PART 84(bbbbx)

 ショーの2巡目は、私服だった。梨沙の服装は、他のモデルよりも若い子向けで可愛かったが、スカートが膝上20センチとあまりにも短かった。他のモデル達は、梨沙のスカートを見て、軽蔑して笑った。あはは、やっぱりそういう役割なのね・・・エロ要員(笑)

 しかし、9人のモデル達はまた、地団駄を踏むことになった。下着が見えそうな衣装でどこか恥ずかしげな梨沙は、またもや10人の中で最高の拍手をもらったのだった。
 ポーズを作るたびに温かい拍手をもらい、梨沙は徐々に緊張が解け、ステージを楽しむようになっていた。ポーズをとる度に眩しいほどのフラッシュの嵐を浴びるのが少し気持ち良かった。

 3巡目は水着だった。他のモデル達が斬新なデザインの水着で拍手を浴びる中、梨沙だけは普通のワンピースの白水着だった。ただ、その何の変哲もないデザインが梨沙の身体のラインの美しさと肌の瑞々しさを際だたせ、さり気なく施されたリスの刺繍が可愛く、観客達を和ませた。


 「すずちゃん、今までとってもいい感じよ!」
控え室に戻った梨沙に対し、くるみが優しく声をかけた。
「このまま行けば、あなたの評価がナンバーワンよ。毎年、一番の子は大手事務所からいくつも声がかかるのよ。」

 「え、本当ですか?」
梨沙の顔がぱっと輝いた。すずさんの夢がかなうの!?

 「ええ、本当よ、あと二着だから、気を抜かないで頑張ってね。」
くるみはそう言いながら、少しだけ、良心の呵責を感じていた。ごめんね、すずちゃん。でも、アイリス映像のスターにはなれるからね・・・(笑)
「はい、次の衣装。早く着替えてね。」

 水着の梨沙は、その衣装を手に取ってみると、戸惑った表情を浮かべた。
「くるみさん、あの、これ・・・私の下着じゃないんですけど。」
そのブラジャーとパンティは、ピンクの極小サイズで、薄く透けてしまっていた。

 「うん、そうよ、それも衣装だから。」
くるみは少し素っ気なく言った。
「次は制服と、下着をお見せするのよ。」

 「・・・あの、制服とか水着のコレクションて聞いているんですけど・・・」

 「うん、去年まではね。でもさ、今年はちょっと、下着の要素も加えるって聞いてたでしょ?」

 「は、はい・・・」
すずが聞いていたのかもしれないと思うと、梨沙はそれ以上抵抗できなかった。それが今回の方針なら、従うのがモデルの仕事だ。
「だけど、この下着じゃあ・・・」

 「どうしたの、何か気にかかる?」

 「・・・全部が、見えちゃいます・・・」

 「でも、みんな着てるしねえ・・・何もおかしいこと、ないんだけどねえ。」

 「あの・・・他の下着とかは?・・・」

 「うーん、準備されてるのがこれなんだから、これを着なくちゃ。」

 「でも、これですか・・・」

 「うまく期待に応えれば、ステップアップできるんだしさ・・・」

 「・・・でも、これ、これが、下なんですよね・・・」
梨沙はパンティを広げてみたが、下半身に当ててみた。それは、ウエスト部分のピンクの紐に、幅4センチで縦8センチほどの半楕円の、半透明のピンクの布地が前側についていて、その半楕円の周囲にピンクの細い飾りが付いているだけだった。後ろは完全なTバックだ。

 「うん。可愛いねえ、似合うと思うよ。」

 「でも、全部、見えちゃいます・・・」

 「大丈夫、何もおかしいことないと思うよ・・・すずちゃんだけだよ、そんなこと言ってるの。」

 え、でも、と梨沙が言いかけた時、個室の扉が外からノックされた。
「大石さん、まだですか? あと3分で出番です!」

 「それじゃあ、早く着替えてね。頑張って、いいショーにしましょうね。」
少し焦ったくるみは、梨沙の肩をポンポンと叩きながらそう言うと、個室から出て行った。個室の扉が開いた時、きゃはは、と他のモデル達が明るく笑う声が聞こえた。

 もはや梨沙に迷っている余地はなかった。・・・すずさんの代わりでやるんだから、恥は掻かせられない・・・下着姿になるとさこともすずさんは聞いていたはずなんだから・・・早く、着替えなくちゃ・・・

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 何とか出番に間に合った梨沙は、モデル達の最後尾に並んで出番を待っていた。今度の制服は、白いブラウスに、チェックの膝上10センチのスカート、赤い紐のリボンという清楚なものだった。

 ステージには、まだベートーベンの月光が上品に響いていた。モデルが出て行く度に、大きな拍手と、多分制服を脱ぐたびにおおおっというどよめきと拍手が湧くのが聞こえた。

 みんな、本当にこんな恥ずかしい格好をしているの?
「あの・・・緊張しないんですか?」
梨沙は思わず、隣の少しギャル風のモデルに声をかけた。

 「え、別にい」
そのモデルは淡々と答えた。
「まあ、普通じゃない?」
その目が、どこか冷たかった。

 一人また一人とモデルがステージに出て行き、いずれも大きな拍手を得ていた。もう、梨沙の前には、さっき話しかけたギャル風のモデルしかいない。

 この人の後は私だ・・・大勢の人達がいて、カメラマンも沢山いて、マスコミの人だっているのに・・・裸同然の格好にならなくちゃいけないなんて・・・

 「大丈夫、頑張って」
いつの間にか近くにきていたくるみが、両手を伸ばして、ぽんぽんと梨沙の身体を叩いた。

 ついに、前のモデルがステージに出て行った。舞台袖から梨沙が見ていると、堂々とした様子で観客にお辞儀をして、大きな拍手をもらうのが見えた。

 次の番の梨沙は、数歩前に出て、両側のバックパネルの間にある、ステージに出て行くための中央部分に立った。真正面には、前のモデルが張り出しステージを歩いて行くのが見える。また、真正面にいる観客の一部も見えた。
 ステージ場で服を脱いで下着を見せたことはないので、前のモデルの動きを追うことにした。とにかく、他のモデルと同じように振る舞うように言われていたのだ。

 観客達は、張り出しステージへの通路部分すぐ両側と、張り出しステージの前に配置されていた。前のモデルは、数歩歩いたところでまず、右側の観客達の方を向き、スカートの前をめくった。パチパチパチ、と大きな拍手が起き、フラッシュが連続して浴びせられた。
 次に左側の観客達に向けてスカートの前をめくり、大勢の男達にスカートの中を見せ、拍手を浴びた。

 (え、そんな風にするの?)
梨沙はイメージの違いに戸惑った。何か、それは男の欲望に媚びているような、いやらしい見せ方に思えた。普通は上のブラウスから脱いで見せるのではないか・・・

 しかし、梨沙の戸惑いはそれだけに止まらなかった。その後、スカートを脱ぎ、ブラウスを脱いだのは想像どおりだったが、脱いだ後の姿が違った。・・・前のモデルは、可愛いピンクのワンピースの水着を着ていた・・・そして、張り出しステージの先端の部分で様々なポーズを取り、その度に大きな拍手をもらったモデルは、脱いだ制服をステージに置いたまま、ステージの通路を戻ってきて、梨沙の脇を通って、反対側のステージ裏へと戻っていった。

 (そ、そんな・・・)
梨沙は悟った。やはり、大石すずは、普通のモデルとして呼ばれたわけではなく、いやらしい格好を見せるため、AV嬢として呼ばれたのではないか・・・他のモデルは例年どおり、可愛い水着姿を見せ、私だけが、透けている下着姿を見せなければならない・・・すずさんは、このことを知っていて、それでもチャンスのために出演を承諾したのだろうか?・・・

 「すずちゃん!」
くるみの小さな声が聞こえた。見ると、バックパネルぎりぎりに立ったくるみが、厳しい顔つきで睨んでいた。
「ほら、早く!」

 い、行かなくちゃ・・・しかしそれは、大勢の男性に囲まれる中で、ほとんど裸の格好を晒し、写真を撮られ、あちこちの記事に掲載されてしまうということだった。数週間前には交差点で全裸放尿ショーをしてしまった梨沙だったが、それは突発的なほんのわずかの時間のことだった。しかし今度は、じっくり見られ、プロのカメラマンに写真を無数に撮られ、顔もはっきり写っている写真を公開されてしまうのだ・・・でも、やらなくちゃ・・・

 梨沙はとりあえず一歩前に出た。それだけで、ほとんどの観客達が視界に入った。皆の視線が突き刺さるのを感じ、梨沙は思わず立ち止まり、両手を丸め、口に当てて、両足をすり合わせるようにもじもじしてしまった。顔を一旦上げて、大勢の観客達を見たかと思うと、すぐに不安で怯えたような表情になり、俯いてしまう・・・その仕草が、男達の嗜虐心を刺激してしまうことには全く気が付かなかった。

 パチパチパチパチ・・・制服姿の梨沙がステージに立っただけで、前のモデルよりもずっと大きな拍手が起きた。

 梨沙は、両手を拳にして口のあたりに当てたまま、もじもじとするようにステージの通路を歩き始めた。大きな瞳が不安そうな色を浮かべていた。一歩、二歩、三歩、と歩くだけの姿が愛おしい・・・観客達は、今までのどのモデルよりも清純に見えるすずの演技に感嘆していた。すずちゃん、エッチな下着を着せられただけで、そんな恥じらいの表現ができるなんて、すごいな・・・そしてまさか、それが本物の女子高生であると気づく者はいなかった。



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