PART 43b

「はい、そのまま両手を左右に水平に広げて5秒キープ!」
 再び固まってしまった麻衣子に助け船を出すように、奈央が声をかけた。今の格好がバランスボールに座っているとは言い難いが、これ以上あられもない姿を晒させるのを少しでも短くしてあげたかった。

「あ、はい……」
 奈央の意図を察した麻衣子は、にこりと笑い、身体の横に下ろしていた両手を広げた。生放送で素っ裸を晒し、身体を隠すべき両手を思い切り身体から離す……目の前のスタッフ達の同情と好奇の入り混じった視線も辛かった……あまりの恥ずかしさに歯がカタカタと震えたが、麻衣子は必死に我慢した。本当は、着衣で放送していたことにするんだから、恥ずかしがったら駄目……
「これでいいですか? いーち、にーい、さーん……」

 その時、急に乳首を弾かれたような感覚が生じた。次の瞬間にはクリトリスを摘ままれ、お尻の穴にも……
「よー……あ、あぁん……」
 必死に堪えた麻衣子だったが、ついに顔を歪め、甘い声を漏らしてしまった。びくっと全身を震わせると、バランスボールは挟んで突っ張っていた両足に力が入らなくなり、膝が曲がった。
「あ、きゃあ!」
 身体が前に倒れ始め、麻衣子は悲鳴をあげた。バランスボールから下りようとしても、太ももはボールから離れなかった。麻衣子はとっさに両手を前に出し、顔が床にぶつかるのを防いだ。
 麻衣子が両手を床につくと、バランスボールの回転が止まった。

 おおおっ、と脳内に歓声が響いた。
<すっげー、四つん這い大股開き!>
<お尻丸出し(笑)>
<でかくてエロいな>
<ハート型って言うんだよな、こういうの>
<麻衣子ちゃん、ケツも超エリート!(笑)>
<AVジャケみたい!>
<すべすべで綺麗なお尻だよ、麻衣子ちゃん!>
<アナルも見えそうだな>
<お嬢様アナウンサーがお尻をパックリ開いて全国のお茶の間に公開してるって、どんな気持ち?>
<アソコも縦筋がばっちり見えてるよ!(笑)>

「……い、いやあっ……」
 バランスボールに覆い被さって四つん這いポーズとなっていた麻衣子は、今何が放送されているかを無数の意地悪なコメントで思い知らされて心臓が止まりそうに感じた。
「あ、あれ、起き上がれない……」
 思い出して放送用のコメントを言いながら、足を閉じようとしたが、大きく開いた足は反応しなかった。
(お願い、もう許して……)

《離してあげてもいいけど、その前にもうちょっと、視聴者の皆様にサービスしてあげてくれない?》
 淡々とした調子の「声」が聞こえた。同時に、尻穴に指が食い込んでくるような感覚が襲った。

「あ、あっ……」
 麻衣子は思わずうめき、「指」から逃れようと腰を動かした。しかし、「指」が追ってくるため、麻衣子小さな悲鳴をあげながら、尻を左右に振らなければならなかった。
 清楚かつ可憐を絵に描いたような女子アナウンサーが、悩ましい声をあげながら尻振りダンスを始め、スタジオ内の空気が固まった。まるでそれは、麻衣子が露出の快感に目覚めたかのようだった。

 もちろん、ネット視聴者は大いに盛り上がり、卑猥な言葉で麻衣子をからかった。
<プリプリのお尻、可愛いよ!>
<お尻の穴、少し見えたよ(笑)>
<麻衣子ちゃんのエロケツ最高!>
<いや、オマ〇コ丸出しで腰振るって……すごいな>
<ちらちら赤い縦筋が見えるのがエロすぎる(笑)>
<無修正で流していいの、N放送さん?(笑)>

 麻衣子の尻振りダンスは、時間にすればほんの数秒のことだった。しかしそれが地上波で、無修正で流されてしまったのは、若い女性にとって取り返しのつかない事態だった。麻衣子はまた、目の前が真っ白になるのを感じた。

『麻衣子ちゃん、平常心、平常心!』
 インカムから有川の大きな声が聞こえた。
『頑張って起き上がって! ほら、笑顔、笑顔!』
 あまりにも非情だったが、番組の責任者としては当然でもあった。

《ごめんね麻衣子ちゃん、怒られちゃったね》
 その「声」が聞こえると同時に、身体がボールからふっと離れた。麻衣子は慌てて身体を起こし、いったん立ち上がってから、再びバランスボールの上に座った。「声」に禁止されているので、乳房や秘部を手で隠せないのがつらかった。脚をぴったり閉じているのが、せめてもの抵抗だった。

「すみません、私、不器用ですね……」
(私、本当は服を着てるんだから)
 麻衣子は自分にそう言い聞かせ、照れ笑いを浮かべた。
「それじゃあ、もう一度挑戦しますね!」
 身体のバランスに気をつけながら、麻衣子は両手を水平に広げた。
「はい、いーち、……」

《麻衣子ちゃん、脚開いてオマ○コパックリ開いて見せてよ、全国のみなさんに"
<うわ、厳しい!(笑)>
<いいね、パイパンオマ○コの奥、じっくり見せてよ!>
<麻衣子ちゃんって、実は見られて喜ぶ露出趣味あるよね?>
<実はぐしょ濡れだったりして(笑)>
<今なら、全国の視聴者が無修正で見てくれるよ(笑)>

「にーい、……」
 麻衣子は引きつった笑顔のまま、祈るような気持ちで数え続けた。脚はぴったり閉じたままだった。
「さーん、……」

<麻衣子ちゃんがまた命令無視してますよー>
<無駄な抵抗なんだよね>
<青字さん、お仕置きお願い!>
<おっしおき!>
<おっしおき!>
<おっしおき!>

 歓声に反応するように、ボールがほんの少し、前に回り始めた。麻衣子は身体を少し後ろに傾けて対応しようとした。次の瞬間、ボールが逆回転して、後ろにきゅっと少し回った。意表をつかれた麻衣子の身体は、大きく後ろへ倒れていった。
「きゃあっ」
 麻衣子は両足を下に伸ばして床につけて踏ん張った。頭から後方に倒れていく上半身を庇うため、両腕を思い切り後ろに伸ばして、頭より先に両手を床についた。

 一連の動作の結果、麻衣子は先ほどよりもさらに恥ずかしい姿を放送されることになった。
 麻衣子は今、身体の正面を上に向け、両手両足で身体を支える形となり、いわゆる「ブリッジ」ポーズになっていた。背中の下にはバランスボールがあった。

「あ、こんな格好、いや……」
 麻衣子のか細い悲鳴が聞こえた。両手両足が、床から離れなくなっていた。

 それは、若い女性が全裸で行うと、あまりにもあられもない光景だった。乳房は天井に向けて丸出しで、身体が反っているため、上方に突き出す形になっていた。
 さらに、床につけるために足は大きく開かれており、大股開きの股間も突き出されていた。バランスボールの上で背中が弓なりになっていたため、女性として絶対に見られたくない部分が、どうぞよく見てくださいと言わんばかりになっているのだ。あまりの羞恥に、麻衣子の身体はピンクに染まり、顔は耳まで真っ赤になっていた。

「大丈夫ですか、本澤さん?」
 奈央が声を掛けたが、麻衣子は全裸ブリッジ姿で手足を小刻みに震わせていた。
「ブリッジできるなんて、身体が柔らかいんですね!」
 なんとか場を盛り上げようとしたが、奈央の声も少し震えていた。

《ほら、命令に逆らったらお仕置きだって言ったよね?》
 どこか楽しそうな「声」か聞こえた。
《罰として、このポーズで5秒固定するからね。あ、カメラさんは、麻衣子ちゃんの顔から始めて、全身を舐めるように映してね。最後はもちろん、オマ○コどアップで! あ、本当は 着衣だから見えないけどね(笑)》
 するとカメラマンは、「声」の指示どおりにカメラを動かしていった。今日は「声」に従うのが局の方針と分かっていても、麻衣子は恨めしく感じずにいられなかった。

 麻衣子が全裸ブリッジポーズを取らされている5秒間で、若く魅力的な肢体の全てが全国に向けて放送された。
 逆さになり、髪が乱れた美貌、半開きの唇……上を向いても崩れないお椀型の双乳とその頂点の淡いピンクの乳輪、ちょこんと乗っている小さめの乳首……真っ白なお腹、縦長のおへそ……きゅっと引き締まったウエスト……腰回りの優美な曲線……そして、100度以上に広がった無毛の股間……その中央には、縦長の割れ目……割れ目の真ん中には、サーモンピンクで縦に細長い筋……

 麻衣子は放送映像のモニター画面は見ることができなかったが、脳内の意地悪なネット視聴者コメントにより、今自分のどこが放送されているのか、嫌でも思い知らされていた。そして今は、開ききった股間を正面から撮られていて、閉じ切らない秘裂の間から、恥ずかしすぎるピンクの部分までもが大映しにされてしまっている……
『ひいい、い、いやあっ』
『お願い、見ないでぇ』
『もう許して、早く!』
『もう命令に逆らったりしませんから!』
 麻衣子の内心の悲鳴が何度もピンクの文字で表示され、ネット視聴者たちを更に喜ばせてしまっていた。

 永遠のような5秒が経った頃、また脳内に「声」が響いた。
《よかったね、じっくりオマ〇コを全国の麻衣子ちゃんファンに見てもらって……それじゃあ最後に、これが本澤麻衣子のオマ〇コですって、にっこり笑って言ったら終わりにしてあげるよ》
 あはは、俺も聞きたい!……ネット視聴者たちが大笑いして盛り上がる声も続いて聞こえた。

『そんなの無理です!』
 すぐにピンクの文字が表示された。
《あれ? 命令に逆らわないって言ったよね?》
『だけど、本当は着衣なんですから、そんなこと言うのはおかしいです』
《それはそっちの都合だよね。本当は裸なのに放送ジャックされてることにして、テロップまで出して僕を悪者にしてるよね》

 ……放送画面の画面上には白い文字でテロップが表示され続けていた。その内容は少しずつ変わり、今は、「ただ今、何者かにより、放送映像に加工が加えられております。現在対応中ですが、このまま通常放送を行います。お見苦しい点があるかと思いますがご了承願います」と表示されていた。

『……ごめんなさい、他のことならなんでも、言うとおりにしますから……』
 一糸まとわぬ姿をテレビカメラの前に晒し、秘裂からサーモンピンクの襞まで覗かせている姿が生放送されていると思うと、麻衣子は一瞬でも早くこの状況から逃れたかった。これ以上恥ずかしいことなんか考えられなかった。

《分かったよ》
 ふっと身体が軽くなり、両手両足が動くのを感じた麻衣子は、慌ててボールから下り、立ち上がった。
「また失敗しちゃいました、すみません」
 乱れた髪が真っ赤な頬にかかり、麻衣子は意図せず妖艶な色気を放っていた。

「もう、仕方ないですねえ……」
 麻衣子がなんとか笑顔を浮かべたことにほっとした奈央は、わざとらしく肩をすくめた。
「今度こそ、ちゃんとお願いしますよ」

「はい、頑張ります!」
 麻衣子は小さくガッツポーズを作って見せたが、その足は小さく震えていた。あと何分、全裸姿を晒さなければならないのか……本当にこれは現実なのか……夢なら早く醒めて……

 麻衣子がバランスボールに腰を下ろそうとしたとき、「声」の青い字がネット中継モニターに表示された。
《他のことなら何でもするっていったよね。それじゃあ、お尻の穴をぱっくり開いて、奥まで見せてくれる?》


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