PART 69

 有希と土居が真樹の後に付いて会議室を出ると、すぐ隣の部屋が大広間だった。
(あ、い、いやっ・・・)
そこではさっきと異なり、大勢のAV男優とAV女優、スタッフ達が休憩を取っていた。

 真樹を先頭に4人がその部屋に入ると、全員の視線が一斉に集中した。
「あれ、『可愛すぎる教育実習生』ちゃんだ!」
「おお、まさかうちに来てくれるとは!」
「アイリスからデビューすれば間違いなくトップ取れるよ。で、いつデビューするの?」
「有希ちゃんのケツ、本当に最高だよ!」
「それから、あのイく時の辛そうな表情と可愛い声! たまんないねえ!」
「ねえねえ、デビュー作の相手は俺を指名してよ、お願い!」
「ああ、ほんとに可愛いのね。悔しいけど、負けたわ・・・」
「いつまでそこで突っ立てるの?・・・これから初脱ぎでしょ? さ、こっち、こっち」

 「ちょ、ちょっと待ってくださいっ!」
すっかり周囲をAV男優に取り囲まれ、腕を取られて前に進まされ、有希はたまらず悲鳴をあげた。
「わ、私、デビューなんてしません!」
え? と周囲の男優が拍子抜けしたような表情になり、有希の腕を放した。

 「もう、みんな、何勘違いしているの。今日は、二階堂さんは、大切なお客様よ。」
真樹がぱんぱんと手を叩き、有希の周囲から離れるように指示した。
「S出版様の記者として、私たちの業界のことを心配してくれて、違法コピーの現状を取材に来てくださったのよ。」
真樹は有希を手招きして、大広間の真ん中の椅子に座るように指示した。目の前には、壁に100インチはありそうな大きなスクリーンが取り付けてあった。
「それでね、Fセキュさんがクライアントから流出防止を依頼された動画を横流ししてるのが信じられないっておっしゃるから、今から証拠をお見せするところよ。」

 真樹がそう言った瞬間、大広間の空気がふわっと変わったような気がした。そして、みなが意味ありげな顔をして、スクリーンが見えるように座った。それは同時に、椅子に座っている有希達を完全に取り囲む形にもなった。

 「それじゃあ、いくわよ・・・」
真樹がそう言ってボタンを押すと、壁面スクリーンに一人の女性の姿が映し出された。

 「え!・・・こ、これはっ!?」
有希はその画面を見て絶句した。そこには、こともあろうに自分が二プレスとCストリングだけのほぼ全裸で踊っているシーンがいきなり映されたのだ。
「い、いや、やめて! 止めてっ!」
有希は悲鳴を上げ、椅子から立ち上がろうとしたが、すぐに周囲の男優達に腕と足を捕まれ、椅子に座らされた。

 「お、おい、これは何だ!? え、有希ちゃんなのか!」
土居も驚愕して口を半開きにした。

 「まあ、有希ちゃん、堪え性がないのね。この動画は予告編でほんの3分しかないんだから、最後まで見てちょうだいね。はい、最初から・・・」
真樹はクスリと笑いながら、再度再生した。

 その動画は、有希にとって最悪の内容だった。乳首と秘裂と尻の穴を辛うじて隠した格好でのサンバ、神輿の上での半裸踊り、山車の上で全裸で括り付けられ笑顔で踊らされ何度も絶頂、秘裂でのお銚子釣り、台車引き、駅前広場を全裸ケータリング、テニスウェアでのパンモロ兎跳び、審判台の上でのストリップ、全裸M字開脚に拘束されて審判、バイブを挿入されて練習用ボールを吊り下げられてポンポンで弄ばれ、スクール水着ではっきり浮き出た乳房と尻、そして募金ストリップと駐車場でのオ○ンコ募金箱ショー、最後は朝礼台の上で全校生徒に挨拶しながらの絶頂・・・3分間の中で目まぐるしく変わる恥辱シーンの連続に、有希は足をカタカタ震わせるしかなかった。

 「・・・どう、ご感想は? 3分間の中にうまくまとめてあるでしょ。モザイクもぎりぎりで入ってるし。」
真樹は有希の顔を覗き込んで笑った。
「でも、ちょっとせわしないわよね。本編は全8時間の超大作よ。ディスクにして売る時は、日別に分けてバラで売った方がもうかるかしらね・・・あと、一通り売った後は、モザイクなしのもろ見えバージョンを流出させれば、2度おいしいのよね・・・(笑)」

 いつの間にか、アイリス映像のカメラマンが、有希の表情と肢体をビデオカメラに録画し始めていた。実は、部屋に入る前から、高精細カメラで有希の姿は録画されていた。同じスーツ姿でも、最初の頃のきりっとした表情と、今の惚けたような表情の違いはどうだ・・・カメラマンは、これ以上の素材はないとばかりに気を引き締めた。

 ・・・しばらく呆然として口をぱくぱくさせていた有希だったが、ようやく言葉を発することができた。
「・・・こ、これは、・・・テレビNの、映像、ですか?・・・ひ、ひどい、こんなの撮るなんて・・・どうして・・・と、止めてください、お願い・・・駄目、み、見ないで、ください・・・」
スクリーンでは意地悪く、同じ動画が再度再生されていた。今、目の前では、山車の上で踊る有希の姿が、遠景から一気にズームになり、濡れた恥毛がアップになっていた。

 「あら、大丈夫よ、ここでは最近、休憩の度にあなたの動画、いっつも流してるんだから、今さら見たって全然新鮮味なんてないのよ。あなたのお尻の穴の周りの皺の数だってみんな知ってるわよ。・・・それにしても、自分の町のみんなの前で、あなた、よくすっぽんぽんで潮吹きできるわよねえ・・・(笑)」
今は、駅前広場に山車が到着し、同時に有希が絶頂に達して失神しながら潮を吹いているシーンが映っていた。
「これがね、テレビNさんが、Fセキュに、これを絶対に漏洩させないでくれって、事前に渡した動画の一部よ。で、それをネットで売らないことを条件に買わないかってFセキュさんが言うから、私たちが独占販売権を手に入れたって訳。どう、これで証拠になるかしら?」

 「い、いや、そ、そんな・・・分かりましたっ、分かりましたから、もう、止めてください・・・ひっ、いやあ・・・」
有希は混乱して頭の中が真っ白になりかけていた。まさか、山車の上で最後に潮を吹いてしまったなんて、有希自身、今まで知らなかったのだ。一体何人に、死ぬほど恥ずかしい反応を見られてしまったのだろう・・・山車の下からでも、分かってしまったのだろうか・・・

 「分かったわ、止めてあげる・・・だけど、Fセキュさんも人が悪いわねえ・・・その、何とかっていう、今日取材した相手の男、あなたのこの動画、死ぬほど見てるはずよ。そんなことも知らないあなたが清楚なスーツ姿でまじめな顔しちゃって、動画の漏洩対策についていろいろ質問してたんでしょ?・・・Mちゃんの温泉盗撮動画流出の心配しちゃったりして・・・あはは、もう堪らなかった筈よ(笑)」
真樹はようやく動画の再生を止めた。

 「・・・お、お願いです、この動画、流出、させないでください・・・」
完膚無きまでに叩きのめされた有希は、潤んだ瞳で真樹を見つめ、そう懇願するしかなかった。今ならまだ、一部の組織だけの秘密だが、これが、Fセキュリティのシステムによりネットに流出する心配はないとはいえ、アイリス映像から一般の人に販売されてしまったら・・・

 「いや、俺からも頼むよ、アイリスさん。」
絶句していたカメラマンの土居も、やっと言葉を口にした。
「まあ、田舎町で羽目を外しただけなんだから・・・それにしちゃあちょっと過激すぎるけど・・・とにかく、素人の女の子がこんな動画、一般にばらまかれたら、生きて行けないよ・・・」
あら、素人の女の子じゃなくて悪かったわねぇ、とAV女優の一人が混ぜっ返し、乾いた笑いが起こった。

 「うーん、困ったわねえ・・・特別会員のリストアップも終わったところなんだけど・・・」
真樹はしばらく考える素振りをした。有希が救いを求めるように見つめるのを見て、やがて小さく頷いた。
「・・・そうねえ、まあ、いつものお付き合いってことで、そんなに高くも買っていないから、まあ、最低限、掛かった費用の回収ができればいいんだけど・・・」
すっかり興味津々になったAV関係者達は、有希の表情を盗み見てはにやにやと笑い合っていた。

 しばらくの沈黙の後、後ろから野太い男の声が響いた。
「それなら、俺に縛らせてもらえないかな?」
え、と真意を呑み込めない皆が振り向くと、監督の城田が髭を撫でながら続けた。
「おっぱいもあそこも流出して欲しくないんだろ? それなら、その服の上から縛るだけでいいよ。その格好を撮って、お金を回収するってことでどうだ?」

 「え、それだけでいいんですか? もちろん、今日1回だけでいいんですよね?」
有希が返事に戸惑っていると、土居が勝手に返事をしてしまった。
「だけど、それだけで回収できるんですか?」

 「いや、さすがに1回だけじゃ回収できないだろうな・・・」
城田はまた、髭を何度も撫でた。
「・・・よし、それじゃあ勝負をしないか、有希ちゃん? これから俺が、有希ちゃんをロープで30分間縛る。もちろん脱がせておっぱいやアソコを出したりはしないから。その間に、有希ちゃんがイったら負け。どんなに感じても、イかなかったら勝ち。有希ちゃんが勝ったら、、有希ちゃんの流出動画の独占販売権も有希ちゃんに譲る。ただ、もし有希ちゃんが負けたら、独占販売権の全額を回収するまで付き合ってもらう。それから、緊縛プレイは3時間延長な。」

 城田の提案には、土居も真樹も賛成し、困惑する有希本人に構わず、勝負の条件がそれで決まってしまった。そして土居の提案で、その条件を覚書にして、お互いに拇印を押すことになった。有希が仕方なく拇印を押す瞬間、背後の皆はにやりと笑みを交わし合った。(な、縄で縛られるのは嫌だけど・・・感じたりしなければいいんだから、大丈夫・・・)有希は自分にそう言い聞かせ、納得させるしかなかった。


 その3分後。その大広間がそのまま、有希の緊縛勝負の舞台になった。目の前に、土居とアイリスのカメラマンの二人がカメラが構え、AV関係者がギャラリーとなって見つめる中、有希は無理やり笑顔を作った。

 「・・・はい、S書房の新入社員、二階堂有希です。今日はアイリス映像さんの突撃取材をしています・・・」
即興で作られたシナリオどおりに話すことを強要され、有希は恥ずかしさでおかしくなりそうだった。
「今日は私、緊縛に挑戦してみたいと思います! 30分間耐えたら私の勝ちです! 城田監督、どうぞよろしくお願いします。」
有希は、自分が30分以内にイくかどうかで勝負をする、とまで宣言させられてしまった。
「そ、それでは、よろしくお願いします・・・」
城田が持ってきた麻縄を見て引き吊りながら、有希は何とかゲームの開始を告げた。

 「はい、それではまず、基本の後手縛りを行います。これにより、女性の上半身の動きを封じます・・・」
まるで教育用ビデオの講師の様な口調になり、城田は有希の背後に移動した。

 「・・・はい、有希ちゃん、それでは両腕を後ろに回して、背中の後ろでしっかり組んで・・・そうそう、そのままでいてね・・・」
城田はそう言うと、縄をスーツの上から、乳房の上側、下側へ縄を巻きつけ、さらに背中の後ろで両手を縛った。さらに別の縄を首から回して乳房の間で上下の胸縄を結んだ。
「どう、有希ちゃん、後ろ手縛りでおっぱいを絞り出されたご感想は?」

 「こ、こんな、ああ・・・早く解いてください・・・」
有希は早くも、無謀な勝負を承諾してしまったことを後悔していた。AVスタジオの中で、乳房を絞り出されるような形で拘束されてしまった・・・
「ああ、・・・も、もうやめて・・・」

 「有希ちゃん、まだ喘ぐのは早いよ。」
とヤジが飛び、ギャラリーが笑った。それにしても、清楚なスーツ姿に縄を掛けるとこんなに卑猥になるのか・・・AV関係者は改めて城田の縛りの技術に感心した。
(有希ちゃん、無茶な賭けに乗っちゃったね(笑))
(自分がどんな恥ずかしい格好を取らされるか分かってたら、OKしなかっただろうにね(笑))
(ま、素人の処女OLの緊縛絶頂ショーなんて、滅多に見れないんだから、楽しませてもらおうぜ・・・)


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