part 2
「そんな・・・」
と言いかけて菜穂子は黙った。
自分の正しさを証明することはすなわち、真理の服を脱がすことになる。それに、菜穂子は自分の立場を強行に主張できるタイプではなかった。
(仕方ないわ、1枚脱ぐしかないわ。でも、どうしたら・・・)菜穂子が今着ているのは、上はテニスウェアとブラ、下はスコートとアンスコとパンティだけだ。
「いきなりパンティかぁ」
お調子者の3年生、花岡浩一がはやしてギャラリーを笑わせる。浩一は去年の学園祭のとき菜穂子に交際を申し込んだが、優しく、しかしきっぱりと断られていた。
菜穂子はしばらく立ちつくしていたが、やがて観念したようにスコートの中に手を入れた。やはりアンダースコートを脱がなければならないと思ったからだ。ゆっくり捲れあがるスコートから覗く白い太ももにギャラリーの視線が集中する。視線を感じたのか、菜穂子の手がアンダースコートに掛かったまま止まった。
「いい加減にしろよ、菜穂子。日が暮れちまうぞ。」
俊之が苛立ったように急かす。俊之も去年菜穂子がサークルに入って来たときにいち早く猛烈にアタックしたのだが、あまりにも強引であったために手厳しく断られ、サークル内で大恥をかかされていた。
菜穂子は仕方なくアンダースコートをできるだけ素早く脱いだ。しかし、ギャラリーの目には純白のパンティがかすかに見えた。
「やだー、菜穂子。白のパンティだってぇ。ぶりっこ!」
またギャラリーが笑う。菜穂子の頬は恥ずかしさに真っ赤になった。
からかったのは同じ2年女子の村田薫だ。彼女もなかなか美人なのだが、やや高慢に見えるところがあり、未だに彼ができずにいた。チーフの俊之のことを好きなのだが、振られてもまだ菜穂子ばかり見ている彼を悔しい思いで見ていた。
菜穂子を快く思わない数名の者たち−佳子、真理、恭子、俊之、浩一−が仕組んだいたずらは、菜穂子に憧れと嫉妬を持っていたギャラリーの嗜虐心を引き出し、思惑以上にうまくいきそうだった・・・
第2ゲームは真理のサーブだ。真理は緊張しているためか、ダブルフォルトを2回連続で犯し、あっという間に0−30になった。これでは真理を何とかかばいたいと思っている菜穂子もどうしようもない。しかし、次はファーストサーブが入り、打ち損ねた恭子が菜穂子のやや上に絶好のスマッシュボールを上げてきた。菜穂子はジャンプして思い切りボールをたたき、見事にスマッシュを決めた。
その時、菜穂子のスコートが勢いで大きくまくれあがった。あっ、と思った菜穂子が隠すまでの、ほんの1,2秒ではあったが、その場の全員が菜穂子の白いパンティをはっきりと見ることができた。
「先輩、いつもそんなの履いてるんですかぁ。かーわいいっ」
なんと、対戦中の恭子にまで冷やかされ、菜穂子は思わずスコートを押さえてしゃがみこむ。
(同じ立場にいるのに冷やかすなんて・・・ひどい)
菜穂子は後輩にからかわれた屈辱に唇を噛んだ。
「スコートまくれたぐらいでしゃがみこむんじゃねーよ。次行くぞ。」
俊之は徹底的に冷たくゲームを進める気のようだった。
(だって、下はパンティなのよ。田宮君まで、いつも優しいくせに、ひどすぎる・・)
しかし、ここで逆らうことはできない。そして、続く2本はまたダブルフォールトで、菜穂子たちのペアはあっさり2ゲームを連取された。
「ゲーム。さて、今度はどっち?」
俊之がかすかに笑みを浮かべてギャラリーに声をかける。
「しゃがみこんで流れを止めた菜穂子先輩だと思います。せっかくサーブを入れた真理の調子が狂っちゃったわ。」
と言ったのは、日頃菜穂子を慕っていた水野葉子だ。彼女にも、憧れの裏返しのコンプレックスがあったようだ。他のギャラリーは黙って俊之と菜穂子を見ている。
「そ、そんな・・」
言いかけた菜穂子の声をさえぎるように、俊之は言った。
「ギャラリーに異論はないようだ。では、菜穂子。」
菜穂子は周囲を見回した。しかし、同じクラスで、いつも菜穂子と仲良し3人組だった赤井美奈子と永田実樹はうつむき、取り巻きのように菜穂子をちやほやしていた4年の男子達も黙って見返す。むしろ内心は期待しているようにも見えた。
(仕方ないわ。次のゲームを取ればその次は私のサービスゲームよ。すぐに元に戻るんだから。)菜穂子は自分に言い聞かせ、決心した。
しかし、菜穂子の次の選択肢は少ない。スコート、パンティはもちろん脱げない。また、2時間以上練習して汗に濡れているシャツでは、ブラを取ってしまったら、シャツ越しに胸が丸見えだ。シャツを脱ぐしかない。しかし、それでは、上半身はブラジャーだけになってしまう・・・ 動けない菜穂子を見かねて、4年生でサブチーフの松井直人が言った。
「時間がもったいないよ。30秒何もしなかったら強制的にパンティを脱がすルールにしようぜ」
直人はかなりハンサムでセンスも良く、女子に人気があった。彼もやはり菜穂子に交際を申し込んでいたが、半年もの間適当にかわされていた。その鬱憤晴らしのためか、ここで徹底的に菜穂子を辱めることを選んだようだ。直人の過激な言葉に、ギャラリー、選手、俊之の誰も反論しない。もう雰囲気は一つの方向に向かっていた。
半分泣きそうになりながら、菜穂子はウェアを脱いでいった。菜穂子のブラだけの上半身が青空の下に露わになった。ブラジャーも当然のようにかわいい純白だったが、菜穂子にしては珍しくハーフカップであった。この前仲良し3人組で渋谷に買い物に行ったときに、実樹にすすめられて買ったものである。
「やっぱり似合うじゃん。それにしても菜穂子って結構エッチな体してるよねー。」
「胸もなかなか大きいしねー。だけど恥ずかしい格好よね〜。」
美奈子と実樹がはしゃぎながら言う。友達なのだからせめてそっとしておいてくれてもいいようなものだが、この2人も興味津々といった様子を隠さない。
また、思いもかけず憧れの菜穂子の破廉恥な格好を見ることができ、男子たちは大喜びだ。もはや菜穂子は、上はブラのみ、下はスコートという半裸に剥かれている。うまくいけばあの菜穂子がみんなの前で素っ裸だ・・・そう思うだけで皆、下半身の興奮を抑えきれないのであった。
第3ゲームは佳子のサーブである。恭子のサーブですらブレイクできなかったのだから、このゲームはあっさり佳子ペアが取り、適当な理屈をつけて菜穂子をもう1枚脱がす・・・というギャラリーの期待は裏切られた。
真理がさっきとは見違えるように上手くなっているのだ。とりあえずレシーブの失敗はなくなり、ストロークが続くようになった。しかし、菜穂子も佳子からはあっさりリターンエースを取ることは難しく、こちらもストローク戦になった。
しかし、そのおかげで、ゲームはギャラリーにとって非常に楽しいものとなった。ゲームを取られれば必ず自分の責任にされ、脱がされてしまうと悟った菜穂子は、必死に走り回ってストロークを返し、精一杯ジャンプしてスマッシュを行わなければならない。つまり、ギャラリーにとっては、菜穂子の揺れる胸、スコートから覗く太ももの付け根、白いパンティが見放題なのだ。また、真理のカバーで走り回って息の上がりかけた菜穂子の唇は半開きとなってハァハァとせわしなく呼吸しており、それが快感に喘いでいるようにも見え、なんとも色っぽい。
ゲームの方は接戦が続いたが、やはり真理が肝心な所でミスをしてしまうため、あと一本で菜穂子たちがゲームを取られるところまで来ていた。
(絶対ここで取られるわけにはいかないわ。もしこれを落としたら、私、どんな格好をさせられるか分からないもの。)菜穂子はゲームに集中するのに必死だ。
しかし、今の彼女は上半身はブラジャーのみ、下半身はパンティと短いスコート、というあまりに破廉恥な格好を衆人環視の中で晒しており、そのことを思うと死にたいくらい恥ずかしかった。
普段は仲良くしていた同学年の女子や姉のように慕ってくれた1年生、いつも過剰なくらいに優しかった男子たち。今は全員が菜穂子のさらなる痴態を期待するようにじっと菜穂子の体を見ている。女子は羨望と嫉妬のこもったまなざしで菜穂子の体をあれこれ批評し、男子はニヤニヤ笑ってスリーサイズ当てまで始めている。
そして、問題のそのポイント。菜穂子は何とか恥ずかしさをこらえて思い切ったストロークを放ち、相手にチャンスボールを打たせた。ここぞとボレーをしようとした。
その時、絶妙なタイミングで男子のヤジが飛んだ。
「菜穂子ちゃーん、パンティがスケスケでお尻丸見えだよん」
一瞬だが、菜穂子は羞恥をこらえきれず、手でスコートを押さえようとした。
「!」
菜穂子は何とか体勢を立て直し、ラケットにボールを当てた。しかし、ボールはネットを越えるのがやっとであり、待ちかまえていた佳子にあっさりスマッシュを決められる。菜穂子はうなだれてその場にうずくまった。その様子を見下ろしながら佳子・恭子・真理は無言の笑みを交わしていた。
「ゲーム。このゲームもヤジに負けた菜穂子に問題があると思うが。」
俊之がもっともらしく言う。もうギャラリーに意見を聞く手続きも省いてしまったようだ。もちろんギャラリーにも異存はなく、あちこちで賛成の声があがった。
「あとは、ブラとパンティとスコートか。どれを脱ぐ、菜穂子?」
直人がせかす。本気で菜穂子に惚れていた彼だが、あくまで容赦する気はない。
「私、先輩のおっぱい見たい!ブラ取ってくださいよお」
と、1年生の中では一番人気の山口加奈子が期待に目を光らせた。
この時点で、女子の心理も一つの歪んだ方向に固まっていた。サークルのマドンナ的存在であるだけでも迷惑なのに、特定の彼氏を作らずに男子たちの心を独り占めにし続けている菜穂子はずるい、許せない。ここで立ち直れないほど恥をかかせて、サークルのペットに堕としちゃえ・・・