PART 96

 「あ、ああ・・・」
有希は身体の奥がじんとなり、目の前が真っ白になってくるのを感じた。それが羞恥によるものなのか、露出の快感のためなのか、有希自身にも分からなかった。ひどい、こんな命令をするなんて・・・まだゴールは数百メートル先だった。有希は、最後のその部分を、赤い縄での亀甲縛り姿で踊るように命じられていた。さらに、踊りにキレがなかったり、笑顔がなくなったりしたら、すぐにアイリス映像での秘密映像を公開すると言われていた。第2編集担当とアイリス映像が癒着しているのはもう明らかだった。
(もしかしたら、最初からだったの?・・・まさか、営業部も?・・・一体、私をどうするつもりなの?・・・まさか・・・)有希の身体がびくっと震えた。

 その時、有希の身体がふわっと持ち上げられた。
「え?・・・い、いやあ、マルシア、やめて!・・・あ、あうぅ」
マルシアに身体を抱えられ、腰を折るように肩に掛けられてしまった有希は、脚をばたつかせて悲鳴をあげた。それでなくてもきつい亀甲縛りの縄が、腰を思い切り曲げたため、秘裂と尻の溝にもっと深く食い込んだのだ。

 おおおっ、というどよめきと意地悪な拍手が道路に響いた。
「出たっ、有希ちゃんのキメ技、お尻タンバリン!」
「いいぞ、ブラジル人の姉ちゃん、思い切りペンペンしちゃって!」
すかさず野次が飛び、お尻ペーンペン、お尻ペーンペン、とコールが沸いた。

 「ソレジャアイクヨ・・・オシリ、ペン、ペーン!」
自分への歓声に気をよくしたマルシアは、ギャラリーのコールにタイミングを合わせ、有希のふっくらとした尻を叩き始めた。そして、悲鳴を上げる有希は気にせず、道路の左右の歩道に近づいては、観客達の至近距離に有希の尻を突き出し、ぺんぺんと叩いて見せた。目と鼻の先に緊縛アイドルとして有名な美女の尻を見せられ、ギャラリーは大いに沸いた。誰かが名前を調べ、マルシア最高、こっちにも見せて、有希ちゃんのケツ、とあちこちから声があがった。

 「お願い、マルシア、もう下ろして!」
肩の上に抱えられた有希は、マルシアの背中を見ながら必死に訴えた。縄はもう、極限まで食い込んでしまっている。ひょっとしたら、秘裂の一部だって、はみ出してしまっているかもしれない・・・
「あ、いやっ・・・嘘っ」
秘部の奥からじわっと液が湧くのを感じ、有希は目を白黒させた。どうして私、気持ちよくなっているの?・・・このままじゃ、恥ずかしい反応をしていることが、みんなに分かっちゃう・・・
「お願い、マルシア、もうやめてっ!」

 「やめないで、マルシア!」
「もっとやって、マルシア!」
「思い切りペンペンしてぇ!」
と混ぜっ返すような野次が響き、ギャラリーを笑わせた。マールシア!、マールシア!、とコールが変わった。

 「オーケー、ユキ。モウヤメルヨ。」
有希が何度も懇願した結果、ついにマルシアがそう答えた。そして、有希の身体を肩から外し、ゆっくりと地面に下ろした。
「サンドラ、オネガイネ。」

 え、と有希がぼうっとして立ち尽くしていると、またもやふわっと身体が持ち上げられた。しかし今度は、サンドラは、両膝の下に手を差し込み、そのまま手を広げて脚を大きく割り開くと、そのままぐいっと重量上げのように持ち上げた。

 おおおおっっ!!、とさっきとは比較にならない大音量の男達の歓声が響いた。有希は、今、全裸亀甲縛りの姿のまま、M字開脚にされ、サンドラの頭上に持ち上げられていた。

 「ひ、ひぃぃぃっ・・・下ろして、サンドラ、下ろして!」
あまりの事態に有希は首を振り、悲鳴をあげた。それは、F町祭りの時と同じ、M字開脚での宙吊りだったが、今の状況はさらに破滅的だった。今は真っ昼間で、遠くの群衆の姿までがはっきりと見える。また、沿道の観客達の壁がなくなり、近隣のビルから見物している無数の顔も見えた。そしてサンドラがくるくると回りながら歩いたため、有希は360度全ての方向に向けて、全裸亀甲縛りのM字開脚姿を晒すことになった。それに、F町の時は、Cストリングスという曲がりなりにも身体を隠すものを身に付けていたが、今は縄が秘裂に食い込んでいるだけなのだ。あちこちで、パイパン、と口が動くのが見えると、有希は顔から火が出そうになるのを感じた。

 ダダダダン、ダダダダン、ダダダダ、ダン、ダン!・・・サンバ隊の大音量の音楽は、ギャラリーの大歓声とあいまって、凄まじい雰囲気を作り出していた。ブラジル人ダンサー達は、まるで本国のような盛り上がりにすっかり上機嫌で踊り続けていた。いつもはセンターのフランシスカは、有希に主役の座を奪われたことにも気を悪くせず、にっこりと笑いながら有希とサンドラ、マルシアの後に続いていた。

 (も、もうすぐ終わる、終わるんだから・・・)あまりに非日常的な状況の連続と、強烈なサンバのリズムに、いつしか有希の感覚は麻痺しかけていた。何か、気持ちいい・・・開放的で、見えない束縛から解き放たれた感じ・・・そうだ、笑顔じゃなくちゃいけなかったんだ・・・有希は亀甲縛りでのM字開脚姿を晒したまま、にっこりと周囲のギャラリーに微笑みかけた。両腕で身体を隠すのをやめ、両手を頭の上で組んで見せた。いいぞ、有希ちゃん、かわいいよ、最高、という声が心地よかった。もう、どうでもいい、みんな、見て、有希の恥ずかしい姿・・・


 ・・・しかしその時、有希はまだ気付いていなかった。お尻ペンペンをされているときにさんざん暴れたため、乳房がマルシアの背中にこすれて、二プレスが二つとも取れてしまっていたことを。そして、淡いピンクの乳輪と乳房の頂点にちょこんと乗っている乳首がこれ見よがしに公開されてしまっていることを。

 また、有希が開放的に感じていることには、精神面以外での理由があった。有希を緊縛している赤い縄は、塩分を含んだ液体に浸ると、ほろほろと崩れるという特殊なものだった。
 有希の汗に触れた結果、秘裂に食い込んでいる赤い縄の3本のうちの2本が崩れ、外れてしまっていた。もはや、有希の下半身を隠しているのは、たった1本の縄だけだった。ただ、その縄は秘裂に食い込んでいるだけであり、却って両側の大陰唇をぷっくりと強調してしまっていた・・・

 ギャラリーはあまりの事態に驚愕すると同時に、それも演出の一つだと思い、熱狂していた。あの、美貌のK大生だった有希が、両手を頭の後ろで組み、丸出しの乳房を見せ、さらに股間の縄が次々と解けているのに、M字開脚で持ち上げられたまま、にこにこと笑っている・・・

 「有希ちゃん、すっごくかわいいよ、最高!」
「こっち向いて、笑って!」
「きれいなオッパイ、振って見せてよ!・・・そうそう!」
「エロくて可愛くて、有希ちゃん、すごくいいよ!」
「もっと脚を広げて見せて!」
観客達は野次るのをやめ、ひたすら有希を褒めそやし、乗せるように声を掛けていた。もう少し、あと1本で、オ○ンコの奥まで、パックリ丸出しだ・・・それは、ストリッパーへの掛け声と同じだった。

 (あ、ああ、気持ちいい!・・・みんな、こんなに喜んでくれて・・・そんなに私の身体を見るのが嬉しいの?・・・)
有希はだんだん、露出の刺激が通常の感覚のような錯覚に陥っていた。F町の祭りに始まり、数々の露出羞恥地獄を味わわされた結果、一定以上の羞恥を感じると、現実逃避のように露出に快感を感じてしまうようになっていたのだが、もちろん本人はそこまで思い至っていなかった。
(もっと脚を広げたら、もっと気持ちよくなるのかしら・・・みんな、もっと喜ぶかな・・・)

 マルシアに掲げられた有希が、うっとりとした表情でさらに脚を開くと、ギャラリーから一段と大きな歓声が沸いた。ついに、股縄縛りの最後の一本の縄が切れ、前後の腰縄に引っ張られて跳ね上がったのだ。その結果、有希の股間はM字開脚の大股開きのまま、空中で完全に露出することになった。それはすなわち、無毛の秘部が数千人の視界に晒されることでもあった。そして、秘部を縦に走る秘裂も、その真ん中に覗くピンクの襞までも・・・後ろでその様子を見ていた他のダンサーや音楽隊も、まさかの事態に盛り上がり、音楽が一際大音量になった。

 ゆーき、ゆーき、ゆーき!・・・両側の沿道からは、いつしか有希コールが起こっていた。あの子は、今、自分がどんな格好を晒しているか、まだ気付いていない・・・二プレスが取れたことも、亀甲縛りの股縄が外れてしまったことも・・・乳房も、お尻の穴も、パイパンのアソコも、真っ昼間のサンバカーニバルで露出して、何千人、何万人に見られ、写真を撮られてしまった・・・ギャラリーは、有希の美しくも卑猥な姿態と、うっとりと微笑む美貌をじっくりと堪能しながら、次のイベントを期待していた。あの子、自分の今の格好に気付いたら、一体どんな顔をするんだろう・・・明日からは、緊縛アイドルどころか、オ○ンコ丸出しアイドルだね・・・(笑)

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 その時。料亭「琴乃」では4人の男女が大画面テレビに映る光景を眺めて盛り上がっていた。

 「いやあ、凄いですな! まさか、東京サンバでこんなにぱっくり露出するなんて!」
そう言ったのは、S書房の編集部長の宮本だった。
「最終面接の時には、どこから見ても、清楚で真面目なお嬢さんだったのに・・・いやあ、女ってのは変われば変わるもんですな!」

 「しっかし、ほんとに男の喜ばせ方を知ってる女だな。シラフの時は顔を真っ赤にして一枚ずつストリップして、特出しの時には死ぬほど恥ずかしい顔をしてた癖に・・・まさか、こんなにドMの変態女だったとはな・・・」
営業部長の伊丹がビールを飲みながら言った。
「まさか、お尻タンバリンの時には、ここまで化けるとは思いませんでしたよ。こんな素質を見抜くとは、さすがはアイリスさんですな。」

 「残念ながら、この子の素質を見抜いたのは私たちじゃありませんよ。さっきも言ったじゃないですか。」
4人の中で紅一点の美女、葉川真樹が妖艶な笑みを浮かべた。
「真っ先に見抜いたのは、やっぱり先生だったんですよねえ。」
真樹はそう言うとお銚子を手に取り、目の前の男の杯に注いだ。

 「いやいや、今回はたまたまだよ。・・・だけど、F町祭りのビデオを見せてもらった時は、本当に感激したよ。まさか、あんなに可憐で素朴で素直そうな女子大生が、山車の上で全裸で縛られて潮吹きしてたんだからねえ・・・」
先生と呼ばれた男、園城寺幹雄はそう言うと、真樹に注がれた酒を飲んで一息ついた。
「・・・で、その子を僕の担当に付けてくれて、好きにしていい、なんて言うんだから、もう、S書房さん以外では本は出せないな。(笑)」


 −−−大手出版社の部長とAV制作会社の社長、そして、純愛小説の大家と言われる有名作家・・・一見、不似合いな組み合わせだったが、4人には以前から密接な繋がりがあった。
 出版社とAV制作会社には、下世話な雑誌とAVの間で、お互いに宣伝をしたり、タレントを流し合ったりする関係があった。そして、作家の園城寺は、S書房に対しては多くの純愛小説を提供し、裏では、別のペンネームで、アイリス映像に対して無数の恥辱もののAVの脚本を提供していたのだった。4人は仕事上の付き合いから徐々に親しくなり、時々、琴乃に集まっては、次のターゲットを検討する会合を行っていた。

 ある日、アイリス映像の葉川が、実質的な親会社のFテレビからあるビデオを入手し、その会合で披露した。Fテレビが系列局のテレビNから入手したという、田舎町で起きた事件を撮影した極秘のビデオを見た時、4人は驚喜した。そのビデオの内容も衝撃的だったが、その痴態を演じている女子大生が、S書房に来年入社してくると分かったのだからそれも当然だった。

 S書房社内で情報が一部漏れ、Supershotに「お尻ペンペン」のスクープ写真が掲載された時は肝を冷やしたが、それでも有希がS書房に入社してくれると分かり、4人はほっとしながら酒を酌み交わした。そして、有希が園城寺に憧れている、と話していたことを宮本が伝えると、園城寺と真樹は腹を抱えて笑った。

 それならば、有希を園城寺の担当に付けてやろう。そして、園城寺の脚本どおりに有希を罠にはめ、徹底的に露出調教を施す・・・それは、AVなど見慣れている4人にとっても、わくわくするような企画だった。

 ついに有希が入社してきて、初めて園城寺に引き合わせた夜、琴乃に集まった3人に対し、園城寺は興奮気味に有希を絶賛した。あの顔、胸の膨らみ、大きなお尻・・・生で見ると、その魅力はビデオの何倍もある・・・それに、あの清楚な雰囲気と恥じらいの表情は、絶対にドMだ。ローターなんかなくても、見られるだけで絶頂に達し、潮を吹く女に調教してみせる・・・

 まずはアイリス映像で罠にはめ、緊縛して全裸姿を撮影、さらにビデオの前でイかせる。そして、会社でも社員の前で恥辱地獄を味わわせ、週刊誌に痴態を掲載し、一般人の目にも触れさせる・・・さらに、いくつもの取材先で、毎回趣向の違う形で露出羞恥地獄に陥れる。それを、ぎりぎりの下着姿まで週刊誌に連載し、そっくりさんとして全裸まで晒させる・・・園城寺のシナリオどおりに調教は進み、ついには接待で相手のネクタイでの緊縛姿を披露し、素っ裸で公道を走ってタクシーを呼ばせることまでできるようになった。そして、最後の仕上げが、このサンバカーニバルでの究極の露出だった−−−


 「だけど、有希ちゃんも可哀想ね。憧れだった純愛小説の大家の先生の担当になれて舞い上がってたのに、自分を気に入ってくれたのは、露出調教AVの大脚本家としての先生だったんですもんね。」
真樹が悪戯っぽく笑いながら言った。テレビの大画面では、マルシアが笑いながら一回りして、有希の開き切った股間をギャラリーが全て見えるようにしていた。
「あーあ、割れ目ちゃんが丸出し!(笑)・・・お尻の穴まで見えちゃってるわ。普通の女だったらもう町を歩けないわね・・・悪い先生に目を付けられちゃって、可哀想、有希ちゃん(笑)」

 「おいおい、人聞きが悪い言い方はしないでくれよ。純愛小説も調教ものAVも、本質的には同じなんだぞ。俺は有希ちゃんの素質を見抜いて、彼女の潜在意識が喜ぶように、徹底的に可愛がってあげているだけだからな。」
園城寺はつまみに箸を伸ばしながら言った。
「ほら、見ろよ、有希ちゃんのうっとりした表情! 自分の恥ずかしいところを見てくれる人が多ければ多いほど、感じる身体になってるのが分かるだろ? これまでの露出調教の成果だぞ。」

 「いやいや、参りました、先生の慧眼には・・・だけど、宴会で男のネクタイをアソコに食い込ませて緊縛させるってのは最高でしたね。うちのお客さん、みんな大喜びでしたよ。本当にありがとうございました。ささ、どうぞ・・・」
伊丹は頭を下げながら、園城寺に酒を注いだ。そしてちらりと大画面を見て、にやにや笑った。
「しっかし、何回露出責めにしても、飽きませんなあ、あの子は。普通なら泣き出すと思うんですけど、顔を真っ赤に染めて恥ずかしがるっだけなんですよね。で、アソコをグッショリ濡らして喜んじゃって、あんなふうにうっとりした表情もしてくれるし。しっかし、あれでまだ処女とはねえ・・・(笑)」

 「しかし、まだ気付いていないんですよねえ、有希ちゃん、縄が切れて、二プレスが外れてることに・・・」
宮本が酒を嘗めながら大画面の中の有希を見つめた。今は、マルシアに代わってサンドラが有希をM字開脚の宙吊りにして踊っていた。
「・・・もうすぐ、縄が全部解けて、素っ裸になった時には、さすがに気付きますよねえ・・・本当に、大丈夫なんでしょうか?」

 「そりゃ、普通は大丈夫じゃないわよ。泣き出したり、我を忘れて暴れたりするでしょうね・・・でも、有希ちゃんは、こんな大勢の人の前で真っ昼間に素っ裸になって、思い切り感じちゃうはずよ。涙を流して喜ぶでしょうね・・・下からだけど(笑)」
真樹はそう言うと、妖しく微笑んだ。
「ほんと、可愛い子ね・・・やっぱり、専属のAV女優にしたくなってきたわ。ひかりちゃんの後を継げるかもね、この子。」

 「ちょ、ちょっと待ってください、冗談ですよね?」
宮本が慌てて言った。
「彼女はS書房の稼ぎ頭なんですから、引き抜きは困ります(笑)」

 「だけど、こんな才能、会社員にしといて裸接待させてるだけじゃもったいないわ。彼女の身体は、全国民で共有されるべきよ。」
真樹は冗談めいた口調だったが、その目は本気になりつつあった。
「ほら見て、あの有希ちゃんの顔! こんなに可愛くて、色っぽい顔できる女優なんて、見たことないわ。ね、お願い、世の男性のためと思って。」

 いやいや、急にそんなことを言われても、と困惑するS書房の2人を見て、園城寺がとりなすように口を挟んだ。
「それじゃあ、有希ちゃんの素質を見て決めることにしようか。」
思わぬ提案に振り向いた3人を見ながら、園城寺が言葉を続けた。
「・・・まあ、ここまで調教できたから、縄が全部解けても、有希ちゃんは結局は快感に負けて、イッちゃうと思うんだよね。・・・問題は、失神からさめて理性が戻った時、有希ちゃんが泣くか喜ぶか、だな。それをこうやって判定しようと思うんだが・・・」


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