PART 58

 『提案は三つあるの。まず一つ目は、聡美ちゃんの手を後ろに縛ったままにしておくこと。そうすれば、手でぬぐったりできないから、聡美ちゃんもへんな疑惑を持たれずにすむわよね。それから二つ目は、聡美ちゃんのアソコに、新しいタンポンを入れたままにしておくの。これで、出過ぎちゃって垂れ流しってことも防げるでしょ? 最後の三つ目。聡美ちゃんの首にロープを巻いて、その携帯のストラップを結び付けるの。聡美ちゃんが勝手な行動しないように監視できるし、こっちからも、どうやって帰れば見つからないか、指示を与えることができるわ。・・・どう? これよりいい案があったらそれでもいいんだけど。・・・聡美ちゃん、大事な変更だから納得できなかったら遠慮なく言ってね。』

 結局、聡美を含めて誰一人代替案を述べられる者はいなかった。自動的に美智代の案が採用され、残り時間へのルール変更の適用が早速実施された。
 その結果、聡美は全裸よりも恥ずかしい格好で引き立てられることになった。両手は後ろ手にロープで縛られ、両脚のロープは解かれたものの、秘部を覆う陰毛から、わざと途中までしか入られなかったタンポンがはみ出していた。そして、首には首輪のようにロープが巻かれ、その真ん中から、ピンク色の携帯端末が胸の谷間にぶら下がっていた。

 1年女子たちは、出来上がった「作品」を取り囲んで、感嘆の声を上げた。
「うっわあ、なんか、すっごくいやらしい感じ! SMプレイって言うんでしょ、こういうの?」
「首に縄まで付けられちゃって、先輩を尊敬してる女子が見たら卒倒しちゃうかもね。」
「あーあ、インチキしなければ、こんな格好にされずにすんだのに(笑)」
「人間、信用って大事ですよねぇ」
「このタンポン、なんかすっごくヒワイ! なんか、あれみたい・・・やだっ」
「ほんとにこの格好で、2年1組まで走るんですかあ?」
「2階の非常口の鍵は無いんですよね? じゃあ、1階の廊下を端まで走って、2階に上ってまた反対の端まで走るんですかあ?」
「屋上とは違って、授業してる教室の横を走るんだ・・・すっごいスリリング!」
「ぜひ見てみたいけど、私たちも授業があるので、残念ですう(笑)」
 言葉は心配を装っている風だったが、声音は明らかにおもしろがっていた。

 「こんな格好で校内を走るなんて、む、無理です!」
 恥ずかしい姿を1年生たちにいいように批評された聡美は、頬を朱に染めて呻いた。後ろ手に縛られていては、思うように走ることもできないし、もし誰かに見つかったときも、全裸の体を隠しようがない。しかも、股間に刺さったタンポンまで見られてしまったら、言い訳のしようも無い。
「お、お願いですから、ロープを解いてください・・・」

 しかし、首からぶら下げた携帯端末からは、冷たい声が響いた。
 『だーめ。さっき代案を聞いたけど、無かったでしょ? 大丈夫よ、1階の端まで走って、階段登って、2階の端まで走るだけじゃない? 屋上1周するより短いわよ』

 「そ、そんな・・・」
 そう言いかけて、聡美は口をつぐんだ。鍵のかかった屋上と、いつ誰が出てくるか分からない校内を走るのとでは、危険性が違い過ぎる・・・しかし、そんなことを言っても、反抗したとしてさらに恥ずかしいペナルティを課されることになるだけに違いなかった。

 「はいはい、ほんとは嬉しいんでしょお、露出狂なんだから?」
 泉は笑いながらそう言うと、倉庫の鍵を開けた。それと同時に、4時間目の始業を告げる鐘が鳴った。
「あら、ちょうど終わりね。じゃあ先輩、全裸校内ランニング、頑張ってねぇ〜」
 泉とともに、1年女子たちは笑いながら倉庫を後にした。

 聡美は全裸で後ろ手に縛られた格好のまま、一人倉庫に取り残されることになった。
(ど、どうしよう・・・もしこんな格好で誰かに見つかったら・・・だけど、ここの鍵も開いてるから、誰が資材を取りにくるか分からないわ・・・)
 聡美はどうしていいか分からず、しばらく立ち尽くした。屋上まで行く時は、全裸とは言っても両手が自由で全速力で走ることができたし、一応、由美と高橋もいて、1年女子に見つかった時はフォローしてくれた。だけど今は・・・

 そのとき、胸の下に垂れ下がってる携帯端末から、美智代の声が響いた。
『ほら、聡美ちゃん、もうそろそろいいんじゃない?』

 「え、だけど・・・」
 監視されていることを思い出した聡美は、戸惑いがちに言った。
(もし、廊下に誰かいたら・・・)

 しかし、聡美の内心の疑問が聞こえたかのように、美智代の言葉は続いた。
『大丈夫、今廊下には誰もいないわ。実はね、それと同じ携帯端末をあちこちに設置して、1階から4階まで、校舎中の状況を監視してるの。だから安心して出て来ていいわよ。』

 (・・・! ひどい)
 聡美は内心の憤りを必死に抑えた。もっともらしく言っているが、それは逆に言えば、聡美が全裸後ろ手縛りで、恥かしい所を隠すこともできずに校舎内を走り回る様子を、教室にいながら逐一観察して楽しもうということではないか。そんなものを設置する余裕があるなら、制服を倉庫に持って来てくれればいいのに・・・あ、あんまりよ・・・

 『ちょっと、約束を忘れたの? 3秒以内に指示に従わなかったらペナルティよ。その格好のまま、今度は校庭を走らせてあげようか?』
 そりゃいーや、クラスメイトの笑い声とともに、カウントダウンが始まった。

 「わ、分かりました。」
 ここは美智代たちを信じるしかない、と覚悟した聡美は、ドアに向かって後ろ向きに立ち、縛られた後ろの手で、ドアノブを掴み、ゆっくりと回した。
(美智代たちだって今私が見つかったら都合が悪いはず。それに、教室まで頑張って走れば、あとはチェックを受けておしまい、だわ・・・)

 ゆっくりと小さくドアを開けた聡美は、体の向きを変え、外の様子を顔だけ出して窺った。どうやら、1年の3クラスとも授業が始まったようで、廊下に人影は無い。
(だ、大丈夫よね・・・)
 聡美は思い切って、するりと廊下に飛び出した。全裸の体を手で隠したいが、後ろに縛られていてはそれも叶わない。

 その時、男子たちの声が携帯端末から響いた。
『おー、すっげぇ、すっぽんぽんで縛られちゃって!』
『ぷりぷりのケツもこうやって見るとまたいいねぇ!』
『すっかり校内露出が似合うね!』

 聡美が後ろを振り向くと、斜め後ろの隅に携帯端末が設置してあり、そのレンズが聡美の尻を斜め下から狙っていた。
「い、いや、ひ、ひどいっ!」
 聡美は思わず、小さな悲鳴を上げた。

『あら、ごめんね、聡美ちゃん。驚かせちゃって』
 けらけら笑いながら、ちっとも悪く無さそうな様子の声が響いた。
『だからね、そんな風に携帯をあちことにセットしてあるの。男子には余計なこと言わないように叱っておくからね。さあ、思い切ってダッシュして!』

 その結果、聡美は全裸よりも恥かしい格好で走る姿を、数々の携帯端末で中継されながら走ることになった。美智代に叱られながらも、胸や尻を揺らし、恥毛を丸出しにして走る様子を男子たちに揶揄される屈辱も同時に味わわされることになった。

 何とか誰にも見つからず、ようやく1階の逆の端にたどり着いた。すると、胸元の携帯端末から美智代の指示が響く。
『はい、今がチャンスよ! 急いで階段を登って!』
聡美は言われたとおりにするしかなかった。

 そして、2階に着くころ、聡美がこっそり廊下の様子を窺い、端に向けてダッシュしようとしたところで、
『駄目っ、聡美ちゃん!』
 と美智代の声が響いた。

 「え、どうして?」
 あと少しでゴールだと思っていた聡美は困惑した。

 『階段の下から2年2組の男子3人が登ってくるわ。今からじゃ間に合わないから、そのまま3階に登って!』

 「そ、そんなっ」
 せっかくあと少しだと思ったのに、3階に行けだなんて・・・聡美はそう思いつつも、やむなく階段を登り始めた。とにかく今は、美智代の情報を信じるしかないのだ。例えそれが嘘だとしても・・・

 3階の踊り場に着いた聡美は、しゃがみながら電話に話しかけた。
「どう? もう降りてもいい?」
 2年2組の生徒が通り過ぎた後に、また2階に戻って、後はダッシュすれば・・・あと少しよ・・・

 しかし、電話から聞こえた言葉は、聡美の期待を裏切るものだった。
『まだよ。2組の連中、だべりながら歩いてて、やっと2階に着くところなの。もうちょっと待って・・・あ、駄目!』

 美智代の切迫した声に、聡美は体を固くした。
(え、な、何?・・・見つかるのは嫌あ・・・)

 『4階の職員室から先生が出て来て、階段に向かってるわ。でも、大丈夫。ゆっくり歩いてるから、3階に着くまではしばらくかかる筈。・・・早く、反対側まで走って! 非常階段の外に出るのよ。』

 「そ、そんな・・・」
 今度はこの格好のまま、3年生の授業中の教室の前の廊下を走れというのか・・・しかも、また校舎の外に出るなんて・・・しかし、美智代の言葉に逆らって発見される危険を侵すことなど、もちろんできる訳もない。

 『だーいじょうぶ! 今校庭では、3組側の面で1クラスがバスケしてるだけだから。非常階段は死角よ。そんなことより、早く走らないと、先生がもうすぐ階段を降りてくるわよ!』

 美智代の言葉に押され、聡美は3階の廊下を反対の端に向かって走りだした。3組、2組、1組、と各教室の横を通るたびに、もし扉が開いたら、と聡美は心臓が止まる思いだった。

 そして、廊下の反対側の端、すなわち非常階段への扉までたどり着くと、聡美はあることに気付いた。
(ど、どうしよう、鍵を持っていないわ!)
なんでそんな簡単なことに気付かなかったのか、間抜けな自分を恨めしく感じた。
(も、もう駄目ぇ・・・)
階段を降りてくる教師が一瞬でも視線をこっちに向けたら、もう終わりだ・・・聡美は、絶望に眼をつぶった。
「も、もう駄目だわ・・・」

 聡美が思わずそう呟くと、途端に電話から声が聞こえた。
『ちょっと、何勝手に絶望してるのよ。鍵は開いてるわよ! 早く出なさい!』

 聡美は慌てて扉に背を向け、後ろ手でノブを掴んで回してみた。すると、意外にもそれはいとも簡単に開いた。
(よ、良かった・・・)
聡美は慌てて非常階段に出て、扉をゆっくりと閉めた。

 扉の外に出ると、そこはもはや屋外だ。再び全裸で青空を見ることになった聡美は、恥かしさに震えた。
(だ、誰も、見ていないわよね・・・)




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