PART 88

 それは、ギャラリーにとって最高の見世物だった。尻の溝に縄一本食い込ませただけで、ふっくらと膨らみ、水に濡れてつるつるに光っている尻が、有希が平泳ぎで脚を両側に開く度に水の上に浮き出て、くりっ、くりっと揺れるのだ。
 また、ガラスの壁の向こうにいるギャラリーは、しゃがんで見上げることで、有希が蛙足になって泳ぐ姿を下から見ることができた。縄で絞り出された乳房が水流で複雑に形を変え、股が大きく開いて縄が深く秘裂に食い込む、それ以外は美しい身体のライン、苦悶なのか快感なのか歪んでいる有希の美貌・・・あはは、最高だよ、有希ちゃん! ギャラリーの一部が悪のりして、平泳ぎの顔のすぐ近くの下から見上げ、嫌らしい笑みを浮かべて手尾を振った。

 そして、有希の恥ずかしい平泳ぎショーは、コースの真ん中手前で一時中断することになった。
「あ、あ、あん・・・あ、あぅぅ・・・」
有希は縄からの刺激についに耐えきれなくなり、平泳ぎが続けられなくなったのだ。有希は思わず身体の動きを止め、足を下ろした。しかし、その上級者用のプールは、有希が足を必死に伸ばしても底に届かない深さがあった。
「あ・・・ぶはっ・・・あっ、あぐ・・・ぶはぁっ・・・」
有希は立ち泳ぎになり、何度も顔が水の中に落ち、慌てて水面に顔を出してむせた。

 有希が泳げなくなったのには理由があった。水を吸った縄がぎゅっと縮まり、今までとは比較にならない強さで有希の身体を締め付けるようになっていたのだ。そんな状態で平泳ぎをしたら、秘裂の奥にすっぽりと瘤が入り込んでしまいそうだった。また、乳房を縛る縄もぎゅっと縮まり、有希の乳房の上下の縄が乳房を挟みながらくっつきそうになっているように感じた。痛さと快感で、有希は両手両足をバタバタと動かし、苦しげに悶えた。
「・・・ぶはっ・・・あ、あっ、あん・・・あぐっ、あうぅ・・・」

 「縄がきついんだったら、自分で解くんだ、有希ちゃん!」
プールのスタート地点の端から、若手社員の声が大きく響いた。
「大丈夫、結び方の反対にすれば解けるんだから、簡単だよ。」

 そんなのいやっ、といやいやをするように首を振った有希だったが、結局は言われたとおりにするしかなかった。有希はガラスの壁に大勢の男女が顔を付けんばかりにして自分の痴態を観察しているのを意識しながら、立ち泳ぎをして、身体をきつく縛る縄を解き始めた。プールの中で変則的なストリップを始めた自分の姿を眺め、至近距離で皆がニヤニヤ笑い、クスクス話し合っているのが見えるのが辛かった。あはは、本当に変態だ、最低、と言っている声が聞こえてきそうだった。

 そして有希は、立ち泳ぎしながら何とか乳房縛りと股縄縛りの縄を解くことに成功した。おおっという歓声と、パチパチパチという拍手がプールの壁に反響し、有希の恥辱を煽った。

 プールの中で一糸まとわぬ素っ裸になってしまった有希は、そこから平泳ぎをしてスタート地点まで戻らなければならなかった。
「・・・ぷはっ、・・・ぷはっ・・・」
全裸で平泳ぎをする姿を四方から見つめられることがこれほど恥ずかしく、屈辱的なこととは・・・有希は泳ぎながら頭の中が真っ白になるのを感じていた。何より辛いのは、プールの壁のガラスのすぐ向こうにへばりつくように鈴なりになっている大勢の男女達の顔が嫌でも視界に入ってしまうことだった。い、いや、見ないで・・・そんな、下から見るなんて、ひどい・・・

 ようやく有希がプールのスタート地点にたどり着くと、上から見下ろした若手社員が淡々と言った。
「はい、お疲れさま、有希ちゃん。それじゃあもう一往復しよっか。・・・行きはバタフライ、帰りは背泳ぎでね。」
背泳ぎ、という言葉を聞いた瞬間、有希の顔が引きつり、ギャラリーがどよめいた。

 そして、二度目のスイミングが始まった。全裸でのバタフライももちろん死ぬほど恥ずかしかったが、やはり復路の背泳ぎは筆舌に尽くしがたい羞恥だった。全裸の身体を仰向けにして泳ぐ姿をプールサイドの大勢の男女に見下ろされ、皆が笑っている様子が視界に入る。また、すぐ横のガラスの壁の向こうには、隙間無くギャラリーが詰めかけ、全裸で泳ぐ姿に容赦無い視線を向けているのが分かった。
 バシャ、バシャ、バシャ・・・両手を大きく回しで水をかきながら、有希は羞恥地獄に頬を真っ赤に染めていた。お願い、見ないで、私のこんな姿・・・あ、ああ、どうして身体が熱くなるの?、あ、だめ・・・

 ようやく背泳ぎを終えた有希は、意地悪なギャラリーの拍手を受けながらプールサイドに上がった。一糸まとわぬ姿のままで立ち尽くし、頬を真っ赤に火照らせ、水に濡れた裸身を必死に両腕で隠す様子がいじらしく、ギャラリーの嗜虐心を刺激した。水に濡れた髪、潤んだような瞳、女体の美しいライン、ふっくらむちむちして柔らかそうな尻・・・その美しさと淫猥さ、被虐に喘いでいるような雰囲気に、ギャラリーはしばし心を奪われた。

 最後は、トレーニングマシーンのコーナーだ。全裸でのエアロバイク、ランニングマシーン、ベンチプレス、チェストブレス、レッグスクワットマシーン・・・全裸自転車、走って揺れる乳房、仰向けに横たわって開かれた脚とその股間・・・恥辱に喘ぎながら様々なマシーンに取り組む美女の痴態を、ギャラリーはすっかり好奇の視線で見つめ、恥ずかしい部分を眺めては有希に聞こえるように大きな声で批評し、楽しそうにからかいの言葉をかけたのだった。しかも、トレーナーは、各マシーンごとに、テニスウェアを着ていた時と同じ記録を出すように要求し、有希に手を抜くことを許さなかった。

 (あ、ああ、み、みんなが見ている、私の恥ずかしい姿・・・)
有希は脚がガクガク震え、なかなかさっきと同じ記録を出すことができなかった。そして、何度も繰り返し恥ずかしいトレーニングをさせられると、だんだん身体が熱くなり、股間の奥からじゅわっと愛液が溢れ出してくるのを止められなかった。あ、だ、駄目、こんなところで・・・

 「ちょっと、二階堂さん・・・気持ちよくなってしまったのは仕方ないですけど、あんまりマシーンを汚さないでくださいね。」
女性トレーナーがよく通る声で呆れたように言うと、有希の顔が火を噴かんばかりに紅潮し、トレーニングルームはギャラリーの失笑に包まれた。


 ようやく全てのプログラムが終わると、有希達一行は、スポーツクラブのエントランスでお礼の挨拶をした。
「・・・皆様、本日は取材にご協力いただき、誠にありがとうございました。最新の設備を装備し、明るく熱心なスタッフの皆様がいるこのスポーツクラブにつきまして、次回発売のSupershotに掲載させていただくことになると思います。」
S書房の男達と、スポーツクラブの男女のトレーナーに囲まれ、ただ一人全裸の有希は、両手を下におろしたままで上品に腰を曲げ、一礼した。
「・・・また、業務とは関係ありませんが、わ、私の、露出趣味にもお付き合いいただき、ありがとうございました。す、素っ裸でテニス、スイミング、エアロビクス、様々なトレーニングマシーンを体験できて、とても楽しかったです。・・・ただ、申し訳ないのですが、私のこの趣味については、どうぞ、皆様限りの秘密にしていただくよう、お願いいたします・・・」
有希が恥辱にまみれながら命じられた言葉を口にすると、エントランスは暖かい拍手に包まれた。

 「分かってるよ、有希ちゃん。」
「そんなきれいな身体してたら、見せびらかしたくもなりますよね。」
「ピンクの乳首に形のいいおっぱい・・・美乳だもんね。」
「やっぱりエロケツは丸出しの方が迫力あるね(笑)」
「パイパンのアソコも可愛いよ。」
「とっても感じやすいですね、有希さんって(笑)」
「また素っ裸でトレーニングしたくなったら、いつでも来てくださいね。(笑)」
トレーナーやスタッフ達は、にこにこしながら拍手を続け、からかいの言葉を浴びせた。そしてその視線は、飽くことなく有希の乳房や下半身に突き刺さっていた。

 そしてようやく帰りの車に乗った有希だったが、結局、会社に着くまで一切の着衣を許されなかった。スタッフの間に座らされた有希は、両側の男達の太股の上に乗せるように両足を大きく開かれ、無毛の股間を丸出しにして喘いでいたのだった。男達はそれでは飽きたらず、有希に左手の人差し指と中指をV字型にして秘裂を開かせ、右手でピースサインをさせて写真とビデオを撮影したのだった。開いた秘裂の中心から愛液が溢れ出ていることを指摘され、有希は自らの卑猥な反応にがっくりとしていた。ど、どうしてこんなことされているのに、気持ちよくなってしまうの、私・・・

 このままでは会社に戻れません、と必死に懇願した結果、会社のビルの地下の駐車場に入ったところで、有希はようやくスーツを身に付けることを許された。もちろん、着衣を許されたのはブラウスとスーツの上下だけで、その下はノーパンノーブラだった。

 有希はその姿のまま、男性社員達に連れられ、Supershotの編集長である須藤の前まで連れて行かれた。
「す、須藤課長、今、戻りました・・・今日は、新しくオープンする、スポーツクラブを体験取材してきました・・・」
自ら報告するよう指示され、有希は恥辱の記憶に震えながら、何とかその言葉を口にした。

 すると須藤は、手に持った雑誌に目を落としたまま、気のない声で返事をした。
「ああ、ご苦労さん。・・・で、おもしろい記事にできるんだろうな?」

 ・・・え、私?・・・有希は困惑して周囲を見回した。自分は、手伝いのつもりで行ったつもりだったので、記事を書くつもりはなかった。
「・・・は、はあ・・・」

 「何だ、その気のない返事は。」
須藤はようやく手元の雑誌から目を離し、前に立っている有希の顔を見上げた。
「まさか、まだ週刊誌を馬鹿にしているのか、君は? またこの前みたいに適当な記事を書いたら許さないからな。・・・おい、荻野、お前、ちゃんと指導してやれよ。」
須藤は、有希と一緒に取材に行った若手社員に向けて顎をしゃくった。

------------------------------☆☆☆---------------------------☆☆☆------------------------------

 一週間後の水曜日。その日は有希にとって新たな恥辱の日となった。今日発売のSupershotには、有希のスポーツクラブ取材のレポートと、袋綴じ企画として、緊縛体験レポートが掲載されているのだ。先週とは異なり、今回は有希自身がそれらの記事を執筆しているのが辛かった。

 スポーツクラブ取材の記事では、ミニスコートのテニスウェア姿でトレーニングマシーンやテニスをする写真がふんだんに配置され、アップの写真ではスコートが大きく捲れ上がり、太股の付け根までが丸出しになっていた。記事の内容は差し障りのないもので、有希の初稿がほぼ採用された形だったが、写真については何度も荻野から駄目出しされて、太股丸出しの写真が掲載されることを泣く泣く了解したのだった。

 また、それよりも辛かったのは、袋綴じ企画だった。先週号での約束どおり、『有希の緊縛教室』全10回のうちの第1回目が掲載されたのだ。第1回のテーマは、「基本の乳房縛り&股縄縛り」で、テニスウェア姿の有希が、カメラ目線で男に縛り上げられていくシーンが連続写真で掲載されていた。しかもそれは2つのバージョンがあり、一つはテニスウェアを来たままで縛られるもの、もう一つは、ウェアとスコートを思い切り捲り上げ、ブラジャーとパンティを丸出しにして、その上から縛られるものだった。
 そのテニスウェアは、スポーツクラブを取材した時と全く同じものだった。つまり読者は前から順番に読むことにより、まずは健康的なテニスウェアからこぼれ出る太ももを楽しみ、次に、そのテニスウェアの上から縄を掛けるシーンを堪能し、最後には、テニスウェアからこぼれ出たブラジャーだけの乳房の上下に縄が巻き付き、パンティに縄と瘤がきつく食い込み、有希が顔を真っ赤にして喘いでいる様子を堪能できるのだ。

 さらに、同日昼12時からは、緊縛シーンの動画がS書房オンラインで公開されてしまった。その動画の中で、有希は最初に「有希の緊縛体験10連発!コーナーです!」と笑顔で言わされ、縄師に縛られながらその手順と、感想を言わされ、最後は緊縛姿で潤んだ瞳になり、身体をくねらせて悶えながら切なそうなカメラ目線で終わる・・・公開された動画を見て、有希はあまりの淫らな雰囲気に頭がクラクラした。会員になれば、全員がこの動画を見るの?・・・嘘、嘘でしょ・・・

 しかしそれが紛れも無い現実であることは、社内の盛り上がりだけでも明らかだった。Supershotの売り上げは過去最高を更新し、もはや業界トップ2に迫る勢いだった。そして、動画を見たいためにS書房オンラインの会員が激増し、従来の10倍以上にあっさり増えてしまった。動画公開の12時から1時間は、昼休み時間と重なったこともあり、有希の動画になかなか接続できないと苦情が殺到した。

 インターネット上の匿名掲示板では、有希のスレッドがもの凄い勢いで伸び、スレッドランキング上位となってしまったことから、男性週刊誌に興味の無い女性にまで有希の痴態が知られることになってしまった。

 僅かに有希にとって救いだったのは、S書房オンラインの動画がストリーミング専用でダウンロード不可であることだった。また、会員ごとに違う透かしが入り、もしネット上に漏洩させた場合には訴えると警告されていた。さらに、F・ネットセキュリティは今回ももちろん、その動画や、週刊誌の画像がネットに流出しないよう、即時に警戒態勢をとってくれたのだった。

 しかしそれは、逆にネット上で有希の話題を盛り上げるよう、火に油を注ぐようなものだった。どうやったらF・ネットセキュリティの監視にかからないか・・・有希の痴態の数々に関する感想と共に、男達を熱くさせる話題が一つ増えただけだった。

 そして、次の木曜日、今度は有希が全く予想していなかった事態が発生した。


次章へ 目次へ 前章へ

カウンター