PART 3

「あ、あの辺って・・・」
さすがの麻由香もうろたえた。
「そ、そんなの無理よ。早く、更衣室の鍵を借りてきて!」
女子高生に対して、同年代の男子が大勢見る前で、バスケのゴールの物陰で着替えろなんて、あまりに非常識だと内心憤慨していた。

 「それは無理ですよ、先輩。」
またもや陽菜があっさり言った。
「もう、6時過ぎですよね。ここの事務局の人、6時に絶対帰っちゃうんですよ。」

 「大丈夫ですよ、麻由香先輩。皆がここから動かなければ、絶対に見えませんよ。」
美加が笑いながら同調した。

 「そ、そんな・・・」
予想外の二人の言葉に、麻由香は絶句した。レオタードに着替えるには、下着も脱いで、レオタード用のアンダーウェアに着替えなければならない。胸や下半身を露出してる時に、もし男子達が約束を破ってこっちに来たら・・・バスケのゴールをいたずらでどかしたら、この場の全員の視線に恥ずかしいところが晒されてしまう・・・麻由香は羞恥に震えた。

 「おい、何勝手に恥ずかしいこと考えて赤くなってんだよ! 俺たちがそんなに信用できないのかよ。」
佐々岡が大きな声を出した。
「こっちも貴重な練習時間を割いて待ってるんだよ。・・・3分以内に着替えなかったら、もう帰っていいよ。」

 「・・・わ、分かったから・・・」
誰も味方がいない麻由香は、その場の空気に逆らうことができなかった。

 そしてそれからの3分は、N高バスケ部の学生にとって実に楽しい時間だった。
何しろ、あの気位が高いことで有名な美少女の本条麻由香が、顔を真っ赤にしながら眼前で生着替えをしてくれるのだ。バスケットのゴールに付けられた板は、下50センチが空いていて、麻由香の膝までが見えるのだ。また、上は麻由香の首の下の鎖骨までが見える位置までしかなかった。

 「み、見ないで・・・」
いつも凛々しい麻由香のか細い懇願の声は、男子学生たちの嗜虐心を煽るだけだった。

 麻由香は見られまいと必死に屈み、不自然な姿勢を堪えて何とか練習着の上を脱いだ。何とか、ブラジャーの紐は見られていない筈だ。しかし、ブラジャーを脱いだ麻由香は、そこで途方に暮れた。床に置くためには、板の下50センチを通らない訳には行かない。

 「どうした、もう1分だぞ。3分たったら、ゴールをどけるからな。そしたら、皆の目の前で着替えるんだな(笑)」
佐々岡が言った。麻由香は完全に弄ばれていることを悟らざるを得なかった。

 (ひ、ひどいわ・・・)
麻由香は仕方なく、右手で必死に隠しながらブラジャーを床に置いた鞄の中に入れた。両手で隠したいところだが、左手は露になった乳房を隠すために使っている。

 しかし、手からわずかにはみ出たブラジャーは、男子学生たちに目ざとく見つけられてしまった。
「お、やっぱり純白!」
「さっすがS高のお嬢様、大人しめのデザインだね。」
「ありゃDカップはあるな。麻由香ちゃんのオッパイ、今丸出しだね(笑)」

 「先輩、頑張って! 駄目よ、罠にかかったら。」
美加の声が響いた。
「先輩を動揺させて、時間をかけさせるつもりよ!」

 はっとした麻由香は、慌ててアンダーウェアのトップを取って、身に付けた。そして、練習着のズボンに手をかけたところで手が止まる。これを脱いだら、足が丸出しになってしまう・・・
(し、仕方無いわ、大丈夫よ、そのくらい・・・)
麻由香が一気にズボンを下ろすと、男達がどよめいた。完全に見られている・・・しかも今度は、パンティを脱がなくてはならないのだ・・・

  (ど、どうすれば、見られなくてすむの・・・)麻由香は必死に考えた。膝の上までは、板に隠れている。そこまでパンティを下げて、膝を曲げながら足を上げて足首からパンティを抜く、それで片足ずつ抜けば・・・理屈的にはできるはず。だけど、片足立ちの状態で、もう一方の足を高く掲げるのはバランスを保つのが難しい。もし、転んだりしたら、丸出しの下半身を大勢の男子たちの前で晒すことになる。

 「ほ、本条選手、空中パンティ脱ぎに挑戦するか・・・考えています。もし転んだら、お尻もあそこも丸見え。それとも、安全策で両足を着けたまま、パンティを下ろすか・・・その場合、転ぶ危険は少ないけど、脱ぎたてのパンティを男達に見せることになります。」
お調子者らしき男子が的確な解説をして、周囲を笑わせた。板を透かして今の姿を見られているような気がして、麻由香も動揺していた。

  1.  「先輩、大丈夫。Y字バランスより簡単ですよね。」
    美加の声が響き、麻由香は我に返った。

 (そうよ、私なら簡単よ。)
落ち着きを取り戻した麻由香は、最大の難所をノーミスで乗り切り、見事に3分で着替えることができた。男子学生たちがあからさまに落胆の色を浮かべた。

 「さっすが先輩、すっごーい!」
「先輩、きれいですよ、レオタード姿。さ、お化粧しましょう。」
美加と陽菜はそう言いながら眼を合わせた。二人の唇の端には、無邪気な笑いとは別の、小さな笑いが浮かんでいた。


 そして、化粧を施した麻由香が戻ってくると、男子たちは一瞬、沈黙に包まれた。鮮やかなレオタード、女らしい体の美しいライン、特に柔らかく膨らんだ胸とお尻、薄化粧を施されてきりりと大人っぽくなった美貌、可愛いポニーテールに結われた美しい黒髪・・・確かに、卒倒しそうなほど眩しいというのは大げさではなかった。

 一瞬、その神々しいばかりの美しさに邪念を忘れた男子達だったが、やはり男子高校生であり、すぐに嫌らしい目が復活した。皆、麻由香の美貌をちらりと見つつ、後は豊かな乳房と腰回りに視線を集中させていた。
 麻由香のレオタードは、白を中心として、ところどころにアクセントのピンクやオレンジのラインが施された大人しめのものだった。足はもちろん露出しておらず、肌色のタイツを穿いている。しかし、男子学生たちの視線の圧力で、ウェアに穴が空きそうな錯覚に囚われた。

 「い、いや、そんな目で見ないで・・・」
一人だけレオタード姿にされ、20人以上の男子の眼の前に立たされて、至近距離から恥ずかしい部分に食い入るような視線を感じた麻由香は、思わず手で胸と股間を庇った。こんな露骨な欲望の視線を浴びせられたのは初めてだった。今にも教われてレオタードを剥がれてしまうのではないか、そうされても、何も抵抗できない・・・
「も、模範演技を見せればいいのね。だけど、一種目だけよ」
麻由香は自分のペースに持ち込もうと、平静さを装いながら言った。一種目なら、たったの2分だ。一番恥ずかしい格好が少ないのは・・・リボンかな・・・

 しかしその時、意外な声がした。
「ちょっと待って、そのまま、少しこっちに視線をくれよ。」
その声は、麻由香にとって聞き覚えがある声だった。しかし、何か違和感を感じる・・・

 「・・・え? あ、あなた、田之倉くん・・・?」
麻由香は悲鳴を上げた。それは、S高校の写真部の田之倉だった。いや、写真部は盗撮事件で廃部になった筈・・・それより・・・
「ど、どうしてあなたがここに! ちょ、ちょっとカメラ、撮らないで!」
田之倉は、大型のカメラのレンズを、しっかりと麻由香のレオタード姿に向けていた。そして、田之倉の後ろには、元写真部の連中が4人、それぞれカメラを構えている。

 「いやあ、やっぱり麻由香ちゃんのレオタード姿は最高だね!」
田之倉は麻由香の言葉を無視して馴れ馴れしく言った。
「何でここにいるかって? もちろん、麻由香ちゃんを撮るためだよ。」

 「な、何言ってるのっ!」
麻由香はきっとなって言った。
「しゃ、写真部はあの事件で、自主廃部になった筈よ。どんな資格で、新体操なんか撮影できるのよ。学校に伝えるわよ。」
シャワーシーンを盗撮されたことを知らないだろう美加を意識して、麻由香は言葉を選びながら言った。

 しかし田之倉は余裕の表情だった。
「ああ、写真部は自主廃部にしたよ、君のせいでね。だから今は映像研究会、立ち上げたんだ。大変だよ、学校非公認の研究会は。予算も出ないし部室も無いもんな。だから、麻由香ちゃんのスクープ映像を撮りに来たって訳。最近は新体操の試合も練習も撮影禁止だしね、盗撮する奴等のせいでさ。」

 「あ、あなた、何言ってるの? 本当に訴えるわよ。」
自分は一年生のシャワーシーンまで盗撮しておいて何をしれっと言っているのか・・・麻由香は心底腹が立ち、田之倉を睨み付けた。

 「ちょ、ちょっと、怖いなあ。」
田之倉は相変わらず真剣味の無い口調だった。
「何とか言ってよ、美加ちゃん。」

 (・・・?!)
麻由香はまたも混乱した。どうして田之倉くんが美加ちゃんに馴れ馴れしい態度を取るの? もしかして、美加ちゃん、あの写真で脅迫されてるの?

 「あ、ああ、ごめんなさい。・・・だって、麻由香先輩、急に怖くなるんだもん。」
麻由香の心配をよそに、美加は、のんびりした口調で言った。
「先輩、今日の練習の撮影も、佐々岡さんからの条件なんですよ。後で気合を入れたい時に、全国クラスの選手の姿を見るんですって。まあ、いいですよね? ・・・映像研究会の撮影にも協力すること、が条件だったけど、田之倉さんたちのことだったんだあ。」

 「へーえ、非公認だと、大変なんですねえ、田乃倉さん達・・・分かったわ。それじゃあ、今日に限って、撮影していいですよ、ね、麻由香先輩?」
陽菜もあっさり田乃倉たちに同情していた。まさか、自分たちの恥ずかしい写真を撮られているとは思っていないのだろう。

 「そ、そんな・・・さ、佐々岡くんっ!」
麻由香は今度は佐々岡の方を向いた。

 「いいじゃないの、練習風景の撮影ぐらい。君達だって自分の撮影してもらって、後で分析してるんだろう?」
佐々岡は悪びれずに言った。
「大丈夫、これで条件は全部だから。君が言ったとおり、一種目だけ、模範演技を撮影させてもらうだけでいいよ。・・・おい、全身像はもういいから、可愛いお尻をアップにしてくれよ。」
最後の言葉は、田之倉に向けられたものだった。

 不思議に思った麻由香が田之倉達を見ると、皆が自分の身体にレンズを向けている。
「ちょ、ちょっと、やめてよ。」
麻由香は少し屈み、胸と股間を手で庇った。

 そしてその瞬間、おおっ、と男子学生達の歓声が上がった。なぜか、壁の方を皆が見ている。
「おお、柔らかそう。」
「触ってみたいな(笑)」
などと言って嫌らしい眼をしていた。

 「きゃ、きゃあっ!」
つられて同じ方向を見た麻由香が叫んだ。壁に設置してある大スクリーンに、麻由香の尻のアップが映されていたのだ。少し後ろには突き出した尻を斜め下から狙った映像は、麻由香の尻の膨らみをいやらしく見せていた。
「や、やめて、映さないで!」

 「駄目だよ、皆で見るための大スクリーンなんだから。」
田之倉は取り合わなかった。
「いいじゃん、ケツの膨らみくらい。どうせこれから、大股開きとかY字バランスとか、見せてくれるんでしょ?」

 「まあまあ、そういじめるなよ。・・・それじゃあ、そろそろ、模範演技を頼むよ、麻由香ちゃん?」
さっきまでの殊勝な態度はすっかり影を潜め、佐々岡は余裕の表情で言った。
「けどさ、緊張感持ってやってもらうために、明らかなミスを一回でもしたら、それ、脱いでもらうってのはどうだ?」

 「・・・え?」
麻由香は耳を疑った。佐々岡はレオタードを指差して言ったが、これを脱いだら、サポーターしかない・・・
「そ、そんなの・・・」

  しかし、麻由香が口ごもっている隙に、陽菜の声が響いた。
「いいですよ。先輩に限ってあなた達に分かるようなミスなんかしません!」
おおっと、男子から喝采が湧く。陽菜は、尊敬する先輩に全幅の信頼を置いているかのように続けた。
「その代わり、先輩がノーミスだったら、バスケの練習がある日でも、私達が希望したら必ず一面は空けてもらって、貸してもらうことにしてくださいね。」

 「おいおい、何だよ、それ。・・・ま、しょうがねえか、それでいいよ。」
佐々岡が肩をすくめた。
「交渉上手だね、陽菜ちゃん。」

 「ちょ、ちょっと、陽菜ちゃん! 佐々岡くんっ!」
麻由香が慌てて言ったが、もはや後の祭りだった。
「え、そ、そんな・・・」

 こうして、哀れな美少女の恥辱の舞台の幕が上がった。


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