんなことができると思う? 私たち、白石先輩の命を狙ったり、家族を誘拐したりしてないよ」
 泉の冗談に、聡美とともみ以外の6人が笑った。

「……そ、それは……」
 認めたくは無いが、泉の言うことはもっともだった。高校生の女子にとって、性に関することは最も恥ずかしいことだ。自分だったら、どんなに脅迫されても、たとえ死んでもこんな恥ずかしい格好はできない……それに、この前聡美に打ち明けられた程度の脅しだったら、衆人環視の中で自らの性器を開陳することになるはずも無かった……だけど……
「だけど、先輩、この前直接私に打ち明けてくれましたよね。恥ずかしい格好をさせられてるのは、クラスの人たちに強制されて仕方なくしてたんだって」
 ともみは、最後の希望を込めて、聡美の眼をまっすぐ見つめた。
(お願い、先輩、露出願望なんて嘘だと言って下さい!)

 潤んだ瞳にまっすぐ見つめられた聡美は、顔を一瞬歪めた。しかし、内心の諦めとともに、再び笑顔を作る。
(ごめんなさい、ともみちゃん。今は、本当のことは言えないの。……後で全部打ち明けるから、今は、ごめんね……)
「ごめんなさい、ともみちゃん。あれは嘘だったの」
 ともみの顔が見る見る蒼白になっていくのを見つめながら聡美は言った。
「ほら、私、苛められながら恥ずかしい格好をするのが好きな露出願望があるって言ったでしょう? だけどね、ともみちゃんにこの前聞かれたときには、本当の事を言うのが恥ずかしくて、つい嘘をついちゃったの」
 そう言って聡美は瞳を伏せた。
(ほんとは違うのよ! 今日の放課後まで、少しだけ待って……)

 ともみの体が小さく震え出した。
「そ、そんな! じゃあ、あのときの先輩の真摯な話し方は何だったんですか? そんなにひどい嘘が付ける人だったんですか? 私、もう誰も信じられない……」
 ともみの潤んだ瞳から、大粒の涙が一滴流れた。最後の信頼が思い切り裏切られ、ともみはもはや聡美を信じることができなくなった。
(ひどい! 私は先輩の言うことを疑ったことなんか無かった……クラスでひどいことを言う男子がいても、私だけは先輩のこと信じて、絶対に守ろうって頑張ってたのに……)
「私、白石先輩を、軽蔑します! 絶対許せません。もう私に、二度と話しかけないでくださいっ!」
 ともみはそう言うと、くるりと背を向け、ドアに向かって歩き出した。

 しかしその時、泉の声が響いた。
「あれぇ、ともみちゃん、もう帰っちゃっていいのぉ? 何か忘れてないかしら?」
(ふふっ、ともみちゃん、可哀想だけど、その可愛い顔がどうなっちゃうのか、ちょっと楽しみ!)

「え、な、何よ?」
 泉の意味ありげな言い回しに、ともみは嫌な予感を覚えながら振り返った。
「もう私、白石先輩とは関係無いわ……」

「あら、そうなの? それは別に構わないけど……」
 泉はそこで、わざとらしく間をおいてともみを焦らした。
「さっきの約束はちゃんと果たしてもらわないとね」

「え、約束……!?」
 そう言いかけたともみは、あることに思い当たって絶句した。
「ま、まさか、……そんな、あれは……」

「まさか、じゃないでしょう? ともみちゃん、さっき教室で、しっかり約束したでしょ。もし、白石先輩が露出狂だったら、一週間ノーパンノーブラで過ごしてもいいって」
 泉は今度は、にこりともせずに言った。
「だから、今ここで、ブラとパンティ、脱いで頂戴」

「あらぁ、ともみちゃん、そんな大胆な約束しちゃったのお? すっごい人を信じちゃって災難ねぇ」
 成り行きを見守っていた由美が、目を丸くした。
「ノーパンノーブラって、セーラー服の下はなんにも無し、ってことでしょ? 夏服でアンラッキーねぇ。白いセーラー越しに見えるブラ線って、男子の注目の的だもんねー。一週間かあ、ともみちゃん、ばれないといいわね」

「それにさ、体育の時間はどうすんの? ノーパンノーブラ、ってのは、プールだったら、水着のサポーター無しってことだよね? 胸と腰のラインが丸見えになっちゃうねぇ」
 高橋が、ビデオカメラを聡美からともみに振り向け、全身を取りながら言った。

「あ、そうだ。もう一つお約束があったわよね、と・も・み・ちゃん?」
1年女子が笑いながら言った。
「確か、美術の時間にヌードモデルやるんだって、男子に約束してたわよねぇ。すっごいわねぇ、クラスの男子全員の前でともみちゃんもこんなポーズ、やってみる?」
 そう言って、恥辱のM字開脚を強要されている聡美を振り向いた。
「そしたらともみちゃんも、こんなに濡らしたりして」

「……そんなこと、できる訳ないじゃない!」
 聡美のあさましい痴態が自分の将来の姿だと言われ、ともみは顔を真っ赤にして反論した。
「わ、私は、例え何があってもそんな格好は絶対にしません!」
 その言葉はある意味、聡美への最も強烈な侮蔑と訣別の表現だった。

「分かった、分かった」
 泉は想定していた通りの反応に内心ほくそ笑みながらうなずいた。
「だから、ブラとパンティだけで勘弁してあげる、って言ってるのよ。男子にばれないように、ここで脱いでいった方がいいんじゃないかしら?」

 泉は猫撫で声とも言えるような優しい口調で続けた。
「それとも、教室で、男子みんなが見てる前でパンティ脱ぎたい? ともみちゃん可愛いから、みんな喜ぶでしょうねぇ。そして、もう一つの約束のことも、絶対許してくれないわよねぇ」
 そこで一旦言葉を止め、ともみの反応を伺う。ともみは黙ったまま、最悪の事態を想定して蒼ざめていた。
(ふふ、こりゃ楽勝ね。ともみちゃん、生意気でうざいと思ってたけど、うぶでかわいいっ!)
「だからね、今ここで下着を脱いだら、一週間下着無しってことで許してあげる。男子にもノーパンノーブラってこと、内緒にしてあげるわ。だけど、それもできないって言うんなら、教室に戻って、白石先輩の正体をばらすしかないわね。あ、その時は高橋先輩、そのビデオ、ちょっと貸してくださいね」

「……そ、そんな……」
 ともみは、もはや逃れようの無い袋小路に入ったことを薄々感じながらも、何か打開策が無いか、必死で頭を働かせた。しかし、何もうまい言い逃れの方法を思いつくことはできなかった。
「わ、私、そんなこと、できない……」

「もう、分からんない人ねぇ。だから、今ここでブラとパンティだけ脱ぐか、それとも、美術教室でクラス全員の前でストリップして素っ裸になるか、どっちか選びなさい、って言ってるの。分かった?」
 なお煮え切らないともみに痺れを切らしたように、泉がまくし立てた。
「もういいわ。せっかく好意で言ってるのに、それを断るって言うんなら、教室に戻って、白石先輩はやっぱり露出狂だったってこと、みんなに発表しちゃうわよ。みんな、あなたのヌードが見れると思って、大喜びでしょうねぇ」

 呆れたようにぷいと横を向いて歩き出そうとする泉たちに、ともみが慌てて言った。
「わ、分かったわ。ここで脱ぐから……」
 悲愴な決意を胸にともみはブラウスのボタンに指をかけた。

 ともみは制服を着たままブラとパンティを脱ぐ姿を同級生の女子たち、2年の高橋、由美、そして聡美の前に晒した後、制服の下は何も身に着けない姿となって立ち尽くしていた。今は一見ただの夏服のセーラー服姿のともみだったが、その顔は羞恥に火照っていた。
「そ、その動画、どうするんですか? 早く消去してください!」
 ともみは泉に訴えた。泉は証拠を残す必要がある、と言って、ともみの下着脱ぎの一部始終を高橋から借りたビデオカメラで録画したのだ。

「だから、一週間後には間違いなく消去するわよ。一週間、ともみちゃんが約束どおりノーパンノーブラでいたら、だけどね」
 泉は勝ち誇ったように言った。いつも優等生面してクラスを仕切るともみに屈辱を味わわせるのが楽しくて仕方無かった。
「べつにいいじゃない。変なところは映らなかったんだから。太ももはかなりきわどいとこまで見えちゃったけどさ。ま、これでも、男子たちに見せたら興奮ものでしょうけどねぇ」

「そ、そんなのひどい! それじゃあ約束が違うわ! そんなことしたら絶対に許さないわよ!」
 ともみはついいつもの癖で高圧的な口調になった。
(調子に乗らないで、あなたなんかいつも何も努力しないで文句言ってるだけのくせに)

「あら、ともみちゃん、何か勘違いしてない? そもそもクラス全員の前でヌードモデルになるって約束したのはあなたなのよ。許してあげてるのがこっちだってこと、まだ分からないの?」
 痛いところを突かれ、途端に勢いが無くなったともみを見て、泉は更なる悪巧みを思いついた。
「あ、そうそう。ノーパンノーブラになったら許してあげる、とは言ったけど、まだその確認をしていなかったわねぇ?」

「え、な、何言ってるの……?」
 ともみは不安げに聞き返した。展開を察知した他の男女は、淫靡な笑みを浮かべてともみのセーラー姿を見つめた。

「まず、ブラについて確かめるから、セーラーの裾の両脇をつまんで、思いっきり後ろに引っ張ってくれる?」

「そ、そんな……」
 そんなこと、できない……ともみは同級生のひどい要求に絶句した。そんなことをしたら、胸の形がはっきり出てしまう……乳首の形まで浮き出してしまうかもしれない……

「いやならいいわ。そのかわり、上は全部脱いでね。それもいやって言うなら。これを黒板に張り出すわよ」
 そう言って泉は、ともみの脱ぎたてのブラジャーとパンティを指でくるくると回した。
「淡いピンク、なんていかにも少女趣味の優等生さんねぇ」

 やむなく泉の要求に従ったともみは、恥辱に唇を噛みながらも、きれいな釣り鐘型の胸の形をビデオカメラに接写されなければならなかった。

「あら、乳首も良く分かるわ。あ、それに、乳輪も……小さめできれいなピンクじゃない……」
 ギャラリーの好奇心を煽るコメントを加えながら、泉はともみの胸をセーラー越しに記録していった。

 たっぷりと皆にセーラーから透ける胸を視姦させてから、泉は次の命令に移った。
「はい、おつかれさん、ともみちゃん。次はノーパンの確認よ。これはいくら引っ張っても無理だから、見せてもらうしかないわね。こちらにお尻を向けて、スカートをまくって頂戴」
 あまりの命令にきっとなるともみに向かって、泉は笑いかけた。
「面倒だから、何度も同じことを言わせないでね。お尻を見せるのが嫌だったら、前をめくってくれてもいいのよ。断ったら、……分ってるわよね?」



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