PART 32(bbbb)

 信号が青に変わってから、まだ十数秒しか経過していなかったが、渋谷の駅前交差点はいつにも増して喧噪に包まれていた。そして、通行人の一部は交差点の中心に止まっているバイクに群がり、通行の妨げになっていた。

 大勢の男女の笑い声、からかう声、カメラのシャッター音、後からやってきて、後ろから様子を窺う通行人の不思議そうな会話・・・そしてしばらくするとその中心から、きゃああっっ!、というひときわ大きな少女の悲鳴が聞こえた。

 それは、梨沙の悲鳴だった。梨沙を取り囲んでいた男の一人が手を伸ばし、尻をぺろっと撫であげたのだ。
「きゃ、きゃああっ・・・いや、触らないでくださいっ」
梨沙は声を上げながら、腰を引き、その手から逃れようとした。
「・・・あ、あっ、あんっ・・・」
急激な腰の動きとバイクの振動が共鳴し、秘肉が内と外から刺激された。脳天を突き抜けるような快感に、梨沙はヘルメットの顔を仰け反らせ、全身を震わせた。

 「おいおい、ケツをちょっと撫でられただけで、感じ過ぎじゃねえの?」
触った男が呆れたように言うと、周囲のギャラリーも失笑した。

 「そんなに嬉しいなら、もっと触ってやろうぜ。」
一人の男がそう言うと、バイクを囲むギャラリーの輪がさらにぐっと縮まった。左側から近付いた男が、梨沙のつぶれた胸と柏原の背中の間に手を差し込もうとした。バイクの背後から近付いた男は、梨沙の開いた尻の真下に手を差し込み、尻の溝の奥へと指を差し込んだ。さらに、右側から近付いた男は、梨沙の太ももを下から撫でてさらに奥へと進め、内ももを触り、さらに足の根本へと進めようとした。
・・・

 「あっ、ああんっ!・・・あ、あひぃぃっ・・・きゃ、きゃあぁぁっっ!」
3方からの男の手に、女性として最も恥ずかしく感じやすい3カ所の部分を責められ、梨沙は悲鳴をあげた。しかし、全裸でバイクに乗り、柏原に両腕でしがみついている状況では、男達の手を振り払うことはできなかった。白昼の路上で素っ裸を晒し、見知らぬ男達に身体を触られている・・・梨沙の頭の中は真っ白になりかけていた・・・
「いや、やめてっ・・・だめ、触らないで・・・あ、あぁ、ぁぁん・・・」
乳房を狙う男の指は柏原の背中との間に入ることに成功し、乳首を狙って進んでいた。尻の溝に差し込まれた指はもうすぐ尻の穴に辿り着きそうだった。また、太ももの裏から入り込んだ手は内腿に回り、女性の最も大切な部分に近付いていた。

 あはは、すっごい喜んでるぅ、最低っ・・・意地悪な女子高生の声が響き、梨沙の羞恥心をさらに抉った。しかし、敏感な3点を責める男達の手と、下から突き上げるバイクの振動、秘裂の奥のローター、という快感責めに、梨沙の理性は崩壊寸前にまで追い詰められていた。全身が勝手にびくびくと震え、唇は半開きのまま、可憐な喘ぎ声を発し続けていた。
「い、いやです、やめて・・・あ、あっ、あんっ・・・い、いい・・・」
その言葉と裏腹に、梨沙の身体の震え方と切なそうな喘ぎ声は、どう見ても快感に喜び、男達を誘っているようにしか見えなかった。わ、私、もう、駄目・・・

 この女、イきそうだぞ、という男の声が響き、きゃあ、ここでぇ?、というはしゃいだ声が続いた。周囲の野次馬も、何とかその瞬間を見ようと背伸びし、携帯端末を持った手を高く掲げた。

 いつしか歩道側の信号は赤になっていた。そして、車道側の信号が青になっても、交差点の真ん中のバイクを何重にも囲む集団は動こうとしなかった。業を煮やした車からクラクションが鳴り響き、スクランブル交差点の混迷はさらに深くなっていった。

 その時、一台の車がクラクションを派手に鳴らし続け、強引に交差点に突っ込んできた。うわあ、危ない、という悲鳴があがり、群衆が左右に割れた。

 すると、一台の白いワゴンが現れ、バイクの前に止まった。
「おい、何やってるんだ、どけどけ!」
助手席の窓が開き、中年男が顔を出して怒鳴った。その剣幕に驚き、野次馬達は散り散りになった。

 「・・・お前ら、今度は何のつもりだ、渋谷のど真ん中でよくやるなあ・・・」
中年男はバイクの二人を眺め、呆れたように言った。
「その格好で、新宿から走って来たのか、天下のK附の生徒会長さんが(笑)」

 (・・・!)ヘルメットを被っているのに、なぜこの男は自分のことを知っているのか・・・梨沙は呆然としながら徐々に思い出していた。この声、この顔、何か覚えがある・・・あ、あの時の、ショウブ堂の店長!・・・あっ! ショウブってまさか、花の菖蒲、すなわち、アイリス!?・・・

 「お、お前、黒川っ!?」
同時に思い出したように、柏原が大きな声をあげた。
「ど、どうしてここに?」
周囲の車のクラクションの音が大きくなり、何やってるんだ、という怒号が響いた。

 しかし、黒川は雑音など一切気にしていないかのように平然と言った。
「ほう、俺たちのことを調べたのか? ガキにしては感心だな。お前、柏原っていう奴だな。この前来たときには梨沙の透けたオッパイ見て興奮してたくせにな。今度は裸で抱きつかせてツーリングとは、なかなかやるな。」」
そう言うと、黒川は唇の端に小さな笑みを浮かべた。
「しかし、梨沙もまさか、遊園地から裸で逃げ出すとはな。それで、お前がバイクで逃がすとは、いや、本当に参ったよ。」
黒川はそう言いながら、右手を窓の外に出して見せた。その手のひらには、小さなプラスチックの箱が握られていた。
「しかし、いい顔して悶えていたなあ、梨沙・・・そんなに全裸露出がしたいんなら、うちでデビューするか?・・・それに、もう、限界なんじゃないか?」

 その瞬間、梨沙は黒川の持っている物が何か分かった。あれはきっとリモコンだ・・・私の、あそこの中に入っているものの、スイッチだ・・・そしたら私・・・!
「柏原君、早く逃げて! 早くっ!!」

 「え、だけど・・・」
今、青になっているのは、自分が行きたい方向の信号ではない・・・しかしもう一回、早くっ、という梨沙の声が響くと、柏原は心を決めた。
「分かった、行くよ、梨沙ちゃん。しっかり掴まって!」
ブオオォンッ、と大きな音を立て、二人を乗せたバイクは蹴飛ばされたように一気にスタートした。バイクは急回転して、黒川達の乗った車に背を向けて走り出した。

 「あっ、待て! ば、馬鹿っ、早く追え!」
黒川は慌てて、運転手の男に怒鳴ったが、車はバイクのようにすぐには加速できなかった。すると、今度は進行方向の信号が赤になり、交差する車線の信号が青になった。両側から走ってきた車にクラクションの嵐を浴びせられ、黒川達の車は交差点の中央で立ち往生することになった。


 柏原と梨沙が乗ったバイクはそのまま走り続けたが、ところどころで信号に捕まり、梨沙は真っ白なお尻を通行人達にじっくり鑑賞されることになった。もうすっかり梨沙が裸で乗っているバイクのことは知れ渡り、皆が好奇の視線を向け、携帯端末で撮影していた。梨沙はできるだけ感じないように、必死に歯を食いしばるしかなかった。あはは、本当にケツ丸出しい!、やぁだぁ、最低っ・・・同じようなヤジを何度も浴びる度に、梨沙の官能は徐々に高まってしまっていた。
(え、嘘!?、や、やだっ!)
股間がじゅわっと濡れてくるのを感じ、梨沙はヘルメットの下で表情を強ばらせた。柏原くんのバイクに付いたりしたら・・・それは、16歳の少女にとって、死んでしまいたいほど恥ずかしい事態だった。

 一方の柏原は、走りながら考えをまとめられずにいた。黒川達の車から逃げるため、とりあえずこっちに走っているが、それは当初の目的地だった柏原の家からどんどん遠ざかるということだった。しかし、この辺りで脇道に入っても、いい抜け道はなかった。くそ、このまま大通りを走っていたら、梨沙ちゃんの裸がもっと大勢に見られてしまう・・・いやそれどころか、警察に捕まるかも・・・

 「よし、やっと追いついたぞ、お二人さん。相変わらずエロいケツ見せつけてるね。」
いきなり右後ろから声をかけられ、二人はぎょっとして振り向いた。

 「きゃ、きゃあっ」
右側の車は全体が鏡張りになっていて、梨沙のバイクに跨る裸身の全身像が映っていた。梨沙は自分が今、どんなに恥ずかしい格好を晒しているのかを思い知らされ、悲鳴をあげた。
「い、いや、こんなのっ・・・」

 「あははは、新宿から渋谷まで走っておいて、今さらいやもないだろう? ほら、ばっちり録画してやるからな。」
黒川がそう言うと、後部座席側の窓が下り、本格的なビデオカメラのレンズが梨沙に向けられた。
「どうだ、プロ用の機材で露出ビデオ撮ってもらう気分は? ケツの割れ目までばっちり映ってるぞ。」
梨沙が悲鳴をあげるのを楽しみながら、黒川はリモコンのボタンを見せた。
「それじゃあそろそろ、絶頂シーンと行こうか。可愛い顔がイくところ、ばっちり撮らせてもらうからな。」

 その瞬間、柏原は強引に加速し、前の2台の車の間に滑り込んだ。おい、危ねえ!、という罵声とクラクションを浴びながら、柏原は何台もの車の間をすり抜けていった。

 柏原はぎりぎりのところで、黒川達の車を引き離すことに成功した。
「やった、もう大丈夫だよ、梨沙ちゃん!」
柏原は胸のすく思いで後ろの梨沙に声をかけた。

 しかし、梨沙の返事はなかった。その代わり、く、くぅぅぅ、という呻き声が聞こえ、自分の腰に回されている両腕がぶるぶる震えているのが分かった。
「ど、どうしたの、梨沙ちゃん、大丈夫?」
柏原は何が起きたのか分からず、バイクを走らせながら梨沙に話しかけた。
「とにかくもう少しだから、しっかりと掴まって!」

 あの時、柏原は確かにワゴンから逃げ切ったが、ローターのスイッチは間に合ってしまった。そして今、梨沙の膣の中では、ピンクローターが縦横無尽に動き、バイクの振動と共鳴し、梨沙にさっきまでとは比べ物にならない快感を与えていた。次の信号で止まったとき、梨沙は両手で柏原の身体を叩きながら訴えた。
「柏原くん、もうだめっ! もう駄目なの! お願い、早くどこかで止めて! お願い!」
まさか、親しかった男子の柏原に、女性の秘奥にローターを挿入されていて、スイッチを入れられてしまったと言うことはできず、梨沙はそれだけを柏原に訴えるしかなかった。

 「そ、そんなこと言われても・・・」
柏原は信号を見ながら困惑した。しかし、梨沙の身体がなぜかがくがくと激しく震え、腕の力が落ちてきているのも明らかだった。それに、このままでは後ろからの黒川達の車にまた追いつかれてしまう。でも、どうしたら・・・その時、柏原の頭に一つのアイデアが浮かんだ。そうだ、ここからならあそこがすぐ近くだ。あそこなら、黒川達も追ってくることはできない・・・
「梨沙ちゃん、曲がるよ、しっかり掴まって!」
柏原は急にハンドルを左に切ると、一気に加速していった。


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