PART 29(bbbb)

 逃げ切るためには、今身に着けているビキニの水着を脱ぐしかない。それに、できれば膣の中に入れられたローターも・・・でも、どうやって?・・・梨沙は人混みの中をすり抜けるようにして走りながら必死に考えたが妙案が浮かばなかった。いや、選択肢は一つしかないことは分かっていたが、踏ん切りが付かないというのが正しいところだった。

 しかし、後ろから追ってくる男たちの声が聞こえると、梨沙は諦めざるを得なかった。やるしかないのよ・・・

 梨沙は走りながら、左腕でビキニの胸を庇った。そして右手を後ろに回し、背中の結び目の紐を引っ張って解いた。そのまま右手を上げ、首からビキニを抜くと、後ろへ高く放り投げた。おおっとどよめきが上がり、後ろの一般客がそのビキニを取ろうとした。その動きが、後ろから追ってくる男たちの妨げになり、梨沙は彼らとの距離を稼ぐことができた。

 トップレスになった梨沙は、左腕を胸に押しつけるようにして、二つの乳房をギャラリーの視界から守った。遊園地の出口まで、あと50メートル・・・騒ぎに驚いた大勢の一般客が自分の姿を見つめているのが視界に入り、梨沙の頬がかあっと熱くなった。そして、下半身が妖しい感覚にじんじんするのを感じ、梨沙は覚悟を決めた。やっぱり、下も脱ぐしかない・・・

 梨沙は唯一自由になる右手を下ろし、紐ビキニのボトムの右側の紐を掴み、引っ張った。すぐにその手を左側に回し、同じように左側の紐を引っ張った。支えを失ったボトムだったが、勢いよく走っているため、前方からの空気の流れを受け、辛うじて股間を隠すように貼り付いていた。「きゃあ、何してるの、あの子!」、という女性の悲鳴が突き刺さった。

 梨沙は軽く目を瞑り、右手を背中に回し、ボトムの後ろ側の上の部分を掴み、弾くように身体から引き剥がした。小さな布に隠されていたお尻が丸出しになるのを感じ、頭がくらくらするのを感じた。しかし、恥ずかしがっている余裕はない。梨沙は唇を軽く噛み締め、今度は右手を前に回し、ボトムの前側の上の部分から手を差し入れ、そのまま肌を這うようにして右手を下ろした。その結果、股間からも剥がれることになったビキニのボトムは、ひらひらと地面に落ちていった。おおお、というどよめきと、きゃあ、という悲鳴が同時に起こった。

 梨沙はついに、白昼の遊園地、しかもプールではない一般客が大勢いる入り口前で、一糸まとわぬ素っ裸になってしまった。目の前には大勢の男女がいて、自分を見て驚愕している。素っ裸の自分は、乳房と秘部を何とか隠しているだけ・・・丸出しになっているお尻に後ろからの視線が突き刺さっているのを感じ、梨沙は内心で悲鳴をあげた。
(い、いや、やっぱり、こんな格好・・・みんな、見ないで、私のこと・・・)

 「おい、急げ、遊園地の外に出すな!」
「大丈夫、裸になって遅くなってるぞ。」
「しっかし、とんでもない変態だな。」
「みなさーん、その露出狂の女を捕まえてください!」
全裸になった梨沙の足取りが少し重くなったのを見て、追っ手の男たちは大声を上げながら距離を詰めてきた。

 遊園地の入り口のゲートはもう目の前、ほんの15メートル先のところに見えていた。このまま逃げ切るしかない・・・確か、大通りの向こうに交番があったはず・・・そこに逃げ込むのよ・・・そして、全てを正直に警官に話せば、きっと守ってくれる・・・
 冷静に考えれば、大通りまでは遊園地の前の公道を50メートル以上走らなければならないし、大通りの向こうに行くためには、大勢の人でごった返している交差点を全裸で渡るなんて、ちょっと現実的ではないと考えられたかもしれないが、一刻の猶予も許されない状況ではそれは無理な相談だった。

 行くしかない。遊園地の中で捕まる訳にはいかない・・・梨沙は迷いを捨て、一気に走った。バスケ部で鍛えた敏捷さを活かし、僅かな隙間を見つけて走り抜けていく・・・おおおっという男性の歓声、きゃあっという女性の悲鳴が辛かったが、ぐっと唇を噛みしめて恥ずかしさに耐えた。出口はすぐそこだ・・・膣の中の異物感も辛かったが、さすがに人前で指を入れるわけにはいかなかった。

 次の瞬間、梨沙は急激にブレーキをかけなければならなかった。出口の前には一般客と受付係が何重にも立ち、完全に塞いでいたのだ。
「おい、絶対に通すなよ!」
「ああ、まさかここまで来るとはな」
「さすが生徒会長、よく気づいたな、裸になるなんていい度胸じゃん」

 やっぱり、この遊園地はおかしい!、梨沙はその言葉を聞いて確信した。一般客のように見えて、みんな、アイリスの仲間なのだ・・・自分は、思っていたより遥かに大掛かりな罠に嵌められたのだ・・・素早く見回すと、他の客たちももはや演技をやめ、自分を捕まえようと近付いてくるのが見えた。

 早く遊園地から出ないと、何をされるか分からない・・・梨沙は出口から出るのを諦めると、今度は門の反対側にある入り口の方に素早く走った。もちろん、大勢の男女の間をかいくぐりながらだ。ちょっと、何なのよ、この子!、そっちに行くわよ、という女性の声があがった。

 梨沙の動きを察したアイリス側の男女は何とか早回りし、あっという間に入り口も塞いだ。

 (・・・!)絶体絶命のピンチに、梨沙の表情が強張った。これでは、遊園地から逃げられない・・・いや、一つだけ・・・

 右側に見える入口と左側の出口の間は、1.5メートル程の高さの木の柵だった。そして、横に三本の木が組み合わされていて、それぞれ15センチ、60センチ、1メートルの高さにあった。

 1メートルの高さの横の木に手を掛けて、階段を登るようにすれば、柵は越えられる・・・ほんの一瞬のうちにそう考えた梨沙は、柵のうちの一番人が薄い部分に向かってダッシュした。股間に埋められたローターがぐっと膣内を刺激してきたが、歯を食いしばって耐えた。

 柵の目の前にきて、梨沙はまたもや一瞬躊躇した。柵を越えるためには、両手を身体から離さなければならない・・・梨沙は身体中がかあっと熱くなるのを感じながら、小さく周囲を見回した。大丈夫、誰もカメラを構えてない・・・ほんの少しの間だけ、なんだから・・・

 「え、何だ!?」
「まさか、嘘だろ!」
「いや、本気だ! 早く捕まえろ!」
「まずいぞ、逃がしたりしたら・・・」
意表を突かれたアイリス側の男女は、口々に叫びながら全裸の梨沙を見つめた。

 迷っている余裕のない梨沙は、乳房と股間を庇う手を離し、1メートルの高さの木に手を掛けた。続いて、唇をぐっと噛み、右足を15センチの高さの横木にかけ、さらに左足を高さ60センチの横木にかける・・・

 梨沙は今、両手を左右に開き、左足をがばっと上げる形になっていた。この部分は柵であって壁ではない・・・ふと見ると、壁の向こうに大勢の人達がいるのが見え、梨沙の心が一瞬萎えかけた。向こう側の人間はどうやら一般人のようだった。急に騒ぎ声が中から聞こえたので、何事かと驚いている風であり、その原因が梨沙で、しかも全裸であることは気付かれていないような気がした。

 早く捕まえろ、という声が背後から聞こえ、梨沙は再び自分を奮い立たせた。まだ大丈夫、一瞬は見られてしまうけど、誰も写真を撮ろうとはしていないはず・・・カメラを取り出す前に着地して、身体を隠せばいいのよ・・・

 梨沙は右足にぐいっと力を込めて柵の上に上半身を出した。そして、見るべきではないと思いながらも、つい上目遣いに正面の様子を探ってしまった。

 「え!」
「うわ、なんだ!?」
「え、おっぱい丸出し!?」
「え、え・・・嘘だろ」
「きゃあ、何、あの子!」
目の前には、数十人の男女がいて、そのうちの一部が梨沙の出現に気付いた。そして、梨沙の美しい白い乳房と、その頂点にちょこんと乗ったピンクの乳首を見て、信じられないといった表情をした。

 は、恥ずかしい・・・生まれて初めて、他人に胸を見られてしまった・・・こんな大勢に、昼間の遊園地で・・・梨沙の身体を電流のような感覚が走り抜け、一瞬、その全身がびくびくっと震えた。

 しかし、これでやめたら元の木阿弥だ。梨沙は気力を振り絞って羞恥に耐え、さらに右足を大きく上げ、1メートルの高さの横木に脚をかけた。今、右横にいるアイリスの男女達に覗かれたら、開いた秘裂をまともに見せつけることになってしまう・・・

 頑張るのよ、負けないで!・・・梨沙は内心で自分に活を入れ、さらに左足を持ち上げた。そして、一旦1メートルの高さの横木に両足を乗せると、息を呑み込んで右足を上げた。一気の柵の上を跨いで、柵の向こう側の横木に足をかけよう・・・そして身体を反転して左足も柵を越えさせれば、向こうの人たちには背中を向ける形で降りることができる・・・柵を跨ぐ瞬間には、手で股間を隠せば、あそこは見られない・・・早く、まだ一部の人しか気付いていない今のうちに・・・ほんの一瞬のうちに、梨沙は素早く段取りを考え、お尻を見られてしまう覚悟をして、考えを実行に移した・・・

 「・・・! きゃ、きゃあっ!」
右足を大きく上げ、股間を隠しながら柵を跨いだまさにその瞬間、後ろから股間めがけて強烈な水流を浴びせられた梨沙は、バランスを崩しそうになって悲鳴をあげた。宙に浮いた右足を戻すべきか、このまま柵の向こうに行くべきか迷うと、水流はすぐに2つに増え、梨沙の秘裂と尻の穴を狙って突き刺さった。
「い、い、いやあっ!」

 全裸で柵越えをしようとしていた美少女の大声に、柵の向こう側の全員が一斉に視線を向けた。おおおっ!、え、何、あれ!、きゃああっ!、悲鳴と歓声が交錯し、遊園地のゲート前は一気に大騒ぎになった。

 逃げるのよ、とにかく・・・梨沙が迷っていた時間はほんの1,2秒だったが、その間に梨沙は裸の乳房をその場の全員の視線に晒すことになってしまった。そして股間は激しい水しぶきをあげている・・・いいから早く! 梨沙は内心で自分を叱咤した。

 梨沙はしっかりと両手で柵を掴み、右足を柵の向こう側の高さ1メートルの横木に置いた。よし、あとは左足よ、身体を反転させて・・・

 しかし、激しい水流が梨沙の身体の動きを許さなかった。バランスを崩した梨沙は、身体の反転に失敗し、柵の向こう側に身体の正面を向ける格好のままで越え、左足を高さ1メートルの横木の上に何とか置いた。

 ようやく柵を越えることができた梨沙だったが、予想外の展開に唇をぱくぱくさせていた。梨沙は今、高さ1メートルの横木の上に両足を乗せて立っていた。お尻を柵に付け、両手で後ろの柵の上をしっかり押さえながら・・・そして梨沙は、今は何も身に付けていない素っ裸だった。

 時間にすれば、それはほんのコンマ数秒のことだった。しかし、全裸の女子○生が、数十人の前で1メートルの台の上に立ち、乳房も恥毛も全てを晒してしまうには余りに長い時間だった。梨沙は一瞬、正常な判断力を失い、呆然と柵の上に立ち尽くした。目の前に、ぼうっと真っ白な霧がかかっているような気がした。


前章へ 目次へ 次章へ

カウンター