PART 39b

 次の放送で恥を晒さないため、という大義名分で行われた特訓がようやく終わった時、麻衣子は息も絶え絶えになっていた。全裸で20人以上の男たちの視線に晒され、さらに1時間以上全身の性感帯を責められ続け、10回以上、イかされたのだから、それも当然だった。

 特訓の成果も少しだけ得ることができた。最後には、麻衣子はほとんど失神せずに絶頂に達することができるようになっていた。ただそれは、連続絶頂ショーという新たな痴態でスタッフ達を楽しませることになってしまったが。


「……うん、まあ、こんなもんか」
ようやく麻衣子の目隠しを外しながら、有川が言った。
「この前の『指』よりもだいぶ激しく責めたから、だいぶ鍛えられただろ。それに、仮にイッても、退場しないで放送を続けられるしな。良かったな、麻衣子ちゃん」
目隠しが外れ、呆然としている麻衣子の顔を見ながら、有川は快活にそう言うと、ぽんぽんと肩を叩いた。
「ほら、協力してくれたスタッフのみんなにお礼を言ったらどうだ?」

「……あ、は、はい……」
 ぼうっとしていた麻衣子が、有川な言葉に徐々に意識を取り戻した。私、ここにいる皆に、身体を触られ、絶頂に達してしまった……膣の中に指まで入れられて……お尻の穴まで……麻衣子の顔は、再び火を噴きそうに真っ赤になった。
「み、皆様、ありがとう、ございました……」


 パイパンの全裸姿で両手を上に拘束され、屈辱のお礼を言わされる美人アナウンサーの姿を、スタッフ達は満足そうに眺めていた。

 ほんの2ヶ月前には高嶺の花だった清楚な美人女子アナの、身体の全てを見て、あらゆる部分を触り、自分の手でイかせることまでできた。手に吸いつくように柔らかい乳房、乳首を吸われた時の悶え方、つややかでぷりぷりしたお尻、お尻のえくぼを責めると激しく反応すること、お尻の穴の中で指をぐりぐりさせた時の悲鳴、小ぶりで敏感なクリトリス、膣の中のねっとりした感触、イく時の顔と声、指をギュッと膣の締め付けることやジュッと愛液を溢れされる様子まで知っているのだ。
 皆、麻衣子の裸身を見つめながら、幸せな記憶を何度も反芻し、しっかりと脳裏に刻み込んでいた。誰もがひそかに「声」の主に感謝していた。

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 土曜日の6時25分、放送直前の慌ただしい空気の中、麻衣子は小さく深呼吸をしていた。今日の服装は、上がレンガ色の袖フリル付Tシャツ、下はネイビーのタイト風キュロットスカートだった。渋めの赤と濃紺の組み合わせが、麻衣子の可憐さと清楚さ、知的さをとても引き立てていた。それは、衣装担当のまどかのせめてもの心遣いだった。今では、まどかも実は全裸放送であることを知らされていた。

 原稿を整理し、マイクの反応を確認しながら、麻衣子は今日の段取りを頭の中で思い出していた。基本的には前回までと同じで、6時30分から7時の回はこの服装のまま、7時からの回は最初のニュースの時に、栗山がニュースを読む番の時に一枚ずつ脱いで全裸に、あとはそのままの姿で放送……もちろん、仮想着衣システムは完璧に動作するし、ここ数年間の各局の女子アナの映像を読み込んでいるから、不意な動きでも大丈夫……

 ただ少し気になっているのは、有川が最後に付け足した話だった。それは、今回を最後の全裸放送とする条件として、若干の変更があるというものだった。さらに、変更内容は放送本番まで麻衣子には知らされない、ということだった。不安な表情の麻衣子に対して、有川は、大丈夫、大きな変更はないから仮想着衣システムを信じて頑張って、と言うだけだった。

 また、世間での騒ぎが最高潮に達しているのも麻衣子には辛かった。先週の全裸放送のネット中継動画は、把握しきれないほど拡散し、海外でも話題になっているようだった。本当に仮想脱衣なのか、後からの合成でないか、生で本放送と見比べようという動きもあった。
 録画予約ランキングは遂に一位になっていた。全国の男性が、これからの放送に注目していると言っても過言ではなかった。
 

 6時30分。内心の不安を押し殺し、麻衣子はいつもの爽やかな笑顔を浮かべた。
「6時30分になりました。おはようニュースの時間です!」
栗山と声を合わせ、いつもどおりの澄んだ声で挨拶ができた麻衣子は、少しほっとした。これからの30分は着衣のままなんだから、とにかくいつもどおりにするのよ、その後は、30分だけ、耐えればいいんだから……

「今日から始まる臨時国会において、4野党は共闘し、閣僚の疑惑を徹底追求する方針です……」
最初のニュースを読みながら、麻衣子は不思議な動きを気にしていた。目の前には、テレビカメラの他に、放送中の映像を映し出すモニターと、ネット中継用のモニターがあるのだが、ネット中継のモニターの方に、何か文字が表示されているのだ。

"あ、気づいた?"
「声」が脳内に響いた。
"新機能だよ、生の視聴者の書き込みが見られるから便利でしょ?"

「……一方政府側は、臨時国会中に、税制関連法案の成立を目指す方針です」
(お願い、邪魔しないで!)
 麻衣子は内心で訴えた。今はニュースの生放送中なのだ。

 放送画面が与野党党首の演説姿に切り替わった。とりあえず画面には映らなくなったが、映像に合わせ、麻衣子は残りの原稿を読まなければならない。
「……昨日行われた世論調査では、内閣支持率が低下してきており……」
ほんの一瞬、麻衣子が言葉に詰まった。

 突然、脳内に言葉が聞こえたのだ。いつもの「声」ではなく、違う声……しかも、複数が一気に……

<おおっ、麻衣子ちゃん降臨!?>
<お願い、邪魔しないで、だって! かわいい!>
<え、本当に本人!? だとしたらすごいな>
<今日もおしゃれね、赤いシャツが似合ってるよ。袖のフリルが可愛いよ>
<今日はどんなエロショー見せてくれるのかな?>
<真っ白オッパイ、早く見せて!>
<今日こそオマ○コ見せて!>

「……与党にはしっかりした説明が求められています」
新たな状況に困惑しながらも、麻衣子はなんとか原稿を読み続けた。あと少しで、このニュースは終わる、とりあえず、そこまで読まなくちゃ……

『……とりあえず、そこまで読まなくちゃ』
ふとモニターを見ると、ピンクの文字が表示されていた。
『え、何、これ……え、まさか!?』
ピンクの文字が追加された。

 青い字が表示された。
"これが今回の新機能。視聴者の書き込みを表示するだけでなく、麻衣子ちゃんの表情や声の調子を読み取って、内心を仮想コメントとして表示させる機能。君たちのコメントにも反応するし、画面と完全にシンクロしているよ"

<いいね、新機能!>
<ほんとに麻衣子ちゃんの心が読めてるみたい>
<うん、映像と合ってるよな。顔がちょっとひきつってるし>
<オマ○コを生放送で公開された時の気持ち、早く知りたいな(笑)>

 それらは画面に表示されると同時に、麻衣子の脳内にも刻み込まれるため、これだけの情報がほんの数秒のうちに頭に入ってきた。

「……今後の動向が注目されます」
脳内に視聴者の好奇に満ちたコメントが直接聞こえてしまい、麻衣子は訳の分からない状況に困惑しながらも、なんとか最初のニュースを読みきった。

 ネット中継のモニター画面には、放送映像の上に、大量の文字が流れ続けていた。麻衣子の表情や服装、胸やその他、恥ずかしくて口に出せないようなことまで……そこに時々ピンクの文字が浮かび、自分の内心が表示されてしまっていた。
 麻衣子にとって辛いのは、そのモニターの文字を、スタジオにいるスタッフ全員も見ているということだった。一応、仮想の内心コメントということになっているが、彼らはそれが麻衣子の本心であることを知っているのだ。それに、ネットを見ている人も、本当にこれが、仮想であると信じてくれるのか……あとで、服を脱いだ時には……

『麻衣子ちゃん、余計なことを考えない!』
 耳元のインカムから、有川の声が響いた。

 はっとしてネット中継のモニターを見ると、さっき考えていたことがピンクの文字で表示されていた。麻衣子は心臓がきゅっと縮まるような気がしたが、必死に作り笑いを浮かべた。

 いつもと異なる緊張感の中、栗山が冷静な声で次のニュースを読み始めた。
「この一週間、西日本や東日本では雨が少ない状態が続いていますが、関東、東海、中国地方、それに四国の合わせて7つの水系にあるダムで取水制限が行われています……」

"それでは、もう一つの新機能を発表します"
 突然、ネット中継のモニター画面に青い文字が表示された。
"放送画面に麻衣子ちゃんが映っていない時にも、画面の一部に麻衣子ちゃんを表示し続ける機能です"
 青い文字が表示されると同時に、麻衣子の脳内にも同じ「声」が聞こえた。
"2カメさん、常に麻衣子ちゃんを撮ってください。画面の左下4分の1に、麻衣子ちゃんの映像を常に表示してください"
それは明らかに、番組スタッフへの指示だった。

『え、どういうこと?』
画面にピンクの文字が表示された。

「……特に荒川水系では貯水率が平年の6割程度だということで、国土交通省は、「渇水対策本部」を設置し、節水への協力を呼びかけています……」
栗山はさすがにプロらしく、平静な声でニュースを読み続け、テレビカメラをしっかりと見つめていた。

"それでは今日は予定を変更して、6:30の放送回からストリップをしてもらいます。麻衣子ちゃん、前に出てきて、まず1枚脱いでください"

 その直後、ネット中継のモニター画面は、左下4分の1の部分にワイプ映像が表示され、麻衣子の上半身が映し出されていた。渋めの赤で肩にフリルのあるシャツが、麻衣子の可憐さを一層引き立たせていた。

<おお、いきなりストリップ!>
<これって仮想脱衣じゃないよね?>
<放送中に、仮想動作もさせられるってことか、すごいなあ>
<それじゃあ、本当の麻衣子ちゃんなら絶対できないポーズもさせられるんだよね(笑)>
<M字開脚でぱっくりオマ○コ開かせて!>
<お尻の穴も開いて見せて>
<栗山さんにフェラとかもできる?>
<いや、栗山っちにバック責めされながらニュース読ませるとか>
<それって何てAV?(笑)>
一気に視聴者の卑猥な欲望が爆発し、画面に文字が溢れた。それは同時に、麻衣子の脳内に直接聞こえた。

『いやあ! そんなこと、絶対にできません!』
ピンクの文字が表示され、そのリアルな反応は一層ネット視聴者を喜ばせることになった。

「……こ、国土交通省によりますと……今月14日現在で取水制限が行われているのは、……」
栗山が珍しく噛み、少し言葉がたどたどしくなった。


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