PART 91

 両側の男たちから肩に腕を回され、太もものきわどい部分まで触られ、揉み込まれ、有希の顔はいっそう真っ赤になり、唇を半開きにして熱い息を吐いていた。

 (あ、ああ、どうして、こんなことをされて、私、気持ちよくなっちゃうの・・・)有希は内心で困惑しながら、次の真樹の命令を思い出していた。(い、いや、そんなことしたら、私、本当に変態だと思われちゃう・・・)

 しかしもちろん、真樹の命令に逆らうことはできなかった。
「す、すみません、ちょっとこれから、ご挨拶をしたいので、よろしいですか?」
両隣の上条と仁藤に笑顔でそう言った有希は、2人の手からさりげなく逃れてその場に立ち上がった。そして、皆からよく見える位置に歩いて行き、振り返った。
「そ、それでは、突然ですが、G社様との今後の良いお付き合いを祈念しまして、二階堂有希、得意の芸を披露したいと思います!」

 「え、芸ってどんなの、有希ちゃん?」
身体を触り続けてすっかり馴れ馴れしくなった上条が、ニヤニヤしながら言った。
「得意の芸って言うと、ひょっとして、ここで緊縛教室、見せてくれるのかな?」
あはは、そりゃいいですねえ、と追従笑いが続いた。

 しかし、男たちの予想に反して、有希は首を横に振らなかった。そして、にっこりと笑顔を浮かべて小さく頷いた。
「・・・はい、よろしければ、ここで緊縛ショーを披露したいのですが、よろしいでしょうか?」
(う、嘘よ、こんなの・・・)目の前で唖然とする6人の男たちを見ながら、有希は消え入りたい気持ちだった。

 しばらくの沈黙の後、営業部長の伊丹が口を開いた。
「・・・もちろん、俺たちは大歓迎だけど、いいんだね、有希ちゃん、君が自分から希望してるってことで。」
有希が笑顔のままで小さく頷くの見て、部屋の空気がより淫靡になった。普段の有希からは想像もできない提案だったが、笑顔でそんなことを言うなんて、酒に酔うと開放的になる性格なのか・・・それに、雑誌で緊縛姿を晒しているくらいだから、嫌いな方ではないのだろう・・・
「だけど、縄はどうするんだ?」

 「は、はい・・・それは、あの・・・」
有希は一層顔を赤らめた。それが男たちを刺激していると気づく余裕はなかった。
「もし、よろしければ、ネクタイを、お貸しいただけないでしょうか?・・・」
自分は今、酔って理性を解放しているのだ・・・有希は自分に言い聞かせ、にっこりと笑った。いや、これじゃあまるで、変態じゃない・・・

 6人の男たちは、有希の意外な言葉にまたもやぽかんとして沈黙した。緊縛のために、ネクタイを貸して欲しいって?・・・まさか有希ちゃん・・・

 ほおっ、とどよめきが誰からともなく湧き、6人の男の顔がすっかり緩んだ。
「もしかして、有希ちゃん、俺たちのネクタイを縄代わりにして、自分を縛ろうって言うのかな?」
伊丹の問いに有希がにっこりと頷くと、おおおっ、と他の5人がうなった。まさか、あの、清楚な雰囲気の有希ちゃんが・・・

 まずは上条と仁藤の2人にネクタイを解いてもらい、手渡してもらった有希は、清楚な雰囲気の笑顔を浮かべ、皆に向かって言った。
「はい、それでは、二階堂有希、G社様との良いお付き合いを祈念しまして、いただいたネクタイで、まずは、股縄縛りをしたいと思います! 写真と動画、どんどん撮ってくださいね・・・」
酔って開放的になったフリをして、ネクタイを借りて緊縛姿になり、その画像と動画をアイリスに送ること。もちろん笑顔で・・・それが真樹の命令だった。有希は恥ずかしさで心臓が止まってしまいそうに感じているのに、それを悟られることすら許されていなかった。(営業部の人たちと、初めての大口のお客様の前で、露出狂の変態のふりをさせられるなんて・・・)女子社員の大胆な台詞に盛り上がり、携帯端末のレンズを向ける男達を見ながら、有希はスカートのホックに指をかけた。

 「それではまず、スカートを脱ぎます・・・失礼します・・・」
有希は上品な口調でそう言うと、タイトスカートのホックを外し、腰をくねらせながらゆっくりと下ろしていった。スカートを脱ぎ去ると有希は、上はスーツ、下は黒いストッキングとその下に透けて見えるパンティという姿になってしまった。

 (いや、そんな目で見ないで・・・ああ、どうして私、感じちゃうの・・・)しかし、真樹の命令に従うためには、まだまだしなければならないことがあった。

 「それでは次に、ストッキングを脱ぎます・・・」
一体どこの世界に、酔ったからといって、顔見知りの男の前で笑顔でスカートとストッキングを脱いでしまう女がいるんだろう・・・しかも、これからネクタイを縄代わりに自らを縛るなんて・・・有希は目の前がくらくらしてきたが、それでも笑顔をやめるわけにはいかなかった。はやし立てるのも忘れ、じっと見つめる男達の前で、有希は黒ストッキングの裾をめくり、ゆっくりと脱ぎ下ろしていった。股浅の白を基調とした花柄のパンティが露わになり、さらに、真っ白な太ももが現れたが、ストッキングの黒との対比が鮮烈だった。ああ、私、取引先の人の前で、なんていうことをしているんだろう・・・小さめのパンティに突き刺すような視線を感じ、有希は脚を小さく震わせていた。

 しかしその時、邪魔が入った。急に襖が開き、和服姿の女性が現れたのだ。
「失礼します。そろそろお食事にしましょうか?・・・あっ」
落ち着いた表情だった仲居は、上半身はスーツ、下半身はパンティだけ、という姿で立っている美女を見上げ、思わず言葉を詰まられた。
「あ、あの、お客様、これはどのような・・・」
その視線は男達に向けられた。若い女性に無理矢理恥ずかしい格好を強いているのではないか・・・格式高い料亭でそんな下品で卑劣なことは許せない・・・仲居がそう思っているのは明らかだった。

 「え、いえ、あの、その・・・」
有希も突然の事態に絶句した。この状況をどう説明すればいいのか・・・しかし、絶対に中断するわけにはいかないのだ。
「すみません、ちょっと気持ちがよくなってしまって、服を脱いで、芸を披露したくなったんです、私。驚かせてしまってごめんなさい。」
有希は明るい口調で言うと、頭の後ろを手で掻く仕草をした。
「よろしかったら、私をこれで縛ってもらえませんか?」
有希はそう言うと、2本のネクタイを手に持って見せた。

 失礼します、と言ってそそくさと部屋を出ていった仲居を見ながら、有希は恥辱に震えた。違う、私、そんな変態じゃないのに・・・
「それでは、まず、仁藤課長のネクタイで、有希の、ウエストを縛りたいと思います・・・あの、少しよじってしまっても大丈夫でしょうか?」

 はにかんだ笑顔を見せながら青いネクタイを腰に巻き始めた有希を見て、男達がほおっ、と盛り上がった。もはや皆、有希が酔って本性を現しているのだと思い込んでいた。それなら、徹底的に楽しまえてもらうよ、可愛い新入社員のネクタイ緊縛ショー・・・
「いいぞ、有希ちゃん。可愛いよ。」
「安物のネクタイだから、ねじってもひねっても、好きに使っていいよ。」
「きっと似合うよ、ネクタイで縛ったら」
「たくさん写真、撮ってあげるからね。」
しらふに戻ったときにこの動画と写真を見たら、有希ちゃん、どんな顔をするかな・・・(笑)

 仁藤の青いネクタイをよじって紐状にしてウエストに巻き、次に、上条の赤いネクタイを手に取った。
「上条部長、こちらのネクタイを、私の、股の下に通して縛らせていただいてもよろしいでしょうか? また、少し強めによじらせていただいてもよろしいでしょうか?」

 「ああ、いいよ、有希ちゃんのアソコで濡れちゃってもいいからね。ぐっしょぐしょに濡らしちゃってよ!」
と上条が鷹揚に言うと、個室が笑いに包まれた。

 しかし、男達の笑い声は、有希の次の行動を見て徐々に収まっていった。上半身はスーツ、下半身は股浅パンティとウエストに巻いたネクタイだけ、という姿の有希は、下半身を手で隠すこともせず、赤いネクタイをよじって細めの紐状にしたかと思うと、次に、その紐を結び、二つの瘤を作ったのだ。まさか、有希ちゃんが・・・男達の顔に驚愕と好奇、淫靡な期待の表情が複雑に浮かんだ。

 「はい、それでは、上条部長のネクタイで、私の股を、縛らせていただきます・・・」
(お願いです、そんな目で見ないでください・・・)笑顔の有希は、内心で必死に祈りながら男達を見つめた。しかし、宴席で取引先の男性のネクタイを借りて笑顔で股縄縛りをしようとする女が、好奇の目で見られない筈がなかった。もう駄目、私・・・
「えー、このように、ウエストの縄の下を通し、このように、股の下を通して、後ろでもウエストの縄の下に通します・・・」

 男達が黙って見つめる中、ついにネクタイを使った股縄縛りが完成した。ウエストに掛けられた青いネクタイと、パンティの中央に縦に食い込む赤いネクタイ、そして、その赤いネクタイには、二つの瘤が作られている・・・上半身のかっちりとしたスーツ姿とのあまりのアンバランスさに、男達は息を呑んだ。本当に酔って開放的になっているだけなのか・・・

 男達の表情が徐々に変わり、驚愕よりも淫靡な期待の色がはるかに濃くなっていくのが分かり、有希は内心でがっくりした。しかしまだ、有希が自演する恥辱ショーは始まったばかりなのだ・・・
「・・・はい、股縄縛りの完成です! 皆さん、どうぞ、よろしければ写真を撮ってください・・・」
有希は笑顔でそう言うと、両手を頭の後ろで組み、パンティの上からネクタイで股縄縛りをした下半身を見せつけた。

 あはは、いいぞ、有希ちゃん!と完成があがり、皆が携帯端末を構え、有希の痴態をカメラで撮影した。その中には有希の携帯もあり、撮影された写真は逐次アイリス映像に送信されているはずだった。さらに、なぜ瘤が二つ作られているのかを尋ねられ、それがクリトリスと秘口を刺激するためとまで言わされ、有希の顔はこれ以上ないほど真っ赤に染まった。

 「はい、それでは次に、乳房縛りを披露したいと思います。」
有希がそう言ってジャケットを脱ぎ始めても、もはや驚く者はいなかった。清楚で可憐な新入社員が酒に酔い、自ら下着だけになって緊縛姿を晒す・・・皆、有希がしらふに戻らないことを内心で祈るようになっていた。


 その5分後。宴席の個室の中では奇妙な光景が展開されていた。スーツ姿の6人の男達が酒を飲んで盛り上がる中、その前に一人の女性がブラジャーとパンティだけの下着姿だけで立っているのだ。しかもその腰には2本のネクタイが紐状によじられて縛り付けられ、上半身は、乳房の上下に2本のネクタイが掛けられていた。さらに、首から掛けられたネクタイが乳房の上下の2本のネクタイに括り付けられ、乳房が上下のネクタイに締め付けられ、くびり出されていた。
「いかがでしょうか、二階堂有希の、乳房縛り、股縄縛り姿・・・」
ストリップの緊縛の合間に、男達に酒を進められていた有希は、酔いと羞恥で頭がぼうっとなるのを感じながら、何とか笑顔を浮かべた。でも、なんか、気持ち、いいかも・・・もっと見て、有希のうんと恥ずかしい姿・・・ふとそう思ってしまった有希は、慌てて首を振った。これ以上恥ずかしい姿になんかなれない、取引先の人達の前で・・・
「それではこの姿で、お酌をさせていただいてよろしいでしょうか?」
もうすぐ終わりよ、酒の上でのこと、なんだから・・・有希は男達の間に屈むと、お銚子を手に取り、皆に酒を注いで回った。
 

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