PART 7

 「ゲームカウント、滝沢2−若杉0」
 武田の声が響くと、コートは男子たちの歓喜の声に包まれた。可愛い女子がブラ姿を晒すのをこれから見れるのだからそれも当然だった。

 一方、ようやく身体が動き立ち上がった彩は呆然としていた。まさか、2ゲーム連続して取られるなんて……

「それじゃあ若杉、もう一枚脱いでくれ」
 審判役の武田はあくまで非情だった。その視線は、紺のトップスの胸の膨らみにさりげなく注がれていた。
「他の皆の練習が遅れるだろ? 女子のリーダーなんだから早くしてくれ」

「え、だけど、もう一枚って……そんなの、無理です……」
 本当に脱がなければいけないのか……彩は助けを求めるようにちらりと周囲を見回した。

 その瞬間、男子たちからブーイングが起こった。
「はあ? ルールどおりにやらなくちゃ」
「女子リーダーがそんなことでいいの?」
「滝沢にはギブアップ禁止って言ってたよな?」
「男は全裸になるまで許さないのに、女子はたった2枚も脱げないわけ?」

 一方、女子達の反応は複雑になっていた。
「先輩、無理しないでください」
「体調悪いんだから仕方ないですよ」
「もうギブアップしましょう」
「でも、今度の大会で優勝狙うって言ってたんですから、簡単に諦めてほしくないです」
「誰にも撮影させませんから、もう少し頑張ってほしいなー」
 一部の女子たちは彩に同情するよりも、リーダーとしての頑張りを促していた。お、女子が仲間割れしてる、と男子たちの笑い声が混じった。

(よし、いい雰囲気だな。あとは彩の負けず嫌いを刺激してやれば……)
「ギブアップでもいいよ。これからも撮影係として好きに写真撮らせてもらうからな」
 わざと半笑いを浮かべ、軽い調子で言った。

 途端に、彩の表情が強張り、きっと浩を睨んだ。
「……分かったわ、脱ぐわよ!」
(滝沢くん、何笑ってるのよ。絶対に許さない!)
 おおおっとどよめく男子たちの歓声に怯んだが、後に引くことはできなかった。しかし、皆の好奇の視線を一身に浴びているのを感じ、表情が強張ってしまっていた。

 いつの間にかギャラリーが移動し、彩のいるサイドにほぼ全員が集まった。男子たちは期待を隠せない表情で、女子達の多くは心配そうに見守っていた。
「若杉、悪いが早くしてくれ。他の練習の時間が減るだろ」
 審判台の上の武田が促す言葉が、美少女のストリップの開始のコールとなった。

 知り合いの可愛い女子が皆の前で意に反してテニスウェアのトップスを脱ぎ上半身を晒す……男子たちは彩の恥じらいの表情を楽しんでいた。
「それで、どれを脱ぐのかな?」
「トップス、パンティ、スコートのどれかだよね」
「パンティもう見られてるからスコート脱いじゃえば?(笑)」
「いや、パンティだろ。スコート捲れなきゃいいんだし」
「お前、絶対捲れるの期待してるだろ?」
 トップスの裾を掴んで動けなくなっている美少女に向け、からかいの声が飛び始めた。

「静粛に! 若杉は早く脱ぐように」
 武田の声が響くと、コートはようやく静まった。

 誰も助けてくれないことを悟った彩は、もはや逃げ場がなかった。
「は、はい……」
(やっぱり、トップスを脱ぐしかない……ブラだけの姿になっちゃう……)
 唇を小さく噛み、トップスの裾を握った手をじりじりと上げていくが、その恥じらいが男子たちを興奮させた。

「25秒でタイムバイオレーションにしようぜ」
「ペナルティはもう一枚脱ぐ、だな(笑)」
「さんせーい」
「一気にブラとパンティだけでテニス!」
 いーち、にーい、と男子たちの合唱が始まった。軽蔑の目で見る女子も、徐々に好奇の視線を彩に向けるようになっていた。

「わ、分かったから……」
 観念した彩が服に手をかけると、男子たちのコールが止んだ。
 彩は羞恥に顔を引きつらせ、ゆっくりとトップスを引き上げていく。ちらちらと救いを求めるのがいじらしく、ギャラリーの嗜虐心を煽った。
(ああ、本当にブラを見せなくちゃいけないの……)

「往生際が悪いぞ」
「女子リーダー、しっかりー(笑)」
「きれいなお腹だね」
「灼けてないところは真っ白だな」
「ちょっと、嫌らしい目で見ないでよ」
「先輩が可哀想じゃない」
「でも、ちょっと時間掛かりすぎ」
「早く脱いで、ぱぱっとやっつけちゃってくださいよ」
「タイムバイオレーション再開しようぜ」
「5からかな」
「ろーく、しーち……」
 からかいの声が盛り上がると彩の手が止まり、そのたびにカウントダウンコールが起こった。

「ちょ、ちょっと待って、分かったから……」
 彩は恥ずかしさに目を固くつぶり、ぐいっとトップスを引き上げた。ついに、ピンクのブラに包まれた胸が晴天下に晒された。

「おお、パンティとお揃いピンク!」
「ピンクにリボン、可愛い(笑)」
「ちょっとガキっぽいけどな」
「やっぱりでかいよな」
「巨乳ではないけどな」
 男子たちは歓声を上げながら、瞬きも惜しんで彩のブラだけの上半身を見つめた。

 露骨なからかいの言葉に、動きが止まってしまう彩に対し、今度は女子達から声がかけられた。
「せんぱーい、頑張ってぇ」
「早くしないと、もう一枚脱がなくちゃですよー」

 脱ぐ最中は無防備な姿を見られることになる……彩は急いでトップスを脱ぎ取ろうとした。すると、トップスが手首に絡みついてなかなか脱げず、身体をくねらせてしまった。
「おお、おっぱい揺れてる」
「サービスいいねえ」
 さっそくからかいの言葉が飛び、笑いが起きた。
(も、もういや……)

 ようやく彩が頭からトップスを脱ぎ去ると、歓声と拍手が起きた。
「おお、若杉のブラ姿!」
「頑張ったね、彩ちゃん」
「新人AV嬢みたいだな」
「ブラ見せるだけでここまで焦らさないけどな」
「せんぱーい、可愛いブラですね!」
「水着とそんなに変わらないから大丈夫ですよ!」
「あはは、おっぱいの谷間見えてるな(笑)」
 女子達の一部もからかうようになり、コートは喧騒に包まれた。

 やっとトップスを脱いだ彩は、慌てて両手で双乳を庇った。
(ひどい、誰も助けてくれないなんて……そんな目で見ないで……)
 恨みがましい目で皆を見まわした。いつもの元気溌剌な雰囲気はすっかり消えて、少し涙が滲んでいるのが男子たちをさらに喜ばせた。

「今更隠されても(笑)」
「ちょっと涙ぐんでるの、可愛い!」
「いい演出だね、AVデビュー作の初脱ぎシーン(笑)」
「真昼間のテニスコートでブラ丸出しってどんな気持ち?」
「次のゲーム落としたら、何脱ぐのかなあ」
 もはや、意地悪な言葉で美少女をからかうのは皆の共通の楽しみになっていた。

「それじゃあ次のゲーム、始めるぞ。女子リーダーなんだから、恥ずかしい試合見せるなよ」
 武田の声はあくまでクールだった。その声が、彩の理性を引き止めることに一役買っていた。

「おーい、早くしてくれないと調子狂っちゃうんだけど。これも卑怯な作戦?」
 今度は浩の勝ち誇ったような声が聞こえてきた。もちろん、彩がギブアップしないように負けん気を刺激するためだ。武田と浩は期せずして彩を堕とすための名コンビになっていた。

「な、違うわよ!」
 かちんとした彩がブラを隠しながらも浩を睨みつけた。
(絶対に、負けないんだから)

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