PART 83

 大通りを挟んだ恥辱のストリップショーがいよいよ始まろうとしていた頃、S書房本社ビルの最上階では、大通り側の窓際に大勢の社員が鈴なりになっていた。いつの間にか、第2編集担当の社員があちらに行っていて、大型カメラで有希の姿を狙っていた。

 「おい、お前、大人気だぞ。向こうのビルには、そうだなあ、30人位は窓際に立ってお前のケツを見てるぞ。ちょっとは振り向いて、愛想笑いでもして見せたらどうだ?(笑)」
有希が絶対にできるわけがないのを知っていながら、黒木は笑ってそう言うと、尻をさわさわと撫でた。
「お、そろそろ準備OKかな・・・おい、テレビをつけろ。」

 会議室の中の、窓際と反対側の壁には、大型の液晶テレビが掛けられていた。それはPCモニターとしても使われており、スイッチが入れられると、有希は衝撃の映像を見せつけられることになった。そこには、ビルの窓際に裸の尻を突き付けている女の姿がアップで映し出されていた。その尻の溝には一本の縄が走っていた・・・
「きゃ、きゃあ!・・・」
想像以上に卑猥な姿に思わず悲鳴をあげてしまった後、有希は顔を引きつらせて口を閉じた。だ、だめっ、これが私だと分かってしまったら、もう文芸担当には戻れない・・・

 「なんだ、顔を見せるのはいやだって言うのか、仕方ねえなあ・・・それじゃあ、縄をほどいて、ケツの穴をおっ広げて見せてやれ。」
黒木はそう言って有希の尻をぴしゃっと叩くと、耳元に向かって小さく囁いた。
「おい、早くしないとお前が誰かばらすぞ。」

 ついに有希は手を後ろに伸ばし、股縄の結び目を掴んだ。
(う、嘘よ、こんなの・・・)
信じがたい事態の連続に、有希は頭の中が真っ白になるのを感じた。わ、私、一体何をしているの・・・

 ・・・そして向かいのビルでは、第一編集担当の社員達が思いがけず愉快なショーを見物することになった。実は今までも、週刊Xの演出で露出ショーのおこぼれに預かることがあったのだが、ビキニの水着や色っぽい下着の女性がせいぜいだった。それに比べ、今日のショーは格別だった。取材や打ち合わせで外に出ている社員も多かったが、たまたま部屋に残っていた社員達は、自分の幸運に感謝していた。

『あのケツ、有希ちゃんのと似てるよなあ。本人だったりして(笑)』
『ああ、あの祭りの時のお尻ペンペン写真と、ケツの形、そっくりじゃねえか?(笑)』
『おいおい、本気かよ。まさか有希ちゃんが真っ昼間の会社であんな格好する訳ないだろ(笑)』
『だけどさ、縄の食い込み方もそっくりじゃねえか?』
『それに、さっきちょっと、悲鳴あげただろ、あの女? あれって、アイリスの動画で脱がされる時の有希ちゃんの悲鳴と似てなかったか?』
『ねえ黒木さーん、本当は有希ちゃんなんじゃないの、そのケツ出し女?』
男達は、やはりスピーカーモードになっている鳥飼の携帯端末に向かって声をかけた。

 「ばーか、何言ってんだよ、あの有希ちゃんがこんな風にケツ突き出すわけないだろ。それにほら、こいつ、パイパンなんだぞ。ビデオでは毛が透けてるだろ?」
他の男性社員達が笑いをかみ殺しているのを見ながら、黒木は携帯端末に向かって言った。
「ほら、お前は早く縄を脱いで、皆さんにケツの穴をお見せするんだ!」

 「あっ、あんっ・・・」
また尻をピシャッと叩かれ、有希は思わず悲鳴を漏らした。だ、駄目、声を出したら・・・わ、分かりましたから・・・ああ、みんなが向こうのビルから見ているのね・・・

 有希はついに四つん這いのままで手を腰に回し、股縄を解き始めた。しかし、上半身を前に倒したままでのその作業は容易ではなかった。途中まではできたもののなかなか先に進めず、結局は男達の協力を仰ぐことになった。そして男達は、意地悪く股縄を引っ張ったり、前後にこすったりして、有希に浅ましい声を上げさせようと意地悪をしたのだった。く、くぅ、くぅぅぅ・・・と必死に声を押し殺しながら悶える様子に、向こうのビルの男達が笑い、野次を飛ばす声が携帯のスピーカーから聞こえた。

 ついに股縄をすっかり解かれ、身体から取り去られてしまった有希は、何も身に付けていない下半身を四つん這いで晒すことになった。あまりの恥ずかしさに、有希が両手を後ろに伸ばし、前と後ろから股間を隠している様子がいじらしく、皆の嗜虐心を煽った。

 「おいおい、何をしているんだ、君は」
黒木が呆れたように言った。
「それとも焦らしプレイなのかな(笑)・・・さ、早く皆さんにケツの穴を披露するんだ!」

 (そ、そんな・・・ひ、ひどい、黒木課長・・・)
職場の同僚達に向けて、裸の下半身を突き出し、尻の穴を見せろだなんて・・・どこまで自分を辱めれば気がすむのか・・・く、悔しい・・・有希は唇を噛み締めながら、ゆっくりと両手をどかしていった。あ、あああ、みんな、見ないで、お願い・・・

 しかしもちろん、それは無理な相談だった。有希が恥ずかしい二つの部分から手を離した瞬間、おおっというどよめきが目の前の携帯端末から響いた。目の前のテレビ画面にも、女性が四つん這いで脚を大きく開き、尻の溝まで露わに見せつけている様子がはっきり映っていた。

 「おい、お前もちゃんと画面を見て確認するんだ。みなさんにどう見えているのか。」
すっかり生殺与奪の権を握った黒木は、また有希の尻をピタピタ叩いて促した。
「いいか、ケツの穴の周りの皺の数が分かるくらいちゃんと見せないと許さないからな。」

 (わ、分かりましたから、叩かないで・・・)
言葉を発することができない有希は、何度も頷いてから顔を上げ、目の前のテレビ画面を見た。
(・・・きゃあ、い、いやあっ・・・)
大画面に映っているあまりにも生々しい姿に、有希は内心で悲鳴をあげた。縄すらなくなった下半身は、脚が大きく開いているために、尻の溝がはっきりと見え、双臀がハート型にぱっくりと割れていた。そして、尻の穴の部分もうっすらと見え、さらにその下には、秘裂が少し見えてしまっていた。その中心のサーモンピンクの部分まで・・・恥ずかしいことに、そこは、光を浴びてところどころで何かがぬめり光っていた。
(や、やっぱり駄目ぇっ!)
同僚の男性達に見られてしまったと思うといたたまれなくなり、有希は思わず両手で再びその部分を隠してしまった。

 しかしその儚い抵抗は、男達を却って喜ばせただけだった。黒木達に尻をぴしゃぴしゃと叩かれ、さらに耳元で脅しの言葉を囁かれ、有希は力なく頷いたのだった。

 「はい、お待たせしました。それでは、有希ちゃんのそっくりさんによる、お尻の穴ぱっくりショー、どうぞよく、ご覧ください!」
黒木がおどけた声で言うと、携帯端末から男達の野卑な笑いと、パチパチパチ、という拍手が聞こえてきた。

 そして有希は、ついに恥辱のショーを命令どおりに実行することになった。四つん這いのままで、両手を太ももの左右から伸ばし、尻タブの両側に当てる。そのままで身体を小刻みに震わせてしばらく躊躇う姿を披露した後、両手はぐいっと左右に開かれ、奥に埋まっていた尻の穴がはっきりと外気に晒された。
(ふ、ふあぁあ・・・ひぃぃ・・・)
目の前のテレビ画面を見るように強要されている有希は、自分の尻の穴がアップで映し出されているのを見て、口をぱくぱくさせ、脚をガクガク震わせた。う、嘘よ、こんなの・・・い、いやぁぁ・・・

 有希の恥辱地獄はもちろん、それからが本番だった。それじゃあ、みんなで、有希ちゃんのそっくりさんの尻の穴の周りの皺の数を数えてあげよう、という黒木の声を合図に、いーち、にーい、という合唱がビルの両側で起こった。そしてその場の総意として、この女の尻の穴の周りの皺の数は9本、と結論が出された。
『いやあ、このカメラのモニターだとよく見えますね。うん、9本、ばっちり見えますよ。』
携帯端末から鳥飼の声が聞こえると、有希の顔がかあっと赤くなり、周囲の男達の失笑を誘った。

 「あ、そうだ、一つ忘れてた。」
黒木がふと思い出したように言った。
「この女、前も後ろも毛を綺麗に剃りたいんだってよ。前はもう剃ってあるけど、後ろはちょっと生えてるよな・・・」
・・・こうして有希は、尻の毛の剃毛ショーを皆の前で演じることになった。これでいいんだろ、有希ちゃん、と黒木が耳元で囁くのが恨めしかった。

 「・・・よし、これで綺麗になったと。・・・それじゃあ、あとは有希ちゃん本人のアナル周りの皺の数も数えて、ケツ毛があることも確認すれば、この女が有希ちゃん本人じゃないって証明できるんじゃないか、なあ、鳥飼? 今度ちょっと数えておいてくれよ、お前、教育係なんだろ? ちょっとケツの穴の写真撮らせて、とか言ってさ。」
黒木は軽口を叩いて皆を笑わせると、少し間を置いて続けた。
「・・・ところでこの女、有希ちゃんなら絶対にできない芸も持ってるんだよね・・・ほら、ケツの穴をもっとおっぴろげるんだよ!」
すっかり有希の扱いに慣れた黒木は、有希の尻をぴしゃりと叩き、命令に従わせるのだった。
「ほら、テレビから目を離さないで、ケツの穴の奥の奥まで映るのを自分で確認するんだよ!」

 そして、有希にこれ以上ないほど尻の穴を広げさせた黒木は、部下に用意させたクリームらしきものを手に取り、有希の尻の穴の周りに塗り込んでいった。その冷たさと、男に尻の穴を弄られるおぞましさに、有希が身体を震わせ、小さな悲鳴をあげた。

 「・・・うん、このくらいでいいかな・・・」
黒木はそう言うと、部下に用意させたもう一つの道具を手に取った。
「おい、これが何だか分かるか?」
黒木は有希の前にその道具を見せ、軽く振って見せた。シャカシャカシャカ、と軽快な音が響いた。

 (・・・?)
有希は目の前に突き付けられたものを見て困惑した。それがマラカスであることは見て分かったが、その意味が分からなかった。それよりも、お尻に塗られたクリームが、じんじんと身体を熱くしていることに戸惑っていた。縄が解かれたから、疼きが小さくなっていたのに、どうして・・・

 「何だ、鈍い奴だな・・・まあ、いい・・・」
黒木は有希の脇から離れ、窓際に戻った。そして、向かいのビルから見えるように、マラカスを窓際にかざした。
「お前は分かるよな、これがマラカスってこと・・・あの有希ちゃんの特技は、サンバでのお尻タンバリンだけど、こいつは『お尻マラカス』ができるんだぞ。」
おおおっと、携帯端末のスピーカーから、鳥飼達のどよめきが聞こえた。

 (・・・!!)
有希は内心で戦慄した。お尻マラカスって、まさか、そんな・・・有希は一つの想像が当たらないことを必死に祈った。しかし横目に、黒木がマラカスの柄にもさっきのクリームを塗っているのを見て、絶望的な気分になった。いや、そんなの!・・・でも、逃げたりしたら・・・そもそも服も隠されているのに、ブラジャーだけの姿で会議室を出ることもできない・・・

 「ほら、脚を開け!・・・ケツの穴をもっと広げて!」
思わず脚を閉じかけた有希の尻を若手社員が容赦なく叩いた。ひぃっと掠れ声で悲鳴をあげるのがまた可愛らしく感じ、他の社員も便乗して有希の尻を叩いた。
「もっと、もっと大きく開くんだ。背中を反らせて、ケツをもっと突き出せ! 両手でケツの穴をおっぴろげろ!」

 「よし、それじゃあ入れるぞ・・・ケツにもマラカスにも潤滑剤をたっぷり塗っておいたから、ケガの心配はしなくていいぞ。分かったら、一度ケツを上下に大きく揺らすんだ。声を出したくないなら、ケツで頷いて見せろよ。」
そして、真っ白なお尻がゆっくりと上下に揺れるのを皆で鑑賞した後、どうぞ入れてくださいと言わんばかりに開かれた尻の穴に、黒木はマラカスの柄をゆっくりと咥え込ませていった。声を漏らすまいと、必死にくぐもった呻き声で悶える有希の姿がいじらしかった。

 一分後。ついにマラカスの柄はすっぽりと有希の尻の穴に呑み込まれた。その結果、大股開きで四つん這いに突き出された、真っ白のお尻に、赤いマラカスが突き刺さっているという、滑稽なオブジェが皆の前に展示されることになった。あはは、こりゃすげえ、確かに有希ちゃんには絶対にできないな、と携帯端末の向こうで大受けする声が聞こえ、有希は恥ずかしさと屈辱に全身を真っ赤に染め、カタカタと震えていた。
(あ、ああ、こんなところまで見られて・・・私、もう、駄目・・・)
職場の先輩達に、お尻の穴の奥まで見られ、さらにマラカスの柄がゆっくり挿入されるシーンまで逐一見られてしまったかと思うと、有希は消えてなくなってしまいたい気持ちだった。

 そして、有希にとってさらに辛いのは、お尻がどうしようもなく熱く、むず痒くなっていることだった。それは、さっきまで縄と瘤に責められていたときよりも、遙かに快感のレベルが高かった。お尻を振って、マラカスでもっと抉ってほしい・・・有希は自分がそう期待しているのを悟り、またもや戦慄した。う、嘘、私、それじゃあ完全に変態じゃない・・・

 「よし、それじゃあマラカスを演奏してくれよ! どうせ、もっとケツを深くまで突いて欲しいと思ってるんだろ?」
黒木が有希の内心の困惑を見透かすように声をかけた。そして両手でくりっとした尻を掴み、上下左右に動かした。
「ほら、最初は手伝ってやるよ。こんな感じでどうだ?」

 あ、あ、あぁんっ・・・有希の唇から、思わず喘ぎ声が漏れた。同時に、シャカ、シャカ、という音がマラカスから聞こえた。そしてその音が、ギャラリーの笑いを誘い、有希の屈辱感を決定的なものにした。ああ、私、もう駄目、お尻に入れたマラカスで気持ち良くなっちゃうなんて・・・
 いつしか黒木の手はマラカスから離れていた。しかしそのマラカスは、先ほど以上に激しく揺れ、シャカシャカシャカ、と一層情熱的な演奏を行うようになっていた・・・


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