part11

 菜穂子の意識が戻ったのは、それからたっぷり3分位たってからであった。

 しばらく目もうつろにぼうっとしていたが、意識がはっきりしてくるにつれ、自分のとっているあまりにもあられもない格好に気づくことになった。慌てて全身をばたつかせるが、両手両脚を固定されているので、開ききった恥ずかしい部分を隠すことはできない。眼を恐る恐るそっとあけて周囲を窺うと、至近距離から自分の痴態を見下ろし、ニヤニヤする皆と目が合った。菜穂子はパニック状態になった。

「きゃあぁぁーっっ、こ、これ、早く取ってえっ!」
菜穂子は目を見開いて絶叫した。下半身を天井に向けて晒し、秘部にバイブを挿入しているという、自分の取らされているポーズがまだ信じられない。

「じゃあ、みんなの前で俊之先輩にフェ・ラ・チ・オ、してくれますね? もちろんすっぱだかのまま、あそこ丸出しにしてですよ。」
加奈子がことさらに菜穂子の羞恥をあおる言い方で迫った。

「い・・・いやあ、そ、そんなこと、できません。ね、加奈子ちゃん、お願いだから、早くこれ取ってちょうだい」
もちろんそんな淫らな要求をすんなり受け入れられる菜穂子ではなかった。

 その時、さっきから何やらパソコンをいじっていた義雄が口を挟んだ。
「じゃあ、ちょっとこれ見ろよ、菜穂子」
「え、なになに?」
今度はどうやっていたぶってくれるのか、といった表情で皆が注目する。

 義雄が見せたのはブラウザの画面だ。写真が数枚載っている。いずれもヌード写真だ。
「うわ、すっげえ、これ、岡野めぐみじゃん! しかもヌードでテニスに大股開きかよ! どうしたんだよ、これ?」
浩一が今超売れっ子アイドルの名前を叫んだ。
ディスプレイには写真が3枚展示されていた。いずれも、今人気絶頂の高校生アイドル、岡野めぐみの恥ずかしい写真だ。1枚目は全裸でテニスコートに立ち、ラケットを構えている写真、2枚目は密室で、素っ裸で立ちつくしている写真、そして3枚目は大股開きをし、秘部を自ら広げている写真だ。義雄と菜穂子を除く全員が大騒ぎになった。

 そのうち、男子の一人が気づいていった。
「義雄、これ、アイコラだろ? 岡野めぐみのこんな写真があるわけないもんな。でも、あんまりうまいから、一瞬本物かと思ったぜ。」
 それを聞いた他の男子は、なあんだ、という顔になり、意味が分からない女子にアイコラとは何か、説明してやった。

 そして、義雄の企みに最初に気づいた加奈子が笑みを浮かべた。画面を指さしてみんなに問いかける。
「分かったあ。このテニスシューズとピンクの靴下よ〜く見て。それから、3枚とも左胸のすぐ下にかわいい小さなほくろがあるでしょ?」
と、今度は菜穂子の上半身に視線をやった。

「分かったぞ、これ、みんな菜穂子だろ。」
浩一が叫ぶ。
「そうか、このテニスシューズと靴下は菜穂子のと同じだ。それに全裸テニスの写真と特出しの写真の両方に同じほくろがあるしな。」
直人も感心した様子だ。みんな、画面と菜穂子を見比べて納得した。

「ちょっと待てよ。てことは、うちのサークルのホームページと、このホームページを両方よ〜く見た奴は、このアイコラの体の部分が菜穂子のだってことに気づくってわけか?」
俊之が義雄に尋ねる。義男の巧妙な企みに気づき、ニヤリと笑う。

「ま、そういうことになるね。この掲示板も結構その筋じゃ有名だから、三日もしないうちに一万人位見るんじゃないかな。その中には多分K大生もいるだろうね。ま、一人でも気づいたら菜穂子ちゃんにとっちゃお終いかもね。そうなったら、菜穂子ちゃんのヌードと特出し姿がK大生全員に見られるってこととほぼ同じことだもんね」
義雄は飽くまでも冷静だが、それでも顔がいくぶん紅潮している。

菜穂子はまだ押さえつけられているため、パソコンの画面を見ることができなかったが、会話の内容で、最悪の事態が起こりかけていることはよく分かった。

「義雄くん、ひどい! どうして、どうしてそんなこと!」
義男を睨み付けて精一杯の抗議をする。

「普通の女の子なら絶対人に見せたくないところを思いっきり丸出しにしてるくせに、今さら何言ってんのよ、菜穂子。すごいじゃない、あなたのヌード、3日もしないうちに一万人に見てもらえるんだって。オヤジ向けの週刊誌にも載ったりしてね。そしたら何十万人に見られるのかしら。」
実樹は無邪気におおはしゃぎしている。

「うわっ、すっごーい。体だけって言っても、自分のあそこ丸出しの格好が日本どころか世界中に公開されるって、どんな気分ですか、菜穂子せんぱあい!」
葉子も菜穂子の窮状が楽しくてたまらないといった様子だ。

「でも菜穂子先輩の体ってきれいですねえ。全然めぐみちゃんの顔に負けてないじゃないですかあ。17歳のめぐみちゃんより19の先輩の体の方が色っぽさもあるし。」
加奈子が皮肉をこめながら菜穂子をほめた。

 その言葉を聞いた男子がさらに盛り上がる。
「何言ってんだよ、加奈子。顔だって負けてねえぞ。めぐみちゃんはまだ可愛さだけだけど、菜穂子はそれに知的で清楚な色っぽさが加わっているんだぜ。」
「じゃあ、顔も出しちゃえば? 案外そっちの方が人気出たりしてな。」
「そんで、フ○イデーにでもちくったらさ、『K大の隠れミスコンが全裸でテニス!』とかでっかい見出しで宣伝してくれるだろうな。」
「そのままAVデビューすれば、トップアイドル間違いなしだな〜。億は稼げるぞ」
皆、勝手なこと口々に口走り、興奮の表情だ。

「お、すごい反響!」
画面を見ていた義雄が小さく叫んだ。次々にSNSのメッセージがやってきているのだ。
「え〜と、『うまい! だけどこの素材はどっから手に入れたの?』、・・・それから、『この素材最高じゃないですか! どうか教えて下さい、ぜひよろしく!』、こんなのばっかりだな・・・お、これは、『どっかの女子大生の写真と見た。正解?』だって。素材探しがもう始まってるとはすごい人気だな、菜穂子。これで正体がK大のテニスサークルのとびっきり可愛い娘と分かったら連中飛び上がって喜ぶだろうなー。本名まで分かっちゃうしな。」

「もったいつけないで教えちゃえばあ? 菜穂子も俊之にフェラする位ならその方がましよね?」
意地悪く笑った実樹が言った。
「インターネットにあそこ丸出しの姿発表して本名バレちゃうほうがいいんですかあ? 菜穂子先輩、変わってるぅ!」
真理があっけらかんとした声でかさにかかる。
「それじゃあさ、まんぐり返しでバイブ入れられてよがってる写真もついでに載っけちゃお〜よ。イッちゃう瞬間もね!」
加奈子の言葉にはいつも容赦というものがなかった。

 全裸の大股開きを晒したまま、散々言葉でなぶられた菜穂子は敗北感に打ちひしがれた表情だった。

 そんな菜穂子を心地良さそうに見ていた浩一は何かを思いついたように、ニヤリと笑った。
「なあ、菜穂子、どうする? このままK大初の国民的オナドルになるつもりか? 義雄に頼めば、何とかしてくれると思うんだけどなー。」

 菜穂子は一も二もなく、その言葉に飛びついた。
「義雄くん、何とかして。お願い!」
自分を地獄に落とし入れた張本人に対して訴えるような眼で懇願した。

「そうだな〜、ま、手はあるけどね。この3枚の写真と、サークルのホームページの同じ靴と靴下の写真を削除すればいいんだけど・・・ でもな〜、こんなに反響来てるし、どうしようかな〜。」
義雄は浩一の意図を薄々悟って、すんなりと応じる気配は無い。

「・・・ど、どうすれば、いいんですか?」
何か、交換条件を呑まなければならないことを悟った菜穂子が恨めしそうに言った。それはきっと、菜穂子にとって、堪えがたい程恥ずかしいことに違いないのだ。

 浩一が加奈子と俊之に視線をやり、この場の主導権を自分にくれるよう眼で頼んだ。二人は短く頷いて同意した。軽く笑った浩一が言った。

「もちろん、逃げ出した罪を詫びなきゃな。まず、正座してもらおうか。」
そう言って、菜穂子を畳から起こし、正座させる。それから、耳元に何事か囁いた。

「お願い、浩一くん・・・」
菜穂子が力無い声で浩一に哀願する。しかし、切ない眼で見つめる菜穂子の姿は、浩一の征服欲をそそるだけだった。
「だ〜め。ちゃんと言われたとおりにしないと、菜穂子のあそこを今度は顔付きで全世界に公開しちゃうからな。」
浩一は楽しそうに菜穂子をいたぶる。

「じゃあ、これ見てみろよ。」
義雄がまたパソコンの画面を見せる。

「おー、今度はまんぐり返しでバイブ突っ込まれてるぞ! 菜穂子のさっきの格好だろ、これ? でも、何でこんなマスクかけてるんだよ? 下に『ヒント:誰か分かる? 分かれば・・・』ってのは何だ?」
浩一が怪訝そうに訪ねる。

「どーしてマスクなんてかけるの〜? 菜穂子ちゃんもその方がいいって言ってるんだから、顔も出しちゃえばいーのにい。」
加奈子は不満げに頬を膨らませている。

「まあまあ。だからさ、このマスクはパスワードが分からなければ外せない仕組みなんだけど、パスワードに『高井菜穂子』をローマ字で入れてやればマスクが外れて顔がはっきり見えるってわけ。なかなか面白いだろ?」
義雄が得意げに言う。

「なーるほど、義雄君、天才的ぃ! ほら、これ見てみなよ、菜穂子。これが菜穂子だって分かった人にはあなたの超恥ずかしい写真が顔つきではっきり見れるんだって!」
実樹がはしゃぎながらパスワードを打ち込み、パソコンの画面を菜穂子の眼前に突きつける。

「ひ、ひどいわ・・・・。」
菜穂子は絶句してうなだれるばかりだ。自分がいかにあられもない格好を取らされていたか、写真を見ることで改めて思い知らされ、また、いつこの写真のマスクが外され、K大の同級生や高校・中学時代の友人にばれてしまうか分からないと思うと、生きた心地がしなかった。

「分かりました、浩一君の言うとおりにしますから・・・早くその写真、削除して下さい。」
絶対にできないと思っていた行為をする覚悟を決めた菜穂子であった。全身が震えているのが傍目にもはっきり分かる。

 羞恥と恐怖に震える菜穂子を満足そうに見やった浩一は、
「じゃあ、さっき言ったとおりにゲームを始めるぞ。菜穂子、ルールを説明してくれ。」
と追い打ちをかける。

 俊之も浩一、直人、加奈子達も菜穂子が何を言うのか注目する。シナリオでは、今日のところは俊之にフェラで取りあえず終わり、の筈だった。さすがに処女を奪うのだけは可哀想だからやめてあげよう、という決定はなされていたので、これ以上浩一が菜穂子に何をさせようとしているのか、誰も分からない。

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