PART 89

 『有希ちゃんの緊縛に憧れて・・・ゆり』それが、週刊Xの巻頭特集のタイトルだった。そして、いきなりアップで掲載されていたのは、裸で会議卓の上で四つん這い尻上げポーズを取り、その尻の穴にマラカスを挿している写真だった。さらに、自分で股縄縛りをして笑っている写真、全裸で窓際に立って秘裂を開いている写真、窓ガラスに向かって潮を吹いている姿を向かいのビルから撮った写真、スポーツクラブでテニスウェアの下に股縄縛りをしてトレーニングマシーンをしている写真、テニスコートでサービスをして、スコートを思い切り捲らせて縄だけの尻を丸出しにしている写真、全裸に縄だけで平泳ぎや背泳ぎをしている写真・・・いずれも、顔がフレームに入っていないか、ぼかしがかけてある写真だったが、それは有希に酷似しているという印象を読者に与えるには十分なものばかりだった。
 記事の内容はめちゃくちゃだった。有希のお尻タンバリンのサンバや緊縛姿の写真を見て、自分が露出狂であることを自覚したOLが、週刊Xに露出調教をして、記事にして欲しいと編集部を訪ねてきたというのだ。そして、自分が露出狂であることを証明するために、いきなり自分の身体を縛り、服を脱ぎ、様々な痴態を晒したと言うのだ。そのOLは、編集部に入り浸るようになり、有希がスポーツクラブの取材に行ったという情報を聞きつけると、自分も同じスポーツクラブに行って、頼み込んで緊縛姿で有希と同じメニューに取り組んだのだった・・・

 写真は全て鮮やかなカラーで掲載され、迫力満点だった。匿名掲示板で話題になると、今まではコンビニに置いてもらえなかった弱小雑誌は、いきなり書店で売り切れ続出となった。そして、この雑誌の画像はF・ネットセキュリティの監視の対象にならなかったため、匿名掲示板にべたべたと貼られ、あっという間に多くの人が知るところになった。

 有希は顔を真っ赤にして週刊X編集部に抗議に行ったが、課長の黒木はニヤニヤ笑いのままだった。
「どうしたの、有希ちゃん、血相変えて? ああ、そっくりさんの記事を載っけたことかな?」
うっと言葉に詰まる有希を見ながら、黒木は淡々と続けた。
「なんなら訴えてみるかい? そっくりさんに恥ずかしいことをさせて掲載するなって?」
もちろん、そんなことをすれば、その記事が本人であることがばれてしまうのだから、有希が訴える筈が無いことは百も承知だった。

 恥辱に全身を小刻みに震わせている有希の肩を、男性社員がぽんと叩いた。
「何してるの、有希ちゃん。そろそろ取材に行くぞ。」
それは、Supershotの担当社員の荻野だった。


 有希は毎週水曜日は第2編集担当のSupershotの取材を行うことになっていた。その目的は、表向きは、新入社員の有希に取材の現場の経験をさせることで業務の幅を広げるということだったが、社員のうちで誰もそれを額面通りに受け取っている者はいなかった。
 同じ号に掲載される、「有希の緊縛10連発」と同じ衣装を着て取材して、緊縛姿とのコントラストを読者に楽しませる・・・それが真の目的であることは明らかだった。そして思惑どおり、前号は、有希のスポーツクラブ取材時のテニスウェア姿と、そのテニスウェアをはだけられて下着を露出しての股縄縛り姿の対比がものすごい評判となり、増刷が間に合わない状況になっていた。S書房オンラインの会員数も噂が噂を呼んで伸び続け、斜陽の出版事業を補う重要な収入源となりそうな勢いだった。

 取材用のバンに乗り込んだ有希は、後部座席の真ん中に座らされ、両隣の男に挟まれる形となった。目の前には、向かい合わせとなっている座席に3人の男が座っていた。目の前は、有希の指導役の荻野だった。自分の周りを取り囲む5人の男の視線が無遠慮に有希の胸や下半身に注がれるのを感じ、有希は頬をかあっと紅潮させた。
「あ、あの、荻野さん、・・・今日の取材先は、どちらなんですか?」
今日の取材先について、有希は事前に教えてくれるように荻野にお願いしていたが、のらりくらりとかわされ、結局、教えてもらえなかったのだ。

 すると荻野は、真正面で膝を突き合わせている有希のスカートを眺めながら言った。
「ああ、今日はね、Y学生服さんだよ。ほら、学生服メーカーの中でも大手の。」

 「え、Y学生服・・・」
有希はその言葉を聞いた瞬間、さっと表情を強ばらせた。アイリスでの学生服での緊縛って・・・そ、それじゃあ・・・いや、そんな・・・

 呆然として座っている有希の腰に前から手が伸び、スカートが思い切り捲られた。太股が根本まで丸出しになり、薄いピンクの可憐なパンティが男達の目に晒された。露わになった真っ白な太ももに、5人のスタッフの視線が突き刺さった。
 きゃあ、っと悲鳴を上げた有希だったが、両手を両側の男に押さえられ、パンティだけの下半身を男たちの視線から隠せなかった。
「あれ、有希ちゃん、全然準備できてないじゃん? 取材に行く時は、自分で縄で縛っておくことって約束してたよね?」
荻野が呆れたように言った。確かにそうは言ったが、冗談まじりだったため、有希が本気にしていなかったことは予想どおりだった。
「・・・仕方ないな。ほら、縄はここにあるから、現場に着くまでに用意してよ。」

 そんなの無理です、許してください、と懇願した有希だったが、もちろん受け入れられることはなかった。時間がないぞ、間に合わなかったら、現場でやってもらうからな、と脅された有希は、道路を走る車の中でスーツを脱ぎ、下着も脱いで全裸になった。そして、スタッフから渡された縄を手に取ると、スタッフに身体を密着させながらの自縛ショーを披露しなければならなかった。

 亀甲縛り・・・それが、アイリスで制服姿で縛られた時の縛られ方だった。その方法を覚えていない有希は、前の席のスタッフに自分が縛られた時の動画を見せられながら、同じように自分に縄を掛けていくことになった。
「・・・す、すみません、ちょっとどいていただけますか・・・こ、こうすれば・・・あ、ああ・・・」
狭い車内での自縛は想像以上に困難で、有希は5人の男に密着しながら身体をクネクネ動かし、魅力的な裸身を見せつけることになってしまった。

 「おいおい、何をもたもたしてるんだ。そんなんじゃ現場についちまうぞ。」
「仕方ねえな、少し手伝ってやるか。」
全裸の有希を囲んだ男達はそう言いながら、有希の手足を掴み、柔肌の感触を楽しみながら様々なポーズを取らせ、亀甲縛りに縄を掛けた。もちろん、可憐な乳房は上下の縄でくびり出され、縦縄は股間の秘裂と尻に溝にしっかりと食い込まされていた。
「・・・よし、これで亀甲縛り完成、と。ほら、早くスーツを着ないと、もうすぐ現場だぞ。」
正面の荻野がそう言って、飛び出た乳房の頂点を軽く弾き、有希に可愛い悲鳴を上げさせた。


 Y学生服に着いたのは、有希がスーツを何とか着たのとほぼ同じ時間だった。もちろん、ブラジャー、パンティ、ストッキングは身に付けておらず、スーツの下は亀甲縛りの縄だけだった。有希達が着くと、ロビーでは大勢の職員が集合し、歓迎してくれた。しかし、その多くの顔には隠しきれない好奇の色が浮かんでいた。みんな、Supershotを見ているんだ・・・ひょっとして、週刊Xまで・・・有希は上品に微笑みながら、身体の奥がじんと熱くなるのを感じた。

 有希達は、学生服の製造工場を取材し、企画担当者に最近の流行やデザインの傾向などを聞いた。一通りの説明を聞き、撮影が終わると、有希は担当者に向かってためらいがちに尋ねた。
「・・・あの、もしよろしければ、私に何かひとつ、試着させていただけませんか?」
(お願い、断ってください・・・)有希は内心で必死に祈った。

 すると若い男性担当者は、にっこりと笑って頷いた。
「ええ、もちろん。二階堂さんのような方に着ていただければ、いい宣伝になりますしね。」

 「それじゃあちょっと希望があるのですが、N県のF学園の制服もありますか? 二階堂さんの母校なんですよね。」
強ばった表情の有希を横目に、荻野がすかさずお願いした。

 そして、22歳の新入女子社員による、学生服のファッションショーが始まった。

 「ほら、突っ立ってないで、いくつかポーズをとってみてよ。ほら、こんな風に。」
荻野は、Y学生服が制作している「学生服コレクション」をパラパラとめくって有希に見せた。

 荻野に逆らうことができない有希が、命令どおりに、モデルのようなポーズを取り始めると、歓声はいっそう大きくなり、それを聞きつけた社員が集まり、ギャラリーが急速に増えていった。美人なのに気取ることがなく、照れたように頬を染めてポーズを撮る有希に皆が魅了され、可愛いよ、有希ちゃん、と親しげなかけ声までがかかるようになっていた。さらに、Supershotのカメラマンと、Y学生服の担当者がカメラを構え、連続して有希にフラッシュを浴びせた。

 「・・・も、もう、いいですか?・・・」
有希は頭の後ろで手を組んだポーズを撮りながら、荻野の方を見て聞いた。さっきから、背筋を反らせたり、脚を開いたりと、わざと縄が胸や股間に食い込むポーズを取らされ、目の前がぼうっとなってくるのを感じていた。上気して赤くなった顔がギャラリーを刺激していることなどに思い及ぶ余裕はなかった。

 「ああ、そろそろいいかな、お疲れさん。」
ほっとして手を下ろす有希を見ながら、荻野が続けて言った。
「それじゃあ今度は、Y学生服さんの自信作、J学院の冬服、行ってみようか。」

 まず最初は、都内で一番お洒落と言われている、J学院の冬服だった。ブラウンを基調とした可憐なブレザーが有希にぴったりと似合っていて、男達からはどよめきと歓声が湧き、女性社員達からは歎声が漏れた。ミニスカートからこぼれる太ももも、嫌らしすぎない程度にむっちりとしていて、男達の目を喜ばせた。

 しかしそれは、有希にとっては生きた心地のしない格好だった。ミニスカートは膝上12センチほどもあり、太ももの半分以上が露出していた。そして、亀甲縛りの縦縄だけでノーパンの尻に外気の流れをさっきよりも遙かに感じ、有希の頬は見る見る赤くなっていった。
「こ、こんな短いスカート、恥ずかしいです・・・」
有希は脚を硬く閉じ、周囲を囲む男性達の視線が突き刺さるのを感じながら、荻野に向かって訴えた。(お願い、許して、スカートがめくれたら・・・)

 「え、何言ってるの、有希ちゃん、すっごく似合ってて、可愛いよ。ねえ、みなさん?」
荻野はそう言って、にやりと笑みを浮かべ、ギャラリーを見回した。黒山の人だかりとなっているギャラリーはほとんどがにっこりと頷いた。
「・・・それにさ、スーツとか、テニスウエアでパンティ丸出しにしてる写真、何十万部も売られちゃってるくせに、今さらミニスカートを恥ずかしがっても仕方ないだろ? ねえ、みなさん、よく知ってるでしょ、有希ちゃんの太ももの付け根まで。あと、パンティに包まれたおっきいエロケツも?」
またギャラリーが頷いたが、今度はニヤニヤといった表情に変わっていた。それどころか、有希ちゃんの緊縛教室の動画、百回は見てるよー、と野次が飛び、ロビーは笑いに包まれた。

 すっかり淫靡な雰囲気に変わったロビーで、有希は可憐な茶色のブレザーの制服を着こなし、様々なポーズをとらされた。荻野はわざと両足を開くポーズや、身体を倒して腰を突き出すポーズを取らせ、スカートがずり上がるようにさせ、有希が恥辱に震えるのを楽しんだ。

 「それじゃあ最後、J学院の夏服、行ってみよう。」
頃合いを見計らった荻野がそう言うと、Y学生服の社員達の表情が思わず緩んだ。確かに可愛いことで有名だが、J学院の夏服は・・・(笑)

 ・・・そして、有希がその制服を着て皆の前に登場すると、一瞬の静寂の後、ロビーは再び拍手で包まれた。
「可愛い、有希ちゃん。さっすが陰のミスK大!」
「本物の女子高生よりずっと可愛いよ、制服姿!」
「ねえ、縄で縛ってるのが丸見えですよ、有希さん(笑)」
「きれいなおっぱい、乳首まで透けてるんだけど(笑)」
「制服は可愛いんだけど、透けブラじゃなくて、透けパイって、さすが、緊縛好きだね!」
「亀甲縛りでおっぱいひり出されちゃって、恥ずかしくないの?」
「・・・てことは、下はノーパンで股間に縄食い込んでるのかな?(笑)」
J学院の夏服、と言えば生地が薄く、ブラが透けてしまうことで有名だった。それなのに有希は、亀甲縛りの上半身を透けさせ、両手を頭の後ろで組まされているのだ。皆が有希に露出趣味があると思い、露骨な言葉を浴びせ始めたのも無理はなかった。

 もう許して、と訴える有希の視線を感じながら、荻野は「学生服コレクション」のページを開き、有希に見せた。
「はい、次はこのポーズ。思いっきりね。」
・・・そこには、笑顔で大きくジャンプしている女子高生が載っていた。


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