part 4
第5ゲーム。恭子のサーブは第1ゲームからは見違えるほど良くなっていた。一方、真理のレシーブはなぜか再び急に下手になり、全然ネットを越えることができない。どうしてもスコートが気になる菜穂子では、真理の意図的なエラーまでカバーするのはやはり困難であり、ゲームを取ることはできなかった。
ゲームの責任は、言いがかりのような理由で菜穂子にあるとされ、菜穂子はさっき着たばかりのウェアのシャツは再び脱がなければならず、再びブラとスコートだけの姿にされる。
第6ゲーム。第2ゲームのダブルフォールト連発の再現を恐れた菜穂子は、必死に真理をリラックスさせようとした。できるだけやさしい口調で話しかける。
「真理ちゃん。強く打たなくても、入れればいいからね。下から打ってもいいのよ。」
しかし、真理は唇をとがらせながら、反論した。
「大丈夫ですよぉ。調子良くなってきてるんですから。それにしても菜穂子先輩、よくそんな格好で平気ですねぇ。なんか、フーゾクみたい。あたしだったら恥ずかしくて死にたくなっちゃう。」
これには、さすがの菜穂子も、(誰のおかげでこんな恥ずかしい格好をしてると思ってるのよ)と怒りたくなったが、真理にふてくされられてゲームを落としては困るので、必死に我慢して笑顔を浮かべた。
実際、真理のサーブはうまくなっていた。サービスエースまで出てゲームは菜穂子達の有利に進み、40−30となった。
あと1本でゲームというそのポイントで、菜穂子と真理のちょうど中間にチャンスボールが返ってきた。
「真理ちゃん、下がって!」
と言いながら菜穂子がスマッシュを打とうとジャンプしかけた。
そのとき,
「きゃあ、危ない」
と言いながら菜穂子をよけようとした真理の足が菜穂子の足にからみついた。
二人はそのままあおむけに倒れ込む。その勢いで、二人ともスコートが捲れてしまった。そして、真理のスコートからはアンダースコートが露出した。菜穂子のスコートからは、・・・菜穂子の下半身の前面がすべて露出した。適度に細く形の良い脚も、ふっくら丸みを帯びた腰も、その中心の黒々とした秘部も、すべてが青空の下にさらけ出されてしまった。
「大丈夫?」
と口々に言いながら、その場の全員が駆け寄ってくる。しかし、本心は心配からではなく、菜穂子の恥ずかしい部分を少しでもよく見てやろうと思って駆け寄っているのだ。
「こ、こないでっ!」
菜穂子は慌てて立ち上がろうとしたが、同時に立ちあがろうとした真理に、再び足をかけられて転んでしまった。真理が意図的に足をかけたようにも見えた。
再び転んだ菜穂子は横向きに倒れた。今度はスコートが完全にまくれ、横に倒れた不運も重なって、裸の下半身が前後とも完全に衆人環視のもとにさらされてしまった。
「菜穂子・・・」
さすがに実樹と美奈子が絶句する。19歳の女の子が人前で見せる姿としてはあまりにも酷い格好であった。一番隠したい部分を親しい友人たちの前に晒してしまったのだ。
菜穂子が動けるようになるまで、時間にすれば10秒程度でしかなかったが、菜穂子にとっては永遠にも感じられた。半径1メートルにサークルの全員が集合し、自分の最も恥ずかしい部分を注視しているのだ。実樹も美奈子も同情の目はしていたが、決して露出した部分を隠してくれようとはしなかった。男子も女子も露骨にスケベな好奇心を剥き出しにしていた。
「すっげー、菜穂子のあそこだぜ・・・」
浩一が生唾をごくりと飲み込む。男子は皆、同じ感慨を味わっていた。夢にまで見ていた菜穂子の秘部が、あまりにも異常な状況で眼前にあるのだ。
「先輩、真っ白でかわいいお尻ね。そんなに見せびらかさないでくださいよ」
加奈子が嬉々として言った。
やっと起きあがった菜穂子は、あまりのことにしばらく茫然としていた。そして、取り返しのつかない事態が起きてしまったことをようやく実感し、見る見る泣き顔になっていった。
「もう、こんなの、嫌です。帰らせてください。」
半分泣き顔になって菜穂子は俊之に訴える。2年生としてのプライドからか、これ以上醜態を晒すことだけはさけようと、泣きじゃくりたい気持ちを必死にこらえていた。
ギャラリーが俊之の反応をうかがう。しかし皆の表情には菜穂子への同情心よりも、もっといたぶってやりたいという嗜虐心ばかりが浮かんでいた。白い肌をほのかに赤らめながら泣きそうな顔をして立ちつくしている姿は、菜穂子の意思に反してあまりに艶めかしく、周囲の心理をいやが応にも高ぶらせてしまうのであった。
「だめだ。君には今年から女子のリーダーになってもらうつもりなんだ。その君が一度始めた試合を投げ出してどうする。さ、続けるぞ」
俊之は憎らしいばかりの演技力を発揮しながら言った。
ギャラリーもここで許してやる気などさらさらないので、
「先輩のテニスに憧れて入ったんですから、もっと見せて下さいよぉ」
と加奈子が底意を丸出しにしてしゃあしゃあと言う。
「菜穂子がそんなに責任感無いとは思わなかったわ。しっかりしなさいよ。」
佳子が呆れたように叱る。羞恥の極限にある菜穂子の心中を分かっていながら、あえてそのことには触れない。
「いいよ、じゃあ帰れよ。」
と言ったのは直人である。菜穂子は意外な顔をしながらも救いを求めるように直人を見つめた。
「だけど、脱いだ服は返さないからな。車でも送ってやんないぞ。勝手に帰るんなら、そのまま帰れよ。」
直人の度重なる意地悪な思いつきに、菜穂子の頬は紅潮する。
「ここなら一番高台にあるコートだから誰も来ないけど、貸別荘まで2キロもその格好でランニングする気か? 下のコートのサークルの連中も大喜びだろうなー。」
菜穂子は諦めざるを得なかった。
中断していた第6ゲームが再開された。現在のポイントはデュースだ。菜穂子はさっきのことを忘れてゲームに集中しようと必死になっていた。
「真理、高井先輩のためにも頑張りなさいよ。」
と加奈子から応援の声が飛んだ。振り返った真理に加奈子はウインクをした。素早くウインクを返した真理は、それからあっさりダブルフォールトを連発し、ゲームを落としてしまった。再び加奈子と真理の視線がぶつかり、短い微笑を交わした。
「ゲーム。今度の責任はどっちだ。」
俊之がお決まりの質問をギャラリーに投げかける。
「あんなに中断が長引いたら真理の集中も切れちゃうよ。」
加奈子の意見に反論の声はない。男子たちは、放っておいても女子達によって菜穂子は全裸に剥かれる運命にあることを悟り、余裕で事態を見守っている。
「菜穂子、今度は二つしか選択肢が無いんだから、早く決めてくれよ。」
「1分かかったら即すっぱだかにするからな。」
俊之と直人がコンビで菜穂子を追いつめる。
もっとも菜穂子には事実上選択肢が無かった。いくら数秒間見られたとはいえ、下半身を丸出しにしてテニスなどできるはずもない。ブラジャーを脱いで、皆の前に胸を晒すしかない・・・ 直人がわざとらしくストップウォッチを見ている状況では躊躇することも許されなかった。
菜穂子はうつむきながら後ろに手を回し、ブラジャーのホックを外した。それからところどころ手を止めながらも、ブラを取り去った。片手には脱いだばかりのブラを持ち、もう一方の手では胸を隠して立ちつくす。もはや身にまとっているのは、靴下とシューズの他には、スコートしかなくなってしまった。
「おっと、これはいただき。」
と言いながら直人がブラを取り上げる。
「片手でもう1ゲームする気か。スコートまで取られても知らないぞ。」
俊之が両腕で胸を隠す菜穂子に注意した。