PART 38(bbbab)

 真樹の声が途絶えると、文化祭門の上の部分を構成している1メートルの立方体の箱の中は、再び静まり返った。もちろん、数メートル下では、相変わらず大勢の人が行き交い、賑やかな喧噪に包まれていた。

 12時7分。梨沙はぼうっとした目で、目の前の携帯端末の時刻表示を眺めた。あと、53分・・・
「・・・あ、ぁはぁ・・・ひぃぃ・・・んっ・・・」
もはや可愛い唇は半開きになり、断続的に熱い息と掠れたあえぎ声を漏らすようになっていた。愛液も洪水のように溢れ続け、時々ぽたり、ぽたりと下に落ちてしまっていた。梨沙は知らないが、ディルドの中に仕込まれていた媚薬を、自らの秘裂の締め付けによりたっぷりと絞り出し、膣壁にじっくり塗りたくっていたのだから、それも当然だった。

 梨沙にとって幸運なことに、愛液が何度も地面に落ちたにも関わらず、下を行き交う人々に自分の存在を気付かれずにすんでいた。まさか、学校の文化祭の門の中に人間がいるとは誰も夢にも思わないし、文化祭の楽しい雰囲気に高揚している人たちが細かいことを気にしないことが要因のようだった。しかし、愛液が垂れ落ちる度に、梨沙は破滅の予感に心臓が停まりそうな気分になったが、それは一種の拷問のようでもあった。一方、それはある意味、寸止めの快感責めのような効果を梨沙にもたらしていた・・・

 「・・・あ、ああぅぅ・・・も、もう、無理です・・・は、はっ、はあぁ・・・た、助けて・・・」
梨沙は上気した顔で携帯端末を見つめ、訴えるように言った。秘裂にしっかりと咥えているディルドから、恐ろしいほどの快感を得て、梨沙は掠れ声になっていた。

 すると、ぱっと携帯端末の画面が変わり、真樹の顔が現れた。
「うふ、梨沙ちゃん、とっても気持ちよさそうね・・・でも、ちょっとお股が緩んでいるみたいよ。ふふ、大胆ね(笑)」
それだけ言うと、真樹の顔はぱっと消えて画面が切り替わり、再び文化祭の門を学校の正面から捉えた映像になっていた。
 
 「・・・え、あっ、ちょっと待って、お願い・・・はぁあん・・・」
一瞬、希望に輝いた梨沙の顔が、再び快感に悶える苦渋の表情に戻った。そして、真樹の言葉が引っかかり、ぼうっとしながら考えた。お股が緩んでいる、って、どういうこと?

 その時、梨沙はようやく気付いた。目の前の携帯端末の位置が、少し上方にずれているのだ。・・・それが相対的なものであり、本当は自分の身体が下がっているということに気付くのに、さほどの時間はかからなかった。
「・・・っ!」
目の前の携帯端末の中継映像を見て、梨沙は声にならない悲鳴を上げた。

 そこには、学校の正門とそのすぐ手前に設置された文化祭の大きな門、その下を行き交う大勢の人たち、という先ほどまでと変わらない光景が映し出されていた。唯一異なっているのは、その文化祭の門の上で横になっている柱のちょうど真ん中の部分の下に、小さなW字型の輪郭が見えることだった。それは、梨沙の開いた二つの太股と双臀で形成されている輪郭だった。さらによく見ると、その中心の部分の門との境目には、縦に伸びた溝の一部までが見えていた。

 いつの間にか、ディルドがほんの少し、抜けてしまっていたのだ! そのため、ディルドから滑車を伝って支えられている梨沙の身体が、30センチほど下がってしまっていた。電動アシストと滑車を組合わせた仕組みにより、1ミリ抜けたら15センチ下がってしまう・・・すなわち、ほんの2ミリだけ、ディルドが抜けているのだ。

 嘘でしょ、そんな・・・恐る恐る首を曲げて下を見た梨沙は、それが紛れもない現実であると思い知ることになった。梨沙の身体の、腰までは箱の中で暗かったが、秘裂の部分は外界に照らされて光っていたのだ。

 (い、いや、いやっ、いやあっっ!)
梨沙は思わず目をつぶって首を振ったが、それは自分にさらに厳しい現実を突きつけることになった。身体を揺らしたため、さらにディルドがじわりと抜け、身体がさらに10センチほど下がってしまったのだ。
(・・・っ!! だ、だめぇ・・・)
携帯端末の画面には、梨沙の下半身が門の柱の下にはみ出し、秘裂のすべてがはっきり見えるようになっていた。その中心から生えている透明な棒の根本まで。これでは後ろから見たら、梨沙のお尻が完全に丸出しに見えるに違いなかった。もしかしたら、お尻の穴まで・・・

 一瞬、はっと我に返った梨沙は、渾身の力を込めてディルドを膣で握った。
「あ、あぅぅぅ・・・」
ディルドの突起の一つ一つまでじっくりと味わうことになり、梨沙は顔を仰け反らせた。しかしそれでも、歯を食いしばって耐え、ディルドを握る力は緩めなかった。ある意味、それは天才的な技術と忍耐力だった。映像を見ているアイリス事務所の中では、少女の驚異的な頑張りに、どよめきと歓声が起こり、拍手が湧いていた。

 自分は今、丸出しの下半身を遠くからでも見えるように晒してしまっている・・・それは、さっきまでの箱の中よりも遙かに危険な状況だった。門の真下を通る瞬間だけなら、わざわざ真上を見る人間もいなかったが、少し離れたところから門を見れば、横の柱の真ん中下側に奇妙な膨らみがあることに気付いてしまうだろう・・・まだ、12時8分・・・

 それからしばらく、門上の梨沙に気付く者はいなかった。携帯端末の時計は12時10分を示していた。その2分が、梨沙にとっては永遠にも思えた。あまりにも非日常的な状況に脚ががくがくするのを抑えるのが困難になっていた。

 つーっ・・・ぽた、つーっ・・・ぽた、つーっ・・・ぽた・・・大勢の頭の上で剥き出しになっている梨沙の股間からは、糸を引きながら愛液が垂れ落ちるようになっていた。頭に落ちても気付かない者、門を通り過ぎてから空を見上げる者、肩にかかったものを手で払おうとして不思議な顔をしている者・・・いまだに誰も梨沙に気付いていないのは、ある意味奇跡的だった。いつの間にか、お臍近くまでが門の下で露出してしまっていた。


 しかし、破滅は唐突に訪れた。
「え、何、これ?・・・べとべと・・・えっ、えっ?」
門の下で梨沙の愛液を頬に浴びた女子高生が頬に手を当て、不審な声をあげたのだ。そして、不思議そうな顔で上を見た女子高生は一瞬、固まった。
「・・・きゃ、きゃ、きゃああああっっ!!」

 「え、どうしたの? 上がどうかした・・・」
「ちょっと、いきなり大きな声、出さないで・・・」
「何よ、あんたっていっつも大げさなんだか・・・」
4人組の女子高生は、一人の反応に驚いた言葉を発しながら皆が同時に真上を見て、一斉に絶句した。

 「ひぃ、何あれえっ!」
「ちょっと、信じられない!」
「ばっかじゃない、最低っ!」

 突如悲鳴をあげた女子高生達に、その場の全員の視線が集中した。そして、4人が門を見上げているのに釣られ、皆の視線がその上に向かった。
「おい、あれ、何だ? まさか、女の裸!?」
「うそ、すっげぇ・・・M字開脚!(笑)」
「おいおい、おまけにあそこに刺さってんの、バイブじゃね?(笑)」
「まさか、どっきりのオブジェだろ?」
「確かに、まさかここであそこ出す女なんていないよな、いくら文化祭でも(笑)」
「そうだよな、毛も生えてないしな。剃って露出してたら、本当にド変態だよな(笑)」
数百人はいる来校者は、女性の剥き出しの下半身のオブジェ?に食い入るような視線を向けた。

 そして梨沙は、恐れていた事態がついに現実化してしまったことを悟り、目を見開いて携帯端末の画面を見ていた。そこでは皆が自分の下半身を見て、笑ったり、指をさしている光景が映し出されていた。唯一の救いは、自分の下半身が本物ではなく、悪戯で作られたオブジェと勘違いされているらしいことだった。梨沙は首を曲げて下の光景を確かめたい気持ちを必死に堪え、身体の震えを止めようとしていた。お願い、気付かないで・・・
「は、ふわぁぁっ! だ、だめ、変な気持ちになったら・・・あ、あぁぁ・・・」

 もちろんそれは、無理な相談だった。そして、それがオブジェではないことを証明してしまったのは、梨沙自身だった。
皆の視線が秘裂に突き刺さったことが、梨沙の快感を一層高めていたのだ。そしてしばらくすると、その秘裂からは、どろーり、と愛液がたっぷり漏れ落ち出した。
 ぼた、ぼた、ぼた・・・それは、真下で見上げていた女子高生達の間に連続して落ちていった。

 い、いやああっっ、という女性達の黄色い悲鳴、おおおおっ、という男性達のどよめき・・・少し遅れて、罵声と笑い声が響き、K附学園の校門付近は一気にパニック状態の様相を呈していた。人工のオブジェが愛液を垂らすはずがなかった。やはり、生身の女性が文化祭の門の中で裸になり、下半身を皆の前に晒している・・・信じがたい事態に、皆がそれぞれの感情を剥き出しにした。

 「ちょっと、何考えてるのよ、この変態っ!」
「ねえ、何これ、どっきりなの? 信じられない、この学校!」
「あれって、女の人の裸なの、お母さん?」
「駄目よ、見ちゃ、あれは何でもないのよ!」
「すっげぇ、K附の文化祭なんてお上品だと思ってたのに、大サービス!(笑)」
「ていうか、捕まるんじゃないの、もろに丸出しじゃん!」
「見ろよ、あのお尻! 真っ白で、ぷりぷり丸くて、たまんねえなあ(笑)」
「そうだけどさ、M字開脚してっから、ケツの穴まで見えてるんだけど(笑)」
「うわ、こんな風になってるんだ、女のあそこって。」
「あれって、K附の女子なのかな? だとしたらすげーな、名門校のお嬢様なんだろ?(笑)」
「じゃあAVのゲリラ露出って奴? でもこれは逮捕されるだろー(笑)」
「涎みたいにあそこからどんどん垂らしちゃって、恥ずかしくないのかねえ」
「おい、みんなに教えてやろうぜ!」

 「い、いや、やめてっ!」
男子達が携帯端末のカメラを起動し、自分の下半身を撮影しようとしているのを目の前の画面で見て、梨沙は思わず小さな悲鳴を漏らしてしまった。しかしすぐに、数十台のカメラが自分に向けられてしまい、パシャ、パシャ、ピロリーン、と様々なシャッター音があちこちから聞こえるようになっていた。

 「・・・く、く、くぅぅぅ・・・あ、あぁん・・・」
これ以上身体が落ちないように、また、くす玉が割れて恥ずかしい写真がばら撒かれないように、梨沙は必死に秘裂でディルドを咥え続けた。しかし、こうしている間も、剥き出しの下半身のほんの1メートル下から大勢の人間が見つめ、写真をぱしゃぱしゃ撮っているのだ・・・あまりのことに、梨沙の頭の中は真っ白になっていた。

 衝撃的な事態にギャラリーが気づいてから、まだほんの30秒くらいしか経っていなかった。しかし、楽しかった文化祭の雰囲気は完全に変わり、卑猥なオブジェを中心に罵声と歓声、笑い声とシャッター音に包まれるようになっていた。

 「ちょっとあなた、何をしているんですか!」
歓声の中から、よく通る男の声が梨沙に聞こえた。
「僕は副生徒会長の柏原と言います。今すぐ、降りてきてください!」
そうだ、文化祭を邪魔するな、という他の男子達の声が続いた。

 (か、柏原くんっ!?・・・いや、見ないでっ、こんな格好!)
生徒会長と副生徒会長という関係でも話すことが多く、普段でも親しい男子の声が真下から聞こえてきて、梨沙は改めて動揺した。学校の文化祭なのだから知り合いの男子がいるのは当たり前だったが、現実として突きつけられると、それはあまりにも辛い状況だった。他に聞こえたのは、生徒会の他の役員や文化祭準備委員の男の子達・・・みんな、下から至近距離で、私のお尻とあそこを見ている・・・お尻の穴も、あそこにディルドを咥えて、愛液にまみれている姿も・・・今、見られている・・・

 「・・・ちょっと、どういうつもりですか。いい加減にしてください!」
無言で動かない女体の下半身を眺めながら、柏原は若干動揺した声を発していた。真上の箱から飛び出している真っ白なお尻、バイブが突き刺さった無毛の股間はあまりにも刺激的だった。しかし、周囲のみんなに見られている副生徒会長という立場上、いやらしい気持ちで見ることはできない・・・
「早く降りてください・・・今すぐやめないと、警察を呼びますよ!・・・うわっ!」

 梨沙が興奮して漏らした愛液がどっぷりと降りかかり、真下からは柏原の呻きのような悲鳴が聞こえてきた。

 「いやだあ、セミみたーい」
「あはは、最っ低!」
と女子高生の声が響くと、周囲が失笑に包まれた。それは、梨沙がよく知っている女子の声のような気がした。



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