PART 55

「やっぱ、いねぇなぁ。裸の女なんてさぁ」
「屋上なんか隅から隅まで50人以上で捜索したけど、うちの女子たちしかいなかったもんなぁ」
「ひょっとしたら、その中の誰かなんじゃねぇか?」
「う〜ん、ともみちゃんならいいんだけど、他のはなあ」
「あ〜あ、やっぱ、デマなのかなぁ。2組の松永だろ、見たって言ってるの? あいつ、軽薄だからな〜」
「もう時間だぜ。時間までに戻ってないと、副委員のともみ様に説教されるからなぁ。……あーあ、あいつのヌード見てぇ」
 男子たちはそう言いながら、教室に入っていった。

 聡美は非常扉をぎりぎりまで締め、その声だけを聞いていた。一瞬、心臓が止まりそうな気持ちになったが、必死に心を落ち着ける。そして、どうやら、授業終了間際には全員教室に戻るらしいと分かると、覚悟を決めた。
(よし、誰もいなかったら、とりあえず目の前の倉庫に入るのよ。鍵は、きっとこの中にある筈。……もしどれも合わなかったら、……反対の端まで廊下を走って、女子トイレに逃げ込むのよ……今だ!)

 聡美は思い切って非常口の扉を開けると、廊下を横切った。すると同時に、
「キーンコーン、」
 と終了の鐘が鳴り始めた。

(……ああ! お願いっ……)
 鐘が鳴ってしまったら、もはや、非常階段に出ることは自殺行為に等しい。それに、今この瞬間にでも1年生たちが廊下に出て来てもおかしくないので、廊下を突っ走ることもできない……もし、鍵が合わなかったら、もう、終わりだわ……無人の廊下で全裸姿を晒しながら、聡美は絶体絶命のピンチに震えた。眼をつぶって、最初の鍵を鍵穴に差し込む……

 ――――☆☆☆――――☆☆☆――――☆☆☆――――

 その時、聡美にとって意外なことが起きた。鍵を捻るまでもなく、扉が内側に開いたのだ。聡美は態勢を崩し、よろめきながら中に入った。と、何かが視界に入る。
「…………!」
 聡美は心臓が飛び出して来そうな気がした。そこには数人の女子の足が見えたのだ。
(……も、もう駄目ぇ……)
 とても顔を上げられなかった。顔を合わせるのが怖かった。

「…………?」
 しばらくたっても、当然起こると思っていた悲鳴や嘲笑が起きない……
(だ、誰なの……)
 聡美は恐る恐る顔を上げた。
「あ、あなたたち……ど、どうして……?」
 そこにいたのは、ついさっきまで屋上で聡美を散々弄んだ1年1組の女子5人だった。

「せーんぱいっ、お久しぶり! 相変わらず、いい身体してますね」
「すっご〜い! 屋上から1階まで、素っ裸で非常階段走って来たんですかぁ?」
「2階で鍵が空かなかった時、焦ったでしょう? 由美先輩がごめんね、って言ってたわよ」
「それでね、きっと先輩はここに来るってことで、鍵を開けて待っててあげたんですよ」
「あそこ丸出しで廊下を走るって、どんな気持ちですかぁ?」

(黙って聞いてれば、調子に乗って……)
 聡美は、破滅を免れたことにどこかほっとしながらも、相変わらずの1年生のいたぶりに腹を立てていた。
「きっとここに来るって、ひどいわ。鍵が合わないって分かってたなら、どうして迎えに来てくれなかったのよ?」

 しかし、1年女子たちは心外そうに肩をすくめた。
「だって、先輩が逃げた後の屋上で、殺到してくる男子たちをなだめるの、大変だったんですよぉ」
「そうよ。それから、必死に走ってやっと鍵を開けたところに先輩が来たんじゃないですかぁ」
「それにさー、屋上でケツ出してたの、お前らのうちの誰かだろ、とか疑われちゃってさぁ」
「そーそー、挙句に、『ともみちゃんのケツなら見たいけど』だってぇ。ほーんと、失礼しちゃうわあ」
「今だって、授業終了前に教室抜け出すのに、ともみの許可もらうの、苦労したんだから。それとも、廊下でスッポンポンの姿を男子たちに見られる方が良かったんですかぁ? 私たち、先輩のために頑張ったんですけど、露出趣味のお邪魔でした?」

 女子の集団にまくし立てられ、聡美は慌てて手を振った。ここでへそを曲げられたら大変だ。
「ご、ごめんなさい。非難するつもりで言ったんじゃないのよ。ほ、ほんとうに、ありがとう」
 頭を下げてから、皆の様子を窺う。幸い、それで態度もだいぶ軟化したようだった。
「あ、あの、それで、私の制服は……?」
 ひょっとしたら、由美から一式預かっているかもしれない……淡い期待を込めて聡美は聞いた。

「……え、ああ、みんな、町田先輩が教室に持って帰りましたよ。先輩、それより……」
 泉は意味深な笑いを浮かべた。
「さっき、私たちを非難しましたよねぇ? 確か、町田先輩から、私たちには絶対服従することって、命令されてたはずですよねぇ……」

「だ、だから、謝ったでしょ? 本当に、ごめんなさい」
 聡美は、身体にねっとりまとわりつく同性の視線を感じながら、慌てて頭を下げた。

「だーめ。やっぱ、露出狂の白石先輩には、それにふさわしい方法で誠意を見せていただかないと……」

 ――――☆☆☆――――☆☆☆――――☆☆☆――――

「い、いやあ、こんな格好! お、お願い、ゆ、許してぇ!」
 その2分後、聡美は羞恥に顔から火を噴き出しそうになりながら懇願した。
「ご、ごめんなさい。も、もう絶対に逆らったりしませんから……」

 しかし、1年生には、全校男子の人気ナンバーワンの聡美があられもない姿を晒し、恥辱に喘ぐ様子が楽しくて仕方ない。
「ふふふ。やっぱりこの格好って、聡美先輩にお似合いよね」
「うん。さっき慌てて勉強した甲斐があったね。先輩も嬉しそうじゃない?」
「ねえねえ、先輩、あれやってくださいよ。自己紹介、っていうんですか、あれ?」

「……!」
 聡美は、彼女たちの無慈悲さに改めて絶句した。
(ど、どうして? 女の子なら、これがどんなに辛い格好か、分かるでしょう?)
 しかし、心の訴えを込めて見回しても、後輩たちのあっけらかんとした表情は変わらない。
(ど、どうせ、この子たちには散々見られてるんだし……)
 聡美はまたもやプライドを捨てなければならなかった。

 聡美は、倉庫室の奥、窓際のスペースで、いわゆる『まんぐり返し』の格好にされ、ロープで固定されていた。ロープは、聡美の両手を後ろ手に縛っているものと、大きく開いた右足を資材固定用のフックに結びつけたものと、同じく左足とフックを結んだもの、の3本だった。その結果、聡美は恥ずかしい2つの穴を剥き出しにして天井に向かって晒す姿に固定されることになった。5人の女子高生がにやにや笑いながら羞恥の部分を上から覗き込んでいるのがまともに視界に入るが、後ろ手に縛られた聡美にそれを防ぐ術は無い。

「わ、私、S高校2年1組のクラス委員、白石聡美は、ご、ご覧のとおり、見られて感じる露出狂です。ど、どうか、私の、オ、オ○ンコとお尻の穴、よくご覧になって下さい……」
 泉に耳打ちされたとおりの台詞を、聡美は顔を真っ赤にしながらしゃべった。自分の露出した秘部と、そこを遠慮なく見つめる後輩たちを同時に見ながら、この上なく破廉恥な言葉を言わされたのだから、それも当然だった。
「も、もう、許して。お願い、ロープを解いて……」

 しかし、美しく哀れな玩具の懇願は、1年生たちの嗜虐心を刺激するだけだった。
「あーそうだ、先輩、もう一つ頼まれてたことがあったんですよぉ」
 聡美の顔が微かに曇るのを楽しそうに見ながら、泉は続けた。
「これこれ。すっごいですね、先輩。屋上の時も、クラス全員に向けて、これで全部生中継してたんでしょ?」
 そう言って取り出したのは、由美が持っていた携帯端末だった。

「お、お願い! それで写すのはやめて! クラスに繋がないで!」
 聡美は必死に訴えた。屋上でのM字開脚姿を見られているとは言え、下級生たちに囲まれて性器と肛門を頂点に恥ずかしいところを丸出しの姿で緊縛されているところを、クラスメイトに見られるのは、また別種の屈辱だった。

「あはっ、聡美先輩、冗談上手すぎですよ。何で今更そんなに恥ずかしそうな顔してるんですか? 先輩の武勇伝、いろいろ聞いているんですよ」
 泉は聡美の羞恥などあっさり笑い飛ばして、携帯端末のレンズを、聡美の恥ずかしい二つの穴がギリギリ収まるところまで至近距離に寄せた。
「うわ、どアップですっごい絵! じゃあ、行きますよ〜」
 やってることの無慈悲さとは裏腹に、泉は軽い調子で続けた。
「言っときますけど、先輩。今は私たちには絶対服従、ですよね。いいですか、つながったら、にっこり笑ってこう言うんですよ。……ね、それから、こう言って……はい、通話ボタン、ON!」

「2年1組のみなさーん、見えますかあ」
 泉は携帯のカメラで聡美の恥ずかしいところを大写しにしたまま、マイクに向かって呼びかけた。
「ほら、白石先輩!」
 小声で聡美を叱咤する。

「2年1組の皆さま、こ、これが、私、白石聡美のアソコとお尻の穴です。どうぞじっくり見て下さい……」
 聡美がそう言っている間、カメラはじわじわと下がり、終わるころには、聡美の局部及び、大きく開かれた脚の間に見える双乳と聡美の笑顔をしっかり捉えていた。

『おおーっ。すっげぇ!』
 カメラのスピーカーからは、粋な演出に興奮する2年1組のクラスメイトたちの声が響いた。
『クラス委員さんがいきなりまんぐり返しだって、たまんないねぇ』
『最初はびびったぜ。いきなり無修正のアナルとアソコのどアップだもんなぁ。すげぇよ、聡美ちゃん、AVに出たら間違いなく天下取れるぜ』
『それにしても、1年ちゃんたち、よくそこまで聡美を調教したなぁ。そんな露骨な格好でよく見てぇ、だってか。屋上でも思い切ったことさせてたしなぁ』
『ほーんと、その笑顔、本当に嬉しそうだぜ。露出狂じゃなかったら、アイドルにもなれたかもしれないのに、おっしいなぁ』
 うそつけぇ、嬉しいくせに、という突っ込みが入り、爆笑が後に続いた。



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