PART 86

 有希にとってあまりにも長い1日がようやく終わった。朝、写真週刊誌に自分の下着緊縛姿の写真を見たときには、あまりの恥辱に震えたが、その後の出来事に比べれば、何でもないことだった・・・第2編集担当の会議室で晒した屈辱的な痴態の数々が頭に蘇り、有希はベッドに突っ伏した。向かいのビルの鈴なりになっていた、第1編集担当の社員達の顔が忘れられなかった。みんな、私が四つん這いでお尻の穴を開くところも、お尻の穴に挿されたマラカスを振るところも、女性にとって最も恥ずかしい部分を思い切り広げているところも、全部、見ていた・・・私が快感に悶える浅ましい姿を見て、指を差して笑い合っていた・・・

 有希にとってさらに辛かったのは、自分が縄で縛られ、みんなに見られただけで、身悶えするほどの快感を感じてしまったことだった。大勢の人の前で恥ずかしい姿を見られ、感じて、絶頂に達する姿を晒してしまう・・・やだ、私、変態なんかじゃ、ない・・・

 頭の中には、教育実習の時に演じてしまった様々な痴態がフラッシュバックのように蘇っていた。夏祭りでのサンバ、神輿と山車の上、お銚子吊り、台車引き、中学生達に囲まれての潮吹き、テニスの審判台、募金、朝礼台での挨拶・・・必死に忘れようとして、少しずつ、薄れていた記憶が一気に鮮明になってしまい、有希は思わず呻き声を漏らした。

 有希にとって救いと言えたのは、アイリス映像があの動画の公開を、実は中止していたことだった。一応、有希が下半身の前後の毛を剃って詫びを入れたことが評価された形だった。もちろん有希の下着での緊縛姿が掲載されているSupershotの販売は継続され、飛ぶように売れてしまっていたし、社内の人間には全員に、ただで見られるIDとパスワードが配布されてしまったのだが。
 また、F・ネットセキュリティが拡散を阻止するプログラムを開始し、アイリスでの動画の予告編やSupershotのスキャン画像は一切ネットには出回らなかった。

 有希の頭の中で、いろいろなことが行き来し、なかなか寝付くことができなかった。有希のことを心配する友人達からのメールや電話、メッセージが沢山来ていたが、とても対応する気になれなかった。ああ、もう、会社になんか、行きたくない・・・

 しかし、有希には会社に行かなければならない理由があった。週刊Xの黒木課長から、必ず通常どおりに勤務を続けるように命じられたのだ。そして、指示があったらすぐに、露出趣味のOL、ゆりとして振る舞うことも・・・必死に抵抗、懇願した有希だったが、これもS書房の社員としての大事な仕事だと言われ、許されることはなかった。ただその代わり、有希本人とバレることは絶対にないようにすると保証されたのが唯一の救いだった。

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 それから一週間が経ち、またSupershotが発売される水曜日となった。有希は須藤に、自分に関する記事は何か出るのか聞いたが、未定、の一点張りだった。有希は不安な気持ちのまま、いつもの通勤電車に乗った。

 『緊縛にはまった弊社社員、驚愕の和解案!!』
・・・それが、今週号のSupershotのトップの見出しだった。周囲の乗客の視線も、好奇の色を抑えきれないのがよく分かった。嫌、そんな目で見ないで・・・

 俯きながら急ぎ足で歩き、ようやく会社についた有希は、共用コーナーにあるSupershotを手に取り、素早くページをめくった。
「・・・あ、ああ、こんなっ!・・・」
最初のページ一杯に表示されている写真を見て、有希は悲鳴を上げ、絶句した。そこには、濃紺のスーツを纏った有希が、M字開脚のポーズに緊縛され、しかも宙に吊されていた。そしてスーツとブラウスは大きくはだけれられ、可憐なレースの入った純白のブラジャーが露わになっていた。また、スカートも完全に捲られ、黒いパンティストッキングが太もものところまで破かれ、真っ白な太ももと、ブラとお揃いの可愛い純白のパンティが露出していた。そして股縄がきつく食い込み、パンティ越しに有希の大陰唇の形が浮き出ていた・・・しかし、有希はなぜか、にっこりと笑顔でカメラ目線になっていた・・・

 その記事の内容が、また屈辱的だった。先週、勝手にアイリスのホームページに動画が掲載され、販売されたことに猛抗議したS書房だったが、その後、両者の間で話し合いがもたれ、和解に至ったというのだ。結局両者の見解は対立したままだったが、最後は有希が提案した妥協案で、皆が納得したとのことだった。

 有希からの妥協案とは、以下のようなものだった。
・そもそもの原因は、取材中にも係わらず、緊縛の快感に負けてあられもない姿を晒した自分なので、責任を取らせてほしい。
・毎週1ポーズ、下着を露出しての緊縛姿をアイリスに撮影してもらい、『有希の緊縛教室』として、計10回、Supershotに掲載する。
・また、その過程の動画を、S書房のウェブサービスである『Sオンライン』上に掲載する。但し、閲覧できるのは有料会員のみ。
・アイリス映像は上記画像及び動画の撮影を行い、制作料をS書房から受け取る。

 そしてその記事の締めには、「二階堂記者のコメント」が記載されていた。
『私の本業は文芸担当ですが、Supershotの記者としてもしばらく兼務します。アイリス映像さんで、いろんな緊縛を体験して、レポートしたいと思います。M字吊りは、縄がどんどんアソコに食い込んで来て、痛いけど、気持ちよかったです(笑) ひょっとしたら、もっと過激な格好にチャレンジするかもしれません。どうぞ、ご期待ください(笑)』

 「おい、二階堂くん・・・」
呆然としている有希の背後から、課長の森尾が声を掛けた。
「第2編集担当の須藤課長が呼んでいるぞ。・・・それから、来週からは、水曜はまっすぐあっちに出社していいから。」


 「おお、おはよう、有希ちゃん。」
始業間もなく現れた有希を見て、須藤は大きな声で呼んだ。
「どうした、ぼーっとしちゃって。昨日は彼氏とヤり過ぎたか?(笑)」

 「す、須藤課長っ!・・・これは一体、どういうことでしょうか・・・」
有希は須藤のからかいに怒ることもできず、やっと言葉を絞り出した。先週の水曜に痴態の限りを晒して依頼、こっちのビルに来るのは初めてだった。周囲の男達のニヤニヤ笑いが辛かった。
「わ、私、こんな和解案なんて、提案していません・・・」

 「ま、確かにそうなんだけどさ・・・これでも頑張って交渉した成果なんだぜ。」
須藤は目の前に立っている有希の顔を見上げ、にやりと笑った。
「君、実はアイリスでも、あれどころじゃない乱れ方、しちゃったみたいだね。雌犬縛りで放尿ショーの動画、最高におもしろかったよ。」
ああっ、いっ、いやあっと有希のか細い悲鳴が上がり、皆のニヤニヤ笑いが一層露骨になった。

「俺達と、週刊Xの連中で、たっぷり楽しませてもらったよ、有希ちゃんの緊縛10連発! しっかし、下着での緊縛もいいけど、やっぱりモロ出しでイっちゃう方が、断然迫力あるね。」
須藤は駄目押しをすると、今にも崩れ落ちそうな有希の肢体を舐めるように見回した。
「最初はアイリスの方は、モロ出し絶頂バージョンまで、販売してやるって言ってたんだぞ。そんなことをしたら社として訴える、ってこっちが主張して、何とか落ち着いた妥協案が、まあ、あの記事ってことだな。・・・文句があるなら、自分で交渉を一からやり直してくれ。だけど、個人で訴えるのは大変だろうな(笑)」

 仕方なく妥協案を受け入れた有希に対し、須藤が会議室の扉を指さしながら言った。
「よし、それじゃあ有希ちゃん、君からもアイリスに正式に、あの妥協案を申し込むんだ。もちろん、ご挨拶をするときは、いつもパイパンのアソコを見せながらだぞ(笑)」

 そ、そんな、と弱々しい懇願はあっさり無視され、有希は再び、恥辱の記憶も生々しい会議室に再度入らなければならなかった。そして、テレビ電話をアイリスに繋がれた有希は、携帯端末の前でパンティストッキングを下ろし、スカートを脱ぎ、そして、パンティの両サイドに指を絡ませ、ゆっくりと剥き下ろしていった・・・もちろん、目の前には、Supershotと週刊Xの担当の男達がギャラリーと化してそのストリップを観察していた。
『あら、有希ちゃん、またちょっと生えてきちゃってるじゃない。仕方ないわねえ・・・』
携帯端末から、忘れもしない女性の声が聞こえてきた。

 ・・・有希は再び、会議室の机の上で恥辱の剃毛ショーを演じさせられ、ようやっく終わった時、その目の前に何本かの縄が置かれた。
『それじゃあ基本の、乳房縛りと股縄縛り、やって見せて頂戴。・・・言っておくけど、それが水曜日のあなたの下着よ。毎週水曜は、この会議室でストリップして、アソコに毛が生えていないか、みんなにチェックしてもらって、命令された緊縛を自分でするの・・・それくらいしてくれないと、あなたの誠意は認められないわ。Sオンラインさんの下請けで我慢してあげるんだからね。・・・ほら、早くすっぽんぽんになって、職場の皆さんにご挨拶しなさい。忙しい先輩達が、あなたの緊縛ショーにお付き合いしてくださるんだからね。』

 「・・・は、はい・・・」
下半身を丸出しにしたまま、有希は小さな声でそう言うと、スーツのジャケットのボタンを外し始めた。これは、両社の和解というよりは、共謀して自分を罠に嵌めているだけではないのか・・・有希はそう思っても、口にすることはできなかった。

 そして、素っ裸の上に乳房縛りと股縄縛り、という屈辱的な姿になった有希は、週刊Xの社員が構えるビデオカメラに向かってにっこりと笑顔を強要された。
「・・・お、おはようございます・・・ど変態の有希は、いつもノーパンノーブラで、縄だけです・・・」

 ようやく真樹の許しを得た有希は、スーツを着ることを許された。首縄を隠すためのスカーフもまた貸してもらうことができた。しかしもちろん、その下はノーパンノーブラの緊縛姿だ。

 「おい、ぼけっとするな。取材に行くぞ。」
Supershotの若手社員が有希の背中を叩き、可憐な新入社員に悲鳴を上げさせた。

 車に乗せられた有希達が向かった先は、町中のスポーツクラブだった。それは、もうすぐオープンするクラブの最新鋭の施設を取材する、というのが趣旨だった。車の中でその話を聞きながら、ああ、これは取材の形をとった広告なんだと、ぼんやり理解した。

 有希達が到着すると、背広姿のマネージャーと、大勢のインストラクターが整列して迎えてくれた。
「いやあ、今日はどうぞよろしくお願いしますよ。・・・まさか、今一番人気の新入社員さんまで取材に来てくれるなんて、感激ですよ・・・」
マネージャーはそう言って笑うと、インストラクター達に視線で合図をした。よろしくお願いしまーす、と爽やかな合唱がエントランスに響き渡った。

 しかし、その後の取材は、有希にとって恥辱の連続となった。有希が体験取材するためとして取材スタッフが用意してきたというウェアは、薄手のテニスウェアだった。もちろんアンスコなどはなく、有希は、全裸に股縄縛りと乳房縛りの上に、そのテニスウェアを着ることになった。
 白を基調とするテニスウェアからは、乳房を縛る麻縄が透けて見え、また、上下の縄に挟まれてくくり出された乳房が、テニスウェアの胸の部分を不自然なくらいに膨らませていた。屹立してしまった乳首がうっすらと透けていた。
「こ、こんな格好で体験取材なんて、無理です・・・」
有希は目を潤ませて懇願したが、もちろん社員達が許してくれる筈もなかった。あまりに過激な格好に、スポーツクラブの若いインストラクター達が目を丸くしているのが辛かった。

 「大丈夫、ちょっとくらい透けてたって、あとの加工処理で何とでもなるから。本気で体験しないと許さないからな。」
若手社員は有希に向かってそう言うと、今度はインストラクター達に向けて笑顔を浮かべた。
「すみません、ちょっと色気がある形で取材して欲しいって、マネージャさんから要望されているもので、ご協力、お願いします。」
呆気に取られるインストラクター達に向け、その社員は、今日発売のSupershotを開いて見せた。
「この子なら大丈夫ですから。・・・ほら、こんなことされて雑誌に載せられて喜んでるんですよ。」
きゃあ、何これえ、と若い女性インストラクターの呆れた声が漏れ聞こえ、有希は頬を真っ赤に染めた。しかし、M字開脚で下着を丸出しにされて宙吊りにされ、笑顔を浮かべている写真を見られてしまっては、弁解のしようもなかった。

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